なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……そろそろ、かな?」
「なんだか長いような短いような、微妙な気分になる時間だったね……」
はてさて、ホワイトデー前の準備の全てが完了し、いよいよそのタイミングを待つだけとなったわけだけれど。
感慨深くもあり、はたまた危険を感じる部分もあり……とにかく、短いながら濃厚な時間であったことは間違いあるまい。
無論、それだけの甲斐あって大抵の問題に対する準備はできた、と自負しているけれど……世の中、突拍子もないことが起きて予定が狂う、なんてことが
ゆえに、その辺りも含めて警戒を続けている、みたいな感じになっているのであった。
……まぁ、不安要素を二つも抱えているので仕方ないところはあるんだけど。
一つ目は、なにかを隠しているささらさんの存在。そして二つ目が、状況証拠が危ない少年君の問題。
これらは早期解消したくてもできなかった、今回の一件の根本問題。
……『星女神』様が問題ない、とお墨付きを下さったので大丈夫だとは思うんだけども、それも視野が広い彼女のことなので、もしかしたら「なんやかんや起こるけど今の状態なら丸く収まる」のでオッケー、みたいなことである可能性も否定できない。
というか、試練を与えるものとしての彼女の性質を思うと、まったく波風たたずにことが終わるとはどうしても思えないわけで。
「……結果、よーく注意するしかないっていう原初的な対策に立ち戻っちゃうのよねぇ」
「そもそもあの二人が話に絡んで来る、ってこと自体イレギュラーだから仕方ないんだけどねー」
実際、問題解決を願うのであれば、今さら彼女達二人を外すのはナンセンス。
下手に聖杯が成立してしまうタイミングを狙うよりも、そこを狙ってこっちに放り投げる方が幾分成功率は高く、仮に失敗しても最悪こっちの時間遡行に巻き込んでやり直す、みたいな形でテイクツーを狙う筋もある。
……その辺りのお膳立てされてる感じが、なんというか不安を煽るのも事実だけど……気にしすぎ、の線もあるのでなんとも。
「とにかく、頑張ってね束さん。基本的に全権委託する形になるから、貴方の戦術眼に全てが掛かっていると言っても過言じゃないんだから」
「……今からでも変えられない?そこ」
「束さんが今から【星融体】になる、ってんなら代われるかもよ?」
「実質無理って言ってるようなもんじゃんバカー!!」
ともかく。
今回の作戦の成否は、束さんの見極めに掛かっていることは事実。
それゆえ、彼女にはその部分の自覚を促すような言葉を投げ掛けたのだけれど……うん、自覚しすぎて逆に枷になってるかも?
そんなことを思いながら、決戦までの時間をゆるゆると過ごす私たちなのでありました……。
「やっぱりこうなったー!!?」
「うわぁ」
はてさて、いよいよホワイトデーランキング、発表の時。
結局場所を占領された形になった商店街の人達は、別の場所で表彰を行うことにしたようで。
……で、一位となったのはラットハウス……ではなく、別の洋菓子店。
男女問わず全体的な好評を得たようで、圧倒的……というほどではないものの、良い感じの表差でトップになったのだそうな。
なお、我らがラットハウスは大体十位くらいとのこと。……接戦だったようで、同率八位が複数存在した結果こうなったのだとか。
……この辺りは全部外にいるキリアからの連絡によって判明したものであり、全て伝聞となるわけだが……。
「……聞いてるだけだと、最初の作戦が上手く行ってるのかどうかわからないわね?」
「まぁうん、ルドルフによる汚染作戦とか、全部外の人達に任せきりになっちゃったからね……」
隣で空き地の保護に能力を行使しているしのちゃんが、こちらの言葉を聞いて眉根を寄せる。
……得られた情報だけだと、このまま作戦を決行していいものか判別が付かないためだろう。
ラットハウスが八位というのも、モブ少女達がしっかり集まったかどうか判別に困る順位、というか。
そもそもラットハウスにモブ少女を集めるための策自体、オグリとルドルフの関係性を彼女達に伝染させ、安全かつ確実に彼女達だけを誘き寄せる目的だったわけだし。
一応、外のキリアから伝え聞いた限りでは、BBちゃんやマシュを筆頭に作戦は決行され、十分な成果を得られたとのことだけれど……うん、実際に目で見て確かめたわけでもないので、微妙に判別し辛いというか。
……うん、見て確認できないのが痛いよね、やっぱり。
見ることは相手と繋がりを得ること、ゆえにそれは隔たった二つの世界を繋げることになる……という問題ゆえに、【虚無】以外の伝達手段を使えない以上仕方ない話なんだけどさ?
