ラスト・ナンバー 101人目のアタシ『最高に美味しいイチゴのケーキのプレゼント!』(2022年式波・アスカ・ラングレーの誕生日記念LAS短編)   作:朝陽晴空

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 クリスマスが近づき、街は活気づく。
 しかしアスカは憂鬱そうにため息を付いていた。
 心配そうな顔で尋ねるシンジに、アスカは去年のクリスマスの話をする。
 アフターEOE・惣流アスカ。
 何番煎じか分からないネタです。


LASとクリスマス Once bitten, twice shy/All I Want For Christmas Is You

「はぁ……今年もクリスマスなんてイベントがあるのか」

 

 葛城家のリビングで、アスカは盛大なため息を吐き出した。

 テレビのニュース番組ではもう直ぐクリスマスだと、飾り付けで盛り上がる街並みを映している。

 今年のクリスマスは使徒の脅威から解放された事を祝して、ヤシマ作戦並みの電力を使って日本各地で盛大なイルミネーションが灯されるそうだ。

 ジェット・アローンの開発者だった時田シロウ博士は、『シリウス作戦』の陣頭指揮を執り一躍時の人となっている。

 

「ミサトも日本全体を明るくしよう何て言っちゃってさ。加持さんとイチャラブしたいだけじゃないの?」

 

 こういうお祭り騒ぎのような作戦は、ミサトが陣頭指揮を執りたがるものである。

 それを時田シロウ博士に任せるとは、自分が楽しむ側に回りたい魂胆が見え見えだった。

 赤木リツコ博士や伊吹マヤも陣頭指揮を辞退したと言うのだから、意中の相手が居るのは推して計るべきだろう。

 

「でもみんなで楽しく騒ごうって言うのは、良いと思うけどな」

「アンタ、変わったわね。前は大人数で集まるのは嫌がっていたじゃない」

「うん……だけどミサトさんの家で、トウジたちと騒ぐのも悪くないかなって」

 

 アスカが尋ねると、シンジは嬉しそうな顔でそう答えた。

 

「だから今年のクリスマスも、みんなで一緒に居れたら良いなと思ったんだけど……」

 

 シンジはそこまで言うと、ちょっと困った顔でごまかし笑いを浮かべた。

 葛城家でクリスマスパーティーをしようと思い、アスカとシンジは友人たちを誘ったのだが、体よく断られてしまった。

 家主の葛城ミサトは加持リョウジと、鈴原トウジは洞木ヒカリと、相田ケンスケは霧島マナとそれぞれ予定があると言う。

 意地になったアスカは内心気に食わないが綾波レイを誘ったが、渚カヲルと約束していると断られた。

 シンジも勇気を出して父親の碇ゲンドウに声を掛けたが、赤木リツコとスケジュールを組んでいた。

 すがる気持ちで誘った伊吹マヤも青葉シゲルと交際を始めたらしい。

 残るは冬月コウゾウと日向マコトだったが、ミサトに振られて傷心の日向マコトを励ます会になりそうなので避けた。

 (おまけに日向マコトは場の空気を盛り下げるジョークを言ったりする)

 

「もっとたくさんクラスで友達を作っておけば良かったね……」

「今更後悔しても遅いわよ」

 

 シンジはトウジたちの他のクラスメイトとは、顔と名前が辛うじて一致するぐらいの関係だった。

 アスカもヒカリ以外の女子とつるもうとはしなかった。

 中学を卒業するまでずっと仲良しで一緒に居ると思っていた友達が、いつの間にかバラバラになっている。

 

「こうしてみんな大人になって離れて行くんだね……」

 

 学校で聞いたカヲルの言葉が、シンジの頭の中に残っていた。

 

「少し寂しいけど、クリスマスだからって憂鬱になる事は無いと思うよ」

「アンタの去年のクリスマスはどうだったのよ」

 

 アスカに言われて、シンジは自分の伯父夫婦の家で過ごしたクリスマスの事を思い出した。

 シンジが小学生になった頃、伯父夫婦は庭にシンジの勉強部屋としてプレハブ小屋を入学祝いとして建てた。

 

「ありがとう、おじさん、おばさん、僕一生懸命勉強します」

 

 シンジは心にも無いお礼を言った事を覚えている。

 伯父夫婦の実の息子と娘が母屋のリビングで楽しそうに友達とクリスマスパーティーをしているのを、シンジはプレハブ小屋から掛け布団を被って感情を殺して眺めていたのを思い出した。

 

「去年はクリスマスだからって、特に変わった事は無かったよ」

 

