なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

978 / 1297
同期問題に正しい認識を(?)

「はぁ、こっち側に飛んでくる影響を?……あ、そっか。【星の欠片】は影響を受け辛いんだっけ?なら……うん、短時間でいいならなんとかなるかも」

「よっしゃぁ!」

 

 

 一度寝てスッキリしたらしいしのちゃんに確認したところ、個人個人を守るのならともかく、範囲を指定してそこから影響が出ないように……くらいの固定なら、今の自分でもなんとかなりそうとのこと。

 単体より範囲指定の方が簡単、という彼女の言葉に束さんが不思議そうな顔をしていたが、この場合単体の際に指定している範囲が広すぎるせい、と言えばなんとなく理解したような顔をしていた。

 

 

「要するに個人情報とかまで含めて固定しようとすると大変、ってことでしょ?サーバーに入った情報をサーバーごと保守するんなら、単にサーバーを守ればいいだけだからそっちの方が楽……みたいな感じで」

「まぁ、そんな感じ。特定の一つだけ守ろうとすると逆に大変、みたいなやつだね」

 

 

 私たち(星の欠片)的にも、大まかな操作の方が簡単なのは確かというか。

 そもそも無限数で無茶苦茶やる技能なので、細かい部分を気にする方がアレというか?

 

 ……いやまぁ、最終的には気にするべきなんだけど、生憎しのちゃんはそこまで育成できてないというか。

 無論、成長しきった【星の欠片】にとっても大雑把な操作の方が気が楽、というのは間違いじゃないんだけども。

 

 

「まぁ、その辺りをツッコミ始めるとまた話が長くなるからここらでカットするとして……となると、作戦の変更を各所に伝えとかないといけないなぁ」

「……ああそっか、八雲んとか私たちをここに送り出して以降の話、全然把握できてないはずだもんね」

「そもそも私らここでどんくらい話してたんだろうね?」

 

 

 時間経過が外と違うせいでどうなってるのかまったくわからん、というか。

 

 ……ともかく、当初予定していた作戦が丸っきりとは言わず変更することが決まった以上、ゆかりん以下他の面々にも話を通しておかないと不味いだろう。

 なので、一度この空間から外に出る必要があるのだけれど……。

 

 

「あ~、それに関してはぁ~、ちょっと待ってほしいのですぅ~」

「はい?」

 

 

 そうして今後の予定を立てる私たちに、待ったを掛けたのがささらさん。

 どうやらなにか問題があるようで、外に出るのはよくないと彼女は告げるのであった。

 

 

「ふむ、具体的にはどういう理由があるので?」

「雑に言いますとぉ~、時間同期が起きますぅ~」

「……はい?時間同期?」

「はいぃ~。今この世界とぉ~外の世界でぇ~時間の流れが違うのはぁ~、それぞれがぁ~分断されてぇ~いるからなのですぅ~」

「……なるほど?」

 

 

 彼女が不味いと語ったのは、先ほど私たちも触れていた外との時間差の問題。

 現在この世界と外の世界とで時間の流れが違うのは、偏にそれらが分断されているがため。

 それゆえ、特に対策もなしに外に出ようとすると、そのタイミングで外の世界と内の世界の間で時間のずれを直そうとする働きが発生するのだという。

 

 

「……なにか問題があるの、それ?」

「大有りぃ~ですぅ~」

「あーなるほど。こっちの世界ってより向こうの世界に問題があるのか」

「はい?」

 

 

 そこまで聞いて、束さんは首を傾げていた。

 単純に外と中とで日付の同期が取られるとして、それになにか問題があるのか?……という疑問を浮かべた表情であった。

 

 確かに、通常時間のずれを同期する場合は()()()()()合わせるのが普通。

 片方が先に進みすぎているのなら針を戻すし、反対に片方が遅すぎるのなら針を進める必要がある。

 

 ……が、それはあくまでも()()の──単純な時計のずれを是正する際の話。

 ささらさんの──【星の欠片】の作った世界であるこの場所においては、当てはまらない理屈なのである。

 

 

「……はい?」

「時計が動いてない、って明確な異常があったでしょ?完全に時間の流れが止まってるわけじゃない、ってのは中の人や私たちが動けてる時点でわかるでしょうけど。それでも、時計の針が完全に止まっている、というのは中々におかしな状況ってわけ」

「な、なるほど?……まさかとは思うけど、時間が一定のタイミングにたどり着けないまま流れている、みたいなこと言わないよね?」

「おや、流石は束さん大正解」

えーっ!!?

 

 

 ゆえに、この世界にはこの世界の法則が敷かれている。

 ……恐らく、特定の時間から先に進まない、みたいな扱いとなっているのだろう。

 例えば三月の十三日の正午から先に進まなくなっている、みたいな感じで。

 無論、完全に内部が止まってしまっていると中の人が動けなくなるため、『三月十三日正午』の世界の中を私たちは動いている……みたいな扱いになっているというか。

 

 

「一秒を一年に引き伸ばす、みたいな感覚が近いのかな?三月十三日正午から三月十三日正午一秒に変移するまでの僅かな時間を、永遠に近いくらいに引き伸ばしたような世界になっている……みたいな」

「……それも【星の欠片】の応用ってこと?」

「式に雑に無限を突っ込めるのが利点だからね」

「うへー……」

 

 

 アキレスと亀の話じゃないが、時間感覚を無限に区分けできるのなら永遠に追い付けなくなる、というのは理屈の上では間違いでも、気分の面では正解……みたいな感じになるのが【星の欠片】なわけで。

 ともあれ、基本的な【星の欠片】の応用でできる程度のものである以上、ささらさんがそれを行えないなんてことはありえるまい。

 ゆえに、現状この世界は無限に引き伸ばされた時間の中にある、と。

 

 ──では、この状態の世界が迂闊に外の世界と触れてしまうとどうなるのだろう?

