なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なにあれ、なんでキーアってばあんなに転がってるの?」
「その……FGOの最新話に色んな意味で打ちのめされたとかなんとか……」
「なるほど……?」
午前中はもっと上手い手段がないのかの探索。
午後……もとい深夜は、モブ少女達の分布……もとい集まり具合の調査。
そんな、忙しくもある意味充実しているともいえる日々を過ごすことはや数日。
日付は三月の十三日、いよいよホワイトデー当日を明日に控えた今日この日。
できればなにごともなく、明日の準備を終えたいところなのだが……。
「こんな日に限って面倒事の予感、というか」
「本当にねぇ」
思わずはぁ、とため息を吐く私とゆかりん。
現在私たちの目の前では、琥珀さんを筆頭とした科学者組が、えらいこっちゃとばかりに計測器の間を右往左往している最中。
なんでそんなことになったのかというと、突如として郷内に高濃度の魔力?反応が現れたため。
……わかりやすく言うとスーパー厄介ごとの気配、というわけである。
「言ってる場合ですかぁ!?この魔力……魔力?規模だと、おおよそ神霊級ですよぉ!?」
「あーうん、何処の神霊基準かにもよるけど……わかりやすい厄介ごとが現れた、ってのはなんとなくわかるわ」
「そうだね……で、相手がどういう存在なのかはもう判明してるの?」
「あーうん、生憎なーんにもって感じだねー。魔力?らしき障壁に阻まれて観測機器が欠片も役に立たないというか」
「そりゃまたなんとも……」
科学者組が言うにはこの通り。
魔力らしきエネルギーに観測行為を阻まれているため、結果としてそのバカ高い魔力的エネルギーしか観測できてないとのことであった。
なお、ここではっきりと『魔力』と断言しないのは、
「観測結果としては魔力としての性質を返してきてるんですけど……
「ふむ、どの辺りが?」
「
「ああなるほど、生き物から発せられたならある程度ムラが出るのが普通、ってわけか」*1
それは、観測された魔力の質。
高すぎるとか低すぎるとかでなく、観測した場所による差異が
それこそ今しがたクリスが口にしたように、まるで元となった魔力をとりあえずコピペして広げただけ……なんて風に見えるくらいには。
そのくせ、その総量自体は一目でわかるほどにあからさまに多い……と言うのだから、そりゃもう見えてる地雷以外の何物でもないというか?
そんなわけなので、どうにかして魔力?の壁の向こうを覗きたいのだけれど……そこで邪魔してくるのが、さっきのコピペ云々の話。
気持ち悪いほどに似た性質・厚みの魔力らしきなにか……ってだけでも大概なのに、その『魔力らしき』って部分がとことん嫌な予感を増幅させるというか。
なにがあれって、この『魔力らしき』の『らしき』の部分。
さっきちょっと話題に出した通り、この間の梅雨の時の話と
「……それってつまり」
「あの時『なりきりパワー』のふりをしていたのは?……そして今回、自分を魔力に見せかけているのは?……そうだね【星の欠片】だね」(白目)
「 」(つられて白目)
……思わずゆかりんと示しあわせたように白目を剥いてしまったが、あれは恐らくその『コピペみたいな』という性質からわかる通り、魔力に偽装した【星の欠片】である。
なればこそ、なりきり郷の科学を以てすれば魔力障壁を──貫通はともかく内部の透視くらいはできてもおかしくないのに、それができない……なんて事態の理由になるというか。
というか、そもそも【星の欠片】で作った壁とか覗けるわけがないのだ。
魔力ならそれを散らす効果を持つものとか、はたまたそれらを飛び越えて向こうを観測する機械でも作ればいいけど、相手が【星の欠片】だとそうもいかない。
なにせ、【星の欠片】が【星の欠片】として観測できていないのである。
これがなにを意味するのかというと、すなわち今あそこにある【星の欠片】は
雑にいうと、極小の存在から微小の存在になるために
「……確か、【星の欠片】達は到達不可能基数の概念が用いられている、んだったわよね?」
「そうそう、巨大数の中でもとびきり──単純に数を揃えただけでは到達しえない数。その数の分だけ
まぁ、より下の【星の欠片】ともなれば、そうして同じ操作を『到達不能基数回』繰り返している、という形になるのだが。……言ってて意味わからなくなってきたな?