 だからこそ今年のクリスマスは楽しいものを、と期待していたシンジだった。

 

「アタシはね、去年のクリスマス、加持さんに告白したの」

「えっ……そうなんだ」

 

 シンジはアスカの言葉に驚きはしたが、アスカならばそれぐらいの事はするだろうと納得した。

 

「ホワイトクリスマスが見たいってお願いしたら、加持さんはアタシをツークシュピッツェって山に連れて行ってくれたの。ロープウェイがあって、一歩も登らずに山頂まで行けるのよ。日本の富士山みたいに高い山」

「だから雪が積もっていたんだね」

「辺り一面雪景色で、恋人たちが過ごすのに最高の場所。だからアタシは手編みのマフラーを渡して、加持さんに大好きって告白したの」

 

 シンジはアスカが編み物などしている姿を一度も見た事が無い。

 最も、セカンドインパクトで常夏の気候となってしまった日本ではマフラーなど無用の長物だったわけだが。

 

「加持さん、ありがとうって笑顔で受け取ってくれたわ。アタシは加持さんに自分の気持ちが伝わったと思って嬉しかったわ。……でも」

 

 アスカはそこまで言うと、悔しそうな顔で拳を握り締めた。

 

「次の日、アタシはエヴァの起動実験が急に中止になって、加持さんの所へ驚かせようと思って黙って遊びに行ったの。そうしたら偶然、加持さんがミサトの編んだマフラーをして、ミサトと楽しそうに歩いていたのを見たのよ!」

「ええーーーっ!?」

 

 このアスカの話にはシンジもビックリ仰天した。

 アスカ本人では無くても大きなショックを受ける残酷な天使のテーゼだ。

 悪魔のような所業で無いと言うのなら反対意見を聞きたいところだ。

 

「それで……アスカはどうしたの?」

「アタシは逃げるように部屋に戻って、ベッドの中で泣き明かしたわ」

「……加持さんの事は嫌いにならなかったの?」

「心を開ける人間が周りにほとんど居ない中で、加持さんはアタシに優しくしてくれた。完全に嫌うなんて出来るわけないじゃない。でもその分、ミサトが憎たらしく思えたけど」

 

 シンジはアスカとミサトが親し気にしている反面、アスカがミサトに強い敵意を向けていた事に少し納得が行った気がした。

 アスカがミサトに反発していたのは、ミサトがアスカに直接酷い所業をしたからなのでは無く、リョウジを介しての事なのだと。

 

「アタシは妹のように振舞って、加持さんの気を引こうとしたけど、やっぱり本気の誘いには乗ってくれない。ミサトとはよりが戻ったみたいだし、アタシは恋に破れたのよ……」

 

 シンジはアスカが憂鬱になっている理由が分かった。

 しかしどうやってアスカを元気付けてあげれば良いのか、思い付かなかった。

 

「だから今年のクリスマスは、別の男に告白しようと思うんだけどね……」

「えっ、加持さんの他に好きな人が出来たの?」

「でも断られたらと思うと、怖くて告白出来ないのよ……」

 

 そう言うとアスカは両肩を抱いて身体を震わせた。

 シンジはアスカの言葉にショックを受けながらも、弱気になったアスカを励まさなければと思った。

 

「だけど告白してみなくちゃ、相手の気持ちが分からないと思うよ」

「一度傷ついたら、臆病になるのよ……断られたら、二度と顔を合わせられなくなるかもしれない……」

 

 アスカはそう言うと、シンジに身体を預けて来た。

 頼られた形になったシンジは、アスカを抱き締めようとして気が付いた。

 アスカが好きな相手が居るのならば、ここでアスカを慰めても自分が傷つく事になってしまう。

 

「そいつの側にずっと一緒に居たいのに、離れるなんて嫌なのよ……」

 

 アスカの言葉を聞いたシンジの頭に閃くものがあった。

 もしかして間違っていたらアスカに嫌われるかもしれない。

 でも臆病になっているアスカに代わって自分が勇気を出さなければ。

 シンジは震えるアスカの背中に手を回して、耳元でそっと囁いた。

 

「僕も好きだよ、アスカ」

 

 アスカの身体の震えが止まった。

 ここは自分の方からアスカに告白するのが正解だったのだとシンジは安心した。

 

「でもアタシなんかのどこが好きになったの? シンジには散々ワガママ言っていたのに」

 

 あっ、その自覚はあったんだ、とシンジは思った。

 

「暗い僕の心に光をもたらしてくれたところかな。太陽に照らされた種が春になって自然に芽吹くように、いつの間にか僕もアスカに恋をしていた。それじゃあダメかな?」

「フン、シンジにしては上出来よ」

 

