アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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109、闇の森

 

 

 

 

 

 

 

 我々は歩く。この闇に包まれた森を。当然だが、辺りは暗い。唯一の灯りはシルバードッグの輝く毛並みときた。そして、どっちに進めば良いか全く分からない。正に八方塞がりな状態である。恐らく正解ルートがあるのだろう。それを自力で見つけなければならない。

 

 

 ここで、まずは弟子に伝えておこう。

 

 

「皆、聞いてくれ。恐らく現在、このゲームで1番難易度が高いであろうクエストが始まっている。よって、私達はここからは殆ど手を出さない。君達の力でクリアしてもらいたい」

 

「ゲッ、マジか! この状況でもそれやる!?」

 

「この状況だからだ。君達にとっては何よりも得難い経験となるだろう。ここから先は君達が方針を決めろ。なーに、失敗してもいい。だが、終わるまでは回復なども一切しないから、覚悟を決めて取り組む事だ」

 

「えっ。マジ…?」

 

「大マジだ。私を当てにしないで難局を突破する力を身に付ける為だ。私がいつまでも助けられる訳ではないからな」

 

「まぁ、確かにそうだね。頑張るよ」

 

「うむ。そうしてくれ。さて、これからの方針を決めるんだ。状況は待ってくれない事が多い。私はこれ以降口を出さないから頑張るんだ」

 

「分かった……じゃあ、早速だけど、この場に留まるわけにもいかないから出発しよう。シル君が先頭で、オレが続くよ。動物達を囲んで左右をカルトとキルアお願い。後ろはレオリオにお願いしようかな」

 

「OK。中々いいと思うぜ。それで行くか」

 

「オレも特に文句は無いな。妥当な判断だろう」

 

「僕も異議なし。ただ、カーム達はどうする?」

 

「あっ、そうだね……」

 

「あぁ、我々は適当についていくから気にするな。決まったなら行こう」

 

「分かった。じゃあ出発しよう」

 

 

 

 

 

 そうして我々は動き出した。先程のゴンの判断だが、野生の勘が鋭い強化系のゴンが先頭で、中距離攻撃手段を持つ2人がサポート。万が一の対処と後方支援にレオリオと、中々理に適っていると思う。瞬時にそれが出せたなら成長した証だ。

 だが、ここも一筋縄ではいかなそうだ。どうなるか、楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 我々はひたすら歩いている。道という道は無く、真っ黒なジャングルを警戒しながら歩くというのは中々神経を削る。彼らは交代で《円》をしながら歩いていたが、慣れない為に消耗も激しそうだ。

 思い出すな。あの行軍の時を。アレに比べればただ暗いだけなこの場所は、私にとったら散歩みたいなものだ。

 ただ、ウンザリするぐらいに何もない。もう体感で半日は歩いているだろう。逆にそれが弟子達の負担にもなっているようだ。

 

 

「なぁ……()()、いつまで続くんだ? そろそろ何かあってもいいんじゃないか?」

 

「う〜ん……これじゃラチがあかないね。どっちが正解かも分かんない。何か見落としてる事があるのかな?」

 

 

 ふふ、迷ってるな。しかし、もういい時間だ。

 

 

「話し中すまないね。君達、そろそろペットのエサの時間だ。ちょっと立ち止まってくれるかな?」

 

「もうそんな時間か。しゃーねーな。オレ達もとりあえず休憩すっか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ペットに餌を与え、我々も軽く食べて休憩する。当然ながら警戒は怠っていない。

 ここまで何もなかった。ただ不気味なだけだ。だが……()()()()()()()()()()()。私が主催者だったならそうする。勘だが。半日以上放置して、警戒疲れを起こした所で……というやつだ。又は本当に別のフラグがあるのだろうか。動物達に聞いても首を振るばかりだ。と、いう事は……。

 

 

 

 

 !

 

 

 

 

 

 私のコッソリ張っていた警戒網に反応が引っかかる。……来たか。ビスケも気付いたようだ。だが、私とビスケはバレないように目配せをし、大きな反応はしない。ギリギリまで様子を見る。いつ気付くかな?

 程なくして、まずゴンが、ついでキルアとカルトが反応する。

 

 

「!! みんな! 何か来るよ! 警戒して!!」

 

「ようやくお出ましか。待ってたぜ」

 

「複数から狙われてる。とりあえず円陣を組んだ方がいい」

 

 

 その言葉から、直ぐに万全の迎撃体制が整う。非常に優秀だ。もう卒業間近だな。さて、何が来るか。

 

 

 

 

 暗い森の影から、のそりと姿を現したのはこれまた闇に包まれた6本足の獣型の奴だ。何と言ったらよいか分からないが、黒いウジ虫に全身をたかられた様な感じだ。元はトラの様な生き物かもしれないが、その面影は全く無い。ウネウネと蠢く闇が非常に気色悪いし、顔に当たる部分から覗く2つの光点が嫌悪感を増幅させる。

 

 

「なんだありゃ……気色悪っ」

 

「それでもやるしか無いよ。……来るっ!」

 

 

 ソイツは、身体にたかる闇の一部を伸ばして攻撃してきた。カルトが紙吹雪を舞わせ、迎撃する。その隙に、ゴンがオーラを込めたパンチをソイツにお見舞いした。

 

 

 ブワッ!!

