なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
はてさて、部屋の中に風が吹いたかと思えば、瞬時に姿を変えていたハウル。
……いや、今の彼の姿を見れば、誰もが彼をハウルと呼ぶことはないだろう。
──妖精王オベロン。ないしは、オベロン・ヴォーティガーン。
それこそが、現在私達の目の前に鎮座する存在の真名なのであった。
「おや、その目は飾りかい?星のお姫様。そもそもこっちの見た目って時点で、色々想像は付きそうなものだけど」
「……あー、なるほど。あと一つを思い付かなかったので、想定からは外していましたが……そういえば一つ、他に混ざる可能性のあるものがありましたね」
そんな風に確信を深めたところで、銀色・ないし灰色の髪をしたオベロンが、こちらに対して困ったものを見るような笑みを向けてくる。
あれだ、できの悪い生徒を見る時の教師の顔……みたいなやつ。
そこで私は、考察から外していた一つの答えを、改めてその台に乗せ直すことになったのであった。
さて、では考察の叩き台に再び乗せる羽目になったものとはなんなのか?
それを語るにはまず、直前まで彼をなんだと思っていたのか、ということを話さなければなるまい。
……ネットで検索するとすぐに出てくるのだが、ハウルとオベロンは空気感が似ている、という話がある。
実際に細かい部分を見ていくと結構差異があるのだが、そこら辺を気にせず横に並べると既視感を覚えてしまう……というような話だ。
特に、第一・第二再臨のオベロンと金髪のハウル、それから第三再臨のオベロンと黒髪のハウル、という形で対比されることが多く、かつ変化の方向性に類似点が見える……みたいな感じというか。
前者は優しい王子さま、後者は荒々しさをも含む俺様系……みたいな?
まぁ、説明のために細部をかなりはしょった言い方なので、幾分違和感を覚えるかもしれないが……その辺はほら、空気感優先ってことで。
ともかく、二人を並べるとどことなく似てるなー、となるのは事実。
その結果、この二人には【継ぎ接ぎ】の可能性がある、ということになるのである。
「継ぎ接ぎ、ですか」
「類似点を持つ二者が、片方が片方に要素を加える……というような形で統合されるパターンですね。わかりやすく例えると、カップ焼きそば現象とか声優ネタとか、その辺りといいますか」
「それは確かにわかりやすい例えかもしれんが、同時に別方向に議論を飛躍させる悪手というやつではないか?」
「黙秘しまーす」
「おい?」
いやだって、ねぇ?
発生例こそ増えたものの、結局よくわからんともなるのが【継ぎ接ぎ】なのだ。
なにせ事例が安定しない。起きる時もあれば起きない時もあり、些細なものがくっつくパターンもあれば、アルトリアのように「それ【継ぎ接ぎ】の区分でいいの!?」みたいなパターンもある。
同類である【複合憑依】も大概だが、こっちと比べるとかなり『なんでもあり』な部分が散見されるのが【継ぎ接ぎ】なのだ。
そんなの、幾ら説明しても説明できるわきゃないとしか言いようがあるまい。
まぁ辛うじて?
なんでもかんでも【継ぎ接ぎ】していたら、
「と、言いますと?」
「ご存知かと思いますが、『逆憑依』とは恐らく中の人間を守るための一種の外殻。ゆえに中の人間を害するようなことは本末転倒なのです」
「……なるほど?」
今まで何度か語ってきた通り、『逆憑依』は(恐らく)憑依された側の人間を保護するためのプログラムである。
と、なれば、その保護プログラムが中身──保護すべき対象に変な影響を与えてしまうというのは、システムのミスとかあからさまな欠陥・バグ・不具合だとか、そういう『望まれない結果』という扱いになるわけで。
ゆえに、そういう事象は極力発生しないようにするのが普通、というのがここで言いたいこと。
つまり、見た目からして違和感を覚えるような【継ぎ接ぎ】は、周囲からの反応によってその違和感を中身にまで波及させる危険性──言い換えるなら害を与える可能性があるため、忌避されて然るべきということになるのである。
……まぁ、見た目という判断基準だと色々おかしなことになる(性転換してるキリトちゃんとか)ので、正確には空気感──一種の説得力が有るか否か、ということになるのだろうが。
え?それだと雑な繋がりでも結局問題ないってことにならないかって?
その雑な繋がりを納得させられるかどうかがシステムの頑張り処なんやで(?)
