なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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お返しを考えるように対策を考えるべし

 はてさて、急ピッチで仕上げたしのちゃんの歪み、的な部分を話し終えた私。

 となれば、諸々の問題は脇に置いた上で、元々の目的に立ち返る必要があるといえるだろう。

 

 

「……そういえば、これってホワイトデー対策の話でしたね……」

「しのちゃんの劇的ビフォーアフターがその辺吹っ飛ばしてたけど、目的を忘れちゃダメだよね」

「忘れさせたのそっちですよねぇ!?」

 

 

 ははは、コラテラルダメージってやつだよ()。

 

 まぁともかく、話題が当初の部分に巻き戻ったのは確かな話。

 ゆえにそれを前提に語るが……。

 

 

「とりあえず、今のパターンだとこのままホワイトデーを進める方向で行くしかないねぇ」

「それがやべぇから止める、って話だったんじゃねぇのかよ?」

「とはいうけど、しのちゃんがさらに成長するのを待つのもねぇ……」

「ぬぐ」

 

 

 こちらの提案にハセヲ君が皆を代表して難を示してくるが、とはいえそれでどうにかなるのなら寧ろ私がどうにかして欲しいくらいである。

 

 一番いいのは今いるモブ女性達をそのまま保持できるようにすることだろうが、それが難しいのは先ほど説明した通り。

 ……最大捕捉人数一人しかないうえ、それが一日の最大数であるのだから、少なくともこの大人数のモブ達をなんとかしようとするのは明らかに日数が足りてない。

 

 じゃあ私が増えるみたいにしのちゃんを増やして……というのも無理がある。

 しのちゃんの『揺れない天秤』は自己を釣り合わせることで強固に保つもの。そして、その要素を他人にも適用するものである。

 ……使い方の流用であって、さっき述べたように『自己の認識の拡張』でないところがポイントだが、それにはそれで問題というものもあるのだ。

 

 

「と、言いますと?」

「急ピッチで仕上げたから、本来ならできてるはずの応用回りがぐだぐだになってるってこと」

「はい?」

 

 

 その問題と言うのが、パワーレベリングによる弊害。

 わかりやすくいえば、できることを拡張するという認識に注力し過ぎたせいで、本来使ううちに覚える自然な応用の仕方を覚えられていない……というもの。

 

 わかりやすくいうと、今の彼女はマッサージの仕方を知ってはいるが、それを他人にやったことがない……みたいな感じだろうか?

 

 

「なんでマッサージ……?」

「自分の体を解したりするのは覚えてるけど、他人の体を使ってやったことがない……みたいな感じだからかな?ペーパードライバーって言うのも間違いじゃないかも」

「あー……座学で聞き齧っただけのようなもの、ってこと?」

「まぁ、そんな感じ」

 

 

 車の運転で例えればいいじゃん、というツッコミに関しては『車って自分ではないじゃん』と返させて頂きます。

 ……要するに、自分の体を使っての実験はしたことがあっても、それを実際に他人に施したことはない……みたいな話に近い状態というか?

 いやまぁ、今回は【星の欠片】の他者応用の話なので、この説明だと微妙に誤解を生みそうなんだけども。

 

 

「……???」

「生憎上手く説明できないのよ、【星の欠片】の修練って他の技能と原理が別物だから。さっきの話で言うなら他人云々は自分のことだし、自分云々は他人のことになるわけだから」*1

「??????(脳が完全に理解を拒んでいる顔)」

「そんな顔されるのわかってるから触れたくなかったのよぅ……」

 

 

 あれだ、説明する度ドツボにはまっていきそうなので、単純に『練習』と『実践を交えた練習』は違う、くらいに思っておいて頂きたい。

 実践における心構えとか、練習の段階だと掴み辛いでしょ……みたいな。

 

 

「実際にやってみないとわかんない感覚があって、それが今のこいつには欠けてるってことでしょ?」

「そうそう、そんな感じ。()()()使()()()()()()()()使()()んじゃなくて、あくまで他人に施すことを前提にした使い方になってるんだよね」

「……いや、それでいいんじゃないのか?」

「それじゃあダメなんだよなぁ……」

「???」

 

 

 うーん、やっぱりよくわからない様子。

 ……あとでマシュに手伝って貰おうと密かに決心しつつ、一つ咳払い。

 理屈の面がわからないのはもう仕方ないので、結果だけ伝えておこうというやつである。

 

 

「雑にいうと、今のしのちゃんは()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってこと。これを複数相手取れるようにしようとすると、今覚えたやり方忘れて貰わないといけないのよ」

「それ、教え方が悪いって話じゃないのか?」

「そういうわけじゃないんだけど……多分さらにややこしくなるから言及は避けておくわ」

「ええー……」

 

 

 ええー、とか言うなし。

 自己と他者との違いを理解したまま【星の欠片】を他人に使う、ってのは色々難しいんだぞぅ?

 

 そこら辺を完璧に理解するにはそういう才覚を最初から持ってるか、はたまた飽きるほどに他人に術を施すしかないんだから。

 それを急ピッチで仕上げるなら、自他の境界すれすれを攻めるしかないのだし。

 

 

「……それさっきダメなやり方、と言っていたものなのでは?」

「ええい耳聡い、加減できるならこっちのが早いってか、ミスを知ってないとミスらないように調整できないのよっ」

「開き直りやがった……」

 

 

 そこまで語ったところで、今のしのちゃんのやり方がギリギリのものであることがバレてしまった。

 ……いやうん、危ないって言ったのは確かだけども、その危なさが()()()()()()()を知らないと【星の欠片】として習熟できないんだから仕方ねーんだってば。

 ほら言うじゃん、技術の発展には犠牲が付き物って()

 

 ……それは冗談としても、ギリギリを攻めた経験が【星の欠片】を成長させることは事実。

 そして彼女の場合、それを自分相手だけの実験では賄いきれないのもまた事実なのである。

 なにせ彼女の『揺れない天秤』は、そういう実験もほとんど無意味にしてしまう類いのものだからね!

