この凄惨な現実に追憶を!   作:バニルの弟子:ショーヘイ

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アクア、誕生日おめでとう!
新作アニメでも活躍する事を期待しています!


『光画』 既読推奨 (リンク先: https://syosetu.org/novel/231904/ )

㊟ 上記は私の二次創作なので、読まなくても大筋には関係ありません。ただ、プロローグに上記の設定を少し使っているので、読まれていない方は戸惑うかと存じます


プロローグ

 ――私はまた、選択を間違えた

 

「――さあ、旅立ちなさい!」

 青く光る魔法陣が出現し、光の中をゆっくりと上昇する一つの影。

 明るい光に包まれその者の姿が消えると、部屋には再び静けさが訪れた。

「……ふーっ」

「よろしかったのですか?」

 上を見上げていると突然、背後から声を掛けられた。

 そこに居たのは、短めの髪をふんわりとさせた女天使。

 私の仕事の補佐をしてる子で名前を……えーっと……何だったかしら?

 ちょっと直には思い出せないけれど、私の部下である事に変わりはないわ。

 そんな私の忠実なる僕が、心配そうに私の表情を伺ってきた。

「……なんのことかしら?」

 何でもない様にすっと顔を背け、あくまで自然体を装う。

 しかし、流石は私の部下と言った所か、

「アクア様は先程の方を、随分と詳しくご存じの様でしたが。あのような素っ気ない態度を取られて、本当によろしかったのですか?」

「…………」

 ……彼女の言う通りだ。

 私はさっきの男を知っている。

 いや、正確には前までの私が知っていると言った方が正しいのだが。

 とにかく、私は彼の事を知っている。

 それはもうとてもよく知っている。

 だからこそ……。

「……ええ、これでよかったのよ」

 転送用の魔法陣が消えた場所に視線を仰ぎ、私はボソッと呟いた。

「これが最善策よ……こうすればもう、誰も傷つかなくて済むもの。…………だから、これで良かったのよ…………これで……」

 何度も、何度も。

 自分に言い聞かせるように、そう繰り返した。

「……分かりました。アクア様が納得されているのでしたら、私は何も申しません。それではアクア様、次の方がお待ちなので、そちらの準備に取り掛かって頂けますか?」

 私は黙ったまま力なく頷く。

 天使の子はそれ以上は何も言わず、一礼をして部屋を出て行った。

 …………。

 誰もいなくなった広い空間で、私は椅子の背もたれにぐでっともたれかかり。

 目を覆うように腕を頭に乗せた。

 

 ――私は、記憶を取り戻すべきじゃなかったんだ

 

 案内部屋に移動しつつ、次の死者に関する書類に目を通す。

 しかし、彼の死に方があまりに面白くつい吹き出してしまい、書類の間から何かが滑り落ちてしまった。

 屈みこんで拾い上げたのは、どこかくたびれた感のある一枚の写真。

 こんなおまけがついていた事は今までなかったのだけれど、一体何なのかしら。

 怪訝に思いながらも何気なく表に返した、その瞬間。

 頭の中に膨大な量の映像が一気に流れ込んできた。

 その情報量があまりにも多かったため、思わず立ち眩みを起こしてしまう。

 でも、不思議と恐怖は感じなかった。

 情報の波が収まるまで暫くその場でジッと座り込み。

 流入が終わった頃、一筋の涙が私の頬をツーッと流れ落ちた。

 

 ……思い出した。

 全部思い出した。

 

 そうよ。私は昔、この人達と一緒に旅をしたんだ。

 生意気なこの人の特典として無理やり連れていかれて。

 だけど、そこでの暮らしが思っていた以上に楽しかったのよね。

 寿命でこの人が死ぬ際には約束を交わして。

 前回は私自ら志願してついて行ってあげたんだ。

 あの時も一回目と同じように楽しくて、でも前とはちょっとずつ変わってて。

 そして私はこの人と……。

 胸の奥がキュッと締め付けられる。

 内から溢れ出る幸福感と甘酸っぱさ。

 だけどそれ以上に、二人への罪悪感で心が押し潰されそうになった。

 大きく息を吸い、それをゆっくり時間をかけて吐き出す。

 ……決めた。

 この人について行くのは……もう止めよう。

 私がいかなければ、二人が屋敷から出て行く事はないはず。

 そうすれば、あの子達は前みたいに皆仲良く暮らす事が出来るだろう。

 私さえ我慢すれば、きっと上手くいくのだ。

 私さえ……いなければ…………。

 