とはいえ、ここでぐちぐち言っていても仕方ない。
外にいるキリアが問題ないと言っている以上、こっちはそれを信用して動くしかないのである。
……ってわけで、タイミングを見計らって動いた結果が、冒頭の台詞である。
はっはっはっ、やっぱりトラブル発生のお知らせでやんの(白目)
とはいえそのトラブルは、当初予定して……予想して?いたものとは些か趣を異にしていたわけなのだが。
「こ、これはまさか……」
「いやでも、そうとしか言いようがない……考えてみれば、その兆候はあったんだ」
思えば、
例えば、『tri-qualia』内で出会ったビィ君──
例えば、かつて同じような状況で現れた存在達──嫉妬という感情が凝り固まり、巨大な生命体として現れたハクさんやビワ。
それらの事前情報が、微かながら現状を予測するための糸口になりうるものとなっていたわけだ。
……え?勿体ぶるのは止めて現状を端的に話せ?では遠慮なく。
──それは、男達の嫉妬心が集まったもの。
元々それを無害な形で処理するため、様々な策が講じられたことを思えば当たり前の話であるのだが……嫉妬心、というものに含まれている
嫉妬とは、自身より優れたもの・優位なものに抱く感情。
つまりそこには必ず
相手を羨む心──羨望。それはすなわち、自身もそうなりたいと願うもの。
言い換えるなら、そう──
「誰かに愛されたい、なんてのはまさに承認欲求そのものだよね。それが満たされないと知っているから、それを満たしている相手に嫉妬を──羨望を抱く」
「嫉妬する心には承認欲求もセットだってこと?」
「そういうこと。相手を羨む必要がないなら、そもそも嫉妬する必要なんてないからね」
自分にないものが、全て羨ましいなんてことにはならないだろう。
自分が得られないなにかを、相手が持っているなにかによって得られていると確信する時、人はその相手に嫉妬するわけなのだから。
……まぁ、自分には必要のないもの・意味のないもので評価されている相手にも嫉妬心は発生するため、そこまで単純な話でもないのかもしれないが。
ともかく、嫉妬心と承認欲求が裏表の存在、ということはほぼ間違いあるまい。
それを前提に、承認欲求という言葉を思い浮かべた時──なにか、引っ掛かるものはないだろうか?
心が──【兆し】が集まって巨大な生命体として顕現する、という話を先ほどしておいたことで、脳裏を過る存在がいないだろうか?
「……ありゃぼっちちゃんだけのものかと思ってたんだけど、なるほど。
「言ってる場合かー!?どうすんのこれー!?」
「どうするって……どつくとか?」
「はー!?」
そう、それは
その名を、承認欲求モンスター*1。この場合は、渇愛モンスターとでも呼ぶべきか?
ともかく、他者への嫉妬心の塊であるそれは、少年に触れることでもっと原始的な欲求に──
結果、元ネタ?に倣いゴジラめいた存在と化した少年は、まるで怪獣映画の如く周囲の街を襲撃し始めたのであった。
ははは、もう収拾付かねえなこれ?(白目)
「しっかりしろー!?一応まだ向こうの世界には行ってないんだからなんとかなるでしょー!?」
「つってもなー。聖杯相当のエネルギーを暴走させてるから、足止めも中々……どつくだけならなんとかなるかもだけど、最終的にどうなるかわから……いや待てよ?銀髪っぽい髪の色でゴジラもとい竜に変身する……?」
(……あ、なんか変な解決方法思い付いた顔してる)
こちらの肩を揺すり、対応策を出せと吼える束さんに、無理じゃねーかなーと答えかけた私は、しかしてそこで妙案を思い付いたのでありました。
「で、そのあとなんやかんやあって上手いこと【星融体】に仕立て上げた『クラウン・クラウン』ことジーク・クラネル君です。よろしくね」*2
「……なに言ってるの????」
その後、上手いこと要素を掛け合わせまくって出来上がったジーク・クラネル君と、その横で嬉しそうに彼の隣に侍るささらさんという二人をゆかりんに紹介したのだけれど。
……うん、これはあれだな、胃が死んで脳がフリーズしてるやつだな。私もそうだったからよくわかる(白目)