アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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やっとタイトル回収! 長かった…。





145、アンブレイカブルハンター

 

 

 

 

 

 

 ──ここは、まるで宇宙だ。見上げれば煌めく星空がうるさい程に燦然と煌めく。そして、地上にはサーカスのピストダンシルク(舞台)が広がる。ここには誰もいない。張り巡らされたロープや、ブランコ、トランポリンなどが置かれている。観客やショーマンがいないサーカスは、どことなく物悲しさを覚える。

 

 

「──ここがボクの原点♠︎」

 

 

 背後から声。そのままの姿勢で返答する。

 

 

「……そうか」

 

「ふふ…ボクはねェ、ここで念を覚えたんだ♦︎」

 

「……お前にも師がいたのか?」

 

「うん♣︎ でも、殺しちゃった❤︎ 名前も覚えてないかな♠︎」

 

「……だろうな」

 

 

 

 そこで振り向き、相対する。お互い黙ったままだ。何とも言えない沈黙が流れる。

 

 

 

「誰もいない、誰にも邪魔されない。お前にとって、最高の環境だ。なぁ、ヒソカ」

 

「違うね♠︎ 演者はボクら、観客は全人類♦︎ こんな派手なショーは無いよ♣︎ そして何より、キミと心逝くまで殺し合える(愛し合える)❤︎」

 

「観客ね。未来が掛かってるという意味では確かにな。さぁ、始めようか。私も今度という今度は()()だ。全ての決着をつけよう」

 

「……ッあ”あ”〜〜いいッ!!❤︎ 最高だよ!!❤︎ キミのその決意に満ちた瞳!! 揺るがないオーラ!!! 今すぐキミを──」

 

 

 

 

 

 

 

 

殺したい(愛したい)

 

 

 

 

 

 

 

 チュドッ!!!

 

 

 

 

 

 ヒソカのその攻撃は音を置き去りにし、時間すらも圧縮する。結果、ただの蹴りが必殺になる。重い攻撃だ。

 

 

 

 ──だが、それじゃダメだね。

 

 

 

 巻き取って落とす。しかし、既に奴は技から抜け出していたので仕方なく後方に投げ飛ばす。

 

 

 

「アハ❤︎ 楽しいねェ❤︎」

 

 

 

 先程の攻撃はただの戯れだろう。威力がおかしいが、そんな単純な攻撃をする相手ではない。…ん? ヒソカの顔が…崩れてないか?

 

 

「ヒソカ…お前、本当に何をした?」

 

「ヒ・ミ・ツ❤︎ 当ててご覧♠︎」

 

 

 ぐじゅり

 

 

 生肉が蠕動する様な音を立てて、ますます顔を喜色満面に歪めるヒソカ。歪め過ぎて()()()()()()()()笑みだ。最早顔全体が笑う口に支配されてる。

 

 

 

「…人を捨てたか」

 

「人? 人って何♣︎ ボクはヒソカ♠︎ キミを愛する(殺す)為に生まれてきた❤︎」

 

 

 

 

 次の攻撃! 凄まじい連撃が襲ってくるっ! クソっ…天才め! 自信満々なだけはある。やはり現段階でも厳しい闘いだ…しかも、この攻撃一つ一つがヤバい怨念や邪念、呪いが込められてる。今、〝聖光気〟の維持で精一杯の私にも通りそうなほどに…!

 

 だが、させん! 私は〝救世主〟として、カーム=アンダーソンとして貴様を滅ぼす!

 

 

 自らを鼓舞する為に、名乗りを上げる。

 

 

 

 

「私はカーム=アンダーソン! 〝壊れない男(アンブレイカブル)〟にして〝救世主〟!! 来るがいい、ヒソカ!!!」

 

 

 それを聞いたヒソカの動きがピタリと止まる。そして──

 

 

「……いいねェソレ❤︎ じゃあボクも♠︎ ボクはヒソカ=モロウ♣︎ 〝壊れない男を狩る者(アンブレイカブルハンター)〟にして、〝反救世主(アンチ・クリスト)〟♦︎ さぁ、()()()()やろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ここは…」

 

「まさか…ウチ(ゾルディック)!?」

 

 

 キルアとカルトは2人してカームと逸れた。しかし、1人ずつバラけなくて良かったともカルトは思っていた。

 しばらく暗闇を歩き、辿り付いたのは…ゾルディック家の敷地内だった。空は満天の星空。

 

 

 

「やぁ……2人とも、お帰り」

 

 

 

 そんな中、イルミが森の奥の闇から現れる。側には針が刺さった黒い人影があり、彼のその右手には、何か()()()()()を引きずっている。

 

 そして、星空に照らされてその姿が露わになる。

 

 イルミは()()()()()()()()。何が、というわけではない。しかし、カルトは兄妹だったから分かる。もう、アレは前のアレとは違う、と。

 最後に彼が持っていたモノが目に入る。

 

 

 

 それは

 

 

 

 

 ()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 キルアは、それを見た瞬間キレた。あくまで心は冷たく、殺意は隠し、しかし必ず殺してやるという思いはマグマの様に。

 

 ──それは、理想の暗殺者の姿であった。

 

 瞬間、兄が飛び出す事を察したカルトは必死で止める。

 

 

「兄さん! ダメ!!」

 

 

 だが、その忠告は届かない。既に雷と同等の速度で彼は飛び出していた。必死にカルトも能力を発動し、追いかける。アレは、ダメだ。何かマズい。だから止めなくては──

 

 

「ん、合格」

 

 

 トスッ

 

 

 

 あまりにも呆気なく、彼はイルミの針に刺された。それにカルトは思わず動揺する。

 

 

(何故…! 兄さんの攻撃は完璧だった! イルミのカウンターすら思考に入れての強襲だったはず…! なのに、何故先にイルミの攻撃が刺さってる!?)

