アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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111、一坪の密林

 

 

 

 

 

 

 

 まず現れたのは光だった。上空から暗闇を引き裂き、一筋の光が差す。光は次第に太さや数を増やし、辺りを照らし出す。

 すると、先程までの地獄の様な景観が、次第に煙をあげて溶け始め、中から健全な植物や土が現れ出した。良かった。このままじゃ流石に気色悪いからな。闇の精霊は少しむずがる様な仕草をしながら、姿を消していった。

 すっかり闇が消え去った後の景観は、密林にも関わらず、一つ一つの生命が輝き、神聖な雰囲気が漂う静謐なものであった。

 素晴らしいシチュエーションだ。思わず弟子達も座り込み、呆然と景色を眺めている。ずっとここに居たい。そう思わせる様な場所だ。

 

 

 

 この場所が、完全な姿を取り戻した後、それまで合唱していた動物達が一点を見つめ、一斉にこうべを垂れ始める。……来たか。

 

 

 

 

 何も無い空間が光り出す。次第に()()は人の形を取って顕現する。中から現れたのは──

 

 

 

 

 

 

 

 白いドレスを羽織った美しい女性だった。

 

 

 

 

 

 

 ……驚いた。NPCではない。と、言う事は恐らく彼女はゲームマスター! そして……強い! なるほど、ゲームマスターなだけはある、という事か。ビスケなどは仕掛けたそうにウズウズしているが、まぁ落ち着け。しかし、彼女は強いは強いが、()()()()()()()()()。私には理解る。彼女が隠しているモノが。そしてそれは……。

 そう考えていると、彼女は、動物達の中心に降り立って我々の方に歩いて近づいてきた。そうして、いかにもな口調で喋りはじめた。

 

 

 

「皆さん、初めまして。我が名はディアナ。この森の神、そして精霊達の母です。この度は見事、闇の精霊を宥め、森の平和を取り戻してくださいました。闇の精霊は赤子ゆえ、力の使い方が良く分かっておらず、(わたくし)が目を離した隙に暴走してしまいました。しかし、今、無事に彼は眠りにつきました。本当にありがとうございます」

 

 そう告げると、彼女は深々と頭を下げる。

 

「ヘヘッ! いーって事よ!! オレにとっちゃこれぐらい朝飯前だぜ!」

 

 

 レオリオが赤くなりながら答える。早いな! もう惚れたか? 

 

 

「何言ってんだよ! レオリオだけの力じゃねーだろ!!」

 

「節操のない……」

 

 

 キルアが至極尤もなツッコミを入れ、カルトがため息をつきながら毒を吐く。君達割といいコンビだね?

 

 

「まぁまぁ、みんなの力が無かったらクリア出来なかったから。無事にみんな元に戻ったしね」

 

「ゴン〜お前はいい奴だな〜!」

 

「うわっ! ちょっとレオリオ引っ付かないでよ!」

 

 

 何かコントが始まったが、その台詞を聞いてディアナが反応する。

 

 

 

「……! 貴方はゴン君と言うのですか?」

 

「うん、そうだけど……」

 

「おぉ……これはまさしく運命! 貴方にはジンからの伝言を預かっています。無事に達成したらしたら伝えるように、と」

 

「!! ホント!? どんな!?」

 

「その前に、私からのお礼として、ここにいる皆さまには、この『山神の庭』へいつでもお越しいただけるようにしましょう。こちらへ……」

 

 

 

 そう言って彼女は歩き出す。これは、入口付近か。

 

 

 

「普段は幻によって閉ざしています。ですが、この一坪の密林こそが、この森への入口。さぁ、あなた方への幻を解きます」

 

 

 すると、その一画だけが切り取られたかの様に歪む。そして……

 

 

 

 

 

 

「No.1『一坪の密林』ゲットー!!!」

 

「やったな!! まだ誰もこのカード持ってないぜ!」

 

「待って。まだ何かありそう」

 

 

 興奮するゴン達を抑え、カルトが皆に注意を促す。ふむ。確かに()()()()()()()()()()()()()()ようだ。

 

「…………皆さまに問います。あなたがたは本当に数多くの動物達を救ってくださいました。それも、()()()()()()。感謝いたします。そのお礼として、更に私が知る限りのこの島の情報を、一つだけお伝えしましょう。さて、何を聞きたいですか?」

 

「それは……ジンについても?」

 

