なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
「くそっ、結局逃げられた……リソース溜め込んでなにするつもりなんだあの妖精王……」
「さてな。……とりあえず、俺からは恐らく大したことではないだろう、という考えを述べるだけにしておくこととしよう」
「……その心は?」
「勘だが?」
「勘かー……」
あのあと暫くオベロンを追っかけ回したものの、ついぞ彼の背を掴むことは叶わなかった。
いやまぁ、こっちも猫に変身すれば行けたかもだけど……それすると負けた感がするのが、ね?
あとはまぁ、なんやかんやでオベロンといえば速度が速い、みたいなイメージもあるので実際に追い付けたかは謎、みたいな部分もなくはない。
あれだ、作中の彼の速さはブランカ由来のものだが、そこが黒猫部分に習合されてそう、というか。
で、戻ってきた私に掛けられた言葉が、アンデルセン氏の「勘だ」という言葉。
普通なら、単なる勘とかまったくあてにならないのだけれど……彼の勘となると、話は別。
最終的にどうなるのかは不明だが、現状こちらに不利益をもたらすためにこそこそなにかをやっている、というわけではないのだろう……とこちらを納得させるための説得力が違いすぎるわけだ。
そうなると、こちらが取れる対応も限られてくるのだけれど──、
「……まぁ、見学だけならオベロン居なくてもできるか」
「なるほど、ではこのまま見学を続行すると?」
「詳しい説明をして貰えないのはあれですけど、正直彼の不在はそこまで問題でもないかなーって」
郷に不利益になることを画策しているのならともかく、観察の鬼であるアンデルセン氏が問題ないと言うのであれば、恐らくなんの問題もないのだろう。
となれば、いつまでもオベロンだけに
そんなわけで、目の前の溶鉱炉がどういう役割を持っているのか、ということを先に確認することになったのであった。
いやまぁ、できればオベロンにはその辺り、詳しく説明して欲しかったんですけどね?
「にゃ、でしたらぼくがおおしえしますにゃー」
「おっと、君は?」
「ここでいちばんながいけっとしーですにゃ。おかげでほかのとくらべると、かろうじてじんごがしゃべれますにゃー」
「なるほど、つまり君はベテランだと?」
「ですにゃ」
そんな私達の前に、進み出てくる一匹のケット・シー。
純白の毛並みを持つその猫妖精は、恭しくお辞儀をしながらこちらへ案内役を名乗り出たのであった。
「あいさつがおくれましたにゃ、じぶんは『ほわいと』とよばれていますにゃ」
「やだ安直……それは、オベロンが?」
「そうですにゃ。みんなにざぁっと名前を付けてくださったのですにゃ」*1
はてさて、よくよく考えると彼らも大概不思議生物なケット・シー達。
なにせ彼ら、どうにもまっとうな【顕象】ではなさげなのだ。
……感覚的にはこの間のモブ少女達を思い出す、というか?
そうこちらが感じたことを告げれば、代表者であるホワイト君……ちゃん?は「そのとおりですにゃ」と頷いてくれたのであった。
「さっこんのあれこれから、じぶんたちのたいはんはびわさまのえいきょうをうけてうまれたものなのですにゃ」
「なるほど、浄化機構の」
「ぜんいんがそう、というわけではないですけどにゃ。さいきんふえたのはそれ、というだけですにゃ」
聞けば、ここにいる猫妖精の大半はビッグビワ製であるとのこと。
……大半と前置きしたことからわかるように、どうもビワはサンプルを見てそれを参考に彼らを作った、ということになるらしい。
更にその大半とやらに区分される妖精達はここ一ヶ月の間に増えた者であり、今もまだ仕事については覚えきれていないとのこと。
逆を言うと、こうして私達への解説役を買って出てくれたホワイト君?は、ベテランもベテラン・大ベテランに区分される存在ということになるわけなのだが。
「にゃっ。じっさいびわさまもじぶんをさんこうにした、とおっしゃってましたにゃ」
「なるほどねぇ。……ホワイトデーでやらかしたから、そこから反省して……ってことかなー」*2
「ホワイトデー、ですか?」
「ああ、お気になさらずジェイドさん。なりきり郷ではイベントごと=世界の危機、というだけの話ですので」
「それ本当に気にさせずにいるつもりあります???」
あれか、ホワイトデーの時に時間がないからといって色を付けるのを疎かにしたら、結果として世界の危機を招き掛けたからそれを気にして……みたいな?
