アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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いよいよG•I編です!


G•I編
105、契約変更


 

 

 

 

 

 クラピカはあれから1日寝てゆったりと過ごしていた。体調は早く回復したらしいが、安心したのだろう。しかし、緋の眼の負担はかなりキツいものの様だ。今後はあまり多用しない様に伝えた。その辺は彼も分かっている筈だから、釈迦に説法みたいな形になってしまったが。ともかく、追加で1日ゆっくりしたら彼は起き上がり、仕事に戻っていった。クラピカって割と仕事人間な雰囲気を感じる。

 キルアとカルトは瀕死の重傷だった為、私が治した。身体面では回復していたが、私から最低でも3日程安静にするように厳命した。身体は治っても、心を回復させる時間が必要だ。また、今回の経験を反芻する時間も必要だろう。

 

 

 よって、今私はビスケと共にゴンとレオリオをひたすら鍛えている。

 

 

 彼等も割と反省していた様で、文句一つ言わずに従った。キルアに煽られたのも原因かもしれない。なので、実戦に於ける念戦闘のイロハを叩き込む。

 私自身もぶっちゃけそんなに才能は無く、どちらかと言うと能力のゴリ押しでやって来た方だ。ただ、流石にキャリアも長いから、これまで私が敵対した中で、やられてヤバかった事を紹介しつつ、対処方を考えるという形式だ。

 話はそれるが、暗黒大陸は特級のヤバい奴らの宝庫だった。その内容があまりにもヤバすぎて、2人とも絶句してた。そりゃそうか。私ですら今思い返せばやべーのばっかり相手してたもの。とりあえず首が落ちるのは日常茶飯事だし、いきなり極悪能力にハマるのはご挨拶みたいなものだった。

 ともかく、今回は暗黒大陸ってのはぼかしつつ、能力の紹介のみに努めた。全てを開示するのは全員揃ってからだ。

 また、忘れそうになっていたが、G•Iの10日間の期限が切れそうになっていた為、慌てて入り直し、そして速攻で出てきたり、ビルの復旧を手伝ったりして過ごした。

 

 ちなみに、弟子達への報酬は、今後アンダーソン系列の店や娯楽施設などはほぼフリーパスかつ、買い物など、費用がかかるサービスも半額以下の特権が与えられた。アンダーソンはハンター協会ともバチバチやってるため、プロハンターでもフリーパスじゃない場合が多い。加えて、アンダーソングループはかなりの範囲で経済界を席巻している為、様々な恩恵があるだろう。彼等は純粋に喜んでいた。まぁ、あれだけの死闘だったからそれぐらいのご褒美はあってもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 3日後、ハンター協会から人が来た。幻影旅団の護送というわけだ。中心人物は、クライムハンターのミザイストム=ナナという人物である。彼はハンター協会の最高幹部であり、会長がその実力を認めた12人の内の1人だ。

 十二支んとかいうふざけた名称らしいが、いかにも会長らしいネーミングである。彼はその中の丑担当。コスプレかってぐらいに牛っぽい格好をしていて、コーヒーを提供されたら、自分でミルクを入れるほど徹底している。

 ちょっと大丈夫かなと一瞬思ったが、身のこなしとオーラから察するに、これまた人類最上位ぐらいの強さはある。頭も良さそうだ。ハンター協会も割とガチな人員を選んで来たらしい。

 そりゃそうか。なんせA級賞金首だからな。会長の意向もあるかもしれない。

 

 

 対応は全てクラピカが行なった。私は隠れて別室から様子を見ていた。だが、ミザイストムは気付いていただろう。全ての手続きを終え、クラピカにシングルハンターの打診をしていた。その裏には私も昇進させて、引っ張り出そうという思惑があるかもしれない。だが、クラピカは自分1人の力ではないと固辞した。クラピカとしても、仲間の眼を集めるという目的がある以上、ハンターとしての出世には殆ど興味がないだろう。寧ろ下手に協会に縛られたくはない筈だ。ミザイストムもそれが分かったのか、それ以上は勧めなかった。

 

 

 

