なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、熱気渦巻く季節の城を奥へ奥へと進む私達。
その先に待ち受ける相手に、どうにも胃の痛みを覚えつつ。……進まないわけにもいかないので、泣く泣く進んでいるわけだけど。
もし、この先に待ち受けている相手が想像の通りだとすると、なんというか更に胃が痛くなること請け合いのような気がががが。
……うん、どう考えても面倒な相手なんだもん。
「おや?その口ぶりですと、もう相手の正体に目星が付いていると?」
「まぁ、私もここでの暮らしが長いので……今のところ二人ほど、該当者となる相手を想定しています」
「なるほど、それは頼もしい」
こちらの独り言が聞こえていたらしいジェイドさんから、驚いたとでもいうような台詞が返ってくる。
聞かれていたのなら答えないわけにもいかないので、素直に返しておいたけど……うん、疑われてんなこれ?
台詞は素直に感心しているように聞こえるけど、その実瞳が笑ってない。
なんなら横のアンデルセン氏もこちらをジッ、と見つめているためとても怖い。
「気にするな、いわゆる一つの職業病というやつだ!……ところで、何故そいつにはさん付けで、俺には『氏』などという堅苦しい呼び方をしている?」
「いえその……アンデルセンさん、と呼ぶのはなんだか違和感が凄くて」
「……そうか」
その流れで、何故アンデルセン
そもそもアンデルセンって日本語で言うところの姓だし、かといってハンスさんと呼ぶのはあれだし。
ジェイドさんはジェイドさんなんだけど、ねぇ?
「……まぁ確かに、突然ハンスさんなどと呼ばれるのはゾッとしないな」
「ですよねー。……まぁそういうわけなので、呼び方についてはご了承頂けると幸いです」
「了解した、と返しておくとしよう」
そんな会話を交わしながら、どんどんと奥へ進む私達。
やがて、フロアの心臓部──動力源とおぼしき場所へとたどり着いたわけなのだけれど。
「……おい、なんの冗談だこれは?」
「冗談じゃないんですよねぇ……(白目)」
「なるほど、これは確かに難題ですね……」
そこには、一つの扉があった。
それもただの扉ではない、上部に半円状のランマが付いた、古めかしい扉だ。
察しのよい人なら、この時点で相手に予測が付いているかもしれないが……それが正解とも限らないのがこの話の面倒なところ。
ジェイドさん達がどう予測したのかはわからないが……私としては
だって、ねぇ?
どっちが来ても面倒だし、なんならそれが……となると、そりゃもう引き返したくもなるよというか。
まぁ、このまま確認もせずに引き返すの無意味というか、そもそも二人にここの仕事を見学させることを目的にここまでやってきたんだから、その選択肢は端からないんですけどね。……泣いていい?
普段から私の胃を破壊してるんだから、そのまま苦痛を味わえばいいのよー……みたいな感じに悪役令嬢みたいな笑みを浮かべているゆかりんを幻視しつつ、はぁとため息を吐いた私なのであった。
……なんでもいいけど、私の胃が痛む状況ってゆかりんも胃が痛くなるあれでは?
