なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なんやかんや結構な売り上げになってるのが恐ろしい……」
「そのうちの幾らくらいを、あの二人が使った分が占めてるんだろうね……」
「やめて考えないようにしてたのに!!」
レジの中身の点検として金額を数え終わり、ふうとため息を吐きながら溢した言葉に、ライネスが遠い目をしながら(口許は笑っている)問い掛けてきたため、思わず背筋を震わす私。
いや怖いよあの二人、本来なら住民だからそういうの払わなくていいのに、滅茶苦茶貢いでくるんだもん!
わたしゃホストかなんかか!?あんまり否定できないねあの二人相手だと!
……ってな感じに、思わず寒気を感じてしまうのであった。
なお現在は夕方六時頃、そろそろラットハウスが元ネタに倣ってバーになるタイミングだったり。
「ちょっと前まで店を閉めてた時間だけど……今となっては元ネタに肖って始めた夜のバーも、なんだかんだで人気なんだよねぇ」
「ウッドロウさんがマスターしてるのもあって、中々好評だもんねぇ。……チェルシーちゃんちゃん居たら入り浸ってそう」
「まぁ実際には彼女は居ないし、仮に居たとしても見た目的に追い返される可能性大なんだけどね」
私みたいに、と笑うライネスである。
……中身は(『逆憑依』だから)ともかく、見た目的にはどう考えても未成年でしかないからねぇ。
まぁ、未成年云々の話をするとウッドロウさんも思ったほど歳を取ってない、なんて話になるのだが。*1
「デスティニー2の方ならともかく、こっちにいるウッドロウさんは普通のデスティニーの方だから……」*2
「ああ、そういえば二十三くらいなんだったか。もう少し年嵩が行っているように見えるけど」
言い方は悪いがちょっと老けて見える、というか?
いやまぁ、本人には言わないけど……キアラさんとかと同じで、年齢に似合わぬ落ち着きっぷりがどうしても年齢を誤認させるというか。
……まぁ、夜のバーに関しては上条さんも働いてるので、正直年齢云々は今更な気もするのだけれど。
「ついでに言うなら、ホワイトデー中は男性側はみんな夜も出るみたいだし、ねぇ?」
「マシュ達がバーにまで突撃してこないかだけが怖い……」*3
で、ホワイトデー期間中は男性店員はみんな夜も出勤予定であるため、私やキリトちゃんを含めた面々もそのままスライドで閉店まで出ずっぱりである。
なお勤務時間的には割と適正の模様(私達は基本正午以降の出勤なため)。
……言い換えると午前のモーニングやランチの時間は女性店員たちで回してる、ってことになるわけだが。
「そういう意味で昼間のあれこれは休憩中にご苦労様、と言っておくべきなのかな?」
「出勤前でもないと話し合う時間ないからねぇ……」
その割に昼前も働いてたような?……という話に関してはこう返しておこう。普通に無給です()
いやまぁ、そもそもの話をすると、なりきり郷内の仕事って基本無給しかないんだけどね?
だって少なくともここから外に出ないのなら、お金を使う機会なんてないし。
何度も言うように、基本的になりきり郷内において『逆憑依』達は、無償で生きて行くことができるようになっている。
それが何故かと言われれば、彼らは原則として元居た場所から半強制的にここへ連れてこられた身であるため。
半ば国によって無理矢理連行されたような扱いになっているために、その対価として衣食住を保証することを国側が誓っているのである。
なので、なりきり郷で行う労働というのは、基本本人達が望んでやるもの。
例外もあるとはいえ、大抵の場合
そのため、勤務時間に問題を言う方がおかしい、という話になるというか。……嫌なら辞めればいいじゃん、が普通にまかり通るわけだ。*4
なお、仮にいやいや働いているとしても、文句が言えるかは微妙だったり。
だって雇用契約結んでないからね!*5
「お賃金発生してないんだから、余計に『嫌なら辞めなよ』になるというか。……銀ちゃんとかは『働いてないとダメになる』ってんで、桃香さん辺りに半ば無理やりシフトに入れられてるみたいだけど」
「尻に敷かれている、って言えばいいのかなそれは?」
……どうなんだろうね?
