なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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上手く行っても問題山積み

「───まぁ、これが上手く行ってもそれはそれで問題なんだけどね」

「ここまできて出鼻を挫くなよ!」

 

 

 さて、朗々と策を語った私だが、同時にこれがあんまり選びたくない類いのものであることも事実。

 

 なにせ無垢な──何色にも染まっていないモブ少女達を、ルドルフ色に染める必要があるわけだし。

 その結果なにが起こるのかを思えば、本当はやりたくないって気持ちになるのが普通と言うか。

 

 

「……最悪みんなルドルフになるのか」

「なんならその状態で固定化する羽目になるから、スーパーパワーを持ったルドルフが誕生してしまうね」

 

 

 スーパールドルフパトロール誕生、みたいな?もしくはバーサーカークラスのルドルフ誕生、みたいな(やっちゃえ的な意味で)。

 ……どっちにしろ致命的感凄いんだけど、どうすりゃいいんだろうねこれ?

 

 

「でも、それ以外に成功率が高い話もないんでしょう?」

「まぁ、うん。彼女達の集めにくさは前述の通り……ってやつだからね」

 

 

 しのちゃんの言葉に、不承不承といった風に頷く私。

 

 再三説明した通り、モブ少女達の気を引く、というのは並大抵のことではない。

 そして普通に考えて取れる手段において、それをなし得る行動というのは原則他店他者への多大な迷惑を誘発しうるものである。

 

 それを思えば、影響を彼女達に限定しつつ、うまく行けばその全てを一ヶ所に集められる今回の作戦は、選ばない理由がないほどの最良の手段……ということになる。

 実際、方々の問題に目を閉じさえすれば、あとは気にすることといえば成功率の問題くらいなのだ。

 

 

「成功率を気にする必要があるのか?」

「どっちかというと初動が上手く行くか、って部分がね。一度火が着けばあとは全自動ってレベルでなんとかなると思うけど。……あ、最後に一纏まりになる時もちょっと警戒が必要かな?」

「……あー、増えるシリーズの要素を使うから、もしかしたらそっから増え始めるかもってことか?」

「うむり」

 

 

 衝撃のうむり。

 ……冗談はともかく、最初の火付け役よりかは落ちるものの、最後の固定化段階にも注意が必要……というのは見落としていた部分か。

 

 彼女達が一つに纏まるようにするためには、一ヶ所に集めた上で遠方で聖杯が降臨する必要がある。

 ただ、逆を言うと一纏めになりうるタイミングというのは、この一回しかないのだ。

 

 

「外から無理やり固めるって手もあるけど、その場合暴発するのが地味に怖いから最終手段だね」

「自発的に一つの個体に融合して貰うのが一番、ってわけか」

「そうそう。……ただ増えるシリーズの要素が混じると、それだけで済まなくなる可能性が……ね」

「増える機能が付与されるかもしれない、ってわけか」

 

 

 一応、今回の汚染の伝播においては、増えることそのものよりも増えて()()()()という要素──微細な差異を抱えつつも同一個体である存在が増えている、という事実をこそ利用するものである。

 なので、理論の上ではおかしなことにはならないはず……なんだけども。

 もし前提部分である『細い繋がりを利用する』のが相手に経験として残ってしまった場合、その制限を突破してしまう可能性は大いにある。

 

 ──雑に言うと、一纏まりになったあと徐に増える可能性を否定できない、というわけだ。

 

 

「無論、その場合でも最終的に聖杯のところに行って一つになるってのは変わらない。……けどまぁ、そのパターンはできれば避けたいってさっきも言ってたのも事実なわけで……」

「ああそうか、結果的に他所から集まってくるのと変わらなくなるのか」

「そういうことー」

 

 

 聖杯の近くで再度一つになる、というパターンになってしまうと、当初の懸念のままの展開になってしまう。

 つまり、こちら側が『逆憑依』じゃなくなる、ないしそれらの被害が大多数に出た状態になる、というわけだ。

 

