──全人類に対し、緊急放送が掛かる。例の衝撃的な放送の後、これまで姿を現すことが無かった、ビヨンドとパリストンだ。彼らは電波をジャックしていまだ混乱が収まらない全世界に向けて発信していた。
「──世界の諸君、待たせたな。対処が遅れてしまって、本当に済まなかった。我々も奴の力を侮っていたようだ。だが、諸君等も気付いただろう! あれだけ苦しかった病が収まったことに! 念能力を持つモノなら気付いたかも知れない。諸君等を覆う黄金の光が! それこそが
それは、短いメッセージ。しかし、混乱のさなかにあった世界にとっては、希望と呼べるメッセージだった。それまで凄まじい苦しみを味わっていた者達が、いつの間にか治癒されたのだから。それは、まさしく希望だった。そして、彼らは知る。
無論、念能力者は懐疑的だった。そんなことができるもんか、と。しかし、ではどうやって恐ろしい厄災は治癒したのか。誰が、何のために。
だが、彼らは少数派である。一般世論からすれば、目に見える物こそが真実だ。彼らにとっての真実は、
世論は悪を絶対に許さない。今、明確な悪が、正義の味方によって暴かれ、そして弱っている。だが、それでも敵は怪物である。ヒーローが必要だ。そして、そのヒーローが決死の覚悟で敵地へ突入しようとしている。
全世界の一般市民から彼らへメッセージが届けられた。絶対に勝ってくれ、人類の希望を取り戻してくれ、と。各国から凄まじいまでの応援が寄せられる。自宅のテレビの前で、外の大規模なモニターの前で。
彼らは気付いていなかった。誰が、自分たちを苦しめていたか。そして、それを誰が本当に救ってくれたのか。彼らは気付かない。自分たちはそうして破滅の道を着実に進めていることに。
舞台は整った。
──最後の決戦が始まる。
◇
「ふっざけんじゃねぇ!!! いくら何でも許せねぇ!!!!」
「わめくな、レオリオ」
「だが、許せるか! こんな事を!! オレはこんだけムカついたのは産まれて初めてだ!!!」
「こんなことは想定できたことだ。むしろ、敵がようやく動き出した。そんなときに冷静になれなければ真っ先に死ぬぞ」
「~~~ッ!!! クソッたれ!!! 吐き気を催す邪悪だぜ! コイツ等は!! そんな奴等が英雄気取りで一般人の支持を集めるなんて、絶対に許せることじゃねェだろ!!」
「……頭を冷やしてこい。奴等はじきに来る。期限はそれまでだ」
「クラピカ、お前……!」
あまりにも激昂したレオリオがクラピカにつかみかかろうとした。しかし、その寸前で彼は見た。彼の両手が固く握りしめられ、血がにじんでいることに。それは、彼だけでは無い。メルエム以外の他の面々も似たようなものだ。彼らの怒りは頂点に達している。だが、それを出さずに冷静に振る舞っているのだ。その怒りを、その原因に叩き込むために。それは、彼らの発散するオーラから読み取れた。その面々のあまりの激情に、レオリオも冷静になれた。
「……すまなかった。少し頭を冷やす」
「それでいい。あまり時間は無いからな」
「わかってる…そんなに時間はかからねぇ」
レオリオが席を外し、奥にいるカームの元へ向かう。カームは、見るからにボロボロだ。その表情は苦痛に歪み、絶えず身体のどこかしらが破裂し、修復を繰り返している。レオリオから見ても明らかに無茶だ。常人ならば100回は死んでる。それでも彼はやめない。そんな彼に、カルトとビスケの2人が、甲斐甲斐しく世話をし、飛び散った血を丁寧に拭き取っている。
レオリオは分からなくなった。
そんな邪悪に簡単に先導される馬鹿な人類。厄災に手を出し、全滅寸前に陥る人類、そんな馬鹿共を救う必要があるのか…と。だが、それは実際に救おうとしているカームへの侮辱だ。レオリオは、なんとも言えない、やるせない気分に陥っていた。
「ふふ……無様だな。
そんな中、いつの間にかメルエムがそばに来ており、カームに語りかける。返事は、無い。それでも構わず彼は語る。
