これからも、四人が大冒険する様を、映像で見せてください!
…………あ。あと、ダストも誕生日おめでとう!
「――以上が事の顛末です」
読み上げていた事実書をパタンッと閉じ、エリスはそれを自分の膝の上に乗せた。
私はと言えば、椅子の上で小さく膝を抱え、静かに蹲っている。
「先輩、大丈夫ですか?」
「…………」
どうするのが正解だったんだろう。
皆の為になると思って、カズマについて行くのを必死で我慢したのに、まさかこんな結果になるなんて。
一気に沢山の事を知ったからだろうか。
悲しみとか、後悔とか、皆への申し訳なさとか。
そう言うのが頭の中でグルグルと回って、ちっとも考えが一つにまとまらない。
と、私の肩にそっと手が置かれた。
顔を上げると、エリスが心配そうに私を窺っていて……。
「先輩、ここには私しかいませんよ。ですから……」
我慢の限界だった。
私はエリスの胸元に顔を埋め、しゃくり上げながら肩を震わす。
目から止めどなく涙が零れ、エリスの服が涙と鼻水でグズグズになっていく。
そんな私を、エリスは何も言わずに抱き締めて、優しく頭を撫でてくれた。
「……ねえ、エリス」
暫く経ってから、私は鼻を啜りながら涙をゴシゴシと拭った。
「なんでしょう?」
優しく囁いてくれるエリスの声。
そんな彼女に、私は真剣な表情で言った。
「私、決めたわ――」
「先輩、本気……なんですか?」
世界の終焉地にて。
他の神々も集う中で、隣からエリスがコソコソと話しかけてきた。
まったく、これまでに何万回と説明してきたのに心配性ね。
「何度も言ったでしょ。私はもう逃げない。次の世界では、私が必ずカズマ達を救ってみせるわ‼」
強い意志を込めて、そう宣言した。
じっと私の眼を見つめ返すエリスは、ふっと相好を崩し。
「そうですね、そうでした。先輩は大切な人の為なら、どんな辛い事でも乗り越えて頑張れる、そんな女神ですものね」
「も、勿論よ!」
辛い事って言われてちょっとだけ腰が引けそうになったけど、それをなんとか心の奥底に押し隠す。
「では、次の世界で私に会った時は、また仲良くしてくださいね」
「任されたわ。私がしっかりサポートしてあげるから感謝なさいな!」
ドンッと胸を叩く私に、なんでか分からないがエリスは曖昧な笑みを浮かべた。
と、遂にこの世界も終わりが来たようだ。
空間が急激に縮小しているのを肌で感じることが出来る。
あと数分もすれば、この世界は無に帰するだろう。
「それでは最後に。幸運の女神である私から、先輩へ細やかな贈り物を」
不意にそんな事を言ったかと思うと、エリスは手を胸の前で組み、ありったけの魔力を込め始めた。
「次の世界において。辛い現実に立ち向かおうとする先輩に、少しでもいい事がありますように」
そして、手を前で大きく広げて――
「祝福を!」
柔らかな光が私の身体を包み込んだ。
確かに感じる、エリスの温かくて優しい魔力。
これさえあれば次の世界でも頑張れる、そんな気がした。
「ありがとうね、エリス。あんたにしては気が利いてるじゃない!」
「礼には及びません。頑張ってくださいね、アクア先輩」
笑顔を浮かべるエリスに、私は親指を立てて笑い返した。
「皆さん、時間です」
創造神様がパチンッと指を鳴らすと、私達の足元に魔法陣が描かれた。
すっと目を閉じて、体から力を抜いていく。
後はこの魔法陣に身を委ねれば、気が付いた時には新しい世界での生が始まっているという寸法だ。
この仕組みは本当に良くできているものだと、改めて感心してしまう。
まあ、なにはともあれ、いよいよ旅立ちの時だ。
私がするべき事は唯一つ。
カズマ達と過ごした、あの楽しい生活を取り戻す事だ。
今度はもう間違えない。
私に出来る事なら何だってやってやる。
絶対、絶対に、あの素晴らしい世界を取り戻してみせるんだから。
次第に体から消えていく感覚。
意識を失うその瞬間まで、私は強く念じ続けた。
――待っててね、カズマ
ここから幾つもの世界を超えた末、アクアは『光画』へと辿りつく……
(『光画』: https://syosetu.org/novel/231904/ )
読了ありがとうございます。
シリアス物を書くのは初めてだったので、拙い点もあったと思いますが。ほんの一時でも楽しんで頂けましたら幸いです。
アクアいなかったら絶対シリアスになるよな。でも、そんな話は見たことがない。だったら一丁、ガチでありそうな物を本気で考えてみようか。そんな軽い気持ちで書き始めたのですが……まさかここまで精神を摩耗するとは。一章とか四章を書いてる最中なんて、恥ずかしながら思わず泣いてしまい。あの四人は絶対に離れ離れになってはいけないなと、改めて確信した私でした。
ハーメルンでシリーズ物、pixivで単発物と言ったスタンスで、今後も執筆を続けようと思いますので、また遊びに来てください。
リクエストございましたら、今後のネタの参考にしますので是非に!
感想・批評・評価(早速して下さった方々、ありがとうございます!)も、お待ちしております。
この素晴らしい読者様に祝福を!