アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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※後半、クロスオーバー注意です。そう、久しぶりのSCPクロスです。
追記:ライセンスと元ネタ表記を入れてませんでした。申し訳ありません。以下にライセンスと、後書きに元ネタを表記します。

SCP_foundationはクリエイティブ・コモンズ表示-継承3.0ライセンス作品です(CC-BY-SA3.0)
http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja




束の間の平穏編
122、門出


 

 

 

 

 

 

 

「で、2人ともそのニヤケ面ってか。つーかビスケ、若返ってねーか? 『魔女の若返り薬』使っただろ!」

 

「うふふふ…分かる? 遂に私は完全体になったわ! もうここで思い残す事はないわね!」

 

「それにしてもオーラがヤバいな…勝てるビジョンが見えねーぐらいだぜ」

 

「いつか追い越す…」

 

「ま、カルトも良かったな。オレは祝福するぜ?」

 

「ビスケ、カルト、おめでとう!!」

 

「ありがとう、ゴン、兄さん。とりあえず僕はカームについてくよ。兄さん達はこれからどうする?」

 

「…それなんだけどよ。まずは、クリア報酬の3つのカードについて決めねーと。どうする?」

 

「うーん…4人いるからなー…。どうやって分けるかだよね」

 

「あ、僕はいらない。兄さん達で好きにして」

 

「…いいのか? じゃあ1人1枚か。ゴン、レオリオ、どうするよ」

 

「…改めて言われると難しいな。……少女シリーズのどれか、かな…」

 

「レオリオ…流石にそれは…」

 

「じょ、ジョーダンだよ! なはははは……」

 

「あーそれなんだけど、君達にどうしてもというお願いがあってね。()()()()()()()()()()?」

 

「うん? 何か欲しいカードあるの?」

 

「あぁ。どうしても欲しい。タダとは言わない。負けず劣らずなモノを私から提供する、でどうだ?」

 

「いや、別に構わねーけど…何が欲しいんだ?」

 

「『死者への往復葉書』だ。私が使いたいのもあるし、クラピカにもあげたい」

 

「あ〜なるほどね…そりゃ確かにアイツには必要か。いいんじゃねーの? …ただ、もし良かったらその理由を聞きてーところだな」

 

「勿論、話そう。というか、最初から話すつもりだった。カルトとビスケには先に話したが、君達も聞いて欲しい──」

 

 

 

 私は彼らに向かって話を始めた。この話をするという事は、私の中で踏ん切りがついたという事。私はもう、過去には囚われない。それもこれも、目の前で真剣に聞いてくれている彼らのおかげだ。私は幸せ者だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな事が……」

 

「…ひっでぇ話だな! そりゃ絶望するわ…」

 

「だからその強さって事か…」

 

 

 

 話を終え、3人かそれぞれの感想を言い合う。彼らは暗黒大陸の存在を知らなかったが、ディアナの存在がそれをかなり裏づけていた様だ。よって、暗黒大陸=ヤバい所という図式が出来上がったらしい。気軽に行ける所ではないから心配はいらないが。

 

 

 

「──そういうわけで、私は死に別れた家族にどうしても連絡を取りたい。だからこその『死者への往復葉書』というわけだ」

 

「なるほどな…いいぜ。その代わり、オレにも何枚かくれよ。それでいい」

 

「レオリオ…ありがとう。もちろんさ。それに君達には代わりにコレをわたそう」

 

 

 次元収納から黄金のリンゴを取り出す。

 

 

 

「コレは…」

 

()()()のリターンの一つさ。食べた者の肉体やオーラを1度だけ限界の1.5倍程に引き上げる。副作用は無論無い」

 

「なっ…! そりゃヤベー代物だな…」

 

「君達への卒業祝いも兼ねている。仮に売ったら国家予算ぐらいはつくだろうが、極力君達で使って欲しいな。それと、出所は秘密にしてくれ」

 

「まぁそりゃそうだ。こんなの出回った日にゃ戦争が起きるぜ」

 

「ありがとう、カーム」

 

「あと、これだ」

 

 

 私はゴン、キルア、レオリオに銀の装備を再び手渡す。密林のイベントの後で、彼らが返してきた物だ。

 

「えっ? これって…」

 

「あぁ。あの時に使った物だ。綺麗にした上で、()()()念を込めた。君達への餞別だ。普通に武器として使えるが、もし万が一、どうしようもなく絶望的な状況になった時、これに祈れ。そうすれば何とかなるだろう」

