なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「誠に申し訳ございませんでした……」
「アアイイデスヨトイウカ、土下座トカサレルト寧ロコッチノ心象ガ悪クナルノデヤメテモラエレバ……」
「わぁすっごい苦々しい顔」
多いもんね、薄いアレで相手の女性を土下座させてるオークとかの絵面……。*1
ってなわけで、主とやらの指示によって私たちを案内するためにやって来たオークさんに、あれこれ騒いですいませんと謝っていた私たちは顔を上げたのだった。
このオークさん、近年よく見る『いいオーク』と言われる類いの人物のようで、どうやらこの空間の主とやらから私たちを迎えに来るようにと言われてやって来たとのこと。
……うん、この空間の主ってことは相手は【星の欠片】ってことになるんだけど……。
「……?????」
「エエト、ソノ困惑顔ハ一体……?」
「いや、なんか想定している相手と微妙に噛み合わないというか……」
「ハァ?」
うむ、どうにも首を傾げてしまう私である。
魔法のような隔離壁を使う相手、ということで対象となる【星の欠片】は限られるうえ、
わかりやすく言うと、この場合の該当者はほぼ一人に絞られるってことになるんだけど……その人物の
そこまでこちらの考えを伝えると、こちらと同じ様に困惑していたオークさんは得心したように頷き、自身が何故彼に使われているのかを話し始めたのだった。
「実ハ私ノ出身ハ、先ホドソコノ方ガ危惧シテイタヨウナオーク達ガ暮ラシテイル世界デシテ……」
「ほぎゃああああっ!!!?」
「束んうっさい」
「ほげっ!?」
「すみませんね何度もうるさくして……」
「ア、イイエ。嫌ガラレルノハ仕方アリマセンノデ……」
聖人かなんかかこの
……まぁともかく、今の会話でここの主が彼を徴用している理由に納得した私は、悪戯に怖がる束さんに一つ講釈でも垂れてやろうかと思い立ち、
「いや待って、勝手に納得しないで欲しいんだけど?」
「おおっと?」
その前に、話がよくわからないと首を傾げたしのちゃんに止められてしまうのだった。
……確かに、私一人だけ納得して話を進めるのも問題だろう。
なので、何故先ほどまでの疑問があっさり解消したのか?……という部分の説明を先にすることに。
「まず大前提として、このオークさんがとてもいい人だってのは間違いないわよね?」
「まぁ、俗に言う『いいオーク』だっていうのは、なんとなく」
始めに確認するのは、目の前のオークさんの善人度について。
近年語られるオークというのは、いわゆる蛮族方面のそれと目の前の善人方面のそれの、主に二パターンである。
一応、蛮族方面のオークの中には幾つかパターン分けがあって、成人向け作品においてよくある立ち位置のそれと、武人のように戦うことに心血を注ぐタイプなどが有名だ。
……え?武人タイプは成人向けの方にもいるって?*2
まぁ、武人タイプに関しては出番が目立つのが一般向け作品であるというだけで、基本的に何処に居てもおかしくない造形ってだけの話だとは思うのだが。*3
ともあれ、蛮族的思考を持つオークが多いというのは確かであり、それに伴って聖人枠のオークはそう多くない(※ギャグじゃないです)のもまた確かな話となっているわけだ。
「ゆえに、その数少ない聖人系オークがレア、ってのも間違いないってわけ」
「……その言い方だと、ここの主はレア物好きなの?」
「ああいや見方によっては間違いじゃないけど、ちょっと方向性が違うかな?」
「んん?」
彼みたいな存在が珍しいのは確かな話だけど、しのちゃんの言うような意味合いとはちょっと違うというか?
どういうことかと言えば、それはここの主の持つ性質にその答えがあった。
「私が想定しているここの主は、犠牲になったものを──その中でも特に
「……どういうこと?」
「
「……身も蓋もない言い方になったわね」
まぁ、それが【星の欠片】の能力に繋がっているわけではなく、【星の欠片】としてあることによって得た性質……みたいな感じになるのだけれど。
まぁともかく、ここの主が『集団から爪弾きにあったモノ』を好む性格であることは間違いあるまい。
ゆえに、このオークさんはその聖人っぷりが彼の人のお眼鏡に叶った、と。
……言い換えると、この
「え」
「そういう意味でもレア、ってことになるのかしら。……この分だと、先に進んで見えてくるだろう人里も結構凄いことになってそう」
「アア、ソレニ関シマシテハゴ想像ノ通リ、トオ返シ致シマス」
「ですよねー」
あれかな、自分のコレクションを自慢しに来たのかな?
