アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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あ…ありのままに今起こったことを話すぜ!
「普通の修行風景を書こうと思ったら
いつの間にかカルトちゃんの強化回になっていた」
な…何を言ってるかわからねーと思うが
おれも何が起こったかわからなかった…

頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか超スピードだとか
そんなチャチなもんじゃ断じてねぇ

もっと恐ろしいカルトちゃんの魅力の片鱗を味わったぜ…


というわけで、今回はカルトちゃん回です。


118、想い

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハイ、そこ」

 

 

ボムッ!

 

 

「ぐッ!!」

 

「ゴン! 回復だ!!」

 

「サンキューレオリオ!」

 

「死ね、クソ女!」

 

「ふふ〜ん。何回も言ってるケド、それじゃ本体が疎かになるわよ。ほら」

 

 

ボガーン!

 

 

 

「ぐうっ…!」

 

「カルト!! 下がれ! オレが行く」

 

「おぉ、速い速い。でも残念。取り囲まれました〜」

 

 

ドドドドーン!!

 

 

「ガアァァッ!!」

 

「キルア!!」

 

「ダメだ! 回復が追いつかねェ!」

 

 

 

 

 …………

 

 

 

 

 

 

 

 

「終〜了〜! 前衛、中衛全滅っと。何回目かしらねー。じゃ、回復したら次のパターンね。それとも、もっかいやっとく?」

 

 

 

 あれからかれこれ10日間、彼らはディアナと相対し続けた。

 

 爆弾能力者のありとあらゆるパターンが試され、その度に彼らは吹っ飛ばされ続けた。パターンの一例を挙げれば、接触により無生物を爆弾に変えるタイプ、念獣爆弾(地上・空中)タイプ、カウントダウンで爆発する時差タイプ、投擲による爆発のボンバーマンタイプなど、ありとあらゆるバリエーションが試された。

 また、爆発自体も最初は衝撃のみだったが、徐々にダメージがアップしてきている。現在、オーラでガードしなければかなりの重症になる威力となっている。これは彼らの知らない事だが、具体的にはゲンスルーの【一握りの火薬(リトルフラワー)】レベルに近い威力である。

 それが、手を変え品を変え襲ってくる。《隠》によって爆弾が見えない事もザラだ。また、単純に1パターンだけでなく、それぞれのパターンを組み合わせてくるようになった為、更に厄介度が増している。

 この日も結局全員が夜までボコボコにされて、ようやく解放された。

 

 

 

 

 そして、次の日。

 

 

 

 

 相変わらずディアナにボコられ、一通りのバトルを行った後でディアナが所感を述べる。

 

 

 

「う〜ん…動きは大分マシにはなってきたわねー。でもまだまだね。そんなんじゃ精々相討ちがいいトコよ。せめて私から5分以上は保つ様にしないとね〜」

 

「バ、バケモンめ…。本当にカームはあんなバケモンをあしらえるのか? フツーにヤバいレベルだぞ?」

 

「コラそこ! バケモンとか言わない! まぁ、気持ちは分からんでもないけどね。近くにいたら意外と分からないモンよ。それに、アイツの場合は特別だからね」

 

「特別…?」

 

「そう、特別。特別なオーラの持ち主よ。弟子なら心当たりあるでしょ? そういう人物は例外なく()()()。それは偏に衆生を救う為、と言われているわ。ま、その代わりに衆生の害になる奴に対しては鬼か悪魔かって感じになるけどね」

 

「……なんかまるで神話の登場人物ってイメージだな」

 

「まるで、じゃなくてそれで合ってるわよ。太古から人々を導いてきた存在、それが〝救世主〟であり、〝聖光気〟の持ち主よ。ある意味歴史を動かす人物なのは間違いない。歴代がそうだったからね」

 

「…カームは…普通の人間。そんな大層な人物じゃない」

 

「カルトちゃん、それは本人がそう思っていても周りが認めない。そういうものよ。いずれ祭り上げられるでしょうね。良くも悪くも」

 

「だって…ッ! 彼はそんなこと望んでないッ!!」

 

「言ったでしょ。望む、望まないに関わらず、()()()()()()()。それが彼の使命」

 

「アンタに何が分かるッ!!」

 

