なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「……随分な挨拶だね。なにを根拠にそんなことを?」
「理由は幾つかありますが──
「なるほど……まぁ確かに、そっちの方が受けが良さそうなのは確かだね」
階段を降りきった彼──ハウルは、小さく苦笑を浮かべたままこちらへと近付いてくる。
その姿が黒い方のハウルであるということ……それそのものが彼が
その辺の理論の繋がりが見えてこなかったらしい二人──ジェイドさんとはるかさん──は、こちらに困惑したような視線を向けてきたのだった。
「ええと……どういうことです?」
「単純なお話です。『逆憑依』という存在は、基本的に原作通りの運命に出会うことはない。──ここでいう運命とは
語るのは、『逆憑依』が抱える構造的な欠陥について。
……今は運命に出会えないと述べたが、真実は逆。
本来『逆憑依』という存在は、そのキャラクターに定められた運命に強く引き寄せられる存在である。
その運命の力強さは、
にもかかわらず、なりきり郷には原作通りのペア──恋人だったり友人だったり──というものが少ない。
いやまぁ、なくはないけど比率としては少ない部類になる、というべきか。
知り合いだけに絞ると意外と成立してるように見えるけど、範囲を全体に広げると該当率が駄々下がるというか。
ともあれ、本来は成立しやすいはずの
それが、『逆憑依』が抱える構造的な欠陥、『一つのスレから選出されるキャラクターは一人だけというのが基本』という部分。
これにより、原作が同一である場合に相手役が選ばれない──先に自分が選ばれてしまっているから、そのための枠がない……という話に繋がるわけである。
「ああ、それは聞いたことがありますね。元がなりきりという、趣味としては
「その解として、恐らく並行世界の人間もここに送られてきている……などという話だったか。随分と眉唾な話ではあるがな」
その辺の話は向こう出身のジェイドさん達も聞き及んでいたようで、こちらの言葉に納得と補足を投げてくる。
数少ない『成立したペア』が、実のところ別々の世界の人間によるものなのではないか?……というものだ。
まぁその説、あくまで大部分であって全体が必ずそう、ってわけでもなさそうなのだけれど(脳裏を過るキリト&アスナペア)。
……え?ありゃ二人とも原作そのものって感じじゃないからノーカンだろうって?
ともかく。
ここで必要なのは、ペアの成立が難しいという部分。
これを念頭に置くと、今のハウルの姿がおかしいという理由に繋がるのである。
「はい?」
「たまにいるでしょう?作中で大胆なイメチェンを行うキャラクターというのが。その理由は幾つかありますが──大きなモノとしてあげられ易いのが
例えば、失恋したので前の恋を忘れるために長かった髪を切るだとか。
例えば、挫折をきっかけに闇落ちしたため姿が変わるとか。
そんな感じで、今までの姿を変化させる理由となるのが『心境の変化』。
とはいえ、今回の場合は彼自身の心境の変化、というのは関係ない。
関係があるのは、もう一つの方。『外的要因による不可逆な変化』である。
「リナリー・リーが瀕死の重症を負ってベリーショートになったとか、そういう感じのものですね。さっきの例の一つである闇落ちも、心境の変化を含みつつ外的要因による変化の面も持ち合わせるので、こちらに含まれるかもしれませんね」
「は、はぁ……?」
よくわからん、というような顔をしているはるかさんだが、その横のジェイドさんはなんとなく察した模様。
……とはいえこれは私が勿体ぶってるから、みたいなところもあるのではるかさんの察しが悪い、ということではないだろう。
だったらさっさと結論を話せ、とかどこからか突っ込まれそうなので早急に話を進めると。
「ハウルの変化も、『外的要因による変化』に含まれるということですよ。金の髪が黒の髪に変化したのは、極論を言うと
「…………!」
作中において、ハウルが初めて現れた時の髪色は金色であった。
少年時代の彼は黒髪であったため、染めた色だと考えるのが普通だが……そうだとするなら、余計に現在黒髪であることがおかしくなる。
わざわざ染めた──しかも描写的に魔法で──髪の色を、元の色に戻すためのきっかけがない、とも言えるだろうか?
なにせ、この世界にそのきっかけを与えた人物──彼にとっての
「……たまたまここにいない、という可能性もあるよ?」
「それはないですね。先ほども申しました通り、原則『逆憑依』はキャラクターに定められた
自らの
それを前提に置くとすれば、こちらに現れたソフィーはまず間違いなく『掃除婦』になるはず。
──言い換えると
実際にこの部屋の様子はどうかというと、天井付近にクモの巣があったり……などということはないものの、机の上に置かれた本が半ば崩れていたり、暖炉の灰が片付いていなかったりと、掃除婦がいるにしては汚れすぎている、という感想が思い浮かぶはず。
つまり、この場所にソフィーはいないのだ。……まぁ、そんな推理をしなくても、彼女がここにいない理由はあるのだが。
「……ああなるほど、
「その通りですよ、ジェイドさん。彼女は主人公にしてヒロインですが、その実特別な力を持つ存在とは言い辛い。……いえまぁ、原作の原作を持ち出すと実は魔女に相当するらしいので、そこら辺は怪しくもあるのですが……自分からそれを意識して扱える、というわけでもないようなのでこの高温下で暮らすのが厳しい、ということは変わらないでしょう」
それが、この部屋の中の気温。
外よりは遥かにマシとはいえ、それでも真夏日を越える気温であることは間違いあるまい。
こんな蒸し風呂より酷い空間で、まともな人間が暮らし続けるのは無理があるだろう。
ゆえに、ここにソフィーはいないということになる。
というか、仮にいるならもっと暮らしやすい空間にしていることだろう。
「……お、おいらがこの温度じゃないとダメなんだ!おいらはこの施設の心臓部みたいなものだから……」
「……ああうん、もういいよカルシファー。流石に騙すのは無理そうだし、別にムキになる必要もないし」
往生際悪くカルシファーが言い訳を述べようとするが、それを遮るようにハウルが声をあげる。
彼の言う通り、
え?じゃあなんで最初からその辺りを明かさなかったのかって?そりゃ勿論──、
「……流石は
「…………」
彼の言葉を聞いて、やっぱりかとはるかさん以外の二人がこっちを見てくる。
……うんまぁ、だよねぇ。
そう、彼がこんな態度を取っていた理由。
それは、彼が私に敵愾心を抱いていたから。じゃあ何故、そんな感情を彼が抱いていたのかと言うと──、
「──お望み通り、本当の姿を見せてあげたよ?これで満足かい、
「…………」
ははは、笑えねぇ(白目)