「…………カズマさん……」

 

「アクア様?」

 耳元でそっと囁かれ、私は緩慢な動きで腕を少しだけずらす。

 隣にいたのは、私の顔を覗き込む天使の子。

 手元にある書類の束を見るに、どうやら部屋に戻ってきたようだ。

「本当に大丈夫ですか? 具合が悪いようでしたら、本日はもうお休みになられては?」

 なんとも魅力的な提案だ。

 普段はそんなこと絶対に発案しっこないのに、今日は一体どうしたのだろう。

「……ううん、平気。それよりも、まだ他の死者の案内が沢山あったわよね? さっさと業務に戻りましょう」

「アクア様は大至急、病院へ赴いてください! 残りの仕事は自分達で全部やっておきますから、アクア様は早く治療を‼ あの自堕落なアクア様が休んでいいと言われて休まないなんて、そんな事ある訳がない!」

「あんた、私の事を何だと思ってるのよ」

 書類を落とした事にすら気付かないで狼狽するこの女天使には、後できついお仕置きが必要の様ね。

 なんて言うか……今は一人になるのがなんとなく嫌だから。

 誰でもいいからお話がしたい気分だから続けたい。

 ただ、それだけだったのだが。

「ほら、そんなとこでぼさっとしてないで、さっさと次の人呼んできて。残業になるのは流石に勘弁だから、早く次の人呼んできて」

「……ICUの確保を」

 まだ言うか。

 

 ――私のせいで、皆があんな目に

 

「……いま、なんていったの?」

 愕然とする私に、エリスは物哀しそうに小さく首を振り、

「あの世界は魔王軍に完全敗北しました。そして、先輩が気にかけていた三名ですが。佐藤和真さんとめぐみんさんは戦闘中に、ダクネスは戦闘で受けた後遺症により……全員、お亡くなりになりました」

 う、ウソ……でしょ?

「そんなはずないわ! だってだって、前回までは皆あんなに元気だったのに、なのにどうしてそんな……っ⁉」

 思わずエリスの肩をガクガクと揺さぶる。

 するとエリスは沈痛そうな面持ちで、

「私は記憶を継承していないので、前回の状況は知りませんが……この世界での結果はもう既に確定しました。辛いでしょうが、どうか受け入れて下さい」

 諭すような口調で、エリスは肩に置かれた私の手に自分の手をそっと重ねてくれた。

 ……………………。

 ………………。

「……ねえエリス、教えて。カズマ達の身に何があったの?」

「……いいんですか? きっと、とても悲しい話になりますよ?」

 頭を垂れ、すっかり意気消沈してしまった私を案じてか、エリスが私を労わる様に念を押してきた。

 ……エリスの言う通りなのだろう。

 正直な事を言えば、本当の話なんて聞きたくない。

 でも、もしここで話を聞かずに耳を塞いだら、私は一生後悔する。

 なんとなく、そんな気がした。

 正面から眼を見てこくりと頷く私に、エリスも頷き返し。

「分かりました。長い話になるでしょうし、紅茶でも飲みながらお話しましょう」

 そっと私を胸に抱き絞めてくれた。

 

「――この国の民は、私が守る!」

 

 そう言って敵の猛攻を全て引き受けたダクネスは、戦後間もなく息を引き取った。

 

「――ちょっと一発、私の必殺魔法を打ち込んできます」

 

 皆の制止も聞かず進み出ためぐみんは、そのまま帰らぬ人となってしまった。

 そして……。

 

「やだな……でも、しょうがねえよなあ」

 

 気だるげで臆病で面倒臭がり。

 だけど、誰よりも仲間思いだったカズマも。

 獅子奮迅の活躍をし油断した所を、背後から心臓を撃ち抜かれた。

 

 カズマが転生して死ぬまでの期間は、僅か二年足らず。

 以前、私が知り合った人の多くも、随分と悲惨な死を遂げたらしい。

 

 ――でも、だからこそ私は

 

 

 

 これから始まるのは、決して明るい物語ではない。

 私がカズマに特典として選ばれない様に立ち回った世界で、皆がどのような顛末を辿る事になったのか。

 私の知らない所で、皆は何を思い、どのように行動したのか。

 

 辛くて苦しい、だけど本当に起こりえたかもしれない。そんなお話――




最初はアーネス編です
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