「結局、貴様は人間の王だったのだろう。だが、貴様には非情な決断ができなかった。自分以外は全て餌と断ずるほどの傲慢さがなかった。故に、敗れる」
その発言にレオリオも我慢ができず言い返す。
「おい! まだ負けるって決まったわけじゃねーだろ!!」
「馬鹿め。ここまで来たら敗北も同然だ。王位を簒奪され、臣民に裏切られた王の末路は、ただ新しい強者に喰われるのみ」
「……で? お前はどうするんだ?」
「余が此奴に従ったのは、此奴が約束したからだ。余を新しい世界へ導くとな。それが今破棄されようとしている。このままでは余はもう此奴と契約を続ける余地が無い」
「…言っておくが、お前も全世界の敵だぞ?」
「だからなんだ? ならば余は有象無象共に証明してやろうではないか。余こそが生物の頂点である事を」
「敵に付く気は無い、と?」
「愚問だ。以前言ったが、余と奴は絶対にわかり合えぬ。不倶戴天の敵だ。どちらかが滅びるまで闘うしか無いのだ。向こうから来てくれるのであれば手間が省けるな。」
「……そうかい。オレは、それでもカームを信じるぞ。どんな敵だろうがぶっ倒して決着を付けてくれることを。そのためにオレは命をかけてコイツを手助けする」
「そうするのは貴様の自由だ。余は余で自由に動く…だが、案外貴様の言うことも正しいかもしれんな」
そう告げると、メルエムはカームに向き直り、いきなり莫大なオーラで全力のパンチを繰り出した。その行動に、流石のビスケもカルトも反応が遅れる。しかし、それでもカームを守るために身を挺して防ごうとした
その時
いつの間にか、メルエムのパンチは
「やぁ。待たせたね」
「ふん、遅いぞ。余は退屈が嫌いだ…やはり、まだまだ勝てんか」
パンチを受け止めた人物は、明るい口調でメルエムに告げる。
「そう悲観することも無い。〝向こう〟に行けば君も直ぐに強くなれるさ…今は私より弱いがね」
「その減らず口も変わらんな。良かろう。そこの男の言うとおり、余も貴様を信じてやろう」
「当たり前だ。私は負けんよ。絶対にね」
「「「「「カーム!!!!」」」」」
「やぁ、みんな。お待たせ」
それから彼は質問攻めにあった。主に身体の負担について。しかし、彼は大丈夫だと譲らなかった。
「なぁ、オメーが終わったって事は、いよいよか」
「えぇ。来ますよ。
「……もうほとんど残ってねーだろ。本当にいけるのか?」
「大丈夫ですって。それよりもジンさん、いや、みんな聞いて欲しい。まずは襲撃を対処してくれてありがとう。無事終わったよ。そして、これからが最終決戦となる。私は正直に言えば以前より弱ってる。もしかするとヒソカの相手だけで精一杯かもしれない。だからこそ、みんなはもしかしなくとも強大な相手と闘うことになるだろう。だから、お願いしたい。死なないでくれ。死ななければ私が何とかするから」
それは、懇願。全てを救い、これから一番強大な敵と戦う彼の、確かな願い。
「余が全て倒しても構わんだろう?」
目の前の蟲の王が一番手でそう自信満々に言い切る。その様子を見て見て、カームも少し笑う。
「そうだな。是非そうして欲しい。そうすれば私も全力で闘える」
「カーム…ワシらはお主に巨大な借りがある。とても返し切れん借りじゃ。それぐらいは任せておけ。少なくともワシが絶対に死なさんでな」
「会長、その見た目で爺さん言葉は似合わないですよ」
「おっと…これは失礼したの。どうも長いことこの喋りだから抜けきらん。ま、安心せいってことじゃよ」
「ねぇ、カーム。アタシは貴方の婚約者よ? 行き遅れって言われまくったアタシだけど、ようやくここまでこぎ着けたんだから! 絶対に逃さないわよ。だから…貴方も死なないでね」
「それはそれは。婚約者様には逆らえないな。私も死なないさ。なんせ暗黒大陸で生き延びたんだからな」
そこに、小柄な子供が割り込む。
