なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~   作:アークフィア

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自動的に君もそうなってるんやで?

「なるほど、一先ずここでの業務を一通り体験してから……という?」

「そうですね。本来ならお二人にも紫様の秘書として動いて頂く予定だったのですが……現在はこの有り様、ですからね」

「我がことながらままならん……というやつだな」

 

 

 はてさて、あれから数分後。

 一応の会議が終了し応接室から外に出た私は、現在ゆかりんと別れそれ以外の面々を引き連れて移動中。

 ……本当ならはるかさんにお任せして後ろに控えていたいのだけれど、現在の私は筆頭秘書なのでそういうわけにもいかず。

 

 結果、都合三人ほどの人員を後ろに引き連れ進む、まるで敏腕秘書のような様相と化していたのであった。

 ……中身はポンコツもいいところ、なんだけどねぇ?

 

 それはともかく、これからの予定について。

 彼らは本来、そのままゆかりんの秘書として暫く彼女に引っついて動く……という形になる予定だったのだけれど。

 現状『逆憑依』になってしまった彼らに、元の仕事をそのまま任せるのはどうなの?……みたいな話になり、結果他の仕事についても一通り見せ終わってから決める、という方向に着地したのだった。

 

 ……まぁ、実際にはゆかりんが彼ら二人を背後に侍らすのを嫌がった、という面もなくはないのだけど。

 だってほら、よく考えてご覧なさいよ?ゆかりんの後ろにこの二人が・さらにはジェレミアさんが控えている姿を。

 ──なんというかこう、悪のラスボス感マシマシじゃない?

 

 

「随分と風評を気にされる方なのですねぇ」

「元が便利な悪役扱いが多いキャラですからねぇ。下手にその辺強調されると色々と悪影響受けかねない……って面もありますし」

「ああ、確か【継ぎ接ぎ】とかいう現象だったか。個人の持つ一面の誇張、そこから生じる仮面(ペルソナ)の付け替え……なるほど。概念そのものが既に風評に汚染された後だった、というわけか。まったく傑作だな」

「……はい?」

 

 

 アンデルセン氏の言葉に、なに言ってるのこの人……みたいな顔をするジェイドさん。

 ……ふむ、向こうの方だと【継ぎ接ぎ】についての情報が片寄っている、ということになるのだろうか?

 それにしては、アンデルセン氏の台詞は本質を理解しているかのような台詞だったけど……。

 

 

「そんなもの、予測して喋ったに決まっているだろう!曲がりなりにもアンデルセン(観察眼の怪物)を名乗るのだ、この程度の考察すらできんのであれば俺は今頃首を吊ってこの世からおさらばしている──というわけだ!」

「さ、さいですか……」

 

 

 やだ、発言がとっても過激。

 ……いやまぁ、流石に本気でおさらばする気はなかっただろうけど、中々に強い売り文句だと思う。

 

 ともあれ、【継ぎ接ぎ】の使い方が仮面のようなもの──すなわち一種のペルソナであることは間違いなく。

 よってそれによって発生する問題というのも、ある種ペルソナ──真なる我、と呼ばれるそれらに近いものであるというのは間違いではない。

 

 

「……ああなるほど。ペルソナ能力とやらに等しいと?」

「方向性的には、そうなりますね。……まぁ元のそれと違って、『真なる我』*1と名乗ることそのものに危険性はないわけですが」

 

 

 だってほら、今のみんなの状況──『逆憑依』というその事象自体、自分ならぬ自己が自身を飲み込んだ姿……みたいなものだし?

 まぁそっちのパターンと明確に違う点として、現れた自己は自身を害するものではない……って特徴があるわけだけど。

 

 ……ともかく。

 現状は既にペルソナ能力が励起しているような状態であるため、そこに更なるペルソナ(継ぎ接ぎ)を加えるのは中々に高リスクな所業であることも確かな話。

 あれこれと制御の効く事象ではあるけど、できることなら回避したいと思うのも宜なるかな……というわけだ。

 

 

「なるほど……ということは、私達もある程度気を付けた方がいいということになるわけですね?」

「そうですね。特に声優ネタは【継ぎ接ぎ】の判定が通りやすいですから、間違っても()()()()()()()としたり、はたまた()()()()()()()()()()()()しませぬよう。*2……あ、お互いの真似に関しても極力避けてくださいね?まず起こらないことだとは思いますが、二人で一人分……みたいな奇っ怪な混ざり方をしないとも限りませんので」

「互いが互いの仮面(ペルソナ)になるというわけか?……笑えん冗談だな」

(冗談じゃないんだよなぁ……)

 

 

 思い浮かべるのはアクアとオルタのペア。

 ……特殊事例であるとはいえあれも【継ぎ接ぎ】の応用?の一つなので、まったく無関係とも言い辛いのである。

 まぁ、あそこまで無茶苦茶なことになるには【星の欠片】の影響も必要となるため、そうそう起こるようなことではないとも思うんだけども。

 ……とか言ってるとフラグになるんだよなぁ、気を付けよ。

 

 そうこう言ってるうちに、最初の目的地に到着。

 今回やってきたのは、なりきり郷の生命線の一つ──、

 

 

「他の階層から切り離された施設──なりきり郷全土の気温を調整するための場所。いわゆるボイラー室?とかに相当する場所ですね」

「ほう、ここが……」

 