 

「それは便利だな。でも、そうそうピンチな事態なんて起きねェだろ」

 

「それならそれでいい。それはただのお守りとして持っておけ。無論、普通の武器としても使えるしな」

 

「ま、分かった。ありがたくいただいてくぜ」

 

「後2枠は好きに決めてくれ……ゴンの様子を見るとある程度は見当がついたみたいだけどな」

 

「えっ、マジ? どれにすんだ?」

 

「うん。実は…コレにしようと思って」

 

「ハァ? 何で──」

 

「いや……なるほどな。………うん、面白い! いつから考えてた?」

 

「ん──コレを見た瞬間からかな」

 

「じゃあそれだけじゃダメだな。コレも必要だろ」

 

「うん、コレもいるよね」

 

「大丈夫かな、コレで」

 

「うん。つーかこれしかない」

 

「??? 訳分かんねー! オレも混ぜろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「選んだのはNo.1『一坪の密林』、No.31『死者への往復葉書』、No.84『聖騎士の首飾り』、以上の3枚で本当によろしいですか?」

 

「うん」

 

 

 エレナが手元の機械を操作する。

 

「…では指輪をお返しします。お疲れさまでした」

 

「ありがとう。えーっと、エレナさん?」

 

「うふふ、覚えてくれたの? ありがとう。さようなら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴンが戻って来た。仲間に急かされ、早速ゴンがバインダーの呪文を唱える。すると、見事にバインダーが出てきた。そして、3つのカードから『死者への往復葉書』をゲインしてくれた。…ありがたい。これで、ようやくマイケル達へ報告が出来る。

 ゴンは更に2つのカードを取り出し、『一坪の密林』をゲインした『聖騎士の首飾り』で変身させる。すると…【同行(アカンパニー)】に無事変化した。これは予め【擬態(トランスフォーム)】で変身させたものだ。とある人物の元に辿り着く為の秘策。それがこのやり方だった。

 それはゴンのバインダーで出会った履歴に残っていた人物に端を発する。初めてログインした彼に最初に出会った人物は我々の誰かであるはずだ。しかし、その前に彼のバインダーによれば「ニッグ」という人物に出逢っていた。

 「ニッグ」のスペルをアナグラムで組み替えれば、「ジン」となる……。

 

 

 全くその発想力といったら私には及びもつかない。仕掛けを作るジンも、それを解き明かすゴンも。彼らこそが一流のハンターと呼ばれるべき人材なのだろう。

 さて、これからだが、ゴン達はこのまま同行(アカンパニー)でジンに会いに行くそうだ。ジンも変な意地悪はしないという事らしいので無事に会えるだろう。レオリオも誘われていたが、いい加減試験勉強に集中したいらしい。彼とはここでお別れだ。彼は私から往復葉書を20枚ほど貰ってから自分の道へと進んでいった。寂しくなるな。しかし、彼ほど治療に特化した人材はいない。勉強も頑張っていた。きっと受かるだろう。

 ゴン達は、別れも早々に旅立っていった。ジンに会ったらキルアを紹介するらしい。ジンはどういうリアクションをとるだろうか。彼の事だ。きっと照れ隠しでもするだろう。

 別れは寂しいものだ。しかし、希望もある。私の側には、結婚を誓った2人がいる。先ずはゾルディックへの挨拶だろうか。

 やる事は沢山ある。直近で起こるだろうキメラアントへの対処、そして、何を企んでいるか分からないヒソカの捜索だ。

 

 

 

 

 だが何よりもまず最初にやる事は、手紙を書く事だ。マイケルや家族へ、私の事についての手紙を。

 

 

 

 

 

 書く内容はもう決まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 無事に帰ってこれた事。そして、約束を破ってしまった詫びを。

 

 

 

 

 別れもあったが、ゴン達をはじめとする素晴らしい仲間に出会えた事。

 

 

 

 

 こんな私について来てくれるビスケ、カルトの事。

 

 

 

 

 そして──

 

 

 

 私は今、幸せだという事を──

 

 

 

「さぁ、いこうか、2人とも」

 

「うん!」

 

「えぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヒューーン…バシュッ!