 

 

「……考えられる中で一番最悪のパターンは、外の世界も時間停滞に巻き込まれるパターンだけど」

「流石にぃ~そこまでではぁ~ないですぅ~。ちょっと時間がぁ~遡るだけでぇ~」

「なるほど遡……遡るぅっ?!

 

 

 強い影響力を持つ世界ならば、触れた相手も自分の法則に巻き込む……みたいなことが起きてもおかしくはない。

 とはいえ今回の場合、相手となる世界はそこまで強い影響力を持つわけではない。

 これが『星女神』様製だったりすると大問題だったろうが……今回の制作者であるささらさんは、そこまで深度の深い【星の欠片】というわけでもない。

 

 なので、影響としても軽微なもの。

 精々、外と内との同期の際に()()()()()()()()くらいのものである。

 ……うん、今しがた束さんが驚いたように、欠片も軽微じゃないよねこれ。

 

 さっき時計のずれを直す場合、正しい方に揃えるのが普通みたいな話をしたけれど。

 その話で行くのなら、本来合わせる側になるのはこっちの世界のはずなのだ。

 が、腐っても【星の欠片】が関わっている以上、この世界が持つ影響力というのは甚大なもの。

 特に、無限を使って時間を引き伸ばしている……なんていうのは、あからさまにおかしな状況であると同時に、その状態が持つ情報量もまた甚大なものなのである。

 

 ゆえに、通常なら異常の正常化という形でこちらの世界の引き伸ばしが解除されるはずのところ、無限に引っ張られて向こう側の時間が遡る……なんて意味不明な事態が発生するのだ。

 

 

「無論~実際に遡っているというよりはぁ~所定のタイミングに時刻合わせをしているぅ~という方が近いですがぁ~」

「寧ろそのせいで、既に過ごしたはずの日を再び迎える、みたいなことになっちゃったりするわけだね」

「oh……」

 

 

 それもこれも、ささらさんがホワイトデー当日を決戦の日と定め、それまでに準備を完了させようとしているからこその弊害なのだが……その辺りはツッコんでも仕方ないので今回はスルー。

 問題なのは、その時間停滞が解除される日にならないとこの同期はずっと続く、ということの方だろう。

 

 

「へ?」

「無限に引き伸ばしてるっていうけど、裏を返せばあくまで引き伸ばし、いつかは目的の日に到着するってことでしょ?……言い換えると、こっちの世界が三月十四日になるまで、同期する度に外の世界も遡る羽目になるってこと。例え向こうが四月になってようがお構いなく、ね」

「め、迷惑……!!」

 

 

 いやまぁ、代替わりを失敗するわけにはいかないのだろうから、ささらさんからしてみれば『他の人の迷惑なんかしらん』って感じだろうけど。

 寧ろこうして影響が出ることを前もって知らせてくれるだけ、こっちに誠実であろうとしているとさえ言えるというか?

 

 ……ともかく、この話の問題は一つ。

 情報を伝えに行く場合、やり方をミスるとこっちに連絡手段がなくなるってこと。

 

 

「あー、行って戻る。……それだけで二回同期のタイミングが発生すると?」

「こっちから外の時間経過を知る方法はないっていうか、迂闊に確認できるようにしておくとその度に同期が入ることになるね」

「うへぇ……」

 

 

 時間差を認識した途端にこっちに同期させられる、というのはつまり、やり方をミスると『タイミングを合わせて行動する』という手段が一切取れなくなる、ということでもある。

 こっちの世界では時計が役に立たないのであれだし、かといって向こうに合わせようとすると確認を取る度に向こうの世界が遡る、という事態に陥る。

 

 じゃあこっちの世界で必要なタイミングまで待てばいいのでは?

 ……って話になりそうだが、それはそれでもしタイミングをミスると『どう足掻いても詰み』な状態で同期が行われる──すなわち詰みセーブが発生する可能性もある。*1

 

 ゆえに、向こうに話を通すのならやり方を考える必要がある、ということになるのであった。

 

 

「まぁ、あれこれ言ったけど私が【虚無】経由でキリアに話を付ければそれで済むんだけどね」

「……今の問題提起全部放り投げたんだけどこの人?!」

「なにを仰る、私は向こうとの同期に掛かりきりになるから他のこと束さんがしないといけないんだぞ、この場合」

……ゑ?

 

 

 確かに、私が話をすれば同期問題は解決するが、その場合タイミング合わせ以外なにも手伝えなくなるのと同義である。

 必然的に、本来私の手も貸してたはずのことが、束さん一人での行動になるというわけで。

 

 

くぁwせdrftgyふじこlp

「ん、がーんばれ束さん♪」

こんな世界に誰がしたぁ!!

 

 

 唐突に全責任がその双肩に掛かってきた束さんは、発狂したように大声をあげるのであった……。

 

 

*1
オートセーブ機能などでたまに起きる悲しい事故。ゲームオーバーになった直前のタイミングでセーブが行われていた場合、直前から再開してもそのゲームオーバーになった要因を回避できずに再度ゲームオーバーになってしまう……みたいな状態。セーブの形式にもよる(オートセーブとは別枠でセーブデータがある場合などは回避可能)が、場合によっては最初からやり直しになることも

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。