アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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120、試練の終わり

 

 

 

 

 

 

 

「お世話になったね、ディアナ。ありがとう!」

 

 

 

ディアナの家で簡単な送別会を済ませ、彼らは全員で「山神の庭」の入り口へ向かう。その道中に彼らは別れの挨拶がてらの会話を続けていた。

 

 

 

「いえいえ、〝救世主〟の彼にもよろしくね」

 

「うーん…カームはやっぱそうは見えねェんだけどなー」

 

「そう思うのは当然ね。側からみりゃただ特別な気の持ち主ってだけだものね。でも、不思議とそうなっちゃうのよね〜。これまで見た中や聞いた中では例外は無かったみたいだし」

 

「…………」

 

「でもね。何事にも()()はあるわ。仮に〝聖光気〟の持ち主であっても、必ずしも〝救世主〟になるわけじゃないみたい」

 

「!? それは、どういう…?」

 

「カルトちゃん、よく覚えておいて。〝聖光気〟の持ち主は数多くの人々と交わる事によってその内〝救世主〟となる。その逆も然りだけどね。では、その持ち主が、ほぼ一切衆生との関わりを断ったら…?」

 

「!! なるほど…それは厳しい条件…。でも…希望は見えた。礼を言っとく」

 

「ふふ…色んな意味で厳しい道よ。でも頑張りなさいな。応援してるわ。他の子達も達者でね」

 

「あぁ、地獄みてーな体験ありがとよ。いつかお礼参りに来てやるからな」

 

「全く同意だぜ。覚えとけよ」

 

「えぇ。その時は熱烈歓迎してあげるから、その日を楽しみに待っとくわね…最後に、ゴン君!」

 

「えっ、何?」

 

「貴方もよくここまで頑張ったわ。両親を知る身として嬉しいわ。……貴方には特別な血が流れてる。だからこそ、()()()()()()()()()?」

 

「…? まぁ、何となくだけど分かったよ。ありがとね」

 

 

 彼らは歩きながら最後の別れの会話を続ける。そして、ディアナはゴンに上の言葉を告げ、ゴンの返答に満足したらしい。

 その言葉に頷いた後、ディアナは彼らから離れ、元来た道を戻りながら言う。

 

 

「もうここが入り口。出る時は出たいと念じるだけ。さようなら。…みんな、クリアしなさいよ!」

 

 

 

 

 全員が大きく頷いたのを確認し、ディアナは去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつも最後の最後までよくわかんなかったな。ナニモンだよホント」

 

「ゴンに言ったことの意味も分かんねーしな。ま、考えるだけ無駄か。それよか、『爆弾魔(ボマー)』の対策考えねーと」

 

「そう…だね。まずはそれだね。とりあえずここを出たらすぐさま襲ってきそうだけど」

 

「それはさすがにねーだろ…ほぼ一ヶ月だろ? さすがに別の場所で張ってると思うぜ?」

 

「例えば?」

 

「そうだな…オレならショップで張るな」

 

「そうか! カードとか食料とかの補充って考えるって事か」

 

「その通り。ついでに多分マサドラ」

 

「……あー魔法カードの補充ね」

 

「正解。んで、そうなった場合にどうするかだな。とりあえず万全を期したい。ここで作戦練ろうぜ。おい! カルト! オメーも参加しろや!」

 

「ん…めんどい…でも仕方ないか」

 

「…オメーはいつからそんな風になっちまったんだ? ほんと、ディアナ並みに変化の激しい奴だな」

 

「あんな奴と一緒にしないで! 全く…分かったよ。僕もちゃんと参加するから」

 

「分かればいいんだよ分かれば。じゃ、早速やるか。まずは──」

 

 

 

 彼らは最後の打ち合わせを始める。決して油断することのないよう、万全の体制で『爆弾魔(ボマー)』と相対するために。彼らはディアナとの闘いの中で、念戦闘に絶対はないことを身をもって体験しており、それと同時に連携の大事さや準備の必要性をイヤと言うほど理解していた。あまりにも圧倒的な相手に対して、折れずに立ち向かう。そんな経験は滅多に出来ることでは無い。いや、ほぼ無いと言っていいだろう。彼らは非常に貴重な経験をこの一ヶ月で体験していた。

 今、彼らは具体的な『爆弾魔(ボマー)』対策を練っているところだ。しかし、既に彼らは1人1人が()()()()()()()()()。油断して当たってどっこいどっこいと行った所だろう。よって、彼らが対策を練ることで、『爆弾魔(ボマー)』達に勝ちの目はほぼなくなりつつある。そこに『爆弾魔(ボマー)』達は気付かない。