 

 

 

 

 

 彼ら2人は湖のほとりに降り立った。目の前には、マントを羽織りターバンを巻いた人物が釣りをしている。

 

 

 

「ジン……?」

 

 

 

 

 その言葉に、その人物は目だけを向ける。ターバンを深々と巻いている為、顔は分からない。

 

 

 

 

「…………ゴン、か?」

 

 

 

 

 次の瞬間、その人物がマントを翻して振り返る。

 

 

 

 

 

「よォ、思ったより早かったじゃねェか」

 

 

 

 ターバンを外して立ち上がった姿は、無精髭に黒髪の短髪、中肉中背の旅人風の衣装を付け、風来坊の様な風情だ。しかし、その顔立ちは、紛れもなくゴンに似ていた。

 

 

 

「ジン!! ……やっと…やっと見つけた」

 

「……まァ、何だ。積もる話もあんだろうけどよ。とりあえず後ろの奴は誰か紹介してくんねェかな?」

 

「あぁ! そうだったね! ジン、紹介するよ。オレの最高の友達、キルアだよ!!」

 

「ゴン…よせよ、恥ずいだろ」

 

 

 キルアは照れて俯くが、それを見せられたジンは内心全身が痒くなるような恥ずかしさに悶えていた。やっぱり【磁力(マグネティックフォース)】にしときゃよかったか、と。

 しかし、自分で設定してしまった物は仕方がない。自業自得である。

 

 

「……あ”〜お前らの関係は良く分かった! とりあえずキルア、だっけか。オメーも一緒に来い。これまでどんな冒険してきたかオレに教えてくれや」

 

「いや、でもオレは……」

 

「遠慮すんなって。おい、ゴン。アイツ連れて来い」

 

「うん! 分かった。キルア、こっちこっち!」

 

「お、おいゴン! 分かった、分かったから引っ張んなって!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──なるほどな。頑張ったな、ゴン。すでにオメーは一流のハンターだ。オレが言うのも何だが、さすがオレの息子だぜ」

 

「ありがとう。でも…オレだけの力じゃないよ。ここにいるキルアやカーム、そして、いろんな仲間がいて出来たことだと思う」

 

「ん。それを聞いて安心したぜ。良いハンターっつうのは仲間にも恵まれる。1人じゃ出来ねー事も仲間がいれば乗り越えられる…オレの仲間達も見たろ?」

 

「うん。レイザーさんやドゥーンさん、リストさん。そして…ディアナさん」

 

「ディアナにも会ったか。そりゃ良かった。それで…聞いたか? 例の話は」

 

「うん…オレの母親の話…だよね?」

 

「そうだ。まぁオメーの産みの母親に関してだがな…オメーも()()()の話を聞いたかも知れねーが、アイツはそこに突然行っちまった。産まれたてのオメーを置いてでもやらなきゃならねーことがあるっつってな。……ぶっちゃけると、オレもそこを目指してる。オメーの母親を探すっていうだけが動機じゃねーが」

 

「ちょっとごめん、ジン、さん?」

 

「ジンでいいぜ? どうした?」

 

「カームが言ってたけど…そこは人外魔境で地獄みたいなトコだって言ってたけどさ……ホントにそこを目指してんの?」

 

「あぁ。そうだぜ」

 

「……無謀じゃない?」

 

「まぁな。だからオレもいまだに行けてねーわけだ。あそこに行くには『許可』、『手段』、『資格』、『契約』の4つが必要だ。オレはまだどれも持ってない。だからこそ、今オレは地道にソレを得る手段を探ってるわけだ」

 

「そういえば、ジンは今何してんの?」

 

「ソレを説明するには、この湖と向き合う必要がある」

 

「? この何の変哲も無い湖が?」

 

「よーく見てみろ。向こうに何か見えねーか?」

 

 

 ジンが指さす小さな湖の中央に、2人は何か塊のような物を見付ける。ソレは()()()だった。いわゆる水死体の集まりだ。およそ100人以上の大規模な塊である。

 

 

「!!! あ、アレって…人の死体!?」

 

「いや、違うな。間違ってもこの湖の中に入るんじゃねーぜ? どうあがいたって奴等の仲間入りしちまうからな」

 

「は? マジ?」

 

「マジだ。アレの中に見知った死体でもあろうもんなら更にアウトだ。奴等に目を付けられて呼ばれるからな」

 

 

 2人は急いでそこから目を背ける。

 

 

「ヤバっ! なんちゅーもんを見せやがんだこのオヤジ!!」

 

「ま、アイツらの顔なんて知らねーって思いつつ見りゃなんてこたねー。一般人にはヤバいシロモノだが、俺等には通用しないから安心しな。水に入りさえしなけりゃな…ただ、コイツはハズレだ。こりゃただの死者の念だ。除念師案件だな。ま、そんな感じでヤバげな依頼をこなしつつ、暗黒大陸の手がかりを探ってるってわけよ」