そんな言葉が自然と脳裏に過ってしまう私である。
……いやまぁ、コレクション扱いしたらここの主も暮らしている人も皆憤慨しそうだから言わないけど。
でも端から見たら違いとかわかんないよね、というか。
「んー、穏当に言い直すなら家族自慢、ってことになるのかなぁ」
「穏当?」
「ああいや、こっちの話なのでお気になさらず。それと案内をと仰ってましたけど、もしかして?」
「エ、アアエエト……ソチラノゴ想像通リデスネ」
「ですよねー」
うん、【星の欠片】のテリトリーってことは、性質的にここにも『星の死海』みたいなルールが敷かれているのだろう。
具体的には正解の道を選ばないと目的地にたどり着けないとか、はたまた内部での時間経過が外のそれと切り離されるとか。
要するに焦っても仕方ないということなので、素直にオークさんの後ろをついていくことにする私なのでありましたとさ。
なお、しのちゃんは初めて出会った異世界人に興味津々で、束さんの方は目的地にたどり着くまでずっと気絶してた()ので、私が首根っこ捕まえて引き摺って行ったことをここに記しておきます。
あとで文句言われそう?知らんな、そんなことは私の管轄外だ(適当)
「皆様長旅オ疲レ様デシタ。ヨウヤク主様ノ居住区二到着致シマシタヨ」
「ホントに長旅だったね……」
まぁ、『星の死海』と同じならショートカット不可なので当たり前なのだが。
ともあれ、たどり着いた街は活気に溢れているものの、その予想通りの光景によって他の二人の呆気を引き出していたわけで。
そんな二人の様子に苦笑しつつ、街を行き交う人々に視線を向ける私。
視界に入ってきたのは、ポニーみたいな大きさのケンタウルスやあくせく働くゴブリン。
怠そうに背を曲げ歩くエルフに、シスターの格好をしたダークエルフが説教をしている姿。
それから、近くの川を泳ぐハーピィに空を飛ぶ人魚のような、色々とおかしな光景達であった。
「……なにこれ」
「珍しいもの博覧会……って言ったら怒られそうだから、眷属自慢会とか?」
「その言い方もその言い方で怒られそうだけど……でもうん、思わずビックリしちゃうのは変わらないわね」
行き交う人々は、基本的に単純な人族は少ない。
一応見掛けないこともないのだが、いわゆる亜人種に属する存在と比べればその少なさは圧倒的であった。
……まぁ、少数ゆえ排斥されるものが多数を為すこの街において、迂闊に人族を増やすとそこからさらに排斥されるモノが出てしまう……みたいな部分もなくはないのかもしれないが。
「……あー、よくあるよね。亜人達は言うほど少数を迫害しない、みたいな話」*4
「まったくないってわけじゃないみたいだけどね。でもまぁ、基本的にはファンタジーの住人達だからか、普通の人間より純粋……みたいな性質を持っていることが多いのは確かみたいだけど」
あれだ、現実の人間と比べ、同族への排斥感情を持ち辛い感じになってることが多い……みたいな?
逆を言えば人族が同種に対して牙剥きすぎ、みたいな話になりそうだが……その辺りは面倒臭いので割愛。
別に亜人種万歳したいわけでもないのでほどほどにして切り上げ、いつの間にか先に進んでいたオークさんの背を追っ掛ける私たちである。
「皆サン、ココガ主様ノ自宅デスヨ」
「まぁ立派なお家」
「居かにも領主の家、って感じだねー。……っては、まさか……?!」
「なに想像してるかわかるけど、普通に失礼だから止めようねー」
たどり着いたのは、立派なお屋敷。
如何にも偉い人が住んでそう、みたいな場所に案内されたわけなのだが……うーん、さっきから束さんの思考がピンクに染まっている。
脅かしたしのちゃんが悪いんだぞと視線を向ければ、彼女はバツが悪そうに視線を逸らしていたのだった。