 

 広域気温調整所。

 なりきり郷全土の気温を調整する、いわば()()()()()ための場所なのであった。

 

 

 

 

 

 

 なりきり郷の内部の気温や気候は意図的に調整されているものである、というのは何度も述べている通り。

 その調整を一手に引き受けているのが、他の階層から切り離され独自に機能しているこの場所──広域気温調整所・通称『季節の城』*3なのである。

 

 

「元ネタになるのは『ARIA』や『AQUA』に登場する気温調整システムですね。テラフォーミングした火星の気温を調整するための施設で、こちらで働いている人々もその設定に肖って『火炎之番人(サラマンダー)』と呼ばれています」

「ふむ……名前的に火属性の方が多い、みたいな感じですか?」

「いえ?熱量の確保は主に別所──活火山のようなものを備える階層から行っていますので、ここでやってるのは基本的に数値管理()()の仕事になりますね」

 

 

 熱源の確保先は具体的に言うと熔地庵ということになるらしい。

 なお、答えが伝聞調なのは私もここのシステムについてあんまり詳しくは知らないから。

 そもそもこの階層に足を踏み入れたのだって今回が初めてだし?

 

 

「おや、それはまた……どうしてそんなことに?」

「独立している、と先ほど申し上げましたが……要するに別部署になるんですよね、ここ。踏み入るためには別所の許可がいる、と言いますか」

 

 

 正確に言うと、ゆかりん以外に許可を出す人がいる……ということになるか。

 幾らなりきり郷内では致死性のダメージが無効化されるとはいえ、溶岩をそのまま扱っているような場所が危なくないわけがない。

 なんなら熔地庵と違い、こちらは熱をそのまま利用するためにあちらのような防護結界すら用いられてないのである。

 それがなにを意味するのか、というと。

 

 

「あちら以上に、迂闊に足を踏み入れると消し炭になる可能性大なんですよね。正に鉄火場、というべきでしょうか」

「なるほど……道理で、まだ中に入ってもいないのに汗が吹き出ると思いましたよ」

 

 

 以前琥珀さんの発明品として使われ、やりすぎとして封印処理まで受けた腕クーラー。

 あれが()()()()()()()()()()()()()()()()ような過酷な環境である、ということだ。

 

 そりゃもう、現在入り口でしかない場所なのにも関わらず、暑さで汗がヤバいことになるのも仕方ない、というか。

 わかりやすく説明すると、この間のハロウィンでトリコ君達と向かった場所──電気能力者達の楽園であるカタトゥンボと扱い的にほぼ同じ、みたいな?

 

 あっちは電気由来だったが、こっちは熱由来というか。

 温度耐性を中の人に持たせるため、暫くの待機時間を過ごすための場所──あっちに準えるならヒートロックとでも言うべき場所が、今現在私達のいる場所。

 ここで多種多様な温度系対抗技術を施すことで、ようやく階層の中に足を踏み入れることができるわけである。

 

 間違っても郷内に熱気が逆流しないよう、病的なまでに制御されたプログラムにより、ヒートロック内の扉が機械的に開閉されていく。

 

 ──目の前に広がってきた光景は、正に赤。

 柵の向こう側を流れる溶岩が熱気と光を放ち、周囲を染め上げている。

 動くものの姿はほとんどなく、溶岩はまるで血液のように、この階層を流れていくばかり……。

 時折、道を塞ぐようにして存在する扉が開き、溶岩達の進行方向を切り替えている……。

 

 なるほど、一応少ない人数で管理できるようなシステムになっている、というのは間違いないらしい。

 まぁ、そんなものを認識する前にへばりそうになっているわけなんだけども。

 

 

「……なんの冗談だ、さっきの部屋は暑さに対する対処のためのものだったんじゃないのか……!?」

「ああ、単純な話さ。ここではそもそも()()()()()()の効きが悪い。僕の腹の中のようなものなんだから、当たり前と言えば当たり前だけどね」

「……!?」

 

 

 あまりの暑さに文句を言うアンデルセン氏に、どこからか聞こえてくる男性の声がツッコミを入れる。

 周囲を見回すも、声の発生源らしき相手の姿は見えず、代わりに天井から吊り下がるスピーカーの姿を発見した。

 どうやら、先ほどの声はここから響いてきていたらしい。

 

 ……ところで、気のせいじゃなければすっごくどっかで聞いたことがある声だったんだけど、これ私の勘違いだったりしない?

 

 

「……いえ、恐らく勘違いではないかと」

「そっかーここの管理者ってあの人かー、そうかーありなんだあの人ー」

 

 

 まぁ、うん。

 通称の響きの時点で怪しかったけども。

 ……思わずマジでかと呻きながら、不思議そうにする二人を引き連れ、私とはるかさんは管理者が待っているだろう奥の方へと歩を進めて行くのであった……。

 

 

*1
本来はシャドウが本体から拒絶され、個別の存在となった時に告げる言葉。ゆえに良くない台詞なのだが、『逆憑依』的に考えると寧ろそっちがデフォになっている

*2
前者は『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズのキャラクター、DIOの台詞。後者は『ビーストウォーズ』シリーズのキャラクター、コンボイの日本版吹き替えのこと。共に声優が彼らと同じ

*3
ニュアンスは『ハウルの城』と同じ(フラグ)

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