いよいよハイスクールも卒業の時が来た。この時代で高等教育まで出た奴は、頭脳労働系に進む奴も多い。そのまま行政に行く奴も結構いる。割とハイソな教育機関だったんだなぁ。
で、あるならば友人達にはアンダーソン家を宜しくと伝えておいた。口約束だが、自称舎弟を名乗る彼らならよろしくしてくれるだろう。
むしろ私の進路を非常に惜しがっていた。曰く、最高のドンになれるだろうに、と。まぁ最初から決めてたからね。全世界最高難関のハンター試験に挑戦するって言ったらなんか納得して応援してくれた。
私も彼らとは長い付き合いだから寂しくないと言えば嘘になる。でもマフィアのボスなんてホント向かないから。マイケルを盛り立ててくれとも言っといた。彼らならやってくれるだろう。
マイケルの修行も佳境に入った。もう既に中堅ハンター位のオーラがある。念の制御も最終的に私と同じぐらい上手くなったので、もう大丈夫だろう。
固有能力の【
最後に伝えておかなければ。
〜ボタ山にて〜
「マイケル、良く頑張った。私からは免許皆伝だ。もう既に至近距離から銃撃を喰らっても軽症で済むだろう。
ただ、最後に守って欲しい事がある。
まず、念で一般人を攻撃するな。同じ念能力者だけにしておけ。前から禁じていたが、もし相手が生き残った場合、念能力に目覚める可能性がある。やむを得ない場合には相手は必ず始末しろ。
次に、極力この力を広めるな。知っているのと知らないのとでは大きなアドバンテージがあるし、もしバレたら色々狙われる可能性があるからだ。
最後に、念能力で無辜の人々を虐げた場合、教えた私が責任を持ってお前を殺しに行く。
まぁ、お前なら大丈夫だろう。お前には苦労をかけるが、父さん、母さん、そして家の事をよろしく頼む」
「…全く。目の前にいるバケモノから免許皆伝って言われても全く実感ないよ、兄さん。
でも、言いたいことは分かった。必ず守るよ。僕はこの力をもっと高めて、家族とファミリーを護ってみせる。
家の事は心配しないで。僕が、頑張るから。何も気にせず兄さんの夢を追ってね」
本当に出来た弟だなぁ。
「じゃあアレ、やるか?」
「やろう」
お互いの指を噛みちぎり、血を合わせる。血の掟。実に6年振りだ。
「私も生きている限りは、1年に一度は家に帰ってくる。約束だ」
「僕も、ファミリーのドンに相応しい男になるよ。約束だ」
お互いに約束を交わし、笑い合う。やっぱり家族っていいな。私も約束は守るようにしよう。
直後、傷がものすごい勢いで復元する私を見て、「やっぱズルい!僕はこんな痛かったのに!」とか言いながら殴りかかってきたため、ボコボコに返り打ちにしてやった。師匠に勝とうなど10年早いわ。
ブツブツと「納得いかない…」とか言ってたが、聞こえないフリして担いで帰った。
◆
「父さん、母さん。今まで本当にお世話になりました。僕はハンターを目指します。でも、1年に一度は家に帰って来ます。手紙も書くからね」
「あの可愛いカーム君も、大きくなったわね…。本当は今でも行かせたくないわ。あなたは昔から身体が弱かったもの。でも、あなたが決めた事だものね。怪我や病気には気をつけて頑張ってね」
「ありがとう。まだまだ母さんには我が家のトマトパスタの作り方を聞きたいし、必ず帰ってくるよ」
ありがとう母さん。また親孝行しに帰ってくるよ。
「お前が居なくなると寂しくなるな。しかし、男が一旦決めた事は必ずやり通せ。前も言ったが、家の事は心配するな。あと、これは餞別だ。取っておけ」
父がずっしりした革袋を渡してきた。中を確認したらギッシリと紙幣が詰まっていた。
「いや、こんなには要らないよ!」
と、返そうとするも、
「お前の為に取っておいた分だ。親としてこれぐらいさせろ」
といって頑として受け取らない。じゃあありがたく使わせてもらうか。最後まで頭が上がらないな。
「マイケル!家の事は頼んだぞ!」
玄関先から2階の窓に向かって叫ぶと、何故か見送りを恥ずかしがって窓から見ていた弟も、親指を立てて返してきた。
「行ってきます」
さぁ出かけよう。私は家を出て、道に向かって歩き出した。しばらく歩いて見納めになる我が家を振り返った時、
「ブフォ!?」
凄まじい勢いで何かぶつかってきた。よく見ると、これはマイケルか。振り返るまで気付かなかった。腕を上げたな。とか、益体もない事を考えてたら、マイケルは腹に顔を埋めたまま
「兄さん、必ず帰ってきてね」
可愛いやつめ。
「約束しただろう。必ず帰ってくる」
「絶対だよ!」
「絶対だ」
お互い離れ、拳を突き合わす。マイケルは若干涙目だが気にしない。
「じゃあ兄さん、さよなら」
「マイケル、別れの時はさよならとは言わない。また会える様にこう言うんだ。」
「
マイケルもニヤリと笑ってこう言った。
「わかったよ。兄さん」
「
マイケル君はほんと好き。外伝書きたいぐらい。と言うか書いた。でも、ジョセフ君も好き。別れはほんとに寂しい。