なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「おやおや、なにやら騒がしいと思って見に来てみれば……ご同輩がこんなにも。もしかして今日はパーティでしょうかね?」
「ぎゃー!?子○が増えたー!?」
「止めなさいよそういう胡乱なこと言うの!?それ他のもくるやつよ!?」
あ「そこらにいるよいこのみんなー!エイプリルフールが一日なわきゃねーだろーがぁー!!」*1
「ぎゃー!?ホントに出たー!?」<シカモボーボボダ!?
これじゃあ 収拾が つかないよ!!
……ってなわけで、今回の話とは関係ない(多分)シュウさんとボーボボにはお帰り頂き、改めて新人のはずの二人と向き合う私たち。
片方、アンデルセン。fateシリーズに登場するキャスタークラスのサーヴァントの一騎であり、少年のような見た目に似合わぬ渋い声を持つ存在。*2
片方、ジェイド大佐。テイルズシリーズに登場する人物であり、胡散臭さが服を着て歩いているような存在。*3
……うん、片方だけでも大概なのに、なんで纏めてやって来たのこの二人?
「知らん。俺は単にここで待っていただけだ、特別なことなどなに一つしていないと強く主張しておくとしよう」
「それに関しては、私も右に同じですね。彼と一緒に皆様のご到着を首を長ーくして待っていた、というだけの話ですから」
「ふむ、特段変なことはしていない、と……」
返ってきた二人の言葉に、思わず唸る私。
いやまぁ、『逆憑依』関連だというのは明白な以上、理由らしい理由なんてほとんど限られてるんですけどね?
大抵の場合は現在ないし以前になりきりをしていたことがある、というのが主な理由だが……
ただまぁ、仮に後者だとすると、それはそれで疑問も湧くわけだが。
「……ふむ?前者については聞いたことがありますが、後者に関しては初耳ですね」
「……ゑ?」
「ほう、命の危機か。……なるほど、こっちが知らなかった理由については察せられんこともないな」
……あれ、私もしかしてやらかしましたか?
思わずゆかりんの方に視線を向ければ、彼女は笑みを浮かべているけど……うん、固まってるねこれ。
どうやら『逆憑依』の条件の一つ、『臨死体験』については向こうのお偉いさんには伝えられていなかった様子。
そしてその理由は、今しがた得心したように頷いたアンデルセン氏の反応が正しいのであれば──、
「……人為的に『逆憑依』を起こそうとし始めてもおかしくない、と?」
「はっはっはっ。流石にそこまでバカ共の集まりだと思いたくはないが……絶対に無いと断言できるほど信用があるわけでもないな」
「ははは、そこで私に振られても困るんですけどねー」
「うわぁ」
うん、そういうことだよねー(白目)
唯一救いがあるとすれば、二人の様子から察するに彼ら自身が今しがた得た事実を向こうに伝えるつもりはなさそう、ということだろうか?
(ただなー、その辺も踏まえて送ってきたんだとするなら、彼らが話さなくても情報を得る手段……みたいなのがあってもおかしくないのがなー)
例えば隠しカメラとか隠しマイクとか?
……まぁ、そういうのは調べられればすぐにバレるものでもあるので、実態はもう少しややこしいもののような気もするが。
ともかく、改めてさっきの話はここだけの秘密、みたいに言い含め改めて席に着く私たち。
向かい合って座った私たちは、そのまま本来の目的を果たすために会話を開始したのであった。直前までの話を全部投げた、とも言う()
「改めて自己紹介を。私はこのなりきり郷の取り纏め役に相当する、八雲紫ですわ。今後お見知りおきを」
「私は紫様付きの秘書筆頭、如月喜亜です」
「同じく、現在は秘書の綿貫遥香です」
「ええ、噂はかねがね。……ええと、この場合はどちらの名前を名乗ればよいのでしょうかね?」
「『逆憑依』になった場合は、現在のキャラクターネームを名乗るのが基本ですね」
「なるほど……では改めまして、【異界憑依事件対策係】より派遣されて来ました、しがない職員その一……ジェイド・カーティスと申します」
「俺の自己紹介が改めて必要か?そんなもの不要だろう……と言いたいところだが、現状把握のためにも敢えて述べるというのも必要だろう。……そういうわけで、見た通りハンス・クリスチャン・アンデルセンだ」
最初に行ったのは自己紹介……なんだけど。
うん、本来なら普通の名前が返ってくるはずなのに、今現在返ってきたのは一般人らしからぬ名前達。
……『逆憑依』になってるんだから当たり前なんだけど、なんというかのっけからペースが崩された感がして、渋い顔にならざるを得ないというか。
その辺は向こうも感じているようで、自分で名乗っておきつつ微妙な違和感を覚えているようだった。
「……まぁ、そうですね。どっちの名前を、と言ったように今の私たち、普通に以前の記憶も残っていますので。……その辺、他の方達も同じなんですかね?」
「その辺は個人差があるのでなんとも。基本的に残っている方が大多数ですが、一部それを自分の記憶だと思えない……みたいな方もいらっしゃいますので」
「なるほど、俺達はどちらかといえばそっちに区分される、というわけか」
……話を聞く限り、互助会の方の『逆憑依』達と同じく、以前の自分が今の自分とうまく結び付かないような状態……ということだろうか?
