なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「なるほど、このタイミングを逃すと無理があった、っていうのはよーくわかったわ。……で、結局この子はどういう存在なのよ?」
「『クラウン・クラウン』の対──王に物言う道化の反対、ってことだから……」
「素直に考えるなら、道化に話し掛ける王様の側……みたいな?」
はてさて、ささらさんが頑なに今回のタイミングを逃さなかった理由がわかったところで、改めて少年──ジーク君の能力について。
本来彼が変貌するはずだったのが『クラウン・クラウン』。
道化の立場から、王へと諫言を──聞き逃せない、ある種命令のようですらある言葉を投げ掛けるものだったわけだけど。
先ほどから述べているように、ここに至るまで積み上げられてきたフラグは、彼がそれの対になるようにと仕組まれていたわけで。
となると、そうして現れた【星の欠片】は恐らく本来の性質の反対──弱者による逆襲ではなく、強者が当たり前に行う圧政に関わるもの、ということになるのではないだろうか?
……いやまぁ、圧政というのはちょっと言葉尻が強いので、強制とかに言い換えた方がいいような気もするんだけども。
「敢えて言うなら、王たるものが当たり前に備える威風……に関わる技能って感じ?」
「……なんか、その話だけ聞いてると【星の欠片】とは噛み合わなさそうな感じが凄いわね」
私の告げた言葉に、オルタがそう反応する。
……確かに、【星の欠片】というのは弱者の理論のこと。
その理論にほど近い性質を持つ『祝祭』の対……となると、どうにも今の彼はおかしな存在になっていそうな予感がする、という感想も不可思議ではあるまい。
なので、ここで言えることは一つ。
ここで言う『王』というのは、一般的に思い浮かべるそれとは異なるものである可能性が高いということだ。
「……と、いうと?」
「例えば、お飾りの役割だったとしても王は王でしょ?……虚構の王、とでも言えばいいのかな」
「なるほど。王より強い発言を持つ道化の対になるのは、民より弱い発言しかできない王様ってことか……」
そもそも、元となる『クラウン・クラウン』が主従を逆転したような──道化の言葉に踊らされる王を生み出すような存在だったのだ。
ならば、それと対になるように生み出された今回の【星の欠片】も、それに倣うような性質を持っている……と考えるのが当前だろう。
そこから導き出された答えというのが、お飾りの王。
自らの意思で話しているように見えて、その実どこまでも誰かの意思に踊らされるだけの存在……。
とはいえ、それだけだと【星の欠片】としては成立すまい。
「なので、少しだけ考え方を変えるってわけ。
「……ふむ?」
ゆえに、最終的に出てくる答えは次のようになる。
お飾りの王として選出されながら、されどそれが民のためになると知る王。
弱さを纏い、弱さによって人の結束を促す
即ち、『
奇しくも元となった
「……なんだか、最終的に綺麗に収まった感じね」
「同じ呼び方で真逆の存在、って感じだからねぇ。いいオチが付いたというか」
ジーク君の【星式名】が明らかになったところで、報告会は解散の運びとなった。
……いやまぁ、ここで解散するのはどうなんだ、みたいな部分もなくはないんだけど……ささらさんのそわそわが限界値を越えちゃったんで、どうにもならなくなったというか?
