なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……一番簡単なのは、運営に突撃して勝利条件を明確にして貰うこと、かな?」
「まぁ、現状だとそれが一番早いだろうね。今こうして話がややこしくなってしまっているのは、結局のところイベントの企画者がここまで大事になると想定していなかったから……というところが大きいのだから」
あれこれ話した結果、一番手っ取り早いのは運営に突撃すること、ということになったのだけれど。
……うん、確かにこれが早いだろうけど、実際にそれをするとよくないだろうなぁ、とも思う私である。なんでかって?
「……絶対萎縮するよね、このメンバーの誰が行っても」
「あー……」
イベントとしての規模が大きくない、という話からわかるように、このホワイトデーイベントを企画した人間は特段有名な人物でもなければ、ゆかりんのような上の存在というわけでもない。
いいとこ商店街でちょっと有名な店の人……くらいのものであって、その知名度も持っている権力も強くない普通の人、というような区分の相手なわけだ。
たまにいるなりきり郷内の一般人、というわけだが……そんな人の前に、私たちみたいなのが突撃して警戒されずに済むだろうか?
ただでさえ主人公系キャラが多いうえに、主人公じゃない人も王様だったり貴族様だったりするのである。
……うん、私の立場だったら『なにか不味いことしましたか!?』って白目を剥きそう。
その上ある意味では『不味いこと』になってるのも事実だから、掛かる心労が跳ね上がりそう(小並感)
つまり、運営に直談判するのが最善ではあるけど、その結果来年からはホワイトデーはありません……みたいな話になりかねないのであんまりやるべきじゃない、ということになるわけだ。
折角板における名無し相当の人がくれたイベントなのだから、できれば定番ものとして継続して行きたい気持ちがある、ともいう。
「そうなると……問題は起きてない、という体で進めるしかないってことか?」
「まぁ、端的に言うとね?『逆憑依』が起こした問題ならともかく、名無しに当たる人が問題を起こしたってなったら実態はどうあれ気に病むだろうし」
いやまぁ、元を辿ると外の人達の悪心のせい、ってことになるんだけども。
その辺りの機微が単なる一般人である運営の人に伝わるかなぁ……という疑念も無くはないので、伝えずに済むのならそっちの方がいいでしょ、というか。
……そんなわけなので、一番簡単かつ確実な『運営への直談判』は禁止。
それ以外の対策を考えていこう、という話になったのであった。
「……まぁ、そうなると話が振り出しに戻るんですけどね!いじめかな!?」
「ホワイトデーらしさを残しつつ、大勢の人間が注目するようなことをしないといけないわけだからなぁ……」
……で、そうなるとさっきまでの話に戻ってしまうと。
客となるモブ少女達が、大抵のイベント施策に興味無し……という状況で、あんまり変な方向性にならないように──端的に言うと宗教染みた空気にならないように──しながら人を集めなければいけない、というのが今回の話。
面倒なのが、他所の店より明確に人を集めないといけない、という点。
勝ち負けの規準が不明瞭な以上、とりあえずモブ少女達をうちに一纏めにできるようななにかをしなければいけない、というのは確かだろう。
だがしかし、そこで普通の施策をしたところで人は集まるまい。
正確には、ある程度は集まるだろうが
その理由──現状のモブ少女達の集まる条件、というのが
これの問題点は、特定の人だけが満たせるようなモノではなく、誰でも満たせるようなものであるという部分にある。
言うなれば、他の店でイベントをやっていようがこの店でイベントをやっていようが、それらの違いが集客率にまったく影響しないのだ。
いや、もしかしたらイベントの内容すら関係ない可能性も?