「えぇ。勿論」

 

「ゴン、オレ達はいいぜ? 折角の情報だ。今聞いちまえよ」

 

「そうだぜ。その為に来たようなもんだからな」

 

「僕もそれでいい」

 

 

「…………」

 

 

 ゴンは迷っているようだ。しかし、しばし考えた後、彼は顔をあげて答えた。

 

 

「……うん。やっぱりいいや。みんなでクリアしたんだから、みんなが得になる情報を貰おうよ」

 

「いいのか? それで」

 

「うん。オレは伝言だけで充分だよ。後は自分で探すよ」

 

「そっか……ありがとな、ゴン。となると、何を聞く?」

 

「ならば、()()を聞いた方がいい」

 

「そうか……()()だな!」

 

「じゃあ、代表してキルアが聞いてよ。今回1番頑張ったしね」

 

 

 何やら話がまとまったらしい。ゴンはジンの事を聞くかと思ったが、意外だったな。さて、何を聞くのやら。

 

 

 

「ゴホン! あーじゃあ聞くぜ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それがある街は現在海賊の首領とその14人の仲間達によって占拠されています。彼らは傍若無人に振る舞い、その街の住人を虐げています。住人はすっかり怯えきっており、1人2人でその場所へ向かっても何も教えてくれません。返り討ちになると、より住人達が虐げられる為です。ですが、彼らと同じか、それ以上の人数で向かえば、或いは住人も海賊達を退治してくれるだろうと心を開き、彼らのアジトを教えてくれる筈です」

 

 

「なるほど……人数が鍵だったか!」

 

「これまた分かるわけねーな……。だが、分かって良かったぜ! これでNo.2のカードもゲットできるな」

 

「でも、そんな人数どうやって揃える?」

 

 

 

 彼らは、次の目標について議論をはじめる。そんな中、ディアナはゴンを手招きした。伝言を伝える為か。

 

 

「では、ゴン君こちらへ……」

 

 

 そうしてゴンが誘導される。カナリ離れた場所へと行き、2人で話している。だが、申し訳ないことに私には聞こえてしまう。

 

 

「まず、ゴン君。ジンについてですが……ここにはいません。どこにいるかも分かりません」

 

「そっか……分かってはいたけど……」

 

「その代わり、ジンから貴方に伝言です。『よくやった。どうだった? このイベントはよ。後少しだぜ、頑張ってみな』……だそうです」

 

「……それだけ?」

 

「それだけです。……ただ、私から貴方に、伝えておきましょう。貴方の()()とジンは、確かにここで出会いました」

 

「!! 知ってるの!? じゃあ、その……母親は?」

 

「私はあの方とは古い馴染みでして。ですが、彼女もここにはいません。遠い場所に行ってしまいました。ただ、間違いなく生きて、貴方達の事を案じているでしょう」

 

「うん、そっか……分かったよ。ありがとう、ディアナ」

 

「どういたしまして。では、これからの貴方達の活躍を期待していますよ」

 

 

 

 ……ジンとゴンの母親はこのG•Iで出会った? そんな話があの漫画であったか? いや、ここのイベントの描写は確か無かった。だからか。しかし、あの女……私に()()()()()()()()()()? そう思っていたら、彼女から話しかけてきた。

 

 

「もし、そこのお方。貴方にも別件で話があります。こちらにいらしてください」

 

「私か? 何の用だ?」

 

「そう警戒なさらず。すぐに済みます。こちらへ」

 

 

 そう言ってディアナはスタスタと歩き出した。ビスケやカルトが警戒しているが、大丈夫だと目配せしてついていった。

 

 

 

 完全にゴン達が見えなくなる所まで歩いたら、大樹の一つに突然ドアが浮かび上がって開き、中へ招待される。

 

 

 中は木の内部の為、当然木目調の壁や家具で構成されていたが、それよりも何よりも、「非常に」散らかっていた。

 今し方まで寝てた様なベッドの布団に床一面に広がる雑誌類、お菓子類、果てはテレビやゲームまで置いてある……何でこんなのがあんの? 

 

 

「うわっ、きったな!」

 

 

 床の踏み場も無いような状況で思わず声が出た。だって、今ゴキブリいたぞ? ラーメンの汁こぼれてるし。

 

 

 一方、言われたディアナは先程とは一変して、ダウナーな雰囲気を全身から発散させていた。そして一言。

 

 

「は〜つっかれたわー。だる〜。あのキャラ肩凝るのよね〜」

 

 

 なぁ、女神キャラどこ行った?