銀ちゃんにだらけ癖があるのは本当のことだし、とライネスの言葉に首を捻る私である。
それはともかく、午前中にあれこれ会話しつつ店を手伝っていたのは、基本的に人手が足りないから……というところが大きい。
そもそもラットハウスは個人経営(?)の喫茶店、大量のお客様を捌けるような
というか、そのレベルの客が押し寄せているのは、偏にホワイトデーイベントの……言い換えると私たちの存在あってのこと。
そりゃまぁ、それを横目に自分達の話し合いだけ進める……なんてのは気まずい話以外の何物でもないというか。
そんなわけで、半ばなし崩し的に店を手伝う私たち、なんて光景が生まれることになったのであった。
「まぁ、どこも似たような感じだろうがね。元々の私達のことを思えば、こういう場所でただ座ってる待っているだけ……なんて真似ができるはずがないのだから」
「その辺はなりきりゆえの弊害、ってやつだよね……」
キャラになりきって話す遊びをしていた人達が核になっているからこそ、そもそもそのキャラとして「らしく」あれること自体がある種の報酬になっているというか。
……まぁ、そこまで自覚的にやっている人なんて早々いなくて、大抵の場合は「なんか働くの楽しい!」くらいのテンションの人ばっかだろうが。
レジライとかが居たらみんなを見て目を輝かせてそう(小並感)*6
「おーい、なにやってんだよー」
「おおっと呼ばれてる。んじゃライネス、また明日―」
「はいはいまた明日。……私がダメなのに君はいいってのも、なかなか不思議な話だよね」
「その辺はまぁ、ある種仕方のない話というか……」
モブ少女なのか普通の客なのか、一目見ただけで判別できるのが私くらいしかいないというか?
……まぁともかく、ココアちゃんと一緒に店の二階へと上がっていくライネス……未成年にしか見えない組を見送り、改めて私は夜の部に向けて気合いを入れなおすのだった。
……とりあえずマシュとBBちゃんが突撃してこないことを祈る!
「なに、そういうのはフラグだが気にすることはない」
「止めてくださいよ怖いこと言うの!?」
「年齢的には俺より問題ないかもしれないしなぁ、あの人」
止めんかマシュの年齢は一種の神秘なんじゃ、というかFGO世界自体時間経過がややこしい事になっとるから難しいんじゃ……。*7
とまぁ、雑談もほどほどに夜の部である。
バーに切り替わったラットハウスの店内は昼間と違い、照明は抑えめになりムードを出すような音楽までついてくる仕様となっている。
……まぁこの音楽、実のところCDとかじゃなくて生演奏なんだけどね。
「今日ははるかさんの日か……」
「そんなに難しい曲は弾けないけど、って話だったっけ?」
「まぁ、普段弾いてる人が弾いてる人らしいから、謙遜しちゃうのもわからなくもないけど……一般的に考えてピアノ弾けるのは普通に凄いことだと思うよ?」
この人意外と多芸だよなぁ、と思い知らされるというか。
……ってなわけで、今日のBGMははるかさんによるクラシック音楽である。
なお、今日はホワイトデー仕様なので居ないが、普段は歌手の人が歌ってることもあるんだとか。
いい雰囲気のバーでピアノにあわせて歌を歌う……っていう行為に憧れる人が意外といるそうで、こっちもこっちで順番待ちになるほど盛況なのだそうな。
「単純にバンドをしている人達に使わせてあげることもある、と付け加えておこう。この前は星形のサングラスをしたピンク髪の子がきたこともあったね」
(ぼっちちゃんだ……)
(どう考えてもぼっちちゃんだ……)
「──桃香君、というのだがね」
「あれー!?」
そこまで揃えといてぼっちちゃんじゃないんかい?!
……おかしいな、脳裏に「仮にぼっちちゃんだったとしても、なりきり郷の仕様上他のメンバー揃わないんだから無理があると思いません?」ってサムズアップしてる桃香さんの顔が過ったような……?*8
あとよく考えたらぼっちちゃんも学生だから、バーやってる時間には来れないよねというか。
ぼっちざろっくはお預けか、ってな感じに肩を落とす私達。
だが次の瞬間、ピアノの音色が変わりその横に立つ影が!現れたのはそう、
(´´v`)「なにを隠そう私だし……」
「タイトル回収!?」
そんな雑な回収の仕方があるかよ……と唖然とする私の前で、突如現れたルドルフはオペラばりのいい声を店内に響かせたのだった……。