 協会の護送車に乗せられて、旅団は旅立った。まずは協会本部に行くらしい。これからの彼らの境遇を思えば、悲惨の一言に尽きるが、それこそ自業自得だ。是非とも第二の人生を頑張って欲しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、これからの事だ。これまで中断していたG•Iの攻略に本腰を入れたい。現在は9月6日である。ゴン達は今日が期限だ。彼らは嬉々として旅立っていった。私はクリアが目的ではないが、死者への往復葉書は欲しいため、彼らに協力しつつ頑張りたい。

 私とビスケだが、2日に入り直した為、まだまだ余裕はある(期限ギリギリだったが)。だが、とりあえずやる事は終わったので、ジョンに挨拶してから向かうとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、ジョン。調子はどうだい?」

 

「あぁ、カームさん。この通りですよ。ちょっと名誉の負傷がありましたが全て問題ないですな。此度の騒動、本当に助かりました」

 

「全く……君は組織のドンなんだから、本気で自重して欲しいものなんだけどね。治そうか?」

 

「何回目ですか? そのセリフ。大丈夫ですって。私も偶にははっちゃけたい時もあるんですよ。大体私は負傷してる時の方が強いんですから」

 

「うーん。人に言えた事じゃないけど、アレな能力だなぁ。まぁジョンが良ければいいんだが」

 

「そうそう。あと、ビルの復旧とカルロ達の回復もありがとうございました。我々もちっとは役に立たないと立つ瀬がありませんなぁ」

 

「気にしなくてもいいんだけどな。私もかなり厄介になっているからおあいこって事で。これからしばらくゲーム世界に行くから、一言言っとこうと思ってね」

 

「承りました。楽しんで来てください。こちらの後処理はやっときますよ」

 

「何から何まですまないね。頼んだよ」

 

「お任せください。というか、今回の騒動でアンダーソンの権勢がより強くなりそうでしてね。全く休む暇もありゃしないんですよ」

 

「それは…おめでとう? ま、何かあったら言ってくれ。何でも手伝うからな」

 

「おっと、これはすみません。ちょっとグチが出ました。お気になさらず。ファミリーが強くなる事は良い事ですからな」

 

「そうだな。じゃあ後はよろしく頼む」

 

 

 そうしてジョンの部屋を退出した。さて、では行くか。No.31「死者への往復葉書」を目指して、いざ出発だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁーて、バリバリカード集めんぞ!!」

 

「テンション高っ。まぁ気持ちは分かるけどよ」

 

「クラピカの事も無事に終わったし、じっくり挑戦出来るね!」

 

「早く集めて、カームと合流しよう」

 

「えー。折角のゲームだから隅々まで堪能しよーぜー。オレはイベント関係全部コンプしないと気が済まないタイプなんだよな」

 

「ハァ……それじゃ、さっさと調べてね。僕はあんまり興味ないから」

 

「何だよそのあからさまなため息はよ! これだから女子は! ロマンが分かってねーんだよな」

 

「まぁまぁ。とりあえずマサドラに行って魔法カード補充しようぜ。アントキバの懸賞もそろそろだから、それも含めて動こうか」

 

「賛成! 修行がてら走って行こうね」

 

「ゴンも最近修行にのめり込んでんなー。ま、付き合うぜ。今回の件でオレもまだまだって分かったからな」

 

「よーし、キルアには負けないよ!」

 

「おいおい、オレは更に力が付いたぜ? 負ける訳ねーだろ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃー! オレの勝ちー!!」

 

「キルアズルい! ラストスパートで雷使うの反則!!」

 

「何言ってんだ! オメーだってコッソリ能力使ってただろ!! あんなにぶっちぎっててバレバレなんだよ!!」

 

 

 

 

 ギャーギャー

 

 

 

 

 

「あ〜あ。兄さんもゴンも、子供っぽい。やっぱり大人の方が落ち着いてていいな」

 

「ふーん。ちなみにオレは?」

 

「レオリオは図体だけ」

 

「マジかよ。こりゃ手厳しいわ。とりあえず着いたな。カードショップ行くか。おい、そこのお子様ども! さっさと行くぜ!!」

 

 

 

 

 4人はワイワイしながらカードショップへと向かった。そして、店に入ってカードを買う段になって気付く。

 