「おや? おやおや…? カルトちゃん、まさか貴女…うふふ。いいわね〜若いって。でもね、それは叶わぬ願い。貴女と彼では存在の次元が違う。お互い不幸になるだけよ。諦めなさいな」

 

「決めつけるな!! そんなの分からないじゃない!!!」

 

「残念ながら、〝救世主〟は()()()()()()()()()。それは歴史が証明してるコトでもあるわ。そうなる前に離れときなさい。これは私からの忠告よ」

 

「……!! ならば、僕があの人を守護(まも)る!!!」

 

「…私にもあしらわれるような雑魚がよく吠えたものねェ。それを言うんだったら最低限の〝力〟ぐらいは証明してみなさいよ。今のアンタじゃ彼の足枷。足を引っ張って()()()()()()破滅するってところかしらね。それとも破滅が待ってても彼とゴッコ遊びができるだけでも幸せなのかしら? チビのお嬢ちゃん?」

 

 

 

 カームについてカルトに語るディアナのオーラは次第に強さを増し、やがて暴虐的なまでに膨れあがる。彼女自身は本音で語っている。多少は〝救世主〟に思うところもあろうが、今語った事は事実だからだ。

 そしてカルトに対しては心配半分、挑発半分と言ったところである。この10日間で、カルトの鬱屈した感情をディアナは見抜いていた。その揺れる感情も。その原因が彼であることに気付き、揺さぶりを掛けている。それは、人が大きく成長する為の前段階。それを上手く引き出すためだ。ディアナはカルトの「覚悟」を問うている。その想いの強さを。

 

 

 

 そして、それはついに成果をあげる。

 

 

 

「……ッ!! アンタなんて大ッ嫌い!!!! そんなことを言う奴は絶ッ対に許さない!!!!」

 

 

 

 

 ゴゴゴゴゴ… 

 

 

 

 ズザアアアア!!

 

 

 

 

 普段より一層強いオーラを纏った紙吹雪が舞い、カルトに貼り付いていく。それは次第に形を成し、甲冑の姿へと変化する。

 

 

 

 

 

 

 【塵地螺鈿飾鎧(プラチナスキン)】!!

 

 

 

 

 

 

 その鎧は一つ一つの紙にオーラが込められ、陽の光に反射してキラキラと輝いている。中には以前カームに作って貰った薄い銀で出来た紙も混じり、輝きを増している。また、絶えず全ての紙吹雪が移動する事で、まさに塵地螺鈿の如き様相を呈している。

 

 

 

 

 そしてソレは()()()の全身甲冑であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それまでのカルトでは、紙を全身に貼り付ける程度にしかならなかった。そして、彼女自身が伸び悩んでいた。しかし、ここ1ヶ月近く、彼女の中で鬱屈していた激しい想いが遂に爆発した。念とはつまるところ想いの力でもある。精神修養を重要視されるのはそのためだ。その想いによって、念の威力は激しく揺れ動く。そして、その想いを爆発させた者は、一段階上の域に至る。つまり、()()()()()だ。家族の呪縛、使命、焦燥、そして彼女に新たに芽生えてきた()()と言う感情。ここ最近に至っては、冷静に振る舞っているようにも見えて、もはや自分でももてあますほどのマグマのごとき感情の波が渦巻いていた。

 

 

 

 それは〝初恋〟と呼ばれるものであった。

 

 

 

 自分を自由にしてくれる存在、どんな自分も受け止めてくれる存在を彼女は心から欲していたことに気付いたのだ。そんな彼に認めて貰うことが何よりの喜びとなっていた。それはこれまでにはなかった感情である。

 最初は家の仕事の一貫だった。そもそも男として扱われ、暗殺の仕事をこなす日々。肉体が成長するにつれ、女性としての作法を母親から仕込まれ、やがては政略結婚の道具とされる。カルトとしては、会ってもいない、好きでもない人物の伴侶になる事はゾルディックの女として生まれたならば当然の事であり、そこに疑問を覚えたことはなかった。

 だからこそ、彼女は執着していた。次期当主とみなされており、家族内で1番期待をかけられている1つ上の兄、キルアに。それはゾルディックだからこその歪な構造であり、キルアを大事に守るための措置であった。そこには1番上の兄、イルミや母親の影響も強く作用していた。

