T樫氏も何やら動き始めた様なので、私も頑張らねば……!
オリジナル技を入れています。ご注意ください。
アタシ達は何処で間違ったのだろう。
まんまとここに突入してしまった時か。
パクノダの異変に気付かなかった時か。
……それとも、最初の時点で団長を止められなかった時か。
こぼれたミルクは元に戻らない。だからこそ今は、この絶望的な状況を何とかしなければならない。……たとえ自分が死ぬとしても、蜘蛛だけは。
いや、違う。
それがアタシ達の生きた証だから。
◆
長い廊下を経て、回廊に至る。これで何度目だろうか。だが、行くしかない。そもそも、何が待ち構えるか分からないこんな場所に突入した事自体が間違いだった。ありえない選択。それこそが敵の力量を如実に物語る。上には上がいる。わかっていたつもりだったが、まだ驕りがあったようだ。
いつまでも自分を彷徨わせるこの場所に不快感が募る。幾度も舌打ちをしてしまう。
蜘蛛は敵の糸に絡め取られてしまった。こんな滑稽な事があるだろうか。恐らく〝敵〟はこの先で準備万端に整えて、確実に狩りにくるつもりだろう。或いは我々を見てほくそ笑んでいるかもしれない。
……上等だ。
そんなクソみたいなツラごと切り刻んでやる。幻影旅団を舐めるなよ。絶対に思い通りにはさせてやらない。パクの仇は、あたしがとる。
◆
長らく警戒しながら歩いた先に扉があり、開くと中庭が見えた。広い公園風の中庭だ。木々が幾つか生えている。このビルの構造について考えても意味がない。どうせ念能力だ。自分に実害が有るかは分からないため警戒するしかない。ただ、恐らく害はないだろう。勘だが。
そして、ここでアタシの相手が待っている。気配は消しているが、きっとそうだ。
「出てきな。待ってたんだろ?」
もしいるとしたら完璧な《絶》だ。だが、ここに潜んでいるとマチは確信していた。〝勘〟は現在絶好調で、尚且つ研ぎ澄まされている。
やがて、数メートル先の木の陰から黒い和服姿の女の子供が現れた。
「……ボクを察知出来るとはね。流石旅団。それともボクの《絶》がヘタクソだったかな?」
「出てきたね。ガキか。《絶》は出来てたよ。アタシには通じなかっただけ」
「ふぅん。やっぱり一筋縄ではいかない…か。まぁいいよ。それならそれでやりがいがある」
目の前のガキはオーラを練り始める。ガキの癖にいいオーラしてる。質、量共にほぼ一流と言っていいだろう。
……舐めやがって。
「今のアタシは機嫌が悪い。楽に死ねると思わない事だね」
「侮ってもらっては困るよ。自分の心配をしたら?」
一丁前に生意気な口をきく。だが言わせておけばよい。すぐに分からせてやる。爆発的な《練》をし、闘志を滾らせる。今までの鬱憤を晴らすかのように。準備完了。
「覚悟は出来た? じゃ、死にな」
瞬間的にその場から消え去る。直線的に相手に向かうわけではなく、斜め前にある木に向かい、それを蹴って更に加速する。
更に3本程の周囲にある木を経由する。相手の周りを飛び回り、背後から強襲する。
しかし、それをボーっと見てる程相手もバカではない。懐からいつの間にか扇子を取り出して開き、紙吹雪を舞わせる。紙吹雪は周囲を飛び回り、蛇の様にうねり始める。なるほど、操作か具現化だ。背後からガキに迫るが、紙吹雪がまとまってこちらに向かって来た為、一旦踏み留まり、別の木に飛び移ってそれを掻い潜りながら手刀で首を狙う。
ガギィン!!
金属音が響きわたる。火花が散る。例の扇子でガードされた。鉄扇か。次の攻撃を繰り出そうとするが、紙吹雪がこちらに向かって来た為、一旦すれ違う様にしながら離れる。
側から見れば、大して効果の無い攻撃。だが、それでいい。
再び接近する。今度は直線で向かう。当然迎撃するかの様に紙吹雪が向かってくるが、右に飛ぶ。
! スピードが上がった!
空中を狙っていたか。そして、頭の部分が複数に分かれる。なるほど、芸達者だ。
だが残念。それは悪手だ。
◆
……強い! 扇子越しにガードしたはずなのに、まだ手が痺れている。そして迅い。兄さん程じゃないけど、【蛇行の舞】では捉えきれない。だが、まだまだ幾つかやり方はある。1度目の接近では近接を許したけど、2度目は無い。
相手は今度は直線で突っ込んでくる。当然正面から迎撃に向かわせる。
左に跳んだ。好機!!