「流石にそこまで極端ではないと思うけど……人の集まりやすさなんて、その時々の状況やら客層やらによって幾らでも変わるもの。それを制御するための『客の好み』が相手に存在しない以上、まともなイベントじゃあ他との差なんて付けられるはずがないんだよね」
「だから王様とかアイドルとか、そういう熱狂的なファンを呼ぶものを利用したいってのが本音だと?」
「……その本音もさっきの話でノーを突き付けられるんだけどね」
純粋に集まっている人数だけが指標となっているのなら、他所の客すら奪うようなモノをやるしかない……ということになるのだが、それをやるとイベントを破綻させてしまうため宜しくない。
というか、仮にそれをしようとするとウッドロウさんに演説して貰うとか、はたまたBBちゃんに周囲の人達を無意識に誘導して貰うとか、あからさまにやり過ぎな手段に訴えるしかなくなるわけで。
……そっちの方面でもイベント崩壊の危機であり、そりゃまぁどうしたもんかと唸るしかなくなるというか。
「うーん、どこかに他所に迷惑をかけず、かつ明らかに一つの店を目的に集まっていると認識させられるようななにかはないものか……」
「そんな都合のいいものあるわけな……って、ん?」
せめて問題がそれぞれ独立してるならなんとかなるんだろうけど、今回に関しては全部纏めて解消しないと意味ないからなぁ……と、腕を組みながら唸る私である。
で、そんな私の言葉に苦笑しながらキリトちゃんが外を見て、なにかに気付いたように声をあげた。
一体なにを見つけたのだろう、と彼女の背後に回って視線の先を追ってみると。
(´v`)「今日は付き合ってくれてありがとうだし……」
「いや、私も中々楽しかった。また機会があれば頼む」
(´v`)「お安いご用だし……」
「ルドルフと……オグリ?」
「スケートか?」
「いや、あの二人に関しては寧ろオグリのが(ランスロ風味なので)強い」
「マジかよ……」
その視線の先にいたのは、たぬき形態で楽しげにじたばたしているルドルフと、そんな彼女を胸元に抱いて優しく撫でるオグリ、というなんとも言えない組み合わせの二人。
……この組み合わせなのでスケート()を思い浮かべてしまうハセヲ君にちょっと苦笑してしまうが、実のところここの二人に関しては寧ろルドルフがたじたじになる方向性だったりする。
それもこれも、ちょくちょく影響を周囲に残しまくるアルトリアの薫陶によるものなわけだが……ともあれ、あのオグリがそこらの女性を全部夢女に変えるようなとんでもキャラと化してることは事実。
……え?そもそも元となった馬の時点でそういう空気感がある?それはそう。
話を戻して、意外と上手くやってるのは確かなのだろうな、という気持ちで二人のやり取りを眺めていた私たちだったのだけれど。
「……ん?オグリとルドルフ……スケート……周囲の脳を焼く……」
「なんかぶつぶつ言い出したぞ」
「しっ、これはキーアちゃん推理モードって言って、ぶつぶつと呟くことで脳の回転を促し、与えられた情報から最適解を導き出す一種の集中状態なんだ。みんなからはその時のぶつぶつ言ってる姿が怖い、ってことで『キーアちゃんキモッ』と呼ばれ親しまれているよ」
「おう、その説明するってことは貴様警察に通報されたいってことだよな???」*1
いきなりなにを言い出すんじゃこのロリは。
いやまぁ体型だけで言うなら私もロリだけども。
……ともかく、私の灰色の脳細胞が高速回転を始めたのは事実。
これにより事件解決のための道筋は整い、あとはそれを遂行するだけの話となった!多分!
「適当すぎる……」
「うっさい。……とにかく、やるべきことが見えたわ、突破手段も」
「と、いうと?」
「単純な話よ。モブ少女達はあくまで人の集団によってくる賑やかし、それそのものが売り上げに貢献したりはしない。……いやまぁ、人が集まっている、っていう状況そのものが人を呼ぶ、ってこともあるから正確ではないんだけど……ともかく、
「……ふむ?」
その上で、集客率がイベントの勝利に繋がる可能性が高い……ということになると、彼女達は
「……んん?」
「わかりにくい?じゃあもっと雑に言うと、
「そう……だったか?」
「本来なら無理ね。モブ少女達は集まった普通の客に引き寄せられるものだから」
人がいるから寄ってくるという扱いの彼女達は、本人達に目的らしき目的がないがゆえに、必然他の客を意識する必要がある存在である。
そのため、他の客を集めるためにイベントを企画すると、結果として他所の売り上げを奪わなければならない……という問題がついて回る形となってしまっていた。
なんなら他に分散するモブ少女達を一ヶ所に集中させるため、かなり極端なイベントか必要になる……なんて試算になってしまっていたわけだ。
この問題は引き離すことができず、どちらかを優先するともう片方も同時に優先する形になってしまう。
ゆえに手詰まり、という形になっていたのだが……。
「──モブ少女達だけを誘導する手段を見つけた、って言ったら驚く?」
「はい?」
それを解決する策を思い付いたと私が告げれば、周囲の面々はなに言ってるのこいつ、みたいな顔を向けてきたのであった。
……中々に失礼だね、君たち。