非常に難産でしたが、ようやく出来ました…!
最初は7イン1アウトから始まるため、ビスケと高速ジャンケンをして、私が内野に残った。ビスケはズルいわさ! とプリプリ怒っていたが、我慢して欲しい。後でスイーツでもご馳走すると言ったら落ち着いたが、カルトに睨まれた。わかったよ。2つね。
さて、試合はジャンプボールから始まる。こちら側はキルアが行く。向こうは何とレイザーだ。早くも取りに来たか? だが、キルアも簡単に競り負けるほど弱くはないぞ。
そう思っていたが、いざジャンプボールをした瞬間、2人同時に飛び上がり、スパイクの姿勢でボールを挟む。だが、総合的なパワーによって、キルアは吹っ飛ばされ、床に叩きつけられる。次の瞬間、キルアに向かって凄まじいスピードのボールが飛んでくる。
「キルア!!!」
「!?」
ドンッ!
シュウゥウウゥ……
キルアはギリギリの所でボールを回避した。【電光石火】か。やるな。だが、向こうも流石に序盤からこれとは恐れいった。しかもアレは彼の念獣が投げたもの。まだまだ威力はこんなもんじゃないだろう。
「ちょっ! いきなりずりーぞ!!」
「ふむ。避けたか。残念だ。当てるつもりだったんだがな」
涼しい顔でレイザーが答える。なるほどな。我々の参加を見てなりふり構わずに来たか。いいね。それでこそやりがいがある。
「おい……なんちゅー威力だよ。これ、本体が投げたらヤバいんじゃないか?」
「そうだな、レオリオ。間違いなくヤバい。だが、君達はそれで死ぬようなヤワな鍛え方はしていない。私をガッカリさせるなよ?」
「……しょうがねぇな。やるしかないか」
《堅》
ズズ…
弟子達はレイザーの球に備えて戦闘体勢をとる。非常になめらかだ。美しくすらある。そして、その顕在量は約3000はある。これは銃弾を浴びても防げるレベルでもあり、上位ハンターと遜色がない。
レイザーがボールに念を集める。これもまた、凄まじいオーラの集中がなされる。それが当たれば弟子達もただではすまない程のものだ。だが、防げる。後はどう対処するかだ。
レイザーが振りかぶる。遠い。だが、恐らくその距離は大して問題にならない。
ゴオッ!
凄まじい球速! 狙いは……ゴンか!
「!!」
《凝》!!
ドガン!!
まるで大砲の様な音を立ててゴンが弾き飛ばされた。驚くべき事に、
「ピピーッ! ゴン選手、アウト!! ボールの落下予想地点は……ゴンチームの内野からリスタート!」
「ほぉ。コレを耐えるか。だが、キャッチまでは無理なようだな」
「おい、ゴン大丈夫か!?」
「……うん。ヘーキ」
「なわけねーだろ!」
ゴンの額からダラダラと出血していたが、すぐに血も止まった。
「念の為にオレも見とくぜ」
「大丈夫。指も動く。次は捕る」
「……まぁいいけどよ。無理はすんなよ?」
「ふむ。では、バックの権利は君が使うといい。残り3人になったら、かな」
「うん! ありがとね」
さて、こちらのボールになったか。では、攻撃ターンだな。さっきから会長がやりたそうにウズウズしてる。……しょうがないなぁ。
「はい。どうぞ」
「分かってくれたか。無視されるかと思ったぞ。じゃあお主、ボール支えてくれんか?」
「ハイハイ。分かりましたよ」
会長の前にオーラで作った台を設置する。ボールが丁度乗るように、ゴルフのティーカップの形に加工して。
「……相変わらず器用なやっちゃな。まぁええ。行くぞい」
会長がオーラを練り始める。おいおい。この人ガチだな。……レイザー、捕れるか?
◇
ジイさんから凄まじい量のオーラを感じる。これ程とはな。また、あのオーラを自由自在に操る男もやはり常識外だ。
さて、どうする?
