なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「あばばばばば」
「モノの見事に壊れてますね、ささらさん」
「そりゃ(社長がいきなり現場視察に来たんだから)そうでしょ」
あれからさらに数分。
混乱する束さんを落ち着かせ、どうにかささらさんのお屋敷まで戻ってきたわけなのですけど。
どうやらそちらでは『星女神』様の挨拶がちょうど終わったようで、疲れたような顔で玄関前の階段に腰を下ろす
……いえ、冗談めかして壊れていると言いましたけど、これ大丈夫なんです?
傍目から見るとどうにも手遅れのような気がしてくるんですが。
「大丈夫かどうかは彼女の言動を
「なんでゲーメスト*1……まぁいいや、どれどれ?……もしもーし、ささらさーん?」
「ハゥア!?イエワタシハケッシテソンナフジュンナコトハメッソウモハイイイエソンナコトハチガクチゴタエシタツモリハナクテソノチガウチガウンデスヤメテヤメテイジメナイデ……」
「未だかつてないほどの高速詠唱!?」
「今までの間延びした会話はなんだったのか、という感じですね……」
心なしか顔まで真っ赤ですけど……一体なにを言及かつ追及したんでしょうね、『星女神』様……。
と、そこまで考えたところで肝心要の『星女神』様本人の姿がどこにもないことに気が付いた私です。というか屋敷の中にもいないような?
そんな私の疑問を感じ取った
「あの人ならしのちゃんと少年君を連れてこの世界の視察に行ったよ」
「なにやってるんですかあの人!?」
「ホント、なにやってるんだろうねぇ……(遠い目)」
いやマジでなにしてるんですあの人???
しのさんを連れていったのも大概ですが、件の少年君をわざわざ起こしてまで外に連れ出している、というのがツッコミ所しかないのですがそれは。
いや、そもそも起きないように眠らせていたの貴女じゃないですか?!
そんな私の疑問を感じ取ったのか、キーアが深々とため息を吐きながら説明してくれました。
なんでも、その少年君に気になることがあったため、事が始まるまで眠らせておくという当初の予定を変更することになったのだ、と。
「あくまで予想でしかないけど……【星融体】になる可能性が高いんだってさ?」
「…………はい???」
「見た目とか空気感とか、とあるキャラに似すぎてたみたいでねぇ……」
……はい?つまりはえーと?
代替わりという、【星の欠片】の中でも中々に骨の折れるイベントに、【星融体】となりうる可能性まで内包していると?
というか、似ているキャラ?あのボロボロの見た目で、なにに似ているだとか割り出すのは不可能に近……。
「……待ってください、銀髪?」
「お、気付いたかな?」
特徴的な銀の髪。
ささらさんからの期待──
そして美少年、かつ本来はそのようなタイプの存在ではない……。
これは、これはまさかですよ?
もしかしてなのですが……。
「……よくある
「ん!もう一人の私大正解!」
「ほぎゃあぁぁぁぁぁぁっ!!?」
それ危険物以外の何者でもないじゃないですかやだー!!?
サムズアップをこちらに見せつつも、どことなく死んだような眼差しをこちらに向けてくる
私の出した結論に彼女もまたたどり着いていた、という証左なわけですが……いや、マジで言ってます?
なにが問題って、なろう系主人公の精神性と【星の欠片】が一つも噛み合わない、という点ががががが。
……転生系にしろハーレム系にしろなろう系にしろ、彼ら主人公が求めるのは自身の欲の先。
対して私たち【星の欠片】が求めるのは、滅私奉公の先に花開くであろう誰かの晴れ姿。
見ればわかる通り、向いている方向が正反対なのです。
一応、【星の欠片】側は他者を優先するため、そういう相手とかち合えば自身ではなく相手に帯同しますが……その場合、流れとしては
……件の『新しい世界の主役を探す』云々の話が機能する形になるわけですが……これ、どう考えてもエスカレートしてやり過ぎるヤツですよね?
人の欲望に限りなどないのですから、どこまでも進んでいってしまうヤツですよね?
質の悪いことに、ここで対象となる相手はなろう系で、転生系で、ハーレム系であると予想される存在。
もしまかり間違えば、それらの要素が噛み合ってブレーキが壊れるどころか、アクセルしかない暴走機関車に変貌する可能性も……!?
「あーうん、あり得なくはないねー。どれか一つの要素だけなら、どこかで精神的なブレーキが掛かるかもしれない。けれど三つとも合わさっているのなら、それぞれがそれぞれのブレーキタイミングでアクセルを踏んでしまう……みたいな状況を引き起こす可能性は十分にある。実際、『星女神』様はその辺の危険性を感じたからこそ、件の少年君の人となりを確かめるために連れ出したわけだしね」
「……そういえば、今のあの子ってまだ
キーアの説明を聞いた束さんが、嗚呼とため息を溢しながら天を仰ぎます。
……彼女達の言う通り、あの少年はどこか他の世界から、恐らく
それはつまり、見方を変えれば
ええまぁ、彼がそれらの業を発揮するとは限りません。
ですが同時に、
知識は真に忘却できないというように、一度知った物事は例えその事実を忘れたとて、些細なきっかけで再び想起されうるもの。
なれば、ふとしたタイミングで自身の行動に影響を与える、という可能性は確かに存在するのです。
「つまり、世界最後の一人となった彼はそれゆえに滅びの理由を知り、それが世界を滅ぼすに至った理由を知っている。──例えその先にどうしようもない終わりが待ち受けていたとしても、
「それを受けてどう動くか、ってのはその人次第なんでしょうけど──
「寧ろそれは相応に人らしい歩みであるがゆえに……みたいな?……うん、念入りな事前調査をしたくなる、ってのもわからなくもないねぇ」
まさかそっち方面で危機が迫っていたとは……と、思わず掻いてもいない冷や汗を拭ってしまうような状況。
当初は何故いきなり現れた?……と『星女神』様を恨みがましく思ったりもしたものですが、こうしてみると今このタイミングでなければ手遅れだった、と言い換えられてしまいそうです。
なにせ、どう考えてもかの少年の人間性の確認まで、余裕を回すことができない状態でしたから。
「あのまま話を進めてたら、トラブルは色々あったけど彼に代替わりすることができた、という風に進んで──」
「そこで、迂闊に【星の欠片】を継がせちゃいけない相手だった、なんてことが判明する流れになってたかもってわけだ。……うん、そもそもその辺の判断をできる人ってのがここには居ないし、
二人の言う通り、このまま何事もなく進んでいれば、私たちが少年の人間性について思いを馳せることになるのは、恐らく全てが終わったあと。
引き継ぎを滞りなく済ませたあとに、そもそも彼が人間的に【星の欠片】を任せてもよい存在だったのか、と当たり前の疑問に気付くことになっていたでしょう。
無論、何事もなく引き継ぎが終わる可能性も否定はできません。
できませんが、現状与えられた情報から精査してみると、十中八九失敗する予感しかしないというのもまた事実。
ゆえに、その辺りの確認を確実に行える『星女神』様と、その来訪は喜ばしいことでこそあれ、決して嫌がったり責め立てたりするような類いのものではなかった、ということ。
「……後で謝罪しておこう」
「そうですね……」
もしかしたら、寝かし付けている間にその辺りの危険性に気付いたのかなぁ……なんてことを思いつつ、未だ散策を続ける『星女神』様へと思いを馳せる私たちなのでありました。
(──ハーレム主人公系の気質である時点で気にする必要があった、とは言わない方がよさそうな空気ですね──)