なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、戻ってきた『星女神』様から「問題なし、矯正済み」の評を頂くこととなった少年君。
改めてその姿を見直してみると……なるほど、この時点で創作の存在でないことを疑うような、そんな特異な容姿をしていることに気付きます。
髪の毛の色は、予め述べていたように銀色。
先ほどまでは閉じられており、今現在は緊張から軽く見開かれた瞳は、赤い色。
……類似したキャラクターを挙げるとすれば、『ベル・クラネル』とかになるのでしょうか?*1
まぁ、彼は他所から連れてこられたばかりであるため、他人の空似以外の何者でもないわけですが。*2
ともあれ、自然な環境で見掛けるような外見ではない、というのは確かでしょう。
アニメやゲームの中でしか見ないような特異な見た目。
なにより、二次創作などでよく使われる『銀髪』かつ『性差を見極め辛い外見』。
──危惧していた通り、彼の持つ属性に『なろう系』や『成り代わり系』、『ハーレム系』などがある可能性を否定しきれない、ということになるわけです。
「……ええとその、なにか睨まれるようなことしたかな、僕……」
「いえ、特には。そもそも私の目付きがキツいのはデフォルトなのでお気になさらず」
「そ、ソウデスカ……」
で、当の少年本人の反応はというと。
毒舌幼女系のキャラとしてメイキングされている私の視線を受け、彼はたじたじといった様子。
とはいえ脳内でどう考えているか、までは把握しきれないため……例えば『この子は毒舌系ツンデレかぁ……』みたいなことを考えている可能性も、十分にあるでしょう。
言い換えると、自身を主人公として周囲の女性達を攻略対象と見ている、みたいな?
……そこまで露骨なことを考えていなくても、好意的な反応を引き出したい、みたいなことを考えている可能性は否定しきれないでしょう。
本来それは相手と仲良くなりたい、というよい感情の発露ということになるのですが……状況がよろしくない。
現在この場所は他の世界とは時間の流れが違う──言い換えると隔絶された世界、ということになります。
それが、彼の代替わりのタイミングでは外の世界と同期することになる……。
それだけならば、まだ大した問題ではなかったのですが。
ここで気にするべきは、外の世界に転がっている願い──もとい【兆し】。
バレンタインにしろホワイトデーにしろ、『そんなものはクソだ』と感じる人は少なくない。
その理由も多岐に渡るけれど──今この場、もとい外の世界で強い影響力を持っているのは嫉妬……すなわち『自分もモテたい』『彼女が欲しい』などの感情。
それが彼という存在に触れると、最悪彼に
もっとわかりやすくいうと、『ハーレム系主人公になりたい』という願いが【継ぎ接ぎ】される可能性がある、というべきでしょうか?
確かに私は、『クラウン・クラウン』の能力で他者に強要するのは難しいと言いました。
高々恋愛程度の結び付きでは、相手を圧倒的上位者に据え置くことが不可能に近いと考えていたから、です。
──ですがもしそこに、恋愛底辺者としての属性が付くのであれば?
誰にも相手にされず・気にされず・蚊帳の外にされ続けた者達の怨念が、自身の前世として認識される(実際に前世である必要はない)とすれば、どうか?