 

 

 闇が一瞬散る。同時に()()が一瞬見えた。毛皮だ。やはり動物だ。ソイツはたたらを踏んでしばし停止したが、再び闇が集まって動き出した。

 

 

 

「ゲッ。マジかよ。ゴンのパンチでアレか!?」

 

「おい! ゴン大丈夫か!?」

 

 

 レオリオが問いかける。何故ならゴンのパンチした腕が()()()()()()()になっていたからだ。

 

 

「うん! 大した事ないよ。でも、コイツら直接攻撃しちゃダメだ!」

 

「見りゃ分かるわ! 一旦カルトとキルアに任せて下がれ!」

 

 

 再び獣が攻撃して来るが、紙吹雪で押し止める。だが、その間にも周りには複数の獣達が姿を現す。

 状況が切迫してきたな。だが手は出さない。そして、気付くだろうか? 彼らの攻撃はある意図を持っている事に。

 

 

「おい、どーすんだ!? オレの電撃もあんまり効果ねーぞ!」

 

「僕の能力にも限界がある。これ以上は押し切られる」

 

 

 

 私は彼らを尻目に自分に来そうな攻撃を躱す。だが、余りその必要はない。何故ならコレは、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 弟子達は必死に抵抗している。ゴンはジャン拳パーを使って撃退しようとしたが、それでも、一時攻撃が途絶えるだけでまた復活してくる。ジリ貧とは正にこの事だ。懐かしいな。こんな状況は日時茶飯事だった。暗黒大陸初期はそれで押し込まれて、ギリギリで復活してまた押し込まれて、と泥試合みたいに繰り返して、ようやく攻略法を見つける感じだった。後半は慣れてすぐに分かる様になったが。さて、この襲撃だが、どう対処する?

 

 

 

 そうこうしてるウチに、カルトの紙吹雪をすり抜けて、触手(?)が中央に向かう。そして、()()()()()に当たる寸前にゴンのジャン拳チー、つまり刃に変化させたオーラがソレをぶった斬る。

 

 

「コイツらの狙いは動物達だ!! このままじゃ飲み込まれちゃうから、闘いながら移動して、コイツらを撒くよ!」

 

 

 ……気付いたか。そう。これは()()()()()()()! 如何に動物達を守りながら目的地へと辿り着けるかの勝負! そして、良く奴らの動きを見れば……

 

 

「ビスケ! シルにお願いして、動物達を守ってもらって! レオリオは他の子達を担いで走れる!?」

 

「オッケーだ。任せろ」

 

「了解。シルちゃん、聞いたわね! あんな気色悪いのにやられない様にみんなを守ってくれる?」

 

 

 

「ワン!!」

 

 

 正解。奴らは何故かシルだけ狙わない。そこに攻略のヒントがある。レオリオはメイを背に、トラを肩車して、メレを手に抱いた。

 

 

「準備出来たぞ! いつでもいいぜ!!」

 

「ナイスだぜ。よし、みんな行け! オレとカルトが殿(しんがり)になる!」

 

 

 

 そして、全員一斉に走り出す。当然奴等も追いかけて来るが、こちらの方が早い。しばらく走ると、完全に撒いたのが確認された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからというもの、散発的に先程の「闇の獣」に襲われた。こちらとしては足止めぐらいしか現状でできない為、円陣を固めて逃げるしか手が無い。先程のゴンのケガだが、自身の能力で回復していたが、それでも次から次へとケガが増えていく為にレオリオも治療する様になった。そして、1番の問題は、今だに正しい方向が分からない事だ。

 

 

 彼らの消耗が激しい。そろそろ打開策を打ち出さないとリソースが枯渇するだろう。ヒントはシルバードッグだ。そこに打開策がありそうだ。

 

 

 

「ちょっと厳しいな。このままじゃ最終的にはやられちまうぜ?」

 

「う〜ん…。どうしたらいいんだろ? とりあえずシルだけは狙わないトコにヒントがあるみたいだけど……」

 

「そーだな。とりあえず本人(?)に聞いてみっか……。て、あれ? どこ行った?」

 

「今、そこの木陰に走っていった。多分お花摘み」

 

「なんだ。ウンコか」

 

「兄さん、下品」

 

「分かりやすく言ってるだけだろ!」

 

「おい、カーム何してんだ?」

 

「あぁ、シルバードッグの糞は銀なんだ。回収しようと思ってね」

 

「銀ねー。ウンコだと思うとちょっとエンガチョだな」

 

「ま、例え糞だとしても中身は銀だからな。ほっとくのも勿体無いだろう」

 

 

 

 

「!! カーム! ちょっと待って! ねぇ。()()、使えないかな?」

 