 丁寧に()()()()()()()()()()()彼らには、まさか子供の能力者が上位3%の能力者であるということを想像できなかった。しかし、それも当然のことと言える。今まで戦闘能力で彼らに勝てるものはほぼいなかった。ましてや子供の念能力者だ。そんなことは想像も出来ないことだろう。

 

 

 

 

 

 つまり──

 

 

 

 

 

 結果はもう、見えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ザッ──

 

 

 

 

 

 

「よォ。久しぶりだなぁ、ガキども」

 

「ゲンスルー!! ……髪の毛どうしたの?」

 

「あ? 切ったんだよ。そんなことはどうでもいい。隙を突いてマサドラに来たみたいだが、残念だったな。【同行(アカンパニー)】2枚も使って撒いたつもりだったか? お前らの浅知恵などはお見通しだ。さぁ、オレ達にカードをよこせ。それとも()()()()痛い目に遭いたいか?」

 

「くっ……ダメだ…勝てない。みんな、逃げるぞ! 【同行(アカンパニー)】オン! エルディアナ!」

 

 

 4人が揃って再びエルディアナに飛ぶ。明らかに逃げ込む態勢だ。

 

 

「バカめ。同じような間違いはせんぞ。【同行(アカンパニー)】オン! ゴン!」

 

 

 

 早くも彼らはゴン達に追いつく。彼らの【同行(アカンパニー)】の数はこれでラストだ。残りは秘蔵の貴重なカード、『一坪の密林』しかない。それも【複製(クローン)】が足らずに後2枚だ。

 そして、【同行(アカンパニー)】で目の前に到着したゲンスルー達。システム上目の前に到着する魔法スペルは、逃げる事を許さない。ゴンはちょうど『一坪の密林』カードを手にしたところだった。しかし、ゲンスルーがその手めがけて石を投げ、その石が手に当たってゴンはカードを手放してしまう。

 

 

「惜しかったなぁ。ガキども。お前らの考えなどお見通しだと言ったろ?」

 

 

 歩いてきてカードを拾いながらゲンスルーがつぶやく。カードは【複製(クローン)】だったために、ゲンスルーの『聖騎士の首飾り』の効果によって、『真珠蝗』へと変身した。

 

 

「これで、お前らはこの方法は使えまい。さぁ、死にたくなければカードをよこすんだな」 

 

「渡すくらいなら…やってやる!!」

 

「おい、ゴン!! …くそっ! カルト、お前は逃げろ!!」

 

「でも…でも…!」

 

「いいから行け!!」

 

「…ッ! ごめん!!!」

 

「逃がさねーぞォ」

 

 

 彼らは一斉に散らばる。サブは銀髪、バラは和服の女の子を追う。そして、ゲンスルーは、年長と思われる男とリーダーと思われる黒髪と対峙する。

 

 

「お前らはオレだ」

 

 

 瞬間、ゲンスルーはゴンに速攻をかける。【一握りの火薬(リトルフラワー)】での強襲だ。ゲンスルーの手がゴンに接近し、顔面を掴みにかかったとき、ゴンの口から「…パターン2」というつぶやきが聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……解せねェな。何故【同行(アカンパニー)】を偽装してまでオレを引き離「プッ! アハハハハハッ!!」」

 

「何がおかしい!」

 

「あ〜笑った…! ちょっと勘弁してくれよー。マジで演技が失敗するトコだったじゃねーか! その落武者カットマジヤバいって!! しかも3人揃って…プププププ…アーッハッハッハ!!」

 

 

 キルアは相手の見た目のあまりのインパクトに再び腹を抱えて笑い始めた。最初の邂逅で笑わなかったのは彼の中では奇跡だ。しかし、そんな中ゴンがシリアスな場面で髪の毛について聞いてしまって、更に状況は悪化した。おかげで彼は密かに太腿を強くつねり続けるハメになった。彼らに見せたキルアの悲壮な顔は、実は笑いを堪え続けて顔面が崩壊しそうになる寸前だったモノである。

 

 

「てめェ…殺す!」

 

「おっと…笑ってる場合じゃねーな。さて、やるか」

 

 

 サブが動き出す気配を見せた時、キルアの服の上から念のアーマーで更に覆われる。サブはそれを見て、少し警戒すべきかと動きを止めた。

 

 

 

「珍しいタイプだな……ま、関係ねェがな」

 

 

 

 