 だが、実際に外に出て自分の愛する兄と行動するにつれ、彼女の中で少しずつ変化が起きていった。それは、「自由への渇望」である。キルアがゴンをはじめとする仲間達に影響され、自由に行動する所を間近で見て、()()()()、と思うようになっていった。

 

 

 

 更に、家からの伴侶としてあてがわれた人物は、究極の力の持ち主だった。そう。全てを救えるような。カルトは期待した。彼にこんな自分を救ってもらえることを。そして、ドロドロと渦巻く愛憎の連鎖を忘れ、暖かく抱きしめてくれる彼に徐々に惹かれ始めていた。カルトの年齢では()()が何か分からない。誰もそんなことは教えてくれなかったからだ。元々感情を表に出すような子供ではなかったのもある。

 だが、彼女は気付いてしまった。そして、その想いは加速してゆく。彼の役に立ちたい。彼に認めて貰いたい。彼に甘えたい。彼に受け止めて貰いたい。彼に自由にさせて貰いたい…様々な想いを彼に抱いてしまっていた。

 

 

 その想いが一層加速したのは、ビスケット=クルーガーの存在である。いつの間にか師匠仲間の1人として現れて、その力は強力無比。見た目は始め子供の姿で、年齢は50代ということで警戒はしていたが、そこまで脅威には思わなかった。彼を狙っていることは初めから分かっていたが、せいぜい自分の使命の邪魔になる程度だと感じていた。

 しかし、自分自身が想いが加速するにつれ、ビスケの存在が大きくのしかかってくることとなる。現在カルトは彼とは弟子としての関係性しかない。しかしビスケットは同じ師匠枠だ。その時点で大きく差をつけられている。そして、その力の差も絶大だ。更に悪い事に、ここ最近は彼と2人だけで行動するようになり、美女の姿を取るようになっていた。それに対して、自分はどうだ。未だに子供な姿であり、幻影旅団にはタイマンで勝ったものの、後から聞いたらビスケは圧勝していた。そしてその力の差は離れるばかり。一刻も早くこのゲームをクリアして、彼とともに行動しなければ、またあのドロドロに戻ってしまう。自分は救われないまま終わってしまう。

 そういった危機感が、ここしばらくは非常に高まり、あとわずかで感情の波が溢れてしまうところまで来ていた。

 

 

 

 それをディアナは押したのだ。カルトを挑発することによって。

 

 

 

 そして、見事に溢れた感情は〝力〟へと昇華した。それが、この能力の由来である。

 

 

 

 彼に救って貰いたい。しかし、同時に彼に認められ、彼を守護りたい。そういった想いが、彼の象徴である白金色をモチーフとした甲冑を示す。その性能は───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふ~ん。なるほどね。ちっとはマシになったじゃない。でもね、そんなんで乗り越えられるような甘い壁じゃないのよ。今からそれを教えてあげるわ。アンタ達! 手出し無用ね」

 

 

 ディアナがゴン達に命令する。もっとも、一部始終を見ていた彼らもここは手出し無用と感じていた。

 

 

「……」

 

 

 カルトが普段から愛用していた鉄扇を持ち上げる。すると、そこに甲冑の紙吹雪の一部、特に銀細工が剥がれ、纏わり付く。そして──一振りの薙刀が出現した。

 

 

「ふふふ……いいわねェ。それこそが若さの特権! …では、来るがいい。我こそは〝魔の従者〟、〝王の守人〟、そして〝ゲームマスター〟、貴女の覚悟の強さ、見せて貰おう!」

 

 

 

 

 その瞬間、カルトの周囲全てが爆発する。その威力は一つ一つが【一握りの火薬《リトルフラワー》】を超える威力である。

 

 

 

「カルトッ!!!」

 

 

 

 思わずキルアが叫ぶ。その凄まじい威力は致命傷になりかねない。しかし──

 

 

 

 シュウウウウ…

 

 

 

 爆風の煙の中から現れたのは、変わらず白金の鎧を纏い、薙刀を構え、突撃の姿勢を見せるカルトの姿だった。それは、こと防御力に関しては、桁外れな性能を示唆している。元々が紙吹雪であり、オーラの具現ではないために出来る事でもあり、元々の素材の効果でもある。紙とは言え、現存する物質である事には違いが無いからだ。また、幾重にも層を為していて、それがクッションとなり、また絶えず動き回る事で衝撃をより緩和している。

 

 

 ドッ!

