なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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おっとりのレベルが違う!

「……入ってこない、わね?」

「今何分経ったし」

「生憎と時計は動いてないからわからないわね」

「そっかぁ……」

 

 

 ついさっき外から声が聞こえてきたはず、なのだけれど。

 声の主が部屋の中に入ってくる気配はなく、思わずしのちゃんと顔を見合わせてしまう私である。

 

 いや、めっちゃ近くまで声聞こえてたやん。

 普通にそのまま中に入ってくるやつだと思うやん。何分待たされるんこれ?

 ……とまぁ、思わず関西弁になってしまう私であった。

 なお、しのちゃんの言うように現在身に付けた時計は動いておらず、実際に何分待たされてるのかは不明である。

 

 

「……モシカシテ……」

「ん?」

 

 

 と、ここでオークさんがなにかに気付いたように顔をしかめてしまった。

 ある意味オークらしい表情になったとも言えるが、その理由が主の粗相にあるというのがなんとも……。

 

 ともあれ、なにかしら心当たりがあるというのは間違いなさそう。

 なので、一体領主さんはどうしたのかと問い掛けてみたのだけれど。

 

 

「……少数派(珍しい相手)を見付けたから迎えに行ったぁ!?」

「マァ、恐ラクデスガ……ココマデ来テ気配ガ消エタトナルト、ソノ可能性ガ大ナノデハナイカト……」

「幾らなんでもフリーダム過ぎる……」

 

 

 なんと、彼の言うところによればかの領主様は、唐突にお出掛け遊ばされた可能性大なのだという。

 

 ……この世界に存在する少数派の存在というのは、基本一つの世界に一人見付かればいい方、みたいなレベルの存在達。

 ゆえに、彼女は結構な頻度で他の世界に首を突っ込んでいるのだとか。

 

 

「正気かそいつ……いや、もしかして……?」

「ええと、勝手に納得せずに説明して欲しいんだけど」

「ああごめんごめん。ええと、【星の欠片】の本来の性質って覚えてる?」

「え?えーと……」

 

 

 噂の領主様の思いもよらぬ暴挙に、思わず顔を顰めてしまった私だが。

 別の可能性がすぐに脳裏を過り、華麗に掌を返したのだった。

 ……けど、一人で納得してるんじゃないよとしのちゃんに言われ、子細について解説するために口を開いて──、

 

 

「それが目覚めた世界は基本滅ぶ、だったよね?」

「おっと束さん、ようやく復帰したんだね」

「あーうん、心配いらなかったって気付いたからね」

「ソレハドウイウ……?」

「ピンク色の妄想が終わりを告げた、ということだと思いますよ」

「アア……」

「私が色ボケしてたみたいに言うの止めない!?」

 

 

 いや、してたじゃん実際色ボケ……。

 とはいえここでツッコミを入れてしまうとまた話が堂々巡りするため、我慢して彼女に続きを促す私である。

 

 そう、束さんが今しがた口にした通り、()()()()()()()()()()【星の欠片】というのは、原則その世界の崩壊・滅亡を確約するモノである。

 現実を【星の欠片】の一種として見る場合、【星の欠片】自体の性質ゆえに同一世界に顕現できないはず……というやつだ。

 そのため、【星の欠片】が【星屑(げんりょう)】ではなく【星の欠片】として起動している場合、それが起きてしまうほどに現在の世界が危うい状態になっている……と判断ができると。

 

 まぁ、実際のところ【星の欠片】が目覚めているからといって、すぐにすぐ世界が滅ぶわけでもないのだが。

 私たち(星の欠片)が真実世界を滅ぼすためには、次なる世界の主役となるべき相手が必要になるわけだし。

 

 

「とはいえ、目覚めた状態の【星の欠片】があちこちの世界に顔を出す、というのがあんまりよくないのも確かなんだよね。いるだけで世界を不安定にするものでもあるわけだし」

「……それ、今のこの世界は大丈夫なの?」

「『星女神』様が顕現してる時点でどうにでもなるから……」

「なんでもありだねぇ、その人」

 

 

 もしくは、滅びの要因まみれでそれぞれが打ち消しあって調和が保たれている……みたいなミラクルが起きている可能性もなくはないが。

 

 ともかく、【星の欠片】自体が滅びの先駆けとしての性質を持つ以上、迂闊に他の世界に侵入するのが宜しくない……というのは間違いない。

 そういう意味で、件の領主様が結構な暴挙をしていると感じてしまうのはごく普通の反応、ということになるだろう。

 

 

「……そっか、ここにいる住民達が一つの世界に一人きりレベルの希少性を持つのなら、それは翻ってその領主とやらが()()()()()()()()()()()()()()()、言い換えればそれだけ滅びの種をばら蒔いているってことになるもんね」

「そうそう。場合によっては『星女神』様直々に指導が入ってもおかしくないレベルだよ」

 

 

 ここまで聞いて、束さんが正解を導きだしてみせる。

 ……今しがた彼女が言ったように、件の領主様がとんでもないことをしているのはほぼ確実で、それゆえその対処のためだけに『星女神』様がここにやってくる……みたいな事態すらあり得るのだ。

 そこから連鎖的に起こるだろう事態を想像すると、思わず頭が痛くなってくることうけあいなのだが……。

 