 

 

「ねぇ、大量入荷って……」

 

「ハイ! 言葉の通り、最近魔法カードが沢山入荷しまして、現在在庫がかなりございます。是非とも購入をご検討ください」

 

 

 

 

「……前よりも増えてるね。どう思う?」

 

「どう思うも何も、ラッキーじゃん。他に買われる前にサッサと買っちまおうぜ」

 

「うーん……前から思ってだんだけど、何か引っかかるなぁ」

 

「プレイヤーの減少が加速している。ゴンの感覚は間違ってない」

 

「それそれ。不思議だったんだよね。何でだろ?」

 

「どうだっていいじゃん。早くしよーぜ」

 

「コレはかなり注意すべき事態かもしれない。考えられるのは、何らかの条件が重なり、他のプレイヤーがクリアを諦めて、カードを処分してゲーム外に一斉に出たか、又は──」

 

「おい、カルト、無視すんなよ!」

 

「又は?」

 

「聞けよ!」

 

()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 ギャーギャー外野で騒いでいたキルアも、ピタッと黙る。途端に重苦しい空気が立ち込める。しばらくしてキルアが口を開く。

 

 

 

「あーあ。折角黙ってたのによ。ワザワザ口にすんじゃねーよ、全く」

 

「あ、兄さん気付いてたの? てっきり分かってないかと」

 

「当たり前だろが! お前オレを何だと思ってんだ!? ま、その2択のどっちかだ。オレ達が知らない間に()()()()()()()。それが何かは分かんねーけどな。情報が足りない。だからこそ黙ってたんだ。今考えても意味ねーからな」

 

「そっか……ゴメン。いたずらに不安にさせちゃった」

 

「いや、その可能性は考えるべきだったよ。ありがとね」

 

「まぁ考えを共有するのは悪いこっちゃねーけどな。レオリオも勿論気付いてたよな?」

 

「お、おう。当然よ!」

 

 

 その台詞を聞いた全員が心の中で思った。コイツ、絶対気付いて無かったと。

 

 

 

「ま、そーゆー事だから気にせずカード買おうぜ。ただし買った後は警戒MAXな」

 

「買った後に奪う相手への警戒だね?」

 

「正解。さて、何が出るかなー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バッテラめ…ふざけやがって!! 今でも気分悪いぜ…!」

 

「全くだ。何が()()()()だ! もう少しだったってのによ…!」

 

「腹いせにアイツらを爆殺してやったが、もう20人も居なかったからな。()()()()()()()()()()じゃそうなるわな。ワザワザ現実に送り届けるサービスまで付けやがって。だが、プラスに考える事も出来る。クリア契約自体はそのままだ。カスみたいな奴らがハケて、やり易くなったとも言えるぞ?」

 

「だがよぉゲン。()()()()()()()()()()()()()()()って言ってても、まだまだ腕利きは残ってるからな? オレ達がいくら魔法スペル大量に持ってて、指定カード67種持ってても油断はできねぇぜ?」

 

「そうだ。だが、オレ達が独占してるSSカードもあるし、ソイツらもドングリの背比べだ。チャンスはまだある。今は少しでも有利に運べる様にしないとな。サブ、バラ、これからは自力で独占カードを増やすぞ」

 

「チッ。やっぱそうするしかねーか。めんどくせぇ」

 

 

 

 

 歩きながらボヤく3人組がいた。彼等は『爆弾魔(ボマー)』だ。彼等もまた、バッテラに雇われたグループである。一時期、中心のゲンスルーという男は別の集団で活動をしていて、仮初めの仲間達と5年程プレイをしていた。そこでは所謂集団による物量作戦を敢行しており、少しずつながらも魔法カードを独占。そして指定カードを奪うなり集めるなどして、地道に、だが確実なカード集めをしていた。そして、コツコツとクリアまでの道を辿っていった結果、魔法カードのほぼ独占、そして指定カード67種という結果となっていた。

 尤も、ゲンスルー自身はその集団で一緒にクリアする気は全く無かった。当然だが、チームだと分け前も減る。既に50人近い数の構成員がいて、そこから分けるとなると必然的にかなり目減りする。そしてそこで揉めるのも必定。だからこそ、確実に集まった所を一網打尽にして奪う。結成当初から密かに決めて置いた事だった。その為の地道な仕込みも済ませていた。