「最後結論を投げませんでしたか?」
「ハハハ、ソンナコトナイデスヨ?……それはともかく、これらの前提を元に目の前の彼を考察すると、【継ぎ接ぎ】であるのが一番自然ということになるんです」
「それは何故だ?【複合憑依】とやらになにか問題があるとでも?」
「大有りですよ。そっちは条件が厳しいんです」
「……ふむ?」
で、話を戻すと。
さっき私が言っていた『考慮外の選択肢』というのは【複合憑依】のこと。
では何故それを外していたのかと言えば、それは【複合憑依】の条件が厳しいから、というのが正解となる。
……いやまぁ、厳密に言うと【継ぎ接ぎ】の優先度が高いから、【複合憑依】にならないというのが近いような気もするわけだが。
元々【複合憑依】とは、なりきりで言うところの『掛け合い形式』が変化したもの。
その本質は、『話者が組ませたいと思ったキャラクターの羅列』である。
「……なるほど。そもそもの条件の時点で、
「そこで立ちはだかるのが【継ぎ接ぎ】なんです。さっきも言ったでしょう?【継ぎ接ぎ】は『なんでもあり』だと」
「……半端な【複合憑依】であれば、【継ぎ接ぎ】によって再現できる?」
「どころか、本人の許容量が許すのであれば、三人以上纏めることも普通に可能ですね」
まぁそんな実例、アルトリアとかビワとかの【顕象】くらいのものなわけだが。
ともかく。【複合憑依】が成立し辛い最たる理由は、その前に【継ぎ接ぎ】が発生する可能性が高いため。
ほんの些細な類似点ですら共通項として纏められかねないため、そうならないように三者を一つにする……というのが難しいのだ。
というかそもそも
二人揃った時点で【継ぎ接ぎ】が起動し始める可能性大なので、安定して成立させるには完全に無関係・もしくは正反対な二人を用意し、その間に潤滑油になるような存在を噛ませる……みたいなことをしなきゃいけないわけだし。
そしてそこまでやっても【継ぎ接ぎ】は発生しうるのだから笑えない。
その点を踏まえた上で、オベロンとハウルについて考察すると。
「なるほど。先の話に間違いがないのであれば、この二人は真っ先に【継ぎ接ぎ】になる可能性が高い、ということになるわけですね」
「そういうことです。特に、ヴォーティガーンの方を黒髪ハウルで表現するなら、『オベロンにハウルが【継ぎ接ぎ】されている』という形で綺麗に収まりますし」
先の『二人は似ている』という話、および黒髪ハウルとヴォーティガーンモードのオベロンは特に似ている……という話を総合すると、オベロンにハウルを【継ぎ接ぎ】し『ハウル・ジェンキンス』にしてしまうのが一番自然、ということになるのである。*1
だがしかし、そこにこそ落とし穴があった。
ポイントは、この二人は外見こそ似通っているものの、実のところ
「水と油、ですか?」
「
「……恐らく、だけど。あの花の魔術師なんだよね、彼のモチーフって」
その理由は、ハウルのキャラ造形にある。
凄まじいまでの力を持つ魔法使いにして、ナンパな性格の存在。……おや、どこかで聞いたことのあるようなキャラだね?*2
……そう、見た目が似ているハウルは、その実性格や動きがオベロンの天敵・マーリンのそれに近しいのである。
それを裏付けるかのような設定が、彼のもう一つの異名。
──『ペンドラゴン』。アーサーの父、ウーサーの称号であるそれを名乗る魔術師、なんて。
そりゃもう、マーリンでないのならなんなのかという話だ。
つまり、である。
実はこの二人、【継ぎ接ぎ】による付与はそれこそ究極竜にマンモスの墓場を融合するかの如く*3、凄まじく相性が悪い組み合わせなのだ。
……まぁ、それを踏まえたとしても、ヴォーティガーンの性質的になくはないかな、となるラインなのだけれど……。*4
「まぁ、今しがた答えを言いましたよね、私。──潤滑油になりうる存在が一つ、組み合わせられそうだと」
「……
はるかさんの言葉に、その通りですよと頷く私。
……水と油のような二人を、それでもなお三人組に纏められそうな最後の一ピース。
それは恐らく、オベロンにも関係が(微妙に)あって、かつハウルにとっては異名の参照先にもなる存在。
──すなわち、アーサー・ペンドラゴン。
恐らく、彼らはその三人が一つに纏まった【複合憑依】なのだと、私は確信したように答えたのであった。*5
……オベロンからの当たりがキツいの、これ多分私をマーリン扱いしてるだけじゃなくて、自分も