 

 

「だから、本来ならタンマウォッチで停止してるだけで十分な経験値が得られる予定だったんだけど……」

「どうにもうまく行かず、とりあえず他人に付与できるようにだけ整えた……って感じでしょ?予定が狂ったにしては丸く収まった方だと思うけど?」

「そう言ってくれるのはオルタだけだよ……」

(他の方が【星の欠片】特有のルールをよくわかってないだけなのでは……?)

 

 

 やめようアクア、暗に「それ傷の舐め合いみたいなものでは?」みたいな疑問を脳裏に思い浮かべるの。キーアん普通に傷付くから。

 

 ……うん、【星の欠片】的感性がどこまでも関わってくる話なので、そうじゃない相手には伝わりにくいのはもう仕方がない。

 仕方がないとしたうえで、いい加減話がずれまくっているので軌道修正。

 とりあえず、今のしのちゃんが一人相手にしか能力を使えないこと、及びその状況を改善するのは一朝一夕でできることではない……ということだけわかればよい。

 

 

「……んん?ってことはもしかしてですよー、タンマウォッチを貸した意味ってあんまり無かったり……?」

「いやいや、これ無かったらそもそも他者付与できるようになってないからスッゴい大助かりだよ!?」

(暗にもっと時間が掛かる予定だった、って言ってるようなもんよねこれ)

 

 

 ……ええい、話を止めるでないわ!

 などと思いながら、タンマウォッチの必要性を疑いだす琥珀さんに釘を刺す私である。

 わかりにくい説明だったのは確かだが、手に入れた経験値の総量まで誤解されてたら話が立ちいかんわい!

 ……いや待てよ、最初からその方面で説明してたらもっとわかりやすかった?いや、それだと問題点がずれるからそれはそれで問題か……。

 

 うーん、解説って難しい()

 

 

「ともかく、パワーレベリングじゃ本来の予定には届かないけど、パワーレベリングじゃないとそもそもここにたどり着いてないってわかればいいよ……」

「はぁ……」

そ・の・う・え・で!これからしなきゃいけないことに話を戻すけど、それでいい?」

「あっはい」

 

 

 ああまったく、説明だけで幾ら時間を浪費するつもりなんだか……え?お前の説明が悪いからだ?そこツッコむのもう止めない?

 

 ともかく、今のしのちゃんが一人相手にしか能力を使えない、という前提でモノを考えると。

 

 

「最後の最後、聖杯の顕現の際一緒に纏められるモブ達に対して使う、ってのが一番確実なんだよね」

「……あーなるほど、言われてみれば確かにそのタイミングだと一人だけになるのか」

 

 

 聖杯が顕現し、彼女達がリソースとして取り込まれるタイミングでしのちゃんに安定させて貰うのが一番確実、ということになるのだ。

 願いが叶うのは聖杯が成立したあと。

 言い換えると、その前の段階ではそもそも言うほど危険はないのだ。

 

 なので、敢えてそこに至るまでの道程は考えない(捨てる)という判断ができる。

 ……というか、じゃないとしのちゃんの気分が持たないと思う。

 

 

「……んん?」

「自身への悪影響を弾くのが『揺れない天秤』の効果だけど、なんでもかんでも弾いているわけじゃないとも言ったでしょ?」

「自身への利となるものは弾かない……だったか?」

「それともう一つ。外じゃなくて内から湧くものもまた防げないわけ。……例えば、緊張からくる自身のパフォーマンスの低下とかね」

「あー」

 

 

 気の張りつめっぱなしで疲れる、というのは他者からの影響に見えて、その実()()()()()()()()()()()()()()、みたいな?

 ……それゆえ、重要な局面で自身の手が震える……みたいはパターンは『揺れない天秤』では防ぎきれないと。

 

 そこら辺も、本来のように『揺れない天秤』を自然と使うのであれば流れで対処の仕方を覚えられるのだが……生憎それを素直に待ってると『星の死海』への来訪と同じようなことをしなきゃならなくなるので今は選べない、というか。

 

 

「とりあえず、今選べる最善手を選んだ結果、ってことがわかればいいです……」

「…………?」

 

 

 うん、最後までよくわからん、みたいな顔してたなこの人達……。

 思わず嘆く私は、小さくため息を吐いたのであった。

 

 

*1
『揺れない天秤』は天秤の支柱を自身と見立て、その両皿にモノを乗せ釣り合いを取ることで不変を実現する、というもの。これを単に『自身の延長として』他人を扱うとすると、他人の分の重しをそのまま自分の皿に乗せる、という扱いになる(自他同一の法則)。これを『他人を自身と同一でない』として能力を使うのであれば、他人という天秤を新しく一つ用意する必要がでてくる。その辺りが難しい為、今の彼女は皿の中に区分わけを施し、『ここに乗っているのは私の重し』『そこに乗っているのは他人の重し』とすることで擬似的に天秤をもう一つ用意した扱いにしている

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