 

 

「おい、キャラ崩壊してるぞ」

 

「いいのよ。今更でしょ? アンタにはアタシの正体バレてる筈よ、〝救世主〟」

 

「〝救世主〟じゃないがまぁ…な。隠すならもっと上手くやればいいものを。()()()()()()()が若干見え隠れしてたしな」

 

「フツーはバレないの! アンタぐらいなモンよ」

 

 

 そう言うと、彼女は擬態を解除した。うーむ。こんな人種は見た事ないな…。亜人種、という奴か?

 

 

「それはいいが、何の用だ? わざわざゴンの話まで聞かせて」

 

「それはアタシが聞きたかったのよ! 〝救世主〟が今更()()に何しに来たのサ?」

 

「あぁ、ちょっと欲しいアイテムがあってね。弟子の育成ついでに来てみたというわけだ」

 

「ふーん。アンタらも人並みな欲求があんの? で、アタシたちに何かするって訳じゃないのね?」

 

「いや、何をするも何も無いが。何か〝救世主〟関係であったか?」

 

「いけしゃあしゃあとよく言うわ! アンタ達〝救世主〟のせいでこんなトコにずっと閉じ込められたっつーのに!! まぁ、何も無いならいいわ。じゃ」

 

 

 ディアナは私を部屋から追い出そうとするが、ちょっと待てや。

 

 

「いやいやいや、もっと説明しろ! まるで何の事か分からんのだが?」

 

「ふん。言った通りよ。アタシはあの子の母親とコチラに来てブイブイいわせてたんだけど、当時の〝救世主〟にとっ捕まっちゃって封印食らった事があってね」

 

「……今、その雰囲気は感じないが?」

 

「まぁ、ジンが発見してくれて、封印も解いてくれたからね。感謝はしてるわ。一応ね。イヴリス様はジンとはケンカばっかしてたけど、いつの間にかくっついちゃって。子供まで出来るとは思わなかったわ〜。あのコも大きくなったわね〜」

 

 

 近所のオバちゃんか、お前は。

 

 

「ほう。そうか。で? そのイヴリス様は?」

 

()()()に帰っちゃった。まぁあの方は高貴な生まれだからね。仕方ないね」

 

()()()って……まさか」

 

「アンタらが『暗黒大陸』って言ってるトコよ」

 

「! そうか……。で、お前は?」

 

「アタシはまぁ…行っても弱いから役に立たないし。従者契約解除されて、好きに生きろって言われたから、ここでのんびらーっと過ごす事にしたってワケ。ま、ここの生活も気に入っちゃいるからね。あそこと比べりゃ天国よ。今回みたいにちょっと仕事すればOKだから楽だわー」

 

「ふーん、なるほどね。だから隠してたのか。しかし、最初によくコッチに来れたな。門番は?」

 

「あぁ、ソレね。向こうでちょっと政変的なのがあってね〜。追われちゃって仕方なく。アタシは弱いから別に何ともなかったけど、イヴリス様はかなり傷ついててね。偽装の為にすっごい弱体化しちゃったし。だからアイツも通してくれたわ。で、最初の話に繋がるワケよ」

 

「……あの門番大丈夫か? まぁいいか。とりあえず私は何をする気も無いから心配するな。引き続き、ゲームマスター頑張ってくれ。しばらく誰も来ないと思うが」

 

「来なくても別にいいわよ。実際この10年誰も来なかったし。つい最近【宝籤(ロトリー)】で当てた奴が出て笑っちゃったわ」

 

「ま、貴重な話が聞けて良かった。達者でな」

 

「ほーい。アンタもね。あ、でもそんなアンタに一つだけ忠告しとくわ」

 

「ん? 何だ?」

 

「アンタが()()()にいるって事は、この楽園に危機が迫っている証。歴代の〝救世主〟もそうだった。逆に言えば、()()()()()()()()()()()そうなるかもしれないケドね。アンタに大切な人がいるなら精々気を付ける事ね」

 

「それは……」

 

「ま、アタシの生活を脅かさない様にしてくれれば文句無いわ。頑張る事ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ディアナと別れ、ビスケやカルトに詰め寄られたが、〝聖光気〟について質問されていたと答えた。別に間違ってはいないからな。ただ…気にはなる。ディアナの最後の忠告の件だ。