ジイさんがゆるりと構える。そして、
……いや、あのオーラは「試し」などではない! 来る!!
ドゴォン!!!
まるで大砲の様な音を発して、球が発射された。これは!
ドギャッ!!
レシーブが無事に成功する。しかし、恐ろしい威力! このジジイ、許さん。
「マジか。なんちゅーレベルだ、アイツ!」
「ほーう。こりゃいいのう! 素晴らしい使い手じゃ!」
「喋ってる暇ない、次来る!」
ボールに向かってジャンプする。ご名答。喰らえ。
ゴオッ!!
「ひょっ。ワシ?」
その通り。必殺のスパイクだ。さぁ、ジジイ。お前はどう対処する?
ジジイが動かない。当たるぞ? いいのか?
インパクトの刹那、ジジイが
【百式観音 参乃掌】!!
パァン!!
気付いたら、ジジイの背後から巨大な二つの手が伸びて、合掌の形を取っていた。そして……
パラパラ……
「ありゃ、壊してしもうた。力加減ミスったのう……」
バカな……あのボールを破壊するとは、どれほどの威力!! チッ。厄介な。どうしてくれようか。
「あ〜もうええわ。後は若いモンに譲るぞ」
「!?」
対処の仕方を考えていたら、ジイさんは自ら外野に向かっていった。
「なっ……!」
「いいんですか? アウトにはなってませんよ?」
「いや、アウトみたいなもんじゃ。ワシもまだまだよな。お主ならどう捕る?」
「う〜ん、自分に厳しいですね。さっきのパンチは消力が完璧に出来てましたけどね。じゃあ後で私のやり方は見せますよ」
……クソジジイめ。遊びやがって。だが、ラッキーでもある。内野には後厄介なのが1人だけ。これなら勝ちの目も出て来た。先ずは1人ずつ、確実に潰してやる。
ボールが外野の女に渡る。
「あんまり投げるのは得意じゃないんだけど!」
ギュオッ!
「ギシェ!」
何が得意じゃないだ。かなりの威力の球を投げる。リバウンドしたボールを長身のレオリオという男が拾い、再びもう1匹の悪魔を仕留める。これも中々な威力! 慣れてるな。さては放出系だな? まぁいい。さて、こちら側の準備は整った。再び、レオリオが投げる。オレ以外を先に仕留める気だな? そうはさせん。
2、6、7番、合体!!
バシィ!
「なっ! 審判、アレ、アリかよ!!」
「アリです」
「じゃあ分裂もアリなのか?」
「規定の人数を超えなければアリです」
向こうで審判に何人か抗議している。しかし、それはアリだ。そちらでもやっていい事だしな。出来るかはともかく。……いや、あの帽子の奴。アイツはやりかねないな。だが、そんな事はどうでもいい。漸く準備が整った所だ。
さて、始めるか。覚悟しろ。確実に、1人ずつ、だ。
◇
ギュオッ!!
「なっ! パス!?」
「なんちゅー高速パス!!」
外野の全ての面にいる悪魔が、パス回しを高速で行う。縦横無尽に駆け回るボールの軌道。だが、念獣が投げるボールはオレのよりも威力は相当落ちる。このレベルの奴等では普通に止められかねない。大体は無理なんだが、コイツらは異常だ。
よって、このパス回しに
ほら、そこ。
「レオリオ!」
「くっ!!」
ドギャッ!!
背面からのオレのボールだ。だが、奴も正面に向き直り、レシーブをしようとしていた。残念ながらボールはこちら側に跳ね返ってきたがな。
しかし、分析して真似をしようと思う事がやはり異常だ。
「ピピーッ! レオリオ選手、アウト!!」
「クソっ! やっぱ無理だったか!」
「練習無しでやろうとするなんて無茶がすぎるぞ? レオリオ。その辺は前から変わらないな。折れてるんじゃないか?」
「ケッ。クラピカ、オメーに言われなくてもわかってらぁ。確かにちょっと無理だったぜ。だが、骨の一本ぐれーならすぐ治せる」
……奴はヒーラーだったのか。除念師程では無いが、稀少な能力者! 先に潰せて良かった。本当はリタイヤさせたかったが。
さて、続きだ!