あれだ、【星の欠片】における対というのは生涯を共にするパートナーにもなりうる存在。*1
言い換えれば新婚ほやほやみたいなことになるため、こっちで暮らす基盤をとっとと整えたい……みたいな気分になるのも仕方ないというか。
ただでさえ、彼女自体は『逆憑依』でもなんでもないわけだし。
……これ以上詳しい話をしたいのなら、自分達の新居の準備ができてからでいいじゃん……みたいな感じとも言えるだろう。
「……え、まさかの婚活?」
「話を唐突に陳腐にするの止めない?」
いやまぁ、そういう風に見えなくもないけどもさ。
……実際、今回の話に関しては
そこら辺を含めると、上手いことこの結末にたどり着くことに成功した御褒美……みたいな感じで、彼女の好きにさせてあげるのがいいって話になってしまうというか。
「……んん?どういうこと?」
「彼女の目的には今回が一番タイミングがよかったわけだけど……だからって、自身の目的を優先して無用な混乱を起こす気もなかったってこと。……聖杯の材料となる【兆し】が世界中の嫉妬を元にしている以上、それを解消するような結末を用意しないと最後の最後で爆発するかも、って話でもあるかな」
私がぽつりと呟いた言葉に、ゆかりんが耳聡く反応してきたため、もう少し踏み込んだ話をすることに。
今でこそあの少年はジーク君という形を得ているけど……そうなるまでに変なことになる可能性があった、というのは今まで散々語った通り。
その可能性のうちの一つ──中でも一番確率として高かったのが、集められた『愛されたい』という願いの暴走。
その結果発生するだろう『誰も自分を愛してくれないのなら、こんな世界はいらない』という滅亡の要因。
その致命的な可能性を確実に解消するには、極論そうして生まれた相手を愛してくれる誰かが──それも、言葉だけではなく
「そこまで含めての『対』の概念だったってわけ。【星の欠片】のそれは前例を見ればわかるように、かなり強い繋がりだからね」
「ああ……あの二人……」
現状、【星の欠片】の『対』として前例になるのは『星女神』様と『月の君』様のペアだけ。
……なんだけど、あれが一般的になるくらいには、【星の欠片】における『対』の概念の結び付きはとても強いわけで。
まぁ、その実態は『物質は安定した状態を好む』みたいなあれなんだけど*2……ともあれ、下手に口で愛を語るよりわかりやすいのも確かな話だろう。
ゆえに、今現在のささらさんの様子はある種狙ったものであり、かつそれこそが最後に必要だった要素、ということでもあるわけで。
「……まぁ、ヘスティア様とアクアには気の毒なことに……みたいな部分もあるんだけどね」
「確かに……折角の相手を【星融体】として消費されちゃった、ってことでもあるんだもんね」
そのせい?で、別個の嫉妬を抱きそうな存在が生まれてしまったのは……うーん、コラテラル・ダメージ*3ってことで済ませていいんだろうか?
ご存じの通り、『逆憑依』関連の存在というのは原則同じ法則によって運用されている。
その特徴的な法則の一つとして有名なのが、既に『逆憑依』として現れているキャラクターは、原則別の『逆憑依』として現れることはない、というもの。
……うんまぁ、エリちゃんとか見てると本当に?……って気分になるけど、あれに関しては多分エリちゃんがおかしいだけだから……。
ともかく、既に現れたキャラクターが専有される、ということを思うと、【星融体】として現れたジーク君は二人分のキャラクターを専有している、ということになってしまうわけで。
いやまぁ、実際どうなのかはわからんのだけどね?
ただでさえ【星融体】はよくわからんというのが実情、本当に『逆憑依』と同じくキャラクターを専有するのかは不明、というか。
「でもその可能性がある、って時点で気になるって主張もわからなくはないんだよねー……」
「まぁねぇ……とりあえず、ささらさんの住むところが決まったら改めてあの二人にも話を通しておく、ってことでいいのかしら?」
「そうだね、その方向でお願い」
ともあれ、人の恋路に迂闊に首を突っ込むと、死ぬほど酷い目にあうというのは間違いあるまい。
そこら辺を踏まえ、あくまで遠巻きに気にしておくだけにしておこう……と確認しあう私達なのでありましたとさ。
「……ところで、【星融体】云々の話するならあの聖女様もそうなんじゃないの?」
「おいバカ止めろ、そこ触れすぎると妹が増えるぞ!ただでさえなんか増えそうな気配がしてるのに!」
「……あー、槍の聖女様ね。姉の方見てるとなんだか本当に同一人物?って気がしてくるんだけども」
「あれこそ正しい私の成長先ですね!」
「喧しいわよまったく……なんかいるんだけど!?」
なお、唐突に増えた邪んぬリリィに関しては知らん。マジで知らん。
どっから湧いた貴様!?