「僕はね。カーム、貴方と生死を共にするって決めたの。もし貴方が死んだなら、僕も死ぬね。そして魂まで縛ってついていくから覚悟してね」
「おっと…それは重いなぁ。でも分かったよ。約束しよう。ビスケにも言ったが、私は死なないからね。君も絶対に死なないでくれ」
「うん…約束」
カームはカルトと指切りを交わす。同時にビスケとも。それは誓い。必ず生きて、闘いを終えるという。
そして、その場にいる全員が警戒を深める。気配は無い。だが、もうすぐ奴等が来るという確信がそうさせた。
全員が背後の壁に気配を感じた。振り返ると、そこには
悍ましさを隠そうともしない、その登場の仕方に、彼らは言葉を失う。しかし、いち早くジンが再起動し、無言で指先から巨大な念弾を放つと、その〝顔〟にめり込み、
それを見たカームが、めんどくさそうにごく僅かな〝光〟の弾を投げつけると、〝顔〟は恍惚の表情を浮かべながら崩れ落ちていった。
「……待っていたんだろう? 早く出てきたらどうだ?」
カームは虚空に問いかける。
ぐにゃり
ホールの中央で空間が歪み、黒い渦が生まれる。まだ出てきてもいない。ただゲートが出現しただけだ。それでも、その圧倒的な
「……」
カームも険しい表情になる。それ程の禍々しい気配が漏れていた。
やがて、その渦の縁から手が這い出てくる。形は人間の手だ。しかし、それはその気配から、何か別の、冒涜的な、おぞましい蟲のようなナニカにも見えた。
それが二つ、縁から這い出して、渦を引き裂く。続けて、本体が闇の中から産まれ出た。それは、絶望の始まりを告げるような不吉さを孕み、弱き者が見たら間違いなく死ぬだろうという禍々しさに満ちあふれていた。
死神のような、ピエロのような赤黒の衣装に手足に包帯を巻き付けた装いではあるものの、その姿形は以前と変わらない。変わらないのだが、その漏れ出すオーラのせいでまるで別人のように、いや、別のナニカのように映る。そのナニカがカームに向き直り、声を発する。
「やぁ…久しぶり❤︎ 〝余興〟は楽しめたかな?」
「……ヒソカ」
「待ちに待ったよ…この時を♠ ボクはねぇ…ず~~~っと、待っていたんだ♣」
彼の声はまるでこの世の全ての不吉な音を凝縮したかのような、異質な響きであった。思わず耳をふさぎたくなるような。そんな声。そして、彼は誘う。
「さぁ、行こうか♦ ボク達が
ヒソカが発言した瞬間、ビルのエントランスの様子が激変する。周囲の風景が溶け出し、更に組み換えられていく。
「「「「!?」」」」
一行は流石にその瞬間動揺した。そして、いつの間にか、ネテロ、ジン、メルエム、ビスケ、レオリオの姿はなくなっている。どうやら分断されたようだ。
「彼らが消えた…! 大丈夫なのか!?」
「……どうやら分断されたらしい。だが、無事ではあるから心配するな。彼らを信じよう。今、奴は場所を移している。
その言葉にクラピカは驚愕する。いくら弱体化しているとは言え、カームの強さは人類を飛び越えている。そんな彼と匹敵するほどの力を持っているのか? と。
「
ヒソカは楽しそうに笑っている。あっという間に周囲は様変わりし、薄暗い荒野が広がる場所に全員がいた。
目の前には、巨大なドームがあった。それまで黙って見ていたヒソカが再び語りかける。
「ようこそ♣︎ 『
「……随分と凝った演出だな。待ち切れずにすぐ始めるかと思ったぞ」
「ふふ……だからこそ、だよ❤︎ これから最高のショーが始まるんだ♦︎ 演出は凝らなきゃね♣︎ それに、ボクは奇術師だからさ♠︎」
「ヒソカ! ゴンは何処だ!!!」
それまで黙っていたキルアが叫ぶ。
「おやおや…キミもいたか♦︎ 見えなかったよ♣︎」
「貴様……!!」
「うそうそ♣︎ 心配しなくてもちゃあんと中にいるよ❤︎ キミも
「中にゴンはいるんだな?」
「そうだねぇ♦︎ ついでにカーム、キミの
「……分かった。で、貴様に勝てば解放すると?」
「そうだねぇ…♣︎ うん、それでいいよ❤︎」