思いっきり振りかぶり、投げる。今度は変化球だ!
端のキルアが避ける事を選択する。だが、そのまま直角にシュート!
「!…ッ!」
「くっ!!」
一直線になってた複数人のうち、和服を着た女の子はジャンプして躱したが、衣服の一部に掠った。そして、最後の金髪も上体を逸らして躱すが、そのボールの先には悪魔が控えている。
高速の切り返しで金髪の男? にボールが迫る。
「クラピカ!!」
「……ッ!!」
【
ジャラッ!! ギチギチギチ…
ほぅ。鎖を操る能力! アレでボールを縛ったか。だが、手のダメージは隠せない。今後捕球もままならんだろう……ん? オーラが増大したぞ?
【
なっ……! コイツも回復持ちか! ……中々やるじゃないか。しかし1人は頂いたぞ。
「ピピーッ! カルト選手! アウトです!!」
「……衣服も体の一部って事……不覚」
「バック!!!」
ゴンがバックを宣言する。残り3人になったからか。これで奴らはバックを使えない。数字的にはこちらの大幅な有利だ。
だが、全く安心出来ない。あの帽子の奴。アイツを何とかしなければならないからだ。さて、ボールは向こう持ち。どう来るか。
◇
「なぁ……ツェズゲラ、何だあの戦い」
「…………オレがいなくて良かった。あの戦いでは足を引っ張りそうだ。悔しいがな。修行不足を実感したよ。少なくとも、オレ達だけじゃこのイベントは無理だったな」
「あぁ。しかし、高レベルの戦いを見せてくれるチャンスでもあるな」
「その通り。我々の仕事は終わった。後はしっかり見させてもらおう。そしてまた一から鍛え直さねばな。ククク…基礎修行など何年ぶりだろうな」
◇
「なぁ、ジイさんはアレで満足なのか?」
「一通りやったからいいんじゃないですか? 我々もラクできますよ。……しかし、『彼』…何者でしょうね」
「あぁ。ビスケ師範代もヤバいが、『アイツ』はまた別次元だ。敵味方合わせてな。今んトコ動きが無いが、もうすぐ分かるだろ」
「そうですね。とりあえずしっかりと見させてもらいましょうか」
◇
「クラピカ、貸して」
「……秘策があるのか?」
「うん。キルア、そこでボールを持って支えてくれる?」
「……なるほどな。会長がやったやつか」
「絶対に吹っ飛ばしてやる」
そう言って、ゴンはオーラを練り始める。
ゴゴゴゴ……キイィィィン!
凄まじいオーラが拳に集中する!
「最初は、グー!」
ビリビリビリ!!
「ジャンケン、グー!!!」
ドゴォン!!
およそボールの射出音とは思えない凄まじい音がして、これまた凄まじい勢いでボールが吹っ飛んでいった。
ドゴォッ!
そして、巨体の悪魔が吹っ飛ばされる。この威力は会長のものほどではないが、いい威力だ。見事。これで残り悪魔は一体。しかし、巨体悪魔はキャッチせずに、ワザと当たり、ボールを内野側まで転がす。ぶつかった衝撃で威力を殺したか。そのバウンドした球をレイザーが拾う。
「くそっ! あんなんじゃダメだ!」
ゴンが悔しがっている。まだまだ行けるか。楽しみだ。さて、それなら彼からボールを取らねばな。
「…………」
外野と内野の念獣を1匹ずつ残して解除した。オーラが増大する。なるほど。
そして、そのボールを上空に投げた。狙いは……私か!
バゴォン!!
凄まじい暴力が私に迫る。
……見せてやろう。カキン拳法の奥義を。
◇
コレを使う事になるとはな。久々にいい感じだぜ。奴もこの威力ではただでは済むまい! さぁ、どうだ!!