 

「はー…オメーの親父、イカれてんな」

 

「…ジン、悪いけど反論できないや」

 

「ま、そう思うのは当然だな。理解して貰う必要もねーし。ただ、何もさっき言った事だけが全てじゃないぜ? 今回のコレだって、ほっときゃ何百、何千、下手すりゃ何万規模の人が死ぬっつーヤバい奴だ。しかも放置すればするほど手が付けられなくなっちまう」

 

「で? どうするの? ()()

 

「んーそうだな。普通は協会に報告して除念師を派遣してもらってから正式に成仏させてやるのが一般的だが…」

 

「それじゃダメなの?」

 

「そんなん待ってたら被害が拡大するだろ? それに、これ程拡大した怨念は一流の除念師でも到底ムリだ。だから、ここでオレが始末を付ける」

 

「は? できんの?」

 

「ま、見てなって。もう準備は終えたからな。そろそろいけるはずだ……了解、今から行く。お前等もついてこい」

 

 

 

 ジンは誰かからの連絡を受け取ると、おもむろに立ち上がってゴン達を案内する。しばらく歩いた後、工事現場のような場所に到着した。そこは例の湖より標高が下の場所であり、そこに大きなトンネルが作られていた。そこにいた現場監督のようなオッサンにジンは話しかける。

 

 

「よ! ありがとよ。無事終わったみてーだな」

 

「へっ。これぐらい軽いモンよ。とりあえず()()()()でいけるぜ」

 

「よし。カネは口座に振り込んどいたぜ。早速やるから離れてな」

 

「ありがとよ。オメーの健闘を祈るぜ。……ヤローども! 撤収だ!!」

 

 

 そう相手が周りの作業員に告げると、機材を含む人員が慌てて撤収を始めた。そして、ものの10分で完全に撤収を終えた。監督らしき人も、ジンに一言告げて去って行った。

 

 

「よし。さぁ、仕事の時間だ。行くぞ、オメーら」

 

 

 そう言って、ジンはズンズンとトンネルの内部へと進む。この男に恐怖心などは無いらしい。暗い急勾配の道のりをひたすら歩き、そして、およそさっきの湖の近くの位置まで到達した。

 

 

「うーん。アイツらいい仕事してやがんな。ホントにギリギリのトコじゃねーか。こりゃ多めにチップ振り込んどくか」

 

「あのー。ジン? もしかして…」

 

「そう。その()()()()()だ。お前等、足に自信はあるか?」

 

「まさか…」

 

「ま、そのオーラなら大丈夫か。じゃ、行くぞ。ちょっと離れてろよ」

 

 

 

 そう告げると、ジンは指先に超特大のオーラを込め出す。その大きさ、威力は概算でもレイザーの最後のボールの威力を軽く上回る程だ。

 

 

「いいか! オレが撃ったら一目散に来た道戻れ!! んで、出口で散開して水から離れるんだ! 決して水に触れたり見たりすんなよ!! 行くぞ!!!」

 

 

 

 

 キイイィィィン……ドッ!!!!

 

 

 

 

 

 凄まじい威力の念弾がジンから発射される! その念弾はトンネルの土の部分の壁を突き抜け、大穴を開ける。そして、次の瞬間には凄まじい量の水がその場からあふれ出す!!

 

 

「走れ!!!」

 

 

 ジンの号令も待たず、キルアとゴンは走り出す。勿論全力のオーラを駆使してだ。キルアに至ってはスーツを着用し、電力の力をフル活用して走っている。ゴンも負けじと筋力全開、フルパワーの力で走る。それでも背後から凄まじい勢いで水が迫ってくる!!