……答えはありうる、寧ろその危険が高いとなります。
というか、『星女神』様が【星融体】になることを疑っている、というのが宜しくない。
今までの例を思い出せばわかるでしょうが、【星融体】は【星の欠片】が他の人と混ざった状態。
言い換えると【星の欠片】を道具として扱える状態に近いのです。
これが危険であるというのは、【星の欠片】が持つ性質を思えばすぐ理解できようというもの。
世界を終わらせる一歩手前みたいなものなのですから、その危険性は折り紙付きなのです。
……いえまぁ、この言い方だと既存の【星融体】まで危険である、と述べているようなものなので訂正しますけど……。
要するに、【星の欠片】を恣意的*3運用できるような状態である、ということ自体が問題なのです。
本来、【星の欠片】は自分のための行動を起こせない存在。
あくまで他者のため、他人のために自身を捧げ尽くすことこそ存在意義、みたいなもの。
それを、【星融体】はあっさりと曲げてしまえる。
何故なら彼らは【星の欠片】が付随したような存在、本来制約として設けられている『自身のためには使えない』という縛りを『私たちは【星の欠片】ではない』という屁理屈で乗り越えられてしまう。
ゆえに、彼らは本来の【星の欠片】とは別方向に危険なのです。
自身のために動けてしまうため、ストッパーもなしに世界を滅ぼしうる能力を振るい続けられてしまうのですから。
その点を踏まえた上で、もし仮に目の前の彼が【星融体】になり、かつ恋愛底辺者達の怨念が【継ぎ接ぎ】されたのであれば。
彼はその容姿などの類似性により、例え本当はそうでないのだとしても『ハーレム願望を持つ少年』になってしまう。
そしてその結果、本来機能しないはずの『クラウン・クラウン』の対上位者判定が機能し、周囲の女性達をまとめてメロメロにしてしまう……と。
一応、【星の欠片】の共通ルール──『自身より小さい相手には能力が伝播してもすぐに解除される』による回避は可能でしょうが、それ以外の相手はみんな下手な二次創作みたいなことになる可能性大です。
そりゃもう、警戒した視線を向けてしまうのは仕方のないことと言いますか。
……いえまぁ、『星女神』様から『問題なし』のお墨付きを貰ってはいるんですけどね、今の彼。
(……ただ、あくまで
「???」(じっ、と見つめられて困惑している顔)
それでも不安に感じてしまうのは、そのお墨付きがあくまで現時点までのモノであるせい。
下手に可能性を狭めると後々なにが起こるかわかったモノではない……ということで、基本『星女神』様は
ゆえに、彼には常に変貌の可能性が付き纏う。
特に、危険であるのが引き継ぎのそのタイミングである……というのが、この場での対応の難しさを物語ると言いますか。
はてさて、どうしたものか。
とりあえず、当たり障りのない程度に対応をしておく、というのが無難ではありますが……。
「……いえ、そういうの私の役目ではありませんね。貴方には変わらず厳しく対応しますので、精々頑張って鍛えてくださいね」
「え?な、なに???」
「よくわかんないけどごしゅーしょーさまー」
……初対面での印象は中々変え辛い、ともいいます。
であれば、ここから親しげに振る舞うのもまた違うでしょう。
変え辛いということは同時に、それを維持することが難しくないということと同義であるわけなのですし。
そんなわけで(?)、私は彼に対し変わらぬ態度で対応することを誓い、彼を困惑させることとなったのでした。
「……嫌いは好きの裏返し、ってことで自分に執着でもしてくれれば対処しやすくなって儲けもの、みたいな感じかな?」
我が分身ながら、なんというかクレバーな判断である。
……いや、本当に無茶苦茶やるね君?一応分身って扱いなんだから、もうちょっと自重するべきなんじゃ?
そんなことを思いながら、少年とあれこれ会話している
……え?お前はなにやってるんだって?
ははは、目の前にいるささらさんと『星女神』様見ればなんとなくわかるでしょう?臨時の【星の欠片】会議です(白目)
──ふむ──
「え、ええとぉ~そのぉ~」
間延びした声は変わらないが、その響きが明らかに憔悴しているささらさん。
……彼女の発言を信じるなら、彼女はギリギリ【星の欠片】である、みたいな存在。
そりゃまぁ、平社員が社長と対面しているようなものなので、圧倒されるのも仕方がないのだけれど……。
うん、なんというかこう、それだけじゃないっぽい気がするねこれは。
──それで、上手く行きそうかしら?──
「ど、どうでしょ~?今のところはぁ~問題ないと思いますがぁ~……」
──そう、それはよかった──
……圧迫面接かな?
決して直接問題に触れることはなく、されどなにかを知っているという事実だけは匂わせるその態度。
生きた心地がしない、とか言い出さないだけ中々強心臓だなぁ、なんて思ってしまう私だけれど……。
──そうね。とりあえず、ここは帰るとしましょう──
「えっ」
──なんとかなるでしょう?ここまでお膳立てしたのなら──
もし
……ええと、やることはもうやった、みたいな扱いってことなのかな、この場合って。
思わず困惑する私の耳に、響いてきたのはばさりと物が倒れるような音。
視線を音の発生源に向ければ、そこには笑みを張り付けた状態で膝から崩れ落ちているささらさんの姿があった。
……うん、これはあれだな。
「……なにを隠してるのかは知りませんけど、よかったですね悪いことって判断されなくて」
「……明日と言わず死にそうです……」
……うん、これはしばらく休まんとダメなやつだね。
仕方なく、彼女が復帰するまでその面倒をみてあげることにした私なのであった……。