【蛇行の舞・
頭の部分を幾本にも分、相手を包囲するかの様に包み込む! 空中では逃げ場は無い。喰らえ。
!!!
「な……!!」
思わず声が漏れる。だが、驚いているヒマは無い。完全にスカしてガラ空きになった自分に相手はそのまま再び接近してきて、猛攻を繰り出してきたからだ。
パンチや蹴りを避け、鉄扇でガードしながら必死に防御する。やはり体術は超一流。反撃の余地が無い。ただ、所々で攻撃に違和感がある。離れて回り込んだり、大幅な動作をとったりと無駄な動きがいくつか見える。おかげで多少は体勢を立て直す事が出来た。反撃。相手はガード、ガード、カウンター、そこだ!
僅かな隙に鉄扇を差し込むが、
相手は拳を握り、両腕を開いている。視界にキラリと光るモノが映る。これは……
「糸……」
「ご名答。冥土の土産に教えてあげたよ。優しいだろ? そしてアンタはもう終わり」
気付けば、自分の周りに様々な糸が纏わりついている。そう言うと、相手は腕をその場で素早く振り、キツく結ぶ動作をする。
マズい!!
巻き付いた糸が首を締め付けるかのように締まっていく! 首はヤバい! そこだけには扇を差し込む事が出来たが、他は間に合わなかった。強烈に全身を糸で締め付けられる。そのままどこから伸びたか、吊るされて縛られたまま浮かされる。
「一丁上がり。さて、ここからは拷問の時間だ。素直に吐けば生命ぐらいは見逃してやるよ?」
くっ……。糸遣いか。シンプルだけどいい能力。良く見ると確かにそこら中に糸が張り巡らされていた。成る程、最初の攻防で既に仕込んでいたみたいだ。そしてソレを足場に先程脱出した。そしてこちらは絶体絶命。せめて糸が緩まないかどうか試してみる。
「無駄よ。アタシがここにいて、雁字搦めにしてる。強化系でも千切れない精度になってるから」
紙吹雪を操作する。しかし、そうしようとした瞬間に腹部に強烈なパンチをもらう。
「ガッ……!」
「余計なことはすんな。アンタに出来るのは情報を吐くだけ。さて、まずこのパーティーの主催者について吐け」
痛みが続く中、敵が宣う。だけど、そこは思い通りにはさせない。
「言うと思う…?」
ニヤリと笑いながら伝えると、無言でパンチを再びもらう。
「アタシは気が短いんだ。さっさと言いな」
「…………」
更に追加で10発以上もらう。オーラの攻防力移動じゃ防ぎきれない。だけど……。これでもボクはゾルディックだ。拷問は効かない。
「やりなよ。ボクは死んでも言わない」
「……チッ。面倒な。フェイタンほど得意じゃないんだけどね」
更にしばらく様々な拷問を受ける。顔面は腫れ上がり、骨折、打撲、内出血、腫れ、果ては内臓まで痛めている。控え目に言って重症だ。
「早く吐け。死ぬよ」
「………ペッ」
はしたないが、笑いながら血反吐を相手の顔目がけて吐きかける。避けられたか。残念。
「……しゃーないね。あんまり気は進まないけど、殺して首だけ持ってくか。多分アンタはアイツの弟子だろ? 殺したら案外出て来るかもね」
「…………」
「じゃ、さよなら」
ギチギチギチ……
更に締め付けが強まる。徐々に糸は肉を裂いていく。そして…
バツン!!
細切れの肉片が転がる。
◇
「バカめ。素直に吐けば死なずに済んだものを。あー気分悪っ」
そう言いながらも、マチは警戒を解かない。自らの勘が
同時に、そこら中に散らばっていた紙吹雪が一斉に浮かび上がり始める。
「!!! 死者の念…!? いや、
紙吹雪は自分の周囲に漂い、遂には周り全てを包囲する。マチは周囲30メートルに《円》を展開する。あまり得意ではないが仕方がない。ヤツはいない。
【千本桜】
紙吹雪は一斉にマチヘ殺到する。いくら《円》でも限界がある。一切れ一切れが肉を裂く。威力は高くないが、数が膨大だ。糸を編んで防御しても別の箇所から出血を強いられる。そして、その猛攻は終わりが見えない。紙吹雪に翻弄され、マチは次第に追い詰められていった。
だがそれでも。彼女は幻影旅団だ。これ以上のダメージは危険と判断し、《円》を解除、全身に糸を巻き付ける。そして、糸は全身を覆い、ダメージが通らなくなる。すると、紙吹雪は形を変えて再び蛇の姿へ戻る。集中型へ変えてきた。やはりヤツは生きている。何処だ?