 アスカは上目遣いでシンジを見て微笑んだ。

 

「僕は……加持さんみたいにアスカを守れる強い男性になれたら告白するつもりでいたんだ。それまで待っていてくれるかどうか分からなかったけど」

「バカね、アタシはそんなに待っていられないわよ」

 

 そうアスカが言うと、シンジの表情が曇った。

 そんなシンジの手をアスカは力強く握る。

 

「アタシと一緒に、強くなればいいの!」

「……そうだね」

 

 シンジはそう答えてアスカをもう一度抱き締めた。

 

「急いでクリスマスプレゼントを用意しなくちゃいけないね」

 

 そう言って立ち上がろうとしたシンジをアスカは両肩に手を乗せて押し留めた。

 

「特別なクリスマスプレゼントなんて要らないわ。クリスマスに欲しいのはシンジだけ。お願い、ずっと側に居て。多くは望まないから」

「それぐらい、お安い御用さ」

 

 アスカとシンジはクリスマスには特別な事をしなかった。

 イルミネーションを見に外に出掛ける事も無かったし、高価なプレゼントを買いに走る事もしなかった。

 家主の居ない葛城家のリビングで、二人用のカードゲーム『バトルライン』やボードゲームの『クアルト』や『ガイスター』などを遊び、二人だけのクリスマスパーティーを楽しんだ後、テレビを見てのんびりと過ごすのだった。

 夜も更けたクリスマスの夜、アスカはシンジのベッドに潜り込んでセイヤを明かした。

 トウジやヒカリに尋ねられたシンジとアスカはこう答えた。

 

『今年は特別なクリスマスだった、きっと来年も楽しいだろう』と。

 

 

 

 

 

 おまけ超短編『恋人がサンタクロース』

 

 ミサト「シンちゃん、アスカちゃん。今夜8時くらいにサンタさんがお家に来るから良い子で待っててね♪」

 

 ミサトはそう言って幼稚園児のシンジとアスカにウインクした。

 そして夜8時になった頃、ユイと一緒に待っていたところにピンポーンと呼び鈴がなる。

 

 ユイ「サンタさんが来てくれたみたいね」

 コウゾウ「シンジ君、アスカちゃん、メリークリスマス。サンタさんからのプレゼントだよ」

 シンジ&アスカ「わーい」

 ゲンドウ「待て! そのサンタは偽者だ! 私こそが本物のサンタだ。……冬月先生、勝手な事をされては困ります」

 コウゾウ「私だって孫のように可愛がっている二人にプレゼントを渡す権利がある」

 シンジ「サンタさんが二人居る……どっちが本当のサンタさんなんだろう」

 ゲンドウ「子供の夢を壊すような真似は止めてもらいたい」

 

 ゲンドウはそう言うとコウゾウと取っ組み合いを始めた。

 

 シンジ「わーっ、サンタさんがケンカしている」

 コウゾウ「お前の方こそサンタのイメージを汚しているではないか」

 

 ピンポーン

 

 ミサト「お待たせ、お姉さんサンタが登場よん♪」

 シンジ「サンタさんはお爺さんじゃないの?」

 アスカ「アタシ、誰が本物のサンタクロースか知っているわよ」

 

 アスカの言葉を聞いた三人の動きがピタリと止まった。

 

 アスカ「幼稚園のお姉さんから聞いたわ。恋人がサンタクロースだって」

 

 そう言ったアスカは隣に立つシンジの頬にチュッとキスをした。

 

 ユイ「これは一本取られたわね」

 ゲンドウ&コウゾウ&ミサト「出直して来ます……」

 

 三人が玄関から立ち去った後には、クリスマスプレゼントの山が置いてあった。

 めでたしめでたし。

 

 

 




 名探偵コ〇ン並にカップルの大量発生です。
Once bitten, twice shy=一度噛まれたら、二度目は用心する(直訳)→傷ついたら、臆病になる(意訳)
 All I Want For Christmas Is You=恋人達のクリスマス(意訳)
 歌詞コードは念の為です。
 ボードゲームは
 『弐号機パイロット・惣流アスカの更迭』
 https://syosetu.org/novel/260390/
 ※バトルライン、人狼ゲームの解説あり
 『元エヴァ弐号機パイロット、女子高生アスカ・ラングレーの溜息、第18使徒・涼宮ハルヒの憂鬱(リメイク版)』
 https://syosetu.org/novel/273202/
 などでも登場させる予定です。

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