 

 

 本当に後少しだった。ようやく魔法カードが独占に近い状態になり、後は人海作戦でカードを奪っていくだけだったのだ。出来れば90種辺りは確保しておきたかった。先行するツェズゲラ組の為に。

 

 

 

 

 

 だが、予想外の事態が起きた。

 

 

 

 

 バッテラからの急な契約内容の変更が通達されたのだ。それは、最も信頼されているシングルハンターのツェズゲラから【交信(コンタクト)】を通じて伝えられた。

 内容を要約すれば、クリアに関する契約は変わらない。だが、諦めた者達のせいで飽和状態になっている現状を改善するべく、G•Iに初めてログインして、一度も現実に帰還しておらず、3年以上経過している者。かつ、現時点で指定カード枚数20枚以下の者達は達成不可能として、現実世界に帰還し、契約終了とさせてもらうというものだった。また、クリアを諦めた者も自己申告で同じ様にしてもらうという事だった。

 そうした者達は、ツェズゲラ組が現実世界の帰還をサポートするというサービスが付いていた。

 

 

 ここまでならまだ良かった。だが、この後が問題だった。帰還した者は、当初の契約の違約金として、1人最低5億は支払うという、驚きの条件を加えてきたのだ。ランクA以上のカードを所持していれば、そこからランクに応じて違約金は増えるという。

 

 

 これに、雇われ達は殺到した。当然、自分達の集団のメンバーも、下っ端はサッサと抜けて行った。苦労せずとも5億が手に入るのだ。そして、その金額は、クリアした場合より多い。

 中にはレアカードを持ち逃げしようとするクズもいて、実際にやられたケースもあった。そのようなクズは、帰還する手前でサブとバラが大方始末してくれていたが。

 危機感が高まり、初期メンバーが全員を招集し、カードを整理しようとした時には、メンバーが半分以下になっていた。

 

 

 ゲンスルーはこれを明確な失敗と捉えた。よって、その場で自分が爆弾魔(ボマー)だとバラし、爆弾の能力、【命の音(カウントダウン)】の説明を全員に行い、発動させた(この能力は、カラクリを口頭で説明する事で発動する)。

 そして……メンバーを脅し、主要なカードを全て手に入れてから、()()()()した。取り除くのではなく、爆発させたのだ。一気に20人以上がそれによって死んだ。

 

 だが、ゲンスルー達の気分は晴れない。それどころか、怒り心頭の状態である。

 

 

 恐らく、これは()()()()()()()()()()()()()だ、と。

 

 

 

 ツェズゲラか、バッテラか。どちらの発案かは分からないが、ここに来てそれをやったという事は、ゲームバランスの調整か、はたまた新規での参入を増やす為か。

 

 真意は分からない。

 

 

 自分達のやり方は実際ルールの隙間を突いてハメてる様なものだ。そして、ほっとけば新規は何もできないまま、状況が煮詰まってしまう。そこを崩してきた、という事だろう。だが、解せないのは、ツェズゲラがクリアを放棄したと宣言した事だ。奴の立場ならそれこそクズどもが持ち込むレアカードを独占できる立場にある。

 

 

 

 何故、そうしたか。

 

 

 

 恐らくバッテラの意図が関わっているのだろう。10年もの間、クリア者無しの状況に辟易して、状況を改善したかったか。だが、それこそツェズゲラをクリアさせても良かった筈だ。結局何がしたかったのか。分からない。情報が足りない。

 ()()()()()許せない。自分達の5年間のクソみたいな我慢が、そんな訳の分からん理由で一気に台無しになってしまった。だからこそ、ここからは自分達でやる。

 多少強引な手を使ってでも、必ずクリアまで漕ぎ着けてやる。

 

 

 

 

 そういった決意を胸に、爆弾魔(ボマー)は動き出す。

 

 

 

 

 その成果はすぐに表れるだろう。彼等は大量殺人鬼のPKなのだから──




とりあえずここまでとなります。
次回は書いている途中な為、もう少々お待ちください。

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