なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、嫌がる二人を連れて件の魔力壁の前までやってきた私なんだけども。
「……うーむ、どうも予想に間違いはないみたい」
「それってこれが【星の欠片】案件ってことじゃん!やだー!!束さんおうち帰るぅー!!」
「子供かっ」
実際に目前まで近付いてみれば、流石にその全容もわかろうというもの。
生憎科学班に【星の欠片】を検知するような機材はない(というか、前回語った通り下手に検知できてしまうほうが不味い)*1ので、基本的には私かキリア・もしくは『星女神』様のようなそもそも【星の欠片】である人物に頼むしかないのだけれど……。
「……うん、ここまでくれば流石に私にもわかるというか……なんというか不思議な感覚ね、これ」
……【星の欠片】なら誰でもいいのか、と言われればまた別の話。
特に今回の相手は偽装がかなり上手く、しのちゃんは当初相手の本質を見抜くのに時間が掛かっていたのだった。
いやまぁ、一応今の様子を見ればわかるように、コツを掴んだあとはなんとかなったみたいだけどね?
逆に言うと、コツが掴めてなかったらどうにもならなかった……と言っているにも等しいわけだが。
これがどういうことなのかと言うと、以前語った『小さいものの観測の難しさ』にその理由がある。
「……あれでしょ、ミクロの世界の観測には、その小ささと反比例するようなバカみたいに高いエネルギーが必要……ってやつ」
「高いエネルギー?」
「基本的にミクロの世界を観測するには、光子とか電子とかを照射してそれが相手にぶつかった後の動きを確認する必要があるんだけど……これが成立する原理っていうのが、文字通り
話すのは、いわゆる『プランク長さ』と呼ばれるもの。
プランク氏が作ったこの単位は、あらゆるものの基準になるようにと考えて作られたものなのだけれど……その短さというのが中々に特徴的なのだ。
具体的には十のマイナス三十五乗メートル、とかいう小ささ。
現状単位に使われる接頭字で一番小さい『
とはいえこれが宇宙の最小単位か、と言われると違うらしいが……それはそれとして、これより小さな世界を認知することは難しい、というのが今の定説である。
その理由が、先ほどの波──いわゆる顕微鏡の分解能の話。
「波にぶつける必要があるってことは要するに、小さなものを観測するには波の間隔を可能な限り狭くする必要がある……ってことになるわけだけど。プランク長さより波長を短くしようとすると、発射する光子や電子の持つエネルギーが高くなりすぎる、ってわけだね」
「それは何故?」
「波長の長さは振動の回数、言ってしまえば
「なる、ほど?」
波の谷間に観測物が収まってしまうと、結果として波が反射されずに素通しになってしまう。
ゆえに、細かいモノを観測するためには波の間隔を狭くする必要があるが、それは同時にその光子なり電子なりが持つエネルギーを高める作用に繋がるわけである。
結果、質量とエネルギーが等価であるという
「まぁ、現状の電子顕微鏡が
「……性能が全然足りてないわね」
「因みに【星の欠片】は一番大きいのでもプランク長さに満たないのが普通だよー」
「その時点で
なにか別の手段でも見つけない限り無理だよね!……とお手上げポーズをする束さんである。
ともあれ、【星の欠片】を科学的に観測するのが難しい、というのは間違いなく。
その流れで【星の欠片】同士が互いを観測するのもまた、ある程度コツがいるというのもまた理解ができるはず。
……うん、私とかキリアとかならともかく、そうじゃない【星の欠片】だと自分より小さい【星の欠片】を咄嗟に感知するのは難しすぎるというか?
「……ああそうか、
「まぁ、顕微鏡みたいなやり方をするんなら……って前提の話だけどね」
私達の場合にそういう話が問題にならないのは、今しがたしのちゃんが述べた通り。
なによりも小さい、みたいなことを真面目に語る私たちなので、顕微鏡的な短い波長のビームでもぶつけて確認する……なんてやり方は余裕のよっちゃんなわけだ。
まぁ、実際にそれをやろうと思う場合、先のブラックホール云々の対策を行った上で、って話になるんだけども。
「……寧ろそれを対処できるってことの方が、束さん的にビックリなんだけど?」
「そりゃまぁ、究極的には科学の行き着く先だけど、やれることは普通にファンタジー方面のが近いからねぇ」
「それでよく科学面できるね???」
ははは、君らが科学を極め尽くしたら同じことできるんやで、よく言うやろ『極まった科学は魔法と変わらない』とかって。
……冗談はともかく、顕微鏡的なやり方もできなくはないけど『それやるんならもっと効率のいい方法あるよ?』というのが私たち【星の欠片】。
で、そこで出てくるやり方というのが、大きくわけて二つ。
あらゆるものに含まれているという性質を活かしての判断と、無限概念であることを活かしての判断である。
「前者はともかく、後者は初めて聞いた気がするよ?」
「そう?でもまぁ、別に難しい話でもないよ。無限を計算式に突っ込めるならある程度無茶が効く、ってだけの話だから」
前者はまぁ、いつも私がやってるようなやつ。
なんにでも含まれている、という性質を使って相手の中にある『自身が親となる【星の欠片】』を励起し、そこから相手の性質を探る……みたいなやつである。
とはいえこのやり方、考え方をひっくり返して
具体的には例の柱の踏破度が、自身より一つ下の相手が限度になるため、例えば『体』の位階までしかたどり着けていない存在では、『魂』の位階までは探れても『精神』の位階についてはまったくわからない……みたいなことになってしまう。
しのちゃんの場合はそもそも柱への挑戦すらまだなので、このやり方だと『体』までが限度となってほぼほぼ探れない……みたいなことになってしまう。
そこでもっと汎用性の高いやり方として出てくるのが、後者の手段である『無限性を利用した』やり方、ということになるわけだ。
「これは『概念』って言ってることからわかるように、科学ってよりは感覚的・抽象的な考え方でね。あらゆる計算に無限を代入できるわけだから、結果的に
「はい?」
雑に言うと『この箱の中には【星の欠片】が無限個入っています』みたいなことができる、というか。
無限は本来計算式に使えないが、実体として無限の総数を持つ【星の欠片】はその辺りを雑に無視できる、とも。
結果、特定の範囲内に自分を無限個突っ込む、みたいな力業で
この時、ちょっとしたコツを覚えておくと、本来自分より小さいため認識できないはずの相手を認知することもできるようになる……と。
波の場合谷間が出来てしまうが、実際に形のあるものならそんなことはないので必ず触れられる……みたいな話にもなるのだろうか?
「まぁ、その辺りの話はややこしいからまた今度にするとして……とりあえず、中の人に挨拶する?」
なに言ってるのこいつ、みたいな束さんの視線が突き刺さってくるため、気を取り直して今回の目的である魔法壁の内部の話に軌道修正する私。
相手が【星の欠片】であることが確定したため、迂闊に踏み入ると酷い目にあうことも同時に確定したわけだが……それでも、こうして外で手をこまねいているのが無意味なのも事実。
幸いにして相手は私より大きいため、大人数で押し掛けるならともかくしのちゃんと束さん二人くらいなら余裕で保護もできるだろう。
ってなわけで、嫌がる束さんを取っ捕まえて壁の向こうにすり抜けた私は。
「……ん???」
そこに広がる光景に、暫し唖然とすることになったのであった……。