 一応、【星融体】のような、【星の欠片】が混ざった存在ならばある程度耐えることは可能だろう。

 ゆえにしのちゃんも耐えられるため、最終的に固定化自体は間に合うと思う。

 ……思うけど、よっぽど上手くやらないと他のみんなへの被害が甚大過ぎる結果に終わるため、そういう意味でも『増える』要素の顕在化は勘弁願いたいところ。

 

 

「まぁ、生憎と今の状況において、その反応を抑制する手段はなんもないんだけどね。寧ろ細い繋がりを利用すること前提だから、相手にも同じ事をされない保証なんてあるわけないというか」

「これで今までの案より遥かにマシ、ってんだから笑うしかねぇな……」

 

 

 いや、ホントにね。

 ハセヲ君の言葉に、小さく苦笑を返す私なのであった。

 

 

 

 

 

 

「とりあえず話を詰めるってんでアイツら出てったけど……俺達はどうする?」

「どうするって……そういえばホワイトデーイベントを気にする必要なくなったんだから、俺達がバイトをする意味もなくなったってことか?」

「おいおい君達、さっきの話のなにを聞いていたんだい?そんなこと許されるはずがないだろう?」

「あ?」

 

 

 はてさて、キーアが話を詰めると宣いながら店を出ていって数分。

 取り残された形となった残りの面々は、各々自身の現状について思いを馳せることとなる。

 

 まず始めに現状を語り始めたのはハセヲとキリトの二人。

 彼らが気が付いたのは、事態の収拾の目処が立ったことにより、もしかしたら自分達がこの店で働く必要性はなくなったのかもしれない……ということ。

 

 ホワイトデーのイベントを通じて問題を解決する予定で彼らはここにいたため、その問題が切り離された現状では必要性が薄れたのでは?……と判断するのはそうおかしな話でもない。

 

 が、そこに異を唱えたのがここの店主であるライネス。

 彼女は彼ら二人の認識が甘いことを指摘し、考え直すことを勧めたのだった。

 ……ただ、彼女のキャラクター性が普通の指摘をどこか煽るようなものに変化させたのも事実。

 その結果、癇に触ったハセヲが声低く唸ることとなり。

 

 

「済まないねハセヲ君、彼女に悪気はないんだ」

「……っと、ウッドロウさん」

 

 

 その不穏な空気を払拭したのが、店内で一番年長に見えるウッドロウであった。

 

 そも彼は王族としてのパーソナリティーを持つもの。

 ゆえにその発言には、他者を押し留める「格」のようなものがある。

 

 普段の──本来のハセヲならば、それでも噛み付きに行ったのかも知れないが……判断が間違っている、すなわち自身がミスをしている可能性を示唆されたのならば、流石に立ち止まりもするのであった。

 

 

「ありがとう。……それで、もう少し柔らかく説明してあげたらどうかな、ライネス」

「……はいはい私が悪かったよ、まったく……おほん。改めて説明させて貰うとだね?」

「ああ」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……はぁ?」

 

 

 で、改めてライネスから返ってきた言葉に、今度は普通に首を捻ってしまうハセヲ。

 確かに口調的には問題ないが、今度は意味がわからない。

 しかしそんなハセヲの様子は予測されていたようで、彼女は「落ち着きたまえ、ちゃんと説明するから」と一つ咳払いをし。

 

 

「簡単に纏めるとだね?彼女達が集まる先で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ」

「……なるほど?」

 

 

 その子細を解説し始める。

 曰く、モブ少女達はこの店に集まってくる予定だが、その実それだけでは問題解決には足りていないのだという。

 

 その理由は、彼女達が一つに纏まる条件。

 キーアはそれを『聖杯が顕現すること』と述べたが、それだけでは正確ではない。

 

 