 実のところ、『星女神』様がやって来る可能性はそこまで高くはない。

 何故かと言うと、その辺り『星女神』様に他者を責められる理屈がないためである。

 

 

「……んん?」

「今の『星女神』様は安定してるけど、本来の彼女って数多の世界を滅ぼすことこそを仕事にしてるような感じの人だから。……今みたいに穏やかな状態こそ珍しい、みたいな?」

「ああ……」

 

 

 なので、確かに件の領主様は無茶苦茶やってるけど、こうして今の今まで怒られずにいた理由も推測はできてしまう……というわけだ。

 なお、それとは別に彼女が怒られない理由、なんてものも一つあったりして、私としてはそっちの方が本命じゃないかなーと思っていたり。

 

 

「もう一つ?」

「そ。行けば滅びをばら蒔くのなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことにならない?」

「あー……」

 

 

 それが、ここにいる住人達自体がそもそもに『世界最後の一人』なのではないか、というもの。

 滅びた世界の生き証人、とでも言うべき存在達が集まっているのではないかという予想だ。

 

 そして、この予想に行き当たるに辺り、参考となったのが……。

 

 

「私、デスカ?」

「そうそう。確かに貴方はいいオークだと思うけど、同時に『よくあろうとしているオーク』だとも思うのよね」

「……ナルホド」

 

 

 なにを隠そう、こうしてこちらをもてなしてくれるいいオークさんの存在。

 彼は確かに『いいオーク』だが、同時にどことなく()()()()()()()()()()と感じられたのだ。

 具体的には、一般的?な創作のオーク達への理解と、それを自身に当てはめられても憤慨しないその性質。

 

 謂われのない中傷を受けてもまったく動じない、というのはとても難しい。

 それが自身に当てはまらないのであれば、激昂はせずとも懐疑は抱くものだ。

 具体的には『なに言ってるんだこいつ』みたいな気持ち、というか。

 

 そういうのが一切なく、そう言われるのも仕方ない……みたいな気持ちの欠片が見えたことから、彼ではなく彼の知り合いにそういう存在がいたのでは?……と予測ができる。

 

 

「それだけだとたまたま彼だけ他と違ってた、って感じになりそうなものだけど。ここの領主の性質が先代?と変わらないのであれば、彼女が手を取るのは明確に少数に区分される存在。──そこから、彼の元いた世界は滅んでるんじゃないか、って思考に至ったってわけ」

「……微妙に話が繋がらなくない?」

「ダークファンタジー的かつ成人向け空気感に浸された世界が彼の出身地だとしたら、って付け加えたらどう?」

「…………」

 

 

 例えに挙げやすいのは『ゴブリンスレイヤー』みたいな世界、となるだろうか。

 まぁ率直にエログロ系の世界と言ってもいいのだけど……ともかく、そういう作品の世界観というのは、基本的に滅びに瀕した世界というのが王道だろう。

 

 闇の軍勢が勢力を伸ばし、人の生息圏がほぼ失われてしまった世界。

 暴力によって支配されたそういう世界というのは、得てしてそのままポックリと滅びてしまいやすい。

 何故かといえば、基本的にそういう世界は()()()()()()()()()()、というのが大きいだろう。

 

 

観測者(どくしゃ)が最後まで観測をし(みとどけ)ない世界(さくひん)、っていうとわかりやすいかな。続編が出辛いって言ってもいいかも」

「続き物も普通にあると思うけどー?」

「それでもニッチでしょ?……見放されやすい世界、って感じだから滅びやすいのは変わらないんだよ」

 

 

 まぁ、普通の作品だからって見放されないわけでもなく。

 単純に、そういう世界は需要を満たせないとすぐに消える、くらいの話でしかないわけだが。

 

 ともかく、ダークファンタジー的な世界は希望が見えないと続きにくいのは確かな話。

 それが世界の滅びやすさにも直結するのだが、そういう世界だからこそ時折世界に対しての反旗の芽、とでも言うべきものが芽生えることがある。

 大抵の場合、その芽は芽吹かないまま終わるのだが……。

 

 

「件の領主様は、そういう芽を集めてるんだろうってこと」

「ということは、さっきの空を泳ぐ人魚とかは……」

「生物多様性的な話にも繋がりそうだけど。多分、人魚しかいない世界の最後の一人、とかじゃないのかな?」

 

 

 芽吹かずとも、その輝きが特別なものであることは変わるまい。

 ゆえに、彼女はその輝きをこそ集めている……ということになるのかもしれない、みたいな話になるのであった。

 

 

「……もしかして、また誰か増えるの?」

「増えるだろうね、それに加えてもう一つ」

 

 

 で、そこまで考えて思い付くことが一つ。

 私たちに合う前に、それを置いてでも迎えに行こうと思う相手。

 無論、彼女がマイペースなだけという可能性もあるけれど──。

 

 

「お~ま~た~せ~し~ま~し~たぁ~」

「!?」

 

 

 ──『逆憑依』だって、珍しい扱いになってもおかしくはない。

 なにせ私たちは、それぞれ別の世界から集められている可能性も高いのだから。

 

 そうして私が考える前で、件の領主様は誰かの手を引いて、部屋の中へと飛び込んできたのだった──。

 

 

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