 

 

 カルトは一足でディアナの元までたどり着く。その動きは今までとは段違いである。筋肉を紙吹雪の鎧で補強している為だ。その速さはキルアにも迫る。

 しかし、その攻撃をのんびり見ているディアナではない。カルトの薙刀の動きに合わせてカウンターで反撃を行う。元々のオーラの性能が桁が違うため、パンチの一発でも致命傷だ。これまでは本気で手加減していた。彼女からしたら卵が割れないようにそっと撫でる様な力加減だ。しかし、今回に限っては手加減をかなり緩めている。そう、()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 ドパアンッ!

 

 

 

「「「!!!」」」

 

 

 

 パンチが顔面を貫通する! 思わず腰を浮かせるゴン達だったが、カルトの頭はそこには無かった。鎧の中に本体は潜り込み、散った紙吹雪はそのままディアナの顔面に纏わりつく。

 

 

「おっと、コレは中々厄介ね…」

 

 

 ディアナが思わずボヤく。顔全体を覆われ、視界を始めとする知覚がかなり封じられた。絶えず流動する鎧なだけあって、そんな芸当も可能である。

 続けてカルトがその薙刀をディアナに対して突き刺さす! と同時に、激しい爆発音が辺りに響く。

 その爆風によって、カルトは吹っ飛ばされる。一方のディアナは平然としている。顔面の紙も剥がれている。つまりオーラ差である。その有り余るオーラは多少の爆発などものともしない。剥がれた紙はカルトへと戻り、再び衝撃による凹みを修復する。しかし……

 

 

 

 

「……ねェ。ディアナの様子、変じゃない?」

 

 

 

 そう。ディアナはそのままフリーズしていた。そのオーラも頭部や腹部を中心に激しく揺れ動いている。やがて…

 

 

 

「ガハッ! ペッ!!」

 

 

 

 ビチャッ

 

 

 

 ディアナが「何か」を吐き捨てる。()()は血反吐と共に吐き出された針状の物だったが、やがて振動し、液体を振り払いながら元の姿へと戻ってゆく。

 

 

 

 

 「ソレ」は紙吹雪()()()物だ。

 

 

 

 

 やがてカルトの元へと帰っていき、薙刀の一部となった。

 

 

 

「…上方修正ね。()()()()までやってくる奴は久しく居なかったわ。認めましょう。貴女は強い」

 

「…………」

 

「でも、相手が悪かったわね。私がこれから貴女に絶望を見せる。一撃で決める。防ぎなさい。耐え切ったら貴女の勝ちよ」

 

 

 ゴゴゴゴ……

 

 

 大気が振動する。そして、その莫大なオーラがディアナの右手に集まり出す!! その威力は、レイザーのボールを遥かに超える威力!

 ディアナはその右手をカルトに向ける。

 

 

 

「これは、今までの貴女なら死に至る程の威力。耐えて見せなさい!」

 

 

 

 シュウウゥ…ドウッ!!

 

 

 

 極大のビームの如きオーラが発射される!

 

 

 

「!!!」

 

 

 

 カルトは鎧を解き、前面に大きな盾を形成する! 本体も防御体勢に入った。しかし…

 

 

 

 

 ドンッ!! ガガガガガッ!!!

 

 

 

 着弾。そしてカルトは盾諸共オーラの奔流に呑み込まれる。側から見たら完全にカルトは直撃しているように見える。だが、その激しい衝突音だけがカルトの無事を伝えている。

 カルトは盾を円錐状に形成していた。そしてそれはオーラの大部分を後方に受け流していた。

 しかし、それでも強大な力の奔流は彼女の盾を少しずつ削りとってゆく。

 

 

 

「カルト! 頑張れ!! 堪えるんだーッ!!!」

 

 

 

 キルアが叫ぶ。だが、抵抗する音は徐々に弱まり、やがて完全に飲み込まれた、かのように思われた。

 しばらくその状態が続き、やがてオーラの奔流は収まる。

 

 

