なりきり板より愛を込めて~逆憑依されたので頑張って生きようと思います~ 作:アークフィア
星、と聞くと色んなものを思い浮かべることだろうが。
ことオベロンについての話となると、それは恐らく彼の
──ティターニア。
オベロンの妃とされる妖精の女性だが、その名前の持つ歴史というのは意外にも浅い。
オベロンという存在がかの文豪が名付けるより昔から存在するのに対し、ティターニアという名前はその文豪が初めて名を付けたというのだから、当たり前といえば当たり前なのだが。*1
「とはいえ、同じポジションの存在が奴の名付けより前から存在しなかったか?……と言われればそれはノーとなる。わかりやすいのは円卓の騎士とも関わりの深い『湖の婦人』だな。あれは類似する存在全てをまとめて呼称するための称号のようなものであり、特定個人を示すものではない……時にヴィヴィアン、などの名前を与えられていたりもしたがな。ともあれ、彼女達が妖精の女王としての属性を持っていた、ということは紛れもない事実だろう。それに足る実力も持ち合わせているわけだからな」
例に挙げられたのは湖の妖精。
アーサー王伝説に強く結び付くこの妖精は、確かに妖精女王に相応しい属性を持っていると言っても過言ではなさそうだ。
……だがしかし、実際に彼女達は妖精女王ではない。仮にそれに近い存在であっても、ここでは違う存在と言う他ない。
それは何故か?答えは単純、
「中には円卓の騎士と結ばれた、という湖の精もいるみたいですからね。……まぁ、複数人と結ばれるというパターンが無いわけでもないのでしょうが、それでも湖の精の対となる湖の王、みたいな存在が積極的に関わってくるイメージはない」
「結果、妖精王オベロンの妃というのは、存在するだろうが実体の掴めない虚像と化していたというわけだ」
まぁ、彼女が語られる時というのは基本童謡のようなものなので、殊更に説明する必要がなかったとも言えるのかもしれないが。
ともあれ、そんな彼女にきちんとした名前を与えたのがかの文豪──皆さんご存じシェイクスピアであると。
そしてその結果、オベロンの求めるティターニアというのは架空の存在になってしまった、と。
なお、オベロンではなくもう一方──ハウルの側に関わる星というと、彼が強大な魔法使いとして大成する切っ掛けとなったカルシファー……彼の種族である『星の子』が思い浮かぶかもしれないが。
「そっちはそっちで、今の
「かるしふぁーさま、すでにいらっしゃいますからにゃー」
そもそもカルシファーがすでにいる状態で、新たな星の子*2を求める意味があるのか?……みたいな話になってしまうのでなんとも。
……というか、よくよく考えるとあのカルシファーもなんなんだろうね?
「なにって……火の悪魔だろう。それ以外になにか?」
「いや……星の子の中の一つがカルシファーってことは、裏を返すとカルシファーそのものの独自性は
「……うん?」
「わかりやすく言えば、
「……ああなるほど。【複合憑依】なり【継ぎ接ぎ】なりで巻き込まれていないのが不思議、ということですね?」
「それもあるけど、なんでカルシファーがあの性格なのか、って部分も大概謎というか……」
思い出すのは『契約』というものを原作で行っている他の『逆憑依』達。
わかりやすいところでは『アラストール』の契約者であるシャナ、それから『精霊王』と契約しているミラちゃんとかだろうか?
彼女達はそれらの存在から力を借り受けている面もあり、それゆえ彼らの助力なくば全力を出すことが(再現度とは関係なく)不可能な存在でもある。
では何故彼らが再現度とは関係なく、こちらに居ないのかと言うと……。
「真っ当な『逆憑依』において、そのタイプのなりきりは契約対象までを
「……ああ、そういえば報告書で読んだ覚えがあるな。契約した存在から力を借り受ける、という形式の技能は原則『逆憑依』では再現が難しい。何故ならばその場合
今しがたアンデルセン氏が述べた通り、
これが意外に面倒な話で、【継ぎ接ぎ】や【複合憑依】による回避も行えないのである。
いやまぁ、最終的に起こる結果を同一にすることは可能だと思う。
だがその場合、【継ぎ接ぎ】にしろ【複合憑依】にしろ
「シャナさんの場合ならアラストール氏が別個で存在するのではなく、アラストール氏がシャナ氏のような人格になった……みたいな扱いになるということですね?」
「もしくはシャナがアラストールみたいになる、でもいいね。……それは【継ぎ接ぎ】のパターンで、【複合憑依】になると今度はそれぞれ別個判定になるから結果として同時に喋れない・出てこれないみたいなことになると思う」
「前者は混合、後者は独立……ということか」
こっちは一応『契約相手』と『契約先』の関係は再現できる。
できるのだが、それによって得られるのは『契約している』という事実だけ。
本来の目的である『契約相手から力を借りて技能を行使する』という形式には絶対にならないのである。
仮に体裁を整えたとしても、出来上がるのは『自身と入れ替わりに契約相手を現世に呼び出す』、すなわち交代することのみ。
どう足掻いても『契約相手』と『契約先』を同時に運用できないのである。
この辺りは他の姿だと虞美人センサーに引っ掛からない茅場さん辺りがわかりやすいか?
「それは単にあの真祖が面白生態をしているだけ、というような気もするが……」
「まぁ、一纏まりにされてるのに表に出てないと要素が表出しない、ってことは確かですので……」
まぁともかく、ここで重要なのは【継ぎ接ぎ】なり【複合憑依】なりになっていれば、そこに含まれる存在は別個の『逆憑依』や【兆し】のように独自に動くことはない、ということだろう。
そして、『契約』という行為が『逆憑依』する際に変な挙動を起こす、という話も合わせると……。
「カルシファー……いや敢えて言い方を変えると
「なるほど。あくまで彼がカルシファーであるのはハウルと契約したからこそ。すなわち彼はその性格自体がハウルとの繋がりを保証するものである。ゆえに彼があの性格なのは『逆憑依』の性質的におかしい、ということですね?」
「まぁ、例外の可能性もあるんですけどね」
思い出すのは今もハルケギニアでキュルケの使い魔をしているのだろう、ヒータちゃんの姿。
特定の姿の時に、表に出ていない他の二人がなにかしらの姿で存在する──
まぁ、あれはヒータちゃんが【継ぎ接ぎ】──『火霊使いヒータ』ではなく、ヒトカゲの『へんしん』した姿がヒータである、ということになっているせいで普通の(?)【複合憑依】よりも更に纏まった【兆し】の総量が多いからこその特例、みたいなものらしいけど。
とはいえ、特例とはいえど起こりうることであるのならば、それが今回も起こったのだと考えてもおかしくはないのかもしれない。
「……いやんなわけあるか!!あっちも他二人が発露する場合あくまでそれっぽいものが現れるだけで、あのカルシファーみたく話したりはできんわ!!」
まぁ自分で言って、自分で否定する羽目になったんだけども。
いやだってねぇ?カルシファー君の方、滅茶苦茶別個の存在だったし。普通に会話してたし。
それを思うとヒータちゃん達の方、あくまでなんとなく他の自分を表出させられるだけで、それらが明確に意思を持って動いてるわけじゃないみたいだし。
……ってことはだ。
仮にあのカルシファーが『逆憑依』ないし【顕象】である場合、今まで登場した法則とは関係がない・もしくはこちらの思い付かない抜け道を使っている可能性大、ってことになるわけで。
「……この見学終わったらもっかいちゃんと話し聞きに行こう……」
面倒ごとの予感ビンビンな現状に、思わず深々とため息を吐いてしまう私なのでありましたとさ……。