 結論からすれば、彼はこのアーマーを子供の趣味と断じた。多少防御力が上がった程度だと判断を下してしまった。しかし、それも当然と言える。子供の念能力者は少なく、更に熟練は少ない。…と言うかほぼいない。せいぜいいたとしても自分たちより劣る程度であると判断を下しても仕方が無いことである。

 

 

 

「オラ!」

 

 

 

 サブの蹴りがキルアに放たれる。風切り音がする程の威力の蹴りだったが、キルアは難なくスカして後方に下がる。

 

 

「チッ…ガキのくせにすばしっこい奴だ。まぁいい。いつまで保つかな?」

 

 

 同じような攻撃が2~3度繰り返される。しかし、彼の攻撃は全てスカされてしまう。ここに来て彼は違和感を覚え始めた。

 

 

「てめェ…避けてるばっかりじゃねェか! 腰抜けが! ビビったか!?」

 

 

 あえて挑発する。しかし、当然ながらキルアは乗らない。そして、キルアがここで彼に問う。

 

 

「あのさぁ…オッサン、爆弾使わないの? それとも、()()()()()使()()()()()?」

 

 

 ビキビキビキ…

 

 

 サブのこめかみに青筋が走る。あまりにも馬鹿にした物言いと、彼の力の事を言及されたためだ。そう。サブとバラは【一握りの火薬(リトルフラワー)】は使()()()()。ゲンスルーを中心とした『爆弾魔(ボマー)』組で、ゲンスルーが中心として戦闘用の爆弾を使用する。その補助がサブとバラである。3人一組の能力であり、ゲンスルーが強力な【一握りの火薬(リトルフラワー)】と【命の音(カウントダウン)】を使用する代わりに、彼らは爆弾能力を使うことは出来ないのだ。

 つまり、彼らは本来一蓮托生である。そこを図らずも分断された形となってしまった。彼らの油断によって。

 

 

「ふっふっふ…てめェなんざ爆弾を使わなくても始末できるんだぜ?」

 

 

 

 強がりに近い挑発を返すも、キルアは飽きたような様子で彼に告げる。

 

 

 

「な~んだ。期待して損した。ハズレだな。オレがゲンスルーがよかったなー…。ま、いっか。じゃ、オッサン。終わらせるよ」

 

 

 

 ザワッ…

 

 

 

 終わらせる、というキルアのセリフと同時に、彼から凄まじい見えない圧がサブを襲った。別にオーラというわけではない。しかし、捕食者に睨まれた被捕食者のような気分にサブは陥った。ここに来て漸く自分たちの失敗を悟り始める。

 

 

 

 

 だが、あまりにも遅すぎた。

 

 

 

 

 サブが「ブック」を唱えようとした瞬間、キルアの電気付き肘打ちがみぞおちに突き刺さった。距離はあったはずだ。しかし、それをモノともしないキルアの圧倒的なスピードと威力、そして電力によって、サブは逃げる意思すら持てずに、あえなく夢の世界へと旅だった。

 

 

 

 

 

 

「よしっと。これでOK。さて、他の奴等は……この様子じゃ心配するだけ無駄か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…仲間を大勢集めて、待ち伏せさせてたわけでもない……か。わからねェな。お嬢ちゃん、こんな所に単独でオレをおびき寄せてどうするつもりだったんだ?」

 

「……面倒臭いから喋らせないで。僕は貴方に構ってる暇はないんだ。ハゲのおじさん」

 

「優しく聞いてやりゃつけあがりやがって…! 手加減しねーから恨むなよ」

 

「それはこっちのセリフ。そうだね…大体6秒」

 

「何の数字だ?」

 

「貴方を倒すまでに必要な秒数」

 

 

 シュオオオオオ…

 

 

「!?」

 

 

 カルトの周囲にいつの間にか紙吹雪が舞い、鎧を形成する。しかし、その形状は少しディアナの時とは変化している。具体的には、両腕部の鎧のパーツが片方の拳に集中し、そこだけノースリーブのような状態になっている。そして、不自然な程に巨大なグローブの形をした右拳。

 

 

 

「なっ…!」

 

「それじゃ、いくよ」

 

 

 

 強力な踏み出しで一気に加速し、バラの顔に大きな紙吹雪の拳が迫る。その動きにバラは反応できなかった。迫る脅威に対して、バラはようやく反応し、何とか攻撃をガードしようとしたものの、大砲の着弾音の様な音をたてて、()()()()()顔面を吹っ飛ばされた。

 一つ一つのオーラが紙に宿っているため視認しづらいが、これは《凝》で攻撃したモノと同じだ。そして、カルトのオーラ量はバラの優に2~3倍程度はあり、その特殊な顕在オーラ量はバラの防御を容易く貫く。