……インパクト音がしない!! そして、何だアレは!? 回転している!?
ギュルギュルギュルギュル……
奴は目にも止まらぬ程の速さでその場で回転していた。その姿が速すぎて竜巻の様になっている。姿もブレてはっきり見えない。しかし、それも徐々に穏やかになる。そして……人差し指の先でボールを激しく回転させる奴の姿が現れた。
「「!?」」
ジジイと女が驚いている。いや、オレも当然驚いている。なんなんだ。あの動きは。何をした!
「岩のように硬く、草のように柔らかく、羽のように軽く、山のように重い。水のように流れ、枝のように受ける。其れ即ち、自然と合一すること也。極める事で、如何なる打撃も意味を為さない」
恐らく、だが、ボールを側面から受け流しつつ掴み、そのまま勢いに逆らわず回転したのだろう。そして、少しずつ威力を減じ、ボール自体の回転へと置き換えた! オレも何を言ってるか分からない程の超高等技術だ。
……脱帽、だな。だが、勝負は終わるまで分からん。最後まで出し尽くす!
◇
「!!! バカな…! 何だあの動きは!!」
「まさか、在野にこれ程の者がいるとは…。会長も人が悪い」
「あぁ、一回手合わせ願いてぇなぁ…!」
「会長が大事に仕舞い込んでる理由が少し見えましたね。明らかに人類で5指に入る程の実力!」
「いいモン見れたぜ。オレも鍛え直さねェとな」
「えぇ。それにしてもどんな素性なんでしょうね。彼は」
◇
「ゴン、私はここまでだ。後は君らがやれ」
ボールを渡しながら奴が言う。
「!!!」
「なっ! もう少しなのに何を言ってるんだ君は!!」
外野の外から髭面の野次が飛ぶが、それも当然だ。舐めてるのか?
「私の目的は弟子の育成。これまででも過保護過ぎた。後は彼等でも充分に勝てる。そうだろう? ゴン。これはお前の闘いだ。キルアもクラピカもムカついてる筈だ。ならば、奴に勝て。私抜きでも完璧に」
「…………」
ゴオッ!
しばらく考え込んで、彼らは返事では無く、オーラで彼らはその意を示した。
だが……舐めやがって。
先程のならレシーブでいける。来るがいい。
《練》
ゴゴゴゴ……!
なっ! 先程のがMAXでは無かったのか。この歳で……怪物か…!! だが、いける。レシーブ後のスパイクで1人ずつ潰す!!
「ジャンケン、グー!!!」
ゴオッ!!
「あまりオレを舐めるなよ…小僧共!!」
バゴンッ!
よし! 成功!! 続けて喰らえ!!
ジャンプし、スパイクを撃つ寸前にボールに鎖が絡み付き、向こうに引き寄せられた。
「完璧に勝つ、とはカームも無茶な注文だ。いつもの事だが。しかし、
チッ! 鎖使い!!! 失念していた。オレのミスだ。
「………バック」
……使わされたか。もう後が無い。鎖使い(クラピカと言うらしい)から外野の女の子にボールが渡る。
ギュオン!
「ギシェ!」
……これでオレ1人。いいだろう。ガキども。ボールはコチラだ。その傲慢さを体で支払うがいい。
◇
「審判、タイムだ!」
「おい、ゴン! なんか手はあるんだろうな? 完璧に勝つ前に、アイツからあのヤバい球を捕らなきゃいけないんだぜ?」
「うん、それなんだけどね……クラピカも来て……ゴニョゴニョ」
「……またとんでもない発想だな。よく思いついたものだ」
「へへ、すごいでしょ!」
「いや、オレ自信ねーなぁ」
「だが、やる価値はある。面白い。私も力を尽くそう」
……話はついたようだ。ではいくか。
シュオオオオオ…
こちらのターンだ。
奴等は何を企んでいるか。
だが、何をしようと無駄だ。
ケリをつける。
だから。
ありったけを。