 

 

 シュウウウウ…

 

 

 

 

 風が煙を吹き飛ばす。中から現れたのは……ボロボロの状態で、それでも防御体勢を取るカルトの姿だった。既に服はその意味を為しておらず、皮膚は重度の火傷の様な状態である。しかし、そんな状態でも彼女は立っていた。

 ギリギリだった。しかし、そのギリギリを保った要因は、彼女の前面に展開された()()()()だった。

 

 

 

 

「……すばらしい」

 

 

 

 そのディアナの声に反応し、銀の紙片が集まって渦を巻く。そして、凝縮したかと思えば、ドリルの様な形を作り、そのままディアナに向けて発射された。

 

 

「僕が……守護(まも)る…」

 

 

 

 最早カルトには他の事は見えていない。ただひたすらに敵を排除する。それだけを目標に、執念で立っていた。

 

 

 

 

 ギャリギャリギャリ!

 

 

 

 

 

 凄まじい衝突音を立ててディアナの防御に差し出した手を抉る。しかし残酷なまでのオーラ差によってダメージを殆ど与えない。

 やがて、カルトがゆっくりと倒れる。限界だったのだろう。そのダメージも、オーラも。やがて攻撃の為の銀吹雪も力無くその場に落ちていった。

 

 

 

 

「よくぞ耐え抜いた…見事なり」

 

 

 

 

 

 

 次の瞬間、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「!!!」

 

 

 

 思わず振り向いた先には、ほぼ全裸のカルトがそこにいた。そして、その次の瞬間には、最小の動きで目を狙い、2本の指にオーラを集めて攻撃を仕掛ける姿があった。

 

 

 

 

 刹那の瞬間、ディアナは本当にうれしそうに笑った。

 

 

 

 

 

 ズンッ

 

 

 

 

 誰もがカルトの攻撃を食らうと思っていた。しかし、結果はディアナの攻撃が「先に」当たっていた。

 

 

 

 

 腹部に強烈なパンチをもらったカルトは、今度こそ力なく倒れこむ。先ほどまでカルトが耐え抜いていた場所には紙吹雪が舞っていた。

 

 

 

 

 そう。カルトは【形代(シキガミ)】を使用していた。銀吹雪に依り代を混ぜ、突撃させた上で背後に周り込ませたのだ。そして、莫大なダメージを耐え抜く。それこそ致命傷の一歩手前まで。そして無理やり攻撃を敢行し、ほぼ死に至る寸前で依り代に肩代わりさせるというカラクリであった。

 

 

 

 だが、それでもディアナは規格外である。超反応のカウンターで、カルトを一撃のもとに沈める。()()()()()()()()()()()。そうしてディアナに寄り掛かるようにして倒れたカルトを抱き上げ、ディアナは告げる。

 

 

 

 

 

「〝力〟の証明、見せてもらった。私も前言撤回しよう。お前ならば、あるいは〝救世主〟の運命を変えられるかもしれぬ。だが、ゆめゆめ忘れる勿れ。それは修羅の道。進歩を止めた時、破滅が訪れる…………ふふっ。寝顔はカワイイものね。少し休みなさい。貴女は自分の想いを貫き通したのだから」









塵地螺鈿飾鎧(プラチナスキン)
・操作系能力
 基本的には紙吹雪を操作して全身に纏わせるものである。その姿は全身甲冑の鎧姿であり、一つ一つの紙片がオーラによって絶えず流動し、螺鈿のごとく白金色に輝く。
 彼女は更にカームからもらった銀性の欠片を大事に所持しており、それを鉄扇に纏わせることで一振りの薙刀を再現した。これは細部に至るまでの非常に繊細な紙片の制御の賜物であり、物質操作系の最上級の能力といえる。
 鎧であるからには防御力に関してはピカイチであり、また、絶えず流動する紙片が空気の層をなすことによって衝撃を吸収するため、非常に硬い。また、鎧の形が崩れてもすぐに復元することが可能である。
 また、攻撃に関しては、銀製の薙刀は鎧と同じく絶えず流動しているため、以前よりも攻撃力が増している。
 鎧や薙刀の一部をはがして以前のように自由自在に操作することも可能であり、これによって戦略の幅が大きく広がることとなった。

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