 そして、彼はあえなく吹っ飛ばされ、地面を削りながら接地する。その飛距離から、かなりの威力がバラを襲ったことがわかる。カルトはそれを確認し、警戒を緩めずに慎重に彼に近づく。

 

 

 

 

「ぐはっ、べほっ……へ、へめェ…はぜ、ほれほどのひからが……」

 

 

「…なんて言ってるのか分からないな。でも、()()()()って難しいね。何とか出来たみたいで良かった。ってもう聞こえてないか。……死んでないよね? …うん。良かった」

 

 

 バラにはカルトの声は聞こえていなかった。顔面が腫れ上がり、と言うかほぼ潰されたような状態だったため、逆によく意識を保てたモノである。

 カルトの能力は格下相手だと殺してしまうような危険な代物であるため、カルトも自分なりに工夫したようだ。

 バラは超級レベルの暗殺者から無事に生還することが出来た。五体無事、というわけではないが。そして、彼もまた、夢の世界へと旅立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 トン、パシッ!

 

 

 

 

 ゲンスルーの手を弾き、ゴンが後方へと飛び退く。その様子を見て、ゲンスルーは疑いを強める。

 

 

 

「…お前、オレの能力を知ってるな? 誰から聞いた? いないはずだがな…オレの能力を聞いて生きている奴は…」

 

 

 ゴゴゴゴゴ…

 

 

「……ゴン!! やっぱオレは降りる!! すまねェが生命が大事だぜ! あばよ! 【離脱(リーブ)】オン!!!」

 

 

 バシュッ!

 

 

「レオリオ!!!」

 

「クックックッ…儚い友情だなァ。どうだ? 絶望したか? 確かアイツはレアカード持ってなかったな? だから逃げたか。ま、持っていてもどうでもいいがな。さて…覚悟はいいか?」

 

 

「…ブック!」

 

「?」

 

 いきなりゲンスルーの会話の途中でゴンがバインダーを出す。その奇怪な行為にゲンスルーは意味が分からず立ち止まる。

 

「いいか? オレは問答無用でカードを奪うってやり方はキライだ。だからここで約束しろ。先に『まいった』って言った方が持ってるカードを全部相手に渡す…!」

 

「勘違いしてないか? お前らは条件どうのこうのと言える立場じゃない」

 

「言ったろ、これが最後の譲歩だ。約束がなければただの強奪! そんな奴には死んでもカードは渡さない!! 約束無しじゃ、たとえ殺されてももうバインダーは出さない!!」

 

「……お前も狂ってるな。オレと違うところがだが。いいだろう。約束しよう。ブック! オレの持ちカード131枚、指定カードは全部で96種」

 

「オレのカードは108枚、指定カードは89種」

 

「…『一坪の密林』と『一坪の海岸線』、『奇運アレキサンドライト』は持ってるな?」

 

「あぁ」

 

「充分だ」

 

 

 

 ゆらり…

 

 

 

 ゲンスルーが構える。その姿からは歴戦の凄みが感じられた。しかし、ゴンの方を見ると

 

 

 

 ギチギチギチ……

 

 

 

 ゴンの肉体の軋む音がゲンスルーにも伝わり、彼の肉体は一段と引き締まる。そして、肉体からあふれ出るオーラが彼の身体を覆う。

 

 

 

 

「!? なるほど…言うだけはあるようだな。だが、無駄だ」

 

 

 

 ピィン…!

 

 

 

 ゲンスルーが《堅》を行う。それは熟練のソレであり、まんべんなく張り詰められている。彼は正直、ゴンの事を侮っていた。しかし、今見た感じでは決して油断できない程の力はありそうだと当たりを付けた。顕在オーラ量は自分にわずかに届かない程度。しかし、肉体性能はやや上かもしれない。唯一子供だから実戦は少ないだろうが、万が一があるだろう。ゲンスルーは、初めは能力を使わずに嬲り、心を折る予定だったが、その姿を見てから予定変更を行う。即ち…

 

 

 

 

 ボムッ!

