なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「それで?なにか他に聞きたいこととかはあるのかしら?」
「聞きたいこと、ですか?」
ニコニコしている(と思わしい)アルトリアと、なんとなく居心地の悪い私との、ヘッドセット越しのお見合いから、大体三分ほど。
にやにや笑いを引っ込めた侑子が、アルトリアに問い掛けた。……この場合の聞きたいこととは、例えば私の話……とかになるのだろうか?
と言っても、話せることなんて板でのあれこれ……とかくらいのもので、対して面白い話はないと思うのだけれど……。
そんな私の思いとは裏腹に、傍らからは「むー、むー」と唸るアルトリアの声。
……ビジューちゃんは、この子に一体なにを見せたのでしょう?
彼女、こっちに対してすっごい興味津々なんですけども。
「それでは……次元の魔女さんが話したいことを、幾つか……というのではいかがでしょう?」
「あら、お上手な聞き返し方ね」
それと、侑子でいいわよ……と笑みを返しながら、ふむと小さく頷く侑子。
アルトリアは、ある意味内容の選択を相手に
……いやまぁ、そこらへんを深く考えて、答えたわけではないのだろうけれども。腹芸が得意なタイプには見えないし、彼女。
ともあれ、好きに話せと来たか。
……侑子が変な話をしようとしたら、すぐに止められるように身構える私。
いや、ねぇ?……板の初期の方とか、結構バカなことやってたし、私。後期の方でも、わりと名無し達にノせられて、変なこととかやってたし、私。
……なんかこう、期待というか尊敬というか、そういうものを向けてきてくれている彼女をがっかりさせたくない*1……というかですね?
「取り繕っても仕方ないでしょう?……じゃあ、最初の設定だと実は男性だったっていう話から……」
「おいこらぁっ!?」
いきなりそこかよ!?
初手爆弾発言から始めおった侑子に詰め寄り、その襟を掴んで前後に揺らす私。
視界の外からは、笑いすぎて過呼吸になっているっぽいゆかりんの「ひーっ!」という声が聞こえたり、はたまた「えっ」というアルトリアの声が聞こえたり。……阿鼻叫喚じゃねぇか、ふざけんなよ貴様ぁっ!!?
「ふふふ、貴方って設定がごちゃごちゃしてるから、語れる場所がわりと多いのよねー」
「だからって、最初にその話題持ってくるヤツがあるかぁっ!!?」
「ふむ、確かキーア様のリアルは、男性だったとお聞きしましたが……それとはまた別、ということで?」
「そうそう。『天使な小生意気』*2って知ってるかしら?」
あははー、と笑う侑子に、外からジェレミアさんの疑問が飛んで来る。
……
まぁ、なんというか。
なんでもできるというキャラ付けゆえに、性別を偽るのも容易い……みたいな感じであるキーアは、設定的には
……最初はオカマキャラみたいな感じだったのが、スレが進むうちに空気が入れ替わったことで、それまでの傍若無人なキャラ付けから、わりとのほほんとした今のキャラ付けに変わった(設定的には戻した)のである。
まぁ、男だと思い込んでいた云々の部分は、ちょっと設定的に込み入っているので、説明がめんどくさいのだけれど。
ともあれ、
……そんな感じに、私が内心であれこれと言い訳やら葛藤やらしている間に、侑子とゆかりんから説明がされていたらしい。
例えに出された『天使な小生意気』自体があんまり通じない……という問題こそあれど、一応の納得を得たらしいアルトリアからは、こんな声が返ってきたのだった。
「な、なるほど。……道理でビジューも、殿方のような逞しさを備えていたわけですね……」
「ちょっと待って?」
聞き捨てならないことが聞こえたよね今?
……口調とか態度とか、わりと良家の子女らしいものだったような気がしてたけども。まさか、それらは上部を飾るまやかしだったとでも言うんです?
うぬぬぬ、彼女の記憶にアクセスできないことを、こんなにももどかしいと思うことになるとは……!
「まぁ、これについてはこのくらいにして。さて、次はなにを話そうかしら?『キーア・実は一児の母』とか、『キーア・昔は酒がダメだった』とか?」
「い、一児の母……っ!?」
「おいこらぁっ!?語弊ぃっ!?養子だって頭に付けろぉっ!!!」*3
「……私としては、現在呑兵衛なキーア様が、酒がダメだったということも大概驚きなのですが」
次いで飛び出した内容も、わりととんでもない話で。
……いや、養子だって最初に言ってくれないと、唐突に経産婦属性まで付加されかねないんで止めてくんない?
ただでさえ、この姿になってから恋愛対象がどうなってるのか、よくわかんないんだぞ私?
あとジェレミアさん、昔の話です昔の話、ホント初期の方の話なので引っ張んないで……。
「……地獄かなにかか」
「あらあら、疲労困憊って感じねぇ」
からかうような侑子の言葉に、「誰のせいだ誰のっ」と返しながら、小さくため息を吐く。
……結局、あれこれと恥ずかしい過去やら隠したい過去やら、わりと丸裸にされる勢いで話が続いた感があるわけなのだが。
そこまですると、アルトリアも最初のどこか遠慮したような様子が、幾分か解れたように笑みを浮かべているのだった。……内容が私の笑い話、ということにはなんとも言えない気持ちがあるけれど。
「仲良くなるには自身の恥部を晒すべき、とも言うでしょう?」
「お?いいんだな?ここまでされたんだから、こっちもそっちの恥ずかしい過去晒すがいいんだなおぉん!?」
「落ち着きなさいよ、キャラおかしくなってるわよ?」
呑気に笑う侑子に詰め寄って、下から彼女を
なんや貴様、貴様だって人の恥ずかしい過去で、大笑いしとったやんけ!ええんやぞ、こっちもそっちの恥ずかしい話をばらまいても!