「単純に言うとだね、彼女達が聖杯が顕現したことを()()()()()()()()んだよ」

「……なんかこう、感覚的にわかるとかじゃねぇのか?」

「感覚的ではあるさ。それを踏まえた上で、ここでホワイトデーをやってないといけないってだけで」

「……???」

 

 

 彼女の言うことを分かりやすく説明すると、こうなる。

 

 まず、彼女達が聖杯の顕現を察知する際、直接視認する必要はないのは間違いない。

 そうでなければそもそもの作戦の前提が崩れる──固定化は必ず聖杯の目の前でなければならない、ということになってしまうため、ここは疑いようがない。

 

 では、彼女達が聖杯の顕現を察知できないパターンとは、一体どのような状態か?

 答えは単純、イベントの()に出てしまっているパターンである。

 

 

「外?」

「出先で故郷のことを知ろうとする場合、ニュースなり連絡なり取る必要があるだろう?……彼女達の場合も同じさ。もし仮にホワイトデーの気配がまったくしないところに移動させられてしまったなら、彼女達はそこで起きていることを全く知り得なくなってしまう」

「……あーなるほど、繋がりがなくなるから辿れなくなるのか」

「そうそう、そういうことってわけさ」

 

 

 物事を調べる際、なんの取っ掛かりもなくそれを知ることは難しい。

 今回の場合はホワイトデーというイベントそのものがそれで、もし仮にそのイベントを欠片もやっていない場所に彼女達を連れていった場合、最悪聖杯が顕現したとしてもそのまま群体としてあり続ける可能性を否定できない。

 

 何故ならば、彼女達が一つになるきっかけである強い【兆し】を感知するための経路が経たれているからだ。

 ある程度そういったものに触れなければ自然と無害なものになる、と予測されていたことからわかるように、彼女達は積極的に【兆し】に触れに行っているわけではないのだから尚更だ。

 

 

「まぁ、自分から触れに行っているように見える、ってのも間違いじゃあないけどね。でもそれは最初から触れているから、って前提の上でのもの。生まれたタイミングで既に触れていたからそのまま動いている、というだけのシンプルな話なんだよ」

「なるほどな……じゃあ聞くが、最初から隔離してホワイトデーに触れさせないようにすればいいんじゃねぇのか、って話にはどう答えるんだ?」

「ふむ?それは今現在彼女達をかき集めてホワイトデーから隔離するのが早いんじゃないのか、ということかな?」

「そうだが……なにか?」

「大問題だよ、その方法は悪手だ。何故かって?理由は二つ。一つはあの人数を一所に纏めておくのは本来不可能に近いってこと。オグリとルドルフを利用することで実現の可能性は見えたけど、逆を言うとそれすらホワイトデーであることを前提にした手段だからね」

「む」

 

 

 話を聞いて疑問を呈したハセヲに、懇切丁寧にその返答を投げて行くライネス。

 

 一つ目の理由は単純明快、そもそも彼女達を一ヶ所に纏めること自体、今ホワイトデーをしているということを前提としたものであること。

 オグリとルドルフの関係を利用するにしても、先ほどキーアの話の中でもあったようにカリスマの出力問題がある。

 

 実のところ、カリスマを呪いじみた出力になるようにブーストするためには、返礼側がそれをするだけの理由の説明となる『ホワイトデー』というロケーションが必要不可欠なのだ。

 ゆえに、ホワイトデーと彼女達を完全に切り離すことが不可能なので無理、という話になると。

 

 

「そして二つ目、これはもっと単純な話さ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……あ?」

「今は時期的にホワイトデーが大きな比率を占めているけれど、我らがなりきり郷においてイベントなんてそれだけじゃないだろう?なんなら突発的にトラブルが舞い込む可能性もある。……言い換えるとだね、彼女達が自然と無害になるまでなにごとにも巻き込まれない、なんて保証が一つもないんだよ」

「なん……だと……」

 

 

 そして二つ目の解説をしたことにより、ハセヲは思わず困惑の声を上げたのだった。

 

 

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