紙吹雪の蛇が追尾する。正確に自分を追ってくる。自動追尾か? それとも何処かで見ているのか? 考えるヒマもなくひたすら躱す。4度目の追尾を躱した時、不意に自分の足が止まる。見れば、地面から手が伸び、足首を掴んでいた。瞬間、躱しきれずに蛇の直撃をもらってしまった。
「ぎっ……!」
重要臓器は躱したが、右腕に少なくない損傷が起きる。具体的には千切れかけてる。だが、ヤツの居場所が分かった。地面に潜っていたか。見つからない筈だ。ヤツは離れた地面から出てきた。よく見ればヤツも全身に損傷が見てとれる。アタシがつけた傷だ。つまり致命傷を身代わりにする能力でも持っていたか。
右腕を念糸で縫合し、応急処置する。動かないが、今はこれで充分だ。
「生きてたとはね。やるじゃない。でも、身代わりなんて強力な能力はそう簡単には使えないでしょ? だから次で終いよ」
「それはこっちの台詞。貴女も相当消耗してる。少なくとも右手は動かないでしょ? さっきみたいにはいかないよ。それに、貴女のお陰でボクの能力も先が見えた。次で決める」
紙吹雪がヤツの全身を覆い始める。コッチのマネしたか。そんな付け焼き刃でどうかなると思われているなら心外だ。
無言で相手に迫る。狙うは心臓。アタシの方がスピードも威力も上だ。ヤツも同時に動き始める。だが、ダメージのせいか遅い。貰った。
交錯する寸前の刹那、ヤツを覆った紙が剥がれ、アタシに向かって来る。なるほど、そう来たか。だが止めない。肉を切らせて骨を断つ!
咄嗟に眼を閉じるが、幾つかが瞼を貫通して刺さり、視界が閉ざされる。しかし構わない。もう狙う場所は分かっている。死ね。
ドシュッ!!
互いの左手が交差する。
奴の腕がアタシの腹を貫通している。アタシの左腕は……ヤツの左肩を貫通してる。僅かに逸れた。原因は明白。正確に狙った心臓への軌道をインパクトの直前に紙吹雪が僅かに逸らした。ヤツが狙ったのだろう。アタシもヤツも手を能力で覆ってはいた為に貫通力はほぼ同じ。それだけに能力の使い方の差が出た。見事だ。
そして
残念だ。
パク……すまない。
仇は取れなかったよ。
◇
ほぼ同時に崩れ落ちる。相手はまだ僅かに生きている。心臓を狙ったけど上手くいかなかった。やっぱり父さんや兄さんみたいにはいかないか。だからこそ、小賢しい小技で何とかした。ボクもまだまだだった。だが、何とかなった。
でも、もう動けない。意識が朦朧とする。その時、聞き慣れた足音が近づいてきた。あぁ。やっぱり来てくれていたか。
「全く……無茶をする。今回ばかりは肝を冷やしたぞ。君の悪い癖だ。だが、よくぞ無事だった。後は任せて、今はゆっくり休むがいい」
そうしてボクを軽々と抱き上げ、頭を優しく撫でる。そうだ。この温もりがずっと欲しかった。ドロドロとした殺しや渦巻く愛憎の中で、ボクは本当はこれを求めていたかもしれない。
だから、もう少し、もう少しだけ……
この温もりを……
………
技解説
【蛇行の舞】
・原作と同じ技。マチが見破った様に、一部でも触れるとそこを目掛けて自動追尾する為、防御は危険。殺傷力も高い。
【蛇行の舞・
・蛇の頭が複数に分かれて殺到する技。その様は八岐の大蛇が如く。
【千本桜】
・紙吹雪をそれぞれがちらばり、敵に殺到する大技。制御が難しい為、本体が疎かになる弱点がある。発動する為には、一枚でも紙を付けておく必要がある。今回は、拷問中にコッソリと背中に付けていた。また、弱点は地中に隠れる事でカバーしている。ネーミングとか色々某オサレマンガのパク…もといオマージュ。
【
・修行の成果。身代わりの紙人形に特殊な能力や致命傷を一度だけ肩代わりしてもらうという能力。事前に莫大な念を込める必要があり、維持にオーラの1割を常に持っていかれるが、その分の効果はある。今回は予め地中に広い空間を掘っていて、そこに仕込んでいた。
【????】
・マチの技から発想に至った技。紙吹雪を自ら纏い、攻撃、防御力を高める。肉体が損傷していても、ある程度紙を制御してカバーできる。また、マチに使った様に、一部剥がして様々な牽制や妨害が可能。ビジュアルはアレだが、強力。新技のため、名前が決まってない。
長らくお待たせしてしまい、大変申し訳ありませんでした!
色々あったのと、スランプで一時期力尽きていました…。とりあえず5話、連日掲載します。よろしくお願いします!