「……とりあえず、中に入りましょうか」
ぎい、と軋む扉を開いて、中に進む私達。
確認として振り返った先──内側の扉の右上には、四色に塗り分けられた円盤が一つ。
また、ドアノブには丸窓が一つ空いたプレートが一つ。
窓から覗くのは赤い色──恐らくはこの場所が熔地庵に繋がっていることを示すもの、ということなのかもしれない。
とはいえ、ここで重要なのはそれら一つ一つではなく、それら全てによって出来上がる扉の外観。
はるかさんも気付いたらしく、それが見たことのあるものだと理解し、ほんのり嬉しそうな顔をして──即座にずん、と沈んだ顔になった。
……あれだ、聖地巡礼は楽しいけど、実際にその世界に放り込まれるのは違うでしょ、みたいな気分になった時の顔というか。
ともあれ、その辺りの認識は既に済ませている他の面々。
中にいる人間が(ほぼ)確定的になったことに各々苦笑したり鼻を鳴らしたりしつつ、そのまま前を向き直して目の前の階段を登っていく。
そうして階段を上がりきった先──少し開けた場所。
大きなソファーと大きな机、それから半球をくり貫いたような特徴的な形の
特にその、目を引く暖炉。
火をくべるための場所には、ちろちろと炎が一つ揺らめいている。
……いや、よく見れば単に揺らめいているわけではない。
その小さな火は、なにやら爆ぜる音以外の
「まったく、悪魔使いが荒いんだ!おいらじゃなかったら、今ごろみんな退職しちゃって困るのは向こうなのに!」
「こ、これは……もしかして」
「……まぁ、見た目通りだとすれば、彼は
近寄ってみれば、暖炉の上の火が発していたのが声であることがわかる。
それも、とても特徴的な声色の──一度聞けば忘れることはないだろう、と確信できるようなもの。
そうなれば、この小さな火が何者なのか?……というのは容易に想定できるだろう。
ドアノブに備え付けられたプレートを回すことで、様々な場所に扉を繋げることができ。
その扉の先にある暖炉で、声を発しながらなにかを行う小さな火。
「なるほど……確か
「わぁ!?誰だよお前たちぃ!?」
どうやらこっちの存在に気付いていなかったらしい、暖炉の上の小さな火──カルシファーは、いつの間にか近くにいたアンデルセン氏を視認して驚いたように飛び跳ね、更に他の面々にも気付いて
「おいらはカルシファーだ……って、みんな知ってるみたいだけど」
「まぁ、有名だからね、貴方」
はてさて、ちょっとした騒ぎになったものの、そう時をおかず落ち着いたカルシファーのいる暖炉の前に集合した私達。
そこで改めて挨拶を交わしたわけなのだけれど……うん、流石にそれで済むはずがない、とみんなも理解しているようで。
「ところで、貴方のご主人様はどちらに?貴方がここの主、というわけでもないのでしょう?」
「なにおう、おいらが居ないとここはまともに稼働しないんだぞぅ!……まぁ、おいらがここの主じゃない、ってのは間違ってないけど」
「でしょうね……」
カルシファーという存在は、とてもわかりやすく悪魔である。
……悪魔がこちらの世界で活動するには、
ゆえに、他の面々もいるはずの契約者に──彼の存在を探しているわけだけど。
少なくとも、ここから見える範囲に彼の姿はない。
先ほどの放送からすると、この場所に居ないということはないだろうけど──仮に予想するのであれば、暖炉の奥にある階段の存在からして、自室で寝ているとかだろうか?
いやまぁ、さっきの今で寝てるんじゃないよ、というツッコミもなくはないけど……。
「いえ、でも仮にここの主が彼だとすると、幾分マイペースなところがあるのは間違いありませんし……」
「ですねぇ。こちらの想像通りなら、こっちを慮って行動……なんてのはしてくれそうもありませんねぇ」
気に入った相手ならともかく、と話し合うジェイドさんとはるかさんを横目に、アンデルセン氏に目配せをする私。
……暗にどうなんですと尋ねたわけだけど、彼からは肩を竦めるようなジェスチャーが返ってきただけであった。
流石に、
「……?どうして唸っているんですか喜亜さん?確かに想像通りの相手なら色々と大変そうですけど……」
「それだけで済めばいいんですけどね」
「?」
……今のところ、その可能性にうっすらとでも気付いているのはアンデルセン氏くらいのもの。
ジェイドさんもはるかさんも、もう既にここにいる相手に予想が付いている、という様相だが──お忘れじゃないだろうか。
「……カルシファー、お客さんかい?」
「この声は──」
「
「なんでって……そりゃまぁ、眠かったからね」
やがて、部屋の奥の方から声が降ってくる。
先ほどの放送と同じ声色のそれは、階段の上から降りてくる人物から発せられているもので。
そうして降りてきた人物の全貌が明らかになり、ジェイドさんとはるかさんは納得の声を。
それから、残りの二人のうち私は──、
「──自己紹介が必要かな?僕はハウル。君達も知っての通り、偉大な魔法使いだよ」
「嘘を
その