要するにわかりやすく言うと、あの魔力的ななにかの壁はそうして確認できる厚みより遥かに
──まるで無限を前に先に進め、とでも言われているかのように。
「……わかりやすく言うと、あの壁を構成する粒子の一つ一つが無下限領域みたいなもの……ってことよね?」
「ついでに今ちょっと触れたように、座標指定系──言い換えると次元斬による座標斬撃とか跳躍斬撃とかも全部到達不可になってるレベルだよ?」
「 」
あ、またゆかりんが白目を剥いた。
……まぁうん、あれを構成する粒子一つ一つにオムニバースが内包されているようなもの、と言われればそれも仕方のない話なのだが。
要するに、あの壁を貫通して中のことを知りたいのなら、正攻法だとオムニバース規模の攻撃を
……実質的に中身を見るのは不可能、と言っているに等しいというか。
でもまぁ、手段がないわけでもない。
実のところ今の条件を満たさなくても、中を知ることはできる。
「そうなんですか?」
「一番簡単かつ迅速なやり方が残ってるからね」
「ほうほう、それは一体?」
「あの【星の欠片】のご主人様になること」
「それ新世界の神になれって言ってるのと同義じゃないですかやだー!!」
はっはっはっ、ノリツッコミどうもありがとう。
……まぁうん、こっち基準の正攻法だとあれってだけで、向こうの指定する正攻法ならあっさり突破できるんだけどね?その代わりこの世界滅ぶけど()
一般的な価値観における『負け』が【星の欠片】にとっては全て『勝ち』のようなもの……という価値観と考え方の相違から生まれるこの事態は、それゆえに解決の難しい問題である。
なにせ、おおよそこの世界において価値があるのは『勝利』。
その世界を根底から覆す異界常識である【星の欠片】は、実質
なので、取れる手段はもう一つの方──この世界の人間にはできない方法、ということになる。
「……あっ」
「そうそう、私って【星の欠片】の中だと
それこそ、更に別の異界常識でぶん殴る……というもの。
それも、単なる異界常識では上にすげ替えられるだけなので、相手の下に潜り込める相手でないといけない。
──つまり、私である。()
要するにいつぞやか言ってた『私の顔を見に他の【星の欠片】がやって来る』案件というわけだが……いや、なにも今このタイミングじゃなくてもええやんけ、というか。
とはいえ愚痴っても仕方ないのでさっさと見に行くかー、と思いながらふと部屋の中を見回した私。
「……え、ちょっ、なんでそこで私の方を見るのよ?」
「オイラは虚無!」
「──一緒に行こっか?」<ニコォ……
「なにその胡散臭すぎる笑顔!?」
今は午前中であるため、しのちゃんの訓練も兼ねていたわけで。
部屋の中にあるソファーの上には、最近いつもの光景と化している『ビィ君をざりざり撫でるしのちゃん』の姿があった。
変わらず彼女はシノンとカタリナさんの混じった見た目だけど……ふむ、このタイミングで現れた【星の欠片】……。
もしかして、私だけではなく
となんとなく思い付いた私は、彼女の同行を提言。
無論本人は必死で拒否していたが、想定される相手の性質を思えばその思い付きはほぼ確実。
ゆえに強権を発動し、ゆかりんに進言。
はれてしのちゃんは、私と一緒にあの魔力の壁の向こうへ行くことが決まったのであった。
「ふーん、大変そうだね君達」
「なに言ってるの、束さんも行くんだよ」
「ゑ?」
なお、我関せずとばかりにコーヒーを飲み始めた束さんに関しましては、計測員が一人欲しいので巻き込む流れとなりましたが問題はありません。