「……どういう事だ?」
ヒソカはニヤニヤしながらそれに答えず、建物に向かう。ある一定の場所まで行くと、忽然とその姿を消した。
「……行こうか」
「カーム、しかし…」
「行くしかあるまい。私だけ分断されなかったのは何か意図があるのだろう。君達はこれからヒソカ以外の敵と戦う事になる可能性が高い。恐らくだが…旅団やイルミがいると見た」
「「「!?」」」
「な……旅団?」
「あぁ。
カームが真剣な口調でこれからの事を話す。それに意を唱える者は居ない。
「分かった…必ず約束は守ろう」
「いいよ。例え兄様…イルミが相手でも必ず倒すね。カームも死なないで」
「…………」
そして、4人は死地に向かう。必ず巨悪を倒し、生きて帰ると心に誓いながら。
◇
「おい!! アイツら消えちまったぞ!!!」
「転移か……カームだけかと予想していたんだがな」
「むぅ…アタシはこっちなのは納得いかないわね…」
「全く退屈しないものだな。世界は広いという事が余も実感出来たぞ」
「さて…残されたからにはワシらの敵はアヤツらじゃな。気合いを入れるかのぅ」
「あぁ、気合い入れてるトコ悪ぃがオレからお前らに提案がある。もうすぐ奴等が来るだろう? んで、奴等と戦闘になる。その時、オレは
「…………は?」
レオリオが、発言したジンを信じられない様な目で見る。当然だ。この男はこの大一番でまさかの不参加を表明したのだ。
「な、何言ってんだ…冗談だろ?」
「悪いがマジだ。少し『やる事』があってな」
「テメェ…この状況が分かって言ってんのか!!」
レオリオがジンの胸ぐらを掴む。それでもジンはその態度をやめない。
「分かってるから言ってんだ。いいか? オレにはオレにしか出来ねー事がある。それは
「い、いや…確かに回復使えるのはオレだけだがよ…」
その真剣な表情にレオリオが若干気圧される。
「
「〜〜! 話をズラすな! テメェは何しに行くってんだよ!」
「今は言えない。言う気もない。ついでにお前さんが出来る事もな。考えろよ。プロなんだろ?」
「……〜〜ッ!! わ〜ったよ!! テメェがいなくても保たせてやらぁ!!! ただし、逃げんじゃねーぞ!!」
「ああ。
「……いいの?」
「ま〜ええじゃろ。ワシらで十分じゃしな」
間の伸びた声とは裏腹に、ネテロの容姿は活力に満ち溢れている。これから強大な敵と世間を気にせず闘える。武人であるネテロの興味は既に周りにない。
「あっ、こりゃ何も考えて無いわね。ま、いいんじゃない? 好きに動いた方がアンタも結果出せるタイプでしょ? メルエムもヤル気満々だしね」
「余は構わんぞ。そもそも余が全て平らげるつもりであったからな」
全員が同意して、ジンの提案は了承された。最高戦力の1人であるジンの離脱は、正直言って痛い所ではない。だが、他の面々は気にもしない。それはある意味信頼でもあった。ジンがこう言っているのだから何か勝算があるのだろう、と。これがもし裏切りであれば、それならそれで良し。大事な事は、自分が死なない事。
そのために、死力を尽くす、と。
「いいか、ジジイ。
「えぇからはよ行け!」
「んだよ…折角時間まで指定してやったっーのによ。ま、頑張れや。オレも最善尽くすぜ」
そうしてジンは建物内部へと引っ込んでいった。レオリオは、この6日間寝てるか食事してるかケータイいじってるかしかしてないダメ親父が、ここに来て何があるんだと疑問に思いながらも、その思考を自分に回す。
自分に出来る事……分からない。とりあえず死なない事、そして誰も死なさない事に徹しよう。そう決めた。
──そして、玄関ホールから複数の人物達が姿を現す。
「よぉ、〝救世主〟御一行殿! 息災の様だな!!」
「ビヨンド…!」
「おりょ? テメェ、親父か? オレより若返ってねェか…? ま、いいぜ、オレはテメェを殺しに来てやったぜ」
ビヨンドの背後には、複数の人影が揃う。
「おい、アイツら死んだんじゃ無かったか?」