「ふふん。私には知られて困るようなモノはありませんので」
「言ったな貴様っ!ジェレミアさーん、実はゆかりんねー、ロマンスグレーなおじさまを眺めるのが趣味げふっ!?」
「ふふふふキーアちゃん?言っていいこととやっていいことの境界は見定めましょうね?」
「さ、さっきと言ってること違うぞ貴様……っ」
ジェレミアさんを呼んで、これ見よがしにゆかりんの趣味をバラそうとしたら、鳩尾に衝撃。……こ、この女っ、本気で貫き手を……っ!?
なにを知られても大丈夫とか、やっぱり嘘なんじゃん……と鳩尾を擦りつつ、不貞腐れる私。
反対側では侑子がニコニコしているけれど……うーん、こっちは言うほど弱みとかないんだよなぁ。生活力皆無のダメダメ成人女性、というのは見てりゃわかる話だし。
「……ナチュラルに周囲に秘密をばら蒔こうとするのやめないかしら?」
「うるせー、今の私は公安隠密局なんじゃい、怪文でなんもかんもばら蒔いてやるんじゃい!」*4
「そんなはた迷惑な……」
冷静に嗜めてくる侑子だが、そもそも私がこうなったのは、お主達が私の恥ずかしい話で盛り上がってたから、というのを忘れるでないわ!
そう、今の私は復讐者!あまねく全てに復讐し尽くすまで、止まることのない恩讐の権化!
「俺を!呼んだな!」*5
「あなたが
「そうか……」
「……え、なに今の?!あんまりにも自然な流れで出てきて、そのまま帰ってったけど!?」
そうして尽きぬ怒りを体から立ち上らせていたら、どこからともなく現れる黒い影。
……ああ、アヴェンジャーさんですね。
運営の一人でメンタルヘルスも請け負っていらっしゃる、PCの一人です。大方、私が「気が高まる……溢れるぅ……!」*7してたから、心配してやって来たのでしょう。
まぁ、言葉で言うほど怒ってるわけでもなかったので、そのままお帰り頂いたわけなのですが。
その事を説明したら、ゆかりんは「ええ……」と困惑していた。やだなぁゆかりん、『tri-qualia』は常識に囚われちゃいけないんだぞぅ?*8
「ええ……いや、確かにわりと無茶苦茶だけど、ここ」
「ついこの間は、まさかのラフム襲来→ビーストⅡ降臨とかやってたわよ、イベントで」*9
「はっ?」
「ランキングイベントだったねぇ。上位者には限定アバターとか配られてたっけ」
困惑するゆかりんは置いといて、イベントの内容で盛り上がる私達。
この間のそれは、『FGO』の第一部七章を再現したものだったが、ゲートタウンに押し寄せるラフムの大群と、それに追従する黒泥の波は、正直絶望感が凄かったものだ。
無駄に再現度の高い『tri-qualia』であるため、ラフムは至近距離で眺めると正気度削れそうな見た目が、忠実に再現されていたし。
黒泥の方も、触れるくらいならまだしも、迂闊に沈んだ日には
……普通のプレイヤーなら、そこまで問題でもないのだろうけど。
勝手にフルダイブになっている私達なりきり組が、迂闊に黒泥に沈んだらどうなるのか?……という、試すのはちょっと躊躇われる問題により、わりと作中の主人公並に真剣に戦闘していたために、各所で目立ってしまったりもしていたらしい。
特にキリトちゃんとハセヲ君は、ひぃひぃ言いながら獅子奮迅の活躍を見せたのだとか。
まぁ、そのせいでハセヲ君が、終盤でマーリン役を押し付けられたりしていたのだけれど。……滅茶苦茶引き攣った笑顔で、マーリンの姿をさせられた彼が、泥に花を咲かせていたのは記憶に新しい。
ついでに言うと、そのままランキングトップに躍り出たハセヲ君は、商品として『マーリンの服』を渡されていたりする。……レア物ゆえに捨てられないけど、持っていたいかと言われると微妙……みたいな、複雑な心境のハセヲ君の様子は、なんとも言えない苦笑いを誘ったものである。
……キリトちゃん?ははは。あの戦場で黒髪キャラなんて、一人しか居ないでしょう?
「なんで、こうなるんだよ!
「キリト君、とっても似合ってる……」
「スクショ撮るのはやめろぉっ!!」
うん、
……無論、報酬もその
……まぁ、なんかちょっと新しい扉を開いたような顔をしていたキリトちゃんなので、結局捨てたりはしなかったんじゃないかなーとは思うけれども。
なお、マシュは『tri-qualia』をやっていないので、ゲーム内の彼女はNPCだった。……そこだけは、ちょっと残念なところだろうか?
なお、この辺りの話をゆかりんとアルトリアにも伝わるように話していたために、結構時間が経っていたことをここに記して置こうと思う。