 

 

「「どわぁぁぁぁあああああ!!!!」」

 

 

「ハーッハッハッハッ!!! っざまあみやがれ!! こんな対処されるとは到底思うまい!!!」

 

 

 先に行く2人に追いつくぐらいの速さで、余裕の表情で笑いながらジンが駆けている。もうすぐ出口だ。

 

 

「よーし! お前等、散れっ!!!」

 

 

 

 言われなくても、2人は左右に飛び退き、ジンもそれに続く。その直後、凄まじい大爆音を立てて大量の水が放出される。

 

 

 

「お前等ーッ!! 水は見るんじゃねーぞーッ!!! ついでに《堅》やっとけーッ!!!」

 

 

 

 ジンが叫ぶが、2人は当然見るはずもない。というか、速攻で離れ、出口から遙か遠くまで避難している。その状態で目を閉じながら激しい水音を聞く。小さな湖とは言え、大量の水があった場所だ。そうそう簡単に抜ける量でもない。

 そのまま、3人は3時間近くその水音を聞き続けた。ゴンとキルアはジンの言うとおりにその3時間目を閉じ、《堅》の状態で待機した。もう既に8時間は《堅》を持続できる2人にとって余裕ではあるが、ジンの話から聞くこの現象に対して全く安心できない状況でいることは、かなりキツいものがあった。

 しかし、何事にも終わりはある。徐々に水音は小さくなりはじめ、そして、完全に音がしなくなった。

 

 

 

 

 

「お前等ーもういいぞー」

 

 

 

 

 ジンが間の抜けた声で2人に声を掛ける。しかし、2人はいまだに目を閉じ、警戒を怠らない。むしろその声を聞いて更に警戒を強める。そして、近寄ってきた存在に対して、銀の武器を装着し、攻撃を加えた。

 

 

 

「はぁ……嫌になるぐれー優秀だな。ま、それぐらい当然か」

 

 

 

 当たり前のように2人の攻撃を止めるジンがそこにいた。そのオーラに触れ、漸く2人は目を開ける。

 

 

 

「合格だ。こんな現象の時には、どんな時でも安心しちゃいけねェ。特に、事が終わったと思うような時は。声や姿形すら騙る奴もいるからな」

 

「ふー…生きた心地がしなかった……本物で良かったよ」

 

「マジでエラい目にあったぜ…出会っていきなりコレってどういう事だよ…」

 

「ははっ。まぁそう言うな。さて、結果をご覧じろ、だ。さっきの場所へ向かうぞ」

 

 

 

 そう言うと、スタスタと元の道を戻りだした。2人は慌てて付いていく。

 

 

 

 

 そこには、見事に水の抜けた()湖があった。

 

 

 

「いやー計算通り! うまくいったな!!」

 

「これで大丈夫なの?」

 

「ん? まぁ、()()大丈夫だ。見てみ? さっき死体があった場所。もうほとんど見えねーが、よーく目を《凝》らしてな」

 

 

 2人は言うとおりに見てみる。すると、先ほどの場所の地面に10体近くの白骨死体があり、その上付近にどす黒い、微かなオーラが見えた。

 

 

「ねェ…あれって──」

 

「大方水遊びしてたこの辺の学生だろ。んで、たまたま、水難事故に遭ってそのままお陀仏になりやがったってトコか。他にも遺体はあったはずだが、ほとんどは流れちまったみたいだな。問題は、ただ死んだだけじゃなくて、強い無念から他の奴も呼び始めたって事だ。多分始めは同じ学生から。そしてそのうち無差別に。んで、無差別型の死者の念に成り果てたって事よ」

 

「……まだ残ってるみてーだけど?」

 

「ん。完全には無理だったな。だがあの程度なら協会の除念師でも余裕だ。死者の念は水に宿ることが多い。今回はこの湖自体に怨念が広がってたからヤベー事になったって訳だ。んで、オレはその水を全部抜いたってわけよ。題して、『湖の水を全部抜く作戦』だ!」

 

「…そのまんまじゃねーか」

 

「へっ。何とでも言え。とりあえず上手くいったから万事ヨシ!」

 

「…湖の水の処理って大丈夫?」

 

「あぁ。自治体に許可取ったからな。というか、むしろ向こうから言ってきた事だ。この辺一帯は被害状況から立ち入り禁止区域に指定される程だったからな。水は計算してそのまんま川から海へ合流するようにしてある。問題ねーな。海ほどの規模に拡散されちまったら奴等も何も出来まい。大体、湖ってのが停滞した水だからこういう事態になっちまったってのもあるからな。さて、協会に連絡だ。後は除念師派遣して貰ってアレを祓えば、ここは無害になる」

 

「はー…すっごいね…」

 

「お前等もなかなかのスピードと《堅》だったぜ? とりあえず宿に帰るが、その後オレと手合わせしてみねーか?」

 

「!! いいの!? ぜひ!!」

 

「オレも勿論参加していいんだよな!?」

 

「食いつきいーな…ま、キライじゃねーぜ。そういうの。じゃあどれだけ強くなったか確かめてやるか。行くぞ」

 