言い換えるなら憑依転生したような気分、というか。
知識や記憶として憑依された側の人間のものが残っているが、それが自分のものだと認識できずに異物のようになっている……みたいな。
まぁ、『逆憑依』したてで認識がおかしくなっているだけで、時間が経てば馴染む可能性もあるが。
「……その辺りは経過観察、ということですね。その辺の話をレポートにして送ったら上司も喜ぶでしょうか?」
「どうかしらね?向こうが欲しいのはあくまで技術とそこから生み出される利益だけ。……被験者の心情まで気にしているかは微妙なところだと思うのだけど」
「はっ、正に
いやバカて。
すっごいこと言うなぁというか、それ中の人的に悶絶級の一言なんじゃねーんです?
だってほら、こうしてこっちに派遣されてきて、かつ特に文句も言わずにこっちの到着を待ってたってことは、以前の彼は職務に忠実だったんだろうし。
そんな感じのことを告げれば、アンデルセン氏は「以前は以前、
流石に、脳に残る記憶が無茶苦茶言ってることを認識させたらしい。
そりゃまぁ、普段のキレある台詞にも翳りが見えると言うものである。
「えっ」
「えっ、って紫様……どう考えても常日頃のアンデルセン氏ほど言論のキレがなかったじゃあないですか。あれ恐らく、自分のものなのに自分のものと感じられない人生が脳の中に納められているせいで、普段より観察眼が鈍っている証拠ですよ?」
「この場では俺よりもそっちの方がよく見ている、というわけか。……まぁ否定はできんな。思考に靄が掛かる、というのはこういう状況を指しているのかもしれん」
(……わ、わかんないわよそんなの……)
そう思っていたら、何故かゆかりんが狼狽え始めた。
どうも、その辺りの異変を認識できていなかった様子。
……まぁ、彼女自身がそもそも原作の八雲紫と別人のようなものであること、というのをアイデンティティにしているわけだから、その辺鈍いのも仕方ないのかもしれないが。
でもほら、罵倒にもレパートリーがある……みたいな感じで、今しがたの「権力者=バカ」レベルのキレが常に発揮されているのがアンデルセン氏……くらいのことは認識できて貰わないと、上役として困るんじゃないのかなーってキーアん思うわけ。
「そうですねぇ……担ぐのなら優秀な方の方が気が楽なのはたしかですね。無論、そうでない方もそれはそれで担ぎがいはありますが」
「ふふふふそうですね」
「ええ、そうです」
(腹黒対決……?)
同調してくれたジェイドさんと笑みを交わす私。
隣のはるかさんが微妙な顔でこっちを見てきていたけど、構わずスルー。
……まぁそのまま笑いあっていても話が進まないので、適当なタイミングで切り上げて元の議題に軌道修正したわけだけど。
「……え、ええと。一体なんの話をしていたのだったかしら?」
「紫様、実のところなんにも進んでいません」
「えっ」
「自己紹介から話が脇に逸れましたからね。いえまぁ、必要な話であることも確かだったのですが」
「現状把握もできんような状態で、これからのことを話すのは不可能……というわけだな」
「そ、それは確かに……。ええと、ということは?」
「一先ず、彼らがこちらで受け持つことになる(はずだった)業務についての説明が宜しいかと」
「な、なるほど……じゃあ、その辺りを詰めて行きましょう」
……これ、一連の流れでゆかりん舐められたりしてない?
代表者らしからぬ間抜けな様子ばかり見せていたけど、大丈夫なのかなぁ……なんて風に、ちらりと視線を相手に向けたところ。
(大丈夫、わかっていますよ)
(あ、これダメなやつだわ)
それは、『この場での真の纏め役は貴方ですね?』みたいな、そんな感じの内容なのであった。
……いやそりゃ買い被りだというか、今のゆかりんちょっとテンパってる*4だけというか……。
そもそも普段通りならもっとゆかりんピシッとしてるのよ?……と返したいが、現状信じて貰えなさそうで思わず唸りそうになる私なのでした……。