とはいえ変に色を付けるとケルヌンノスとしての属性を反映してしまう可能性もあるため、そこで既に顕現していたホワイト君?を、名前繋がり(日付抜き)で参考にし戒めを交えつつ妖精達に加工した……と。
……いや、よく妖精にしようと思ったなあの人?
よくよく考えなくても、妖精という存在には色々思うところがあるだろうに。
それともあれかな、猫なら気まぐれなだけで済むしそもそも二足歩行しようが人間とは別種、と割りきれるからとか?
……でもなぁ、詳しく描写されてないからあれだけど、妖精國の牙の氏族は獣系の見た目だったし、ケット・シー的な妖精が混じってても不思議ではないような気もするけどなー?*3
「……?どうかされましたかにゃ?」
「ああいや、なんでもないこっちの話。気にせず解説を続けて頂戴な」
「りょうかいしましたにゃ。とりあえずこのきおんちょうせつろについてかいせつしますにゃ」
そんなわけで、若干ぐだぐだしつつも始まった解説。
それによれば、目の前の溶鉱炉らしき物体は『気温調節炉』と呼ばれる機械であるとのこと。
熔地庵から汲み上げてきた溶岩をこのフロア内に循環させ、ある程度外気に触れさせる。
それによって溶岩の温度を下げると同時、暖まった空気を各所に小分けして送る……みたいな、結構原始的なシステムであるとのこと。
また、汲み上げ及び循環のためのエンジン駆動・および保守点検のため、ケット・シー達はここで雇われているとのことであった。
「お一つ聞きたいのですが……暑かったりはしないので?」
「にゃっ。じぶんたちはけっとしーですので、たいおんちょうせいまほうくらいはつかえますのにゃ。そもそもここでつかいづらい、というのはあくまでひとのまほうだけですので」
「人の魔法?……ってあ、ホントだそっちに意識して弄ったら使えるようになったぞ?」
「……すみません、このひとなにいってるんですにゃ?」
「お気になさらず。それがキーアさんですので」
「はぁ……?」
ここまでの話を聞いて、ジェイドさんが挙げた疑問。
それは、前身毛皮で覆われているような姿のケット・シー達が、この異様な暑さでバテたりしないのか?……というもの。
フロアに立ち入る前の「ヒートロック」でありとあらゆる熱耐性系技法を重ね掛されているにも関わらず、じんわりと汗ばむくらいに湿気っている私達ゆえ仕方のない疑問だったが──返ってきたのは『猫妖精達は平気』という、ある意味呆気のない返答。
詳しく聞けば、そもそもこのフロア内で魔術などの特殊技能の効きが悪いのは、偏にここがオベロンの居城のようなものであるがため。
わかりやすく言えば彼の腹の中のようなものであり、それゆえ彼に関係のない・ないし気に入られていない
ってことはだ、オベロンに関係のある──単純に考えると『妖精』だが、単なる妖精だと気に入らない判定が入りそうなので目の前の猫妖精と同じ──属性で技能を運用する、という風に意識したところ、温度調整魔法の効き目が格段にアップした。
なんなら効能が上がりすぎてちょっと肌寒くすらあったため、慌てて元々掛かっていた他の調整技能を解除したくらいである。
結果、死ぬほど暑い部屋の中が春の陽気くらいに感じられるように。
そのことに驚きながらも喜んだ私は、他の面々にも同じ様に魔法を掛けようとして……困惑するホワイト君?と遠い目をするはるかさんの姿を目にすることになったのであった。
……ええと、またなにかやっちゃいましたかね私?
ともあれ、一つ目に聞きたかったこと──目の前の機械についての情報を得られたため、その流れのまま次の質問へ。
「君は最古参とのことだけど、オベロンの目的についてなにか見当とか付いたりしない?」
「そのあたりはなんとも、ですにゃ。ごぞんじかとはおもいますが、おべろんさまはなかなかにひみつしゅぎしゃですので」
「あーうん。性質的に下手に本心を出せない、みたいな感じだからねぇ……」
こっちのオベロンはその性質が抑えられている節があるものの、だからといって自信の記憶・経験まであっさり捨てられるわけもない。
結果、本来の自分と同じ様に極力本心を表さない、という形で動いていてもおかしくはないか……。
となると、他の猫妖精に話を聞いたところで、有力な情報は得られないかなー、なんて渋い顔をしていた私は。
「ああでも、
「星?」
続けてホワイト君?から発せられた言葉に、その様相を早々に崩すこととなったのであった。
……ふむ、星とな?