 

 そうして、ジンは彼らとその場を離れる。ジンはその後、協会との手続きを終え、彼らと手合わせをした。その時彼らのあまりの強さにちょっとテンションが上がりすぎて、思わずボコボコにしてしまうのはまた別の話──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ~あ♣︎ 先越されちゃった♠︎ もうショボいのしか残ってないよ☠️」

 

「う〜ん…失敗でしたね。流石はジンさん、といったところでしょうか。…でももう貴方にはそろそろ必要無いのでは?」

 

「いやいや♦︎ こんな程度じゃ当然の様に跳ね返されて終わりさ❤︎ もっともっと()()()()()…♣︎」

 

 

 そう残念がるピエロの格好をした男は、凄まじいドス黒いオーラを周囲一帯に発散していた。最早()()は人類の基準を完全に超え、ヒトの形を保っているのが奇跡的な程になっている。一般人は近づいただけでアウトなレベルだ。

 隣にいる男は平然と話しかけているが、この男が異常なだけだ。

 

 

「ま、勿体ないから一応貰っちゃお❤︎ 次はいいの紹介してね♠︎」

 

「最近は色々と活性化してますからね。また紹介しますよ。ただ、そろそろ例の件にもご協力願いたい所ですが、いかがです?」

 

「あーもうそんな時期? しょうがないな〜♠︎ でもま、ボクにもメリットあるからヤるよ♦︎ また連絡してね❤︎ じゃ、またねー♣︎」

 

 

 

 

 そう言って、彼はスタスタと黒い怨念の元へ歩いて行った。そんな彼を見て、凶悪な笑みを浮かべながらスーツの男はひとりごちる。

 

 

 

「えぇ。よろしくお願いしますね。()()()さん」







 私は水中の死体に見覚えがありません。



・無差別型死者の念(操作系タイプ)
 校外学習中の水難事故で死んだ学生の集団が、無念によって産まれた死者の念。1人2人なら大した事なく、よくある事故で済んだが、集団で同じ様な無念を持った為に起こった悲劇である。
 そもそも水難事故も、ある学生により意図的に起こったものであり、その原因は他者から見れば実にくだらない、他愛の無いものであった。死ぬ間際にそれを犯人から無線で知らされ、全員が怒りや絶望を抱き、絶対に許すものかと気持ちが一つになった為にそうなってしまった。
 救われないのは、当の犯人は即捕まってしまった事で、安全な場所に護送されてしまった事である。行き場のない死者達の怒りは、同じ学生仲間に向いてしまった。より力を付け、必ずや犯人を死に引きずり込むように。
 つまり、コレは無差別型に見える目的遂行型であった。更に言えば、念能力者で言う、相互協力型にも似る。そのまま彼らは捜索に来た人員を殺し、遺体引き上げの人員を殺し、献花に来た人員を殺して、その力を増していった。強い指向性はやがてその姿を具現化し、自らを知り合いだと認識した相手を操作して問答無用で引き摺り込む程にまで成長した。
 ジンが言及した様に、死者の念は水に溜まりやすい。それが流れない水なら尚更である。そういった環境も影響して、その頃には、無差別に認識した人を引き摺り込む超危険な災害と化してしまった。
 危機感を覚えた当時の自治体のトップは、現場検証を装い犯人を差し出した。しかし、その判断は遅きに失した。その頃には完全に無差別型へと変化していた彼らは、耐性の無い一般人相手であれば無理矢理にでも知り合いだと認識させる様になってしまった。そして、検証に来た犯人と護送した警察官を軒並み引き摺り込み、更にその力を増してしまった。
 最早並の除念師にも手がつけられず、専門のハンターに依頼したが、そのハンターでも封印が精一杯だった。以降、ハンター協会内でも塩漬け依頼として長い間捨て置かれていた。
 しかし、辛うじて封印が効いていたモノが、最近再び急激に活動を開始し始め、それは周辺地域に脅威的な影響を及ぼし、このままでは大災害に発展するであろう事は充分に予想出来るまでになってしまった。
 ほとほと困り果てた自治体のトップの元に、とある奇特なダブルハンターが現れ、何とかしてやると豪語した。藁にも縋りたいトップは彼に正式に依頼し、様々な権限を与える事になった。

今回の元ネタ
SCP-2316 – Field Trip(校外学習)
by djkaktus
http://scp-wiki.net/scp-2316
http://ja.scp-wiki.net/scp-2316
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