 

 

 

 

 ゲンスルーは自ら飛び込み、複雑なフェイントを入れつつ撹乱した上でゴンの片腕を掴み、爆破する。彼はこの時、ほぼ勝利を確信した。

 

 

 

 

 

 しかし次の瞬間、彼は腹部に強烈な打撃を喰らい、たたらを踏む。

 

 

 

「ガッ……!」

 

 

 

 そう。ゴンは()()()()()()()のだ。ゲンスルーの【一握りの火薬(リトルフラワー)】を。彼の顕在オーラは確かに見た目は少ないが、実は彼の肉体内部に大部分が内蔵されている。よって、ゲンスルーの爆破()()であれば、少し《凝》をするだけでほぼ防ぐ事が出来る。彼は本来なら片手を多少犠牲にする覚悟で臨んでいた。しかし、彼の想定は()()()()

 予想以上にダメージが無かったが、予定通り手薄になった腹部にゴンの最大の武器である強化された肉体による蹴りを喰らわせた。その結果、ゲンスルーとしては予想外の、強烈なカウンターを身に刻んでしまった。

 

 

 そして、相手が怯んだ隙をゴンは見逃さない。

 

 

 凄まじい怒涛の打撃をゲンスルーに与え始めた。ゲンスルーはそのあまりにも想定外なダメージと、続け様に繰り出される速く、重い攻撃に混乱の極みに陥っていた。馬鹿な、確かに爆破した筈だ、と。それでも辛うじてガードしながら見れば、爆破した筈の腕は健在だった。

 そして、ガードの上からでも蓄積していくダメージに危機感を覚え、相討ち覚悟で顔面を掴み、爆破する。

 

 

 

 だが

 

 

 

 

 シュウウウゥ…

 

 

 

 

 ()()()()()()()()

 

 

 

 あまりの驚きと相討ちダメージにより、ゲンスルーの動きは完全に停止した。次の瞬間

 

 

 

 キイイイィン!

 

 

「最初は、グー!!」

 

 

 

 

 凄まじいオーラの集中が目の前で発生する! こんなモノを喰らえば死ぬ!! ゲンスルーの中で走馬燈の様にこれまでの経緯が流れる。そして、彼は最初の約束を思い出した。

 

 

 

「ジャン、ケン」

 

 

 

「ま、まいった!! まいった!!オレの負け」

 

 

 

「パー!!!!」

 

 

 

 

 ドオオオオッ!!

 

 

 

 ゲンスルーの叫びは一歩届かなかった。顔面爆破により、ゴンの耳が聞こえづらくなっていた事も彼に災いした。

 哀れにも極大の念弾を喰らい、森の木々をへし折りながら吹き飛び、やがて大樹の根本に叩きつけられて、彼は()()()()夢の世界へと旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バシュッ! 

 

 

 

「よ、ただいま…って、もう終わったのか!?」

 

「うん。なんか…予定より早く終わっちゃった。それよりレオリオ! 行くの早すぎだよ! すっごい焦ったんだからね!!」

 

「わりーわりー。いや、あのままいたらマジで吹き出しそうだったからな。悪かったよ。とりあえず、あるだけ買ってきたぜ。コッチはコッチで大変だったんだからな! 予定じゃもっと保たせる筈だったろ!?」

 

「うっ…それはごめん。でも、勝つ分には問題ないでしょ!」

 

 

 本来であれば、一度逃げたと思わせたレオリオが再びゴンに合流し、万全の態勢で仕留めにかかる予定だったが、既にゴンはゲンスルーを拘束している最中だった。

 肩透かしを食いながらも、レオリオはゴンを治療しようとした…が、それも既に完全に回復していた。

 

 

「全く…オメーはこれだから…結局オレは何もいいトコ無かったな。ま、無事で良かったぜ。……アレに比べりゃ可愛いモンか」

 

 

 

 レオリオは【離脱(リーブ)】を使用して一旦外に出た。全てはゲンスルーを油断させる為に。しかし、すぐにゲームへと戻ってきて、『聖騎士の首飾り』をゲイン。【擬態(トランスフォーム)】で指定カードに変身させた【再来(リターン)】を元に戻して使い、マサドラでカードをありったけ買ってから【磁力(マグネティックフォース)】を使ってゴンの元へ再び戻ってきたのだ。その間約5分!

 外に出たらフリーポケットのカードが消えてしまう為、そのような過程を経る必要があった。

 焦るレオリオはエレナの案内もおざなりに飛ばし、気を揉みながら戻って来た時には全てが終わっていた。

 多少は落胆したが、すぐさま無事を喜び、仲間たちへ【交信(コンタクト)】を使用する。

 

 他のメンバーも既に状況が終わっていた様だ。彼らは安心しながら買ってきた魔法カードで合流した。

 

 

 

 

 そして──

 

 

 

 

 彼らの最終試練は、終わりを迎えた。




追記
すみません! 【離脱(リーブ)】の際のフリーポケットの件を完全に失念してました…! その辺を少し修正しましたm(_ _)m
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