 

 

 楽園の危機? どういう事だ? キメラアントじゃないのか? ()()()()()()()()()()()()()? ……分からない。だが、もしそうだったとして、本当に厄災級の事態が発生したら。私はどうすべきだろうか。

 

 ……いや、少なくとも、私がいる限りは全て潰してやる。それは世界の為ではない。私の為だ。誰が来ようと、何が起きようと。

 

 

 

「カーム、あの女に何言われたか分かんないけど、真に受けない方がいいわよ。アイツは嘘つきだからね」

 

「アイツ…胡散臭かった。僕、アイツ嫌い」

 

「ほう。どうしてそう思った?」

 

「ん? 長年嘘つきやってりゃ分かるわよ。アイツは何か隠してるってぐらいはね」

 

「僕は勘かな。でも、ウチは癖ある人が多いから間違ってないと思う」

 

「それに、貴方もね。カーム。何があったか知らないけど、嘘をつくならもう少し努力が必要ね」

 

 

 

 

 参ったな……お見通し、か。女性の勘は侮れんな。まぁいい。

 

 

 

「ご名答。まぁ()()言えない。だが、すぐに話すよ。他ならぬ君達にはね」

 

 

「ふふ。それならいいわ。さて、サッサとクリアしましょ? ガキンチョ、ちょっと急ぎなさいよ」

 

「ババアは黙ってて。カーム、僕からの話はクリア後に聞いてくれるかな?」

 

 

 ほう…カルトはもうクリアする気か。その意気や良し。

 

 

 

 

「分かった。そうだな。では、クリアの後、しっかり話そう。()()()()()




「一坪の密林」
・前話までの「闇の精霊」イベントを条件付きでクリアすると、森の神ディアナが降臨する。彼女から、闇の精霊と動物達を救った礼として、「山神の庭」への入り口のフリーパスが貰える。それこそがNo.1『一坪の密林』である。また、更に厳しい条件を達成していたら、彼女から裏報酬としてゲームに関する情報を何でも一つだけ貰える。その条件は以下の通り。

・イベント初見突破
・動物を200匹以上救出

 上記のどちらかを達成するとこの裏報酬条件がクリアとなる。しかし、200匹はTASレベルの難易度であり、かなり厳しい。だからといって初見突破が簡単という訳ではないが。いずれにせよ、裏報酬は非常に厳しいものであると言える。


ディアナ
G•M(ゲームマスター)の1人であり、主に具現化系を担当している。
 彼女は、実は亜人種であり、とある高貴な人物の従者であった。しかし、その国で政変が起こり、彼女共々命からがら脱出し、メビウス湖の中の「楽園」まで逃げてきた。
 そこで2人して傷を癒やしていたが、治った後に調子に乗って2人でヤンチャしすぎて、当時の聖光気習得者、つまり〝救世主〟にお仕置きされた。具体的には、暗黒大陸に対する訓練所の一部に組み込まれ、永遠に強制労働をやらされるハメになった。おかげで〝救世主〟は彼女にとっては憎き相手ではある。しかし、やらかした事からすれば妥当、というか穏当(暗黒大陸基準)ではあるので、まだマシかという心境でもあった。
 時代が過ぎて、ジンが施設を発見し、封印を解除した事で解放されたが、彼女的には、古巣に帰るよりはコチラにいた方が平和であると感じ、主人に懇願して、残る事になった。そして、グータラ生活を送る代わりにゲームマスターの任を引き受けた。
 今、彼女は充実した理想のグータラ生活を満喫しており、そこに新しい〝救世主〟が来訪した為、実は再び封印されるかと焦りまくっていた。


亜人種
・人と異なる種族との混血を指す。広い意味では原作のキメラアントもこれに含まれる。亜人種は「楽園」ではかなり強力な存在ではあるが、暗黒大陸ではまだまだ弱っちくて、基本的には上位種族に奉仕する立場の存在である(全てがそうでは無いが)。長命で頑丈な為、人間よりは優れた従者として上位種族からの人気はあるが、若干虐げられる存在ではある。人間ほどではないが。
 ディアナは魔族と人との混血であり、魔族の要素を色濃く引き継いでいる。亜人種としては非常に優秀な存在でもあった為、高貴な()()の従者として抜擢された。


【速報】真ヒロインが再びアップを始めました。
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