「は? 何を? まさかウンコとか言うなよ?」

 

「そうだよ。アイツら、シルだけは避けてた。寧ろ近づいたら離れてくじゃない。だったら、その銀のウンコもその効果があるかも……!」

 

「ゲーッ! マジかよ!! オレは嫌だぞ! お前が持てよ!」

 

「まぁ、現状どうしようもねーからやる価値はあるな……オレは遠慮しとくが」

 

「とりあえず、次の襲撃で試してみるよ」

 

 

 

 ゴンは出来立てホヤホヤの銀を手に取った。1キロはあるから多少持ちにくい様だが、両手に握りしめている。さて……私もそれは効果はあるだろうと感じている。現状を打破するためには、あらゆる事を試さなくてはならない。後は、どれぐらい効果があるか、だ。それも、次の襲撃で分かるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくして、再び襲撃があった。ゴンは銀を持ったまま、敵に殴りかかる。すると──

 

 

 

 

 ドゴォッ!!

 

 

 

 打撃音が違う! そしてウネウネと蠢く闇が消滅している! これが正解か! 中から、トラに似た6本足の動物が姿を現した。しかし、周りの敵は彼も攻撃対象にした様で、次々と触手や触腕を伸ばす。

 

 

 しかし、そこはゴン。次々と攻撃を銀で打ち払い、その動物を中央に誘導した。

 

 

「ナイスだ! やっぱりそれが正解だったか! じゃあゴン、そのまま頼むぜ!」

 

「OK、任せて」

 

 

 

 そこからゴンは、水を得た魚の様に縦横無尽に動き、闇の獣を元に戻していった。カルトやキルアも紙吹雪や電撃で的確にサポートしている。レオリオはペット達や元に戻った動物の誘導係だ。そして、しばらくすると完全に全ての動物を元に戻す事が出来た。

 

 

 

 

「やったな! ゴンの推察が完全に当たったみてーだな!」

 

「ちょっとはマシになった。……でも、その分大所帯になってしまった」

 

 

 キルアが喜ぶが、そこにカルトが水を差す。確かにそうだ。この先、敵を元に戻せば戻すほど大所帯になる。護衛もしづらい。よく考えられてるな。

 

 

「う〜ん……確かにそうだな。今だに向かう方向すらわかんねーからな。ジリ貧なのはかわんねぇ。どうにかなんねぇかな」

 

 

「この子達に聞いてみようよ! ねぇ、どっちに行けばいいか分かる?」

 

 

 ゴンが先程助けた動物に話しかけるが、ゴンには先程殴られたばかりなので少し怖がっているようだ。人懐っこそうな動物だが、慣れるまではまだ時間が必要か。

 

 

 

 しかし、そこでカメレオンキャットのメレが急に変身しだした。その姿は、彼らと同じ、6本足のトラのミニサイズである。そして、彼らに近づき、ガウガウと話(?)をしている。これは……。

 

 

 しばらくそうした時間があった後、メレは元に戻り、前足の一つをある方向に指した。

 

 

 

「マジか…もしかして正解ルートか!?」

 

「やったぜ! ようやく進めるな!!」

 

 

「…………」

 

 動物との交流が得意なゴンは若干不満気だったが、向かうべき場所が分かっただけでも朗報だ。まぁゲームだから、と彼を宥め、早速向かうとしよう。

 しかし、中々良く出来ている。連れて来たペット達も大活躍だ。まだメイドパンダのメイだけが何も役割がないが、きっとこの先にそういう場があるのだろう。何が待ち構えているか、楽しみだ。

 

 








 と、言うわけで、護衛クエストでした。森に入って一定時間経つと、ペット達を狙った闇に侵された動物達が襲ってきます。
 連れて来たペットが一匹でもやられたら終了です。それぞれに役割があるため、その時点で詰む仕様となっています(復活は可能)。
 ちなみに、銀のウンコですが、ぶっちゃけこれでしか闇を祓う事は出来ません。ゴンはNo.84『聖騎士の首飾り』を身につけていましたが、それで呪いを祓えなかったのは、『聖騎士の首飾り』はカード化したものの呪いしか解けない為です。
 その辺の攻略に関する情報は、実はNo.16『妖精王の忠告』を使えば教えてくれました。






 まぁそのカードもSランクなんですけどね!



『闇の獣』
・闇の精霊によって呪いをかけられた動物達のなれ果て。汚染された「山神の庭」から出て来て、新たな動物を見つけると同じ呪いにかけようとしてくる。そのため、闇の精霊の呪いは大密林全体に広がり、今や大密林全体が闇の世界と化している。元は多くがそこでしか生息していない固有種の為、ある意味絶滅危惧種とも言える。イメージは、もの○け姫のタタリ神。呪いに直接触れると、皮膚が侵され火傷の様な状態になる(治療は可)。
 この脅威に対して、銀は非常に有効である。銀は古来より闇祓いの効果がある為だ。よって、その銀で打撃を与える事によって呪いは祓われ、元の状態に戻る事ができる。

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