「あぁ、
「おや、気付きましたか。その通りですよ。いやぁ、この人数は流石に苦労しましたよ」
「アイツらも浮かばれねぇな。そう思わんか? サルよぉ」
「……へっ。いよいよテメェも年貢の納め時だな。
十二支んは生前そのままの姿でそこに居た。だが、その内実は殆どが
パリストンとサイユウだ。
「それより、ジンさんがいませんが何処に? 彼を加えて真の十二支んなのに…まさか、逃げられましたか?」
パリストンが心底楽しそうな表情で煽る。この男は煽る事にかけては一流だ。しかし、ネテロは歯牙にも掛けない。
「ふん。どうとでも思っとけ……それよりパリストン。それが貴様の選んだ道か」
「ふふ…やだなぁ。
「オレは貴様を退屈させたか?」
「いいえ、とんでもない! とても素敵な日々でしたよ。貴方と共に在るのはね。でもね、ボクはもっと素敵な
「〝救世主〟…か」
「貴方も夢中になってましたからね。ボクはとっても寂しかったんですよ?」
「やはり、貴様を指名したのは失敗だったな…ならば、オレが始末を付けんとな」
ネテロのオーラが研ぎ澄まされる。それは、人類最強が、更に全盛期を迎えた姿。十全に隆起する肉体と、狂気の果てに得た技、凄まじく研ぎ澄まされたオーラが彼から発生する。
彼は、人間のまま概算で100万オーラを達成していた。
「おっと、怒らせちゃった♪ じゃあボクはこれで。これでも忙しいのでね」
パリストンが踵を返す。その目の前にネテロがいた。彼はそのまま莫大なオーラを《隠》で隠し、パリストンの顔面をぶち抜いた。
吹っ飛ばされた彼の背後にまたしてもネテロが立つ。
今度は100を超える連撃が彼を襲う。パリストンの全身が、1秒も満たぬ間に二目と見られぬ姿へと変わる。
「いい加減鬱陶しいぞ貴様。まぁ、
「……ご、名…答…」
全身を痙攣させながらパリストンが息絶える。顔から布が剥がれ、誰とも分からぬ人物が姿を現した。
「また替え玉かよ!」
心底ウンザリした表情でレオリオがボヤく。だが、文句ばかり言っていられる状況ではない。ネテロは今の攻防で十二支んに囲まれている。それぞれが文句なしに超一流。そして、死人であるならば起こり得る弱体化の気配もない。
「アレだけの能力……遠隔ではないわね。どうせ近くにいるわ。それより、始まるわよ。アタシもやるから援護よろしく」
「ビヨンドの方は大丈夫なのか?」
ビスケがクイっと親指を向けた先に、ビヨンドと対峙するメルエムがいた。
「アイツがやる気満々だから任せましょ。しばらくは保つでしょ」
ビスケは、対峙する両者と距離を取りながら告げた。それはメルエムが不利であるかの様な口調だった。その原因は、ネテロに匹敵するオーラを纏って現れたビヨンドだ。
「やはり王を目指すだけはあるようだな。中々の〝力〟だ」
「偉そうに蟲に言われたかねェなぁ。これでも人類の最上位だぜ?」
「だが、奴には敵わんから逃げた、と。貴様は王としての誇りが足らんな」
ビヨンドは苦笑いを浮かべる。
「ま、そうとも言うな。蟲の王よ。だが、知ってるか? その辺も勝利によって如何様にも出来るとな」
濁流の様なオーラがビヨンドから満ちる。そして、彼の背後に阿修羅像を模した人型が具現化する。通常の阿修羅と違い、その手は背中を覆い尽くす程生えている。そして、その手にはそれぞれ武器を持っていた。
遠巻きに見ていたレオリオもビスケも、その表情は険しい。これは、ネテロすら遥かに凌駕し、パワーアップしたはずのメルエムすらも超えうるオーラだ。流石に少数できただけはある。生半可な覚悟では倒せないと腹を括る。
メルエムは、不敵な態度を崩さない。
「ふ…歴史は勝者が作る、か。やはり人間も我々と変わらんな。ならば来るがいい。弱腰の者に勝てるとは思えんがな」
「ならば、お言葉に甘えようか。精々気張ってみせろよ、蟲ケラ」
これだけ書いてもバトルまで行かなかった…(泣)次こそバトルです!