 

 

 

「あーカルト、お疲れ。オレはとりあえずやる事終わったから戻るね。あ、ここじゃないよ。ここはヒソカの幻だし」

 

「……どうする気?」 

 

「? キルを連れて帰るんだけど? あぁ、カルトも()()()()()()し、一緒に帰る?」

 

「どうして…?」

 

「ん? 何が?」

 

「どうしてこんな酷いマネを…?」

 

「ん〜…何についてかサッパリ分からない。とりあえず、オレはゾルディックの為に動いてるよ。キルも無事に帰って来たしね。でも、アイを使ってみて思ったけど、すっごくコスパ悪いんだ。で、ウチに()()()()居るからソレで実験しようと思ってね。アイツはキルに懐いてたし、条件緩和の方法があるはず。キルにはそれをこれから聞くんだ。で、カルト、()()()()()は終わったでしょ? キミも帰るよ」

 

 

 その男は、表情を動かさずに平然と宣った。余りにも自分勝手な理由。人類を裏切り、人々を大量に苦しめても関係ない。彼は言外にそう告げていた。そして、更に許せないのは…カルトがどれだけの思いでここまでやってきたのか、その感情を、その思いを、イルミは全て否定した。平然と踏み躙った!

 

 

 ──認めよう。イルミは何か、得体の知れないモノになってしまった。大方、隣にいる針人間の力だろう。そこにアイを憑かせてる。多分、イルミは願ったんだ。『強さ』を。どれほどの犠牲者が出たか想像もつかないが、その力は、常識を遥かに超え、怪物の域まで達した。

 

 

 

 ──だから何だ

 

 

 

 僕は、許さない…兄さんを、カームを…自分の都合でまた僕から奪うのか…! アレだけ家に尽くしてきたのに…それがこの仕打ちか!!!

 

 

 僕は…僕の為に、生きる。もう誰も奪わせない。だから──

 

 

 イルミ……コイツだけは……絶対に、殺す!

 

 

 

「……嫌だ」

 

 

 

 突然の彼女の変化に、イルミも流石に眉を顰める。

 

 

 

「カルト? 何を言ってる? まさかオレに逆らうとかないよね?」

 

 

 イルミが手をかざす。それは彼の()()()()のポーズ。だが、もう彼女は親兄弟に唯々諾々と従う人形ではない。

 

 

「お前は、許さない……僕から大事なものばかり奪うお前は、僕が…殺す」

 

「ふぅん…そう。じゃあお仕置きだね。少し痛くしよう」

 

 

 

 

 ──それから、一方的な()()が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──それと時を同じくして、イルミに撒き餌として用意された無残な死体であったはずの、ゴンの、その指が

 

 

 

 

 

 ()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──其は、イエスが〝救世主(クリスト)〟であることを否定する者。父と子を否定する者。それが〝反救世主(アンチ・クリスト)〟である──ヨハネ」

 

 

 

 暗い道を抜けた先に辿り着いたのは、満天に広がる星空と、ゴミ溜めだった。辺り一面にゴミだらけで足の踏み場も無い。産業廃棄物、家庭ごみ、錆びた鉄塔、道路標識、果ては人間…ありとあらゆるモノを捨てても許される、そこは流星街と呼ばれていた。

 

 

 そのゴミの中で、破れてはいるが一際上等なソファーで読書する男がいた。

 

 

「クロロ……貴様…何故!」

 

 

 クロロと呼ばれた男は本を閉じる。

 

 

「その問いに答えるならば、今言ったのが理由だ。まさか()()()ユダの信奉者(ジューダス・プリースト)】になるとは思いもしなかったが」

 

「〝反救世主(アンチ・クリスト)〟……〝救世主〟を騙る者、〝救世主〟を迫害する者、〝救世主〟を…殺す者」

 

「ほぉ…よく知っているな。博識だ」

 

「ヒソカが…そうだと?」

 

「そうだと言ったら?」

 

「どうもしない。カームは必ず奴を倒す」

 

「ふむ。平行線だな。だが…」

 

 

 ──我々は、お前だけは絶対に許さん。

 

 

 

 クロロが立ち上がると同時に、ゴミ溜めの影から団員が次々と姿を現した。

 

 

 

「リベンジだぜ…! 待っていたぞ、この時をよ!!」

 

「散々コケにしてくれやがったなァ…テメェ、楽に死ねると思うなよ」

 

「マンマとやられちまった屈辱、返させて貰うぞ」

 

「パク達の仇、殺らせてもらう」

 

「鎖野郎…先ずは爪剥ぐね」

 

「ん〜流石にムカついてるからさ…私も同じ意見かなぁ」

 

 

 

 それは、端的に言えばこう呼ばれるモノだった。

 

 

 

 ──絶望、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──超常の力を持つ者達の闘いは、レベル差が有ればあっという間に決まる。レベルが高い方の()()()()が刺さるからだ。逆に言えば、あまりに弱い者の特殊能力はほぼ刺さらない。例えば、一般の操作系能力者がメルエムに操作のアンテナ等を刺したとする。しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。操作系は刺さると最強とよく言われるが、それはあくまで人間同士のレベルである。

 

 

 

 では、その差がない場合はどうなるのか。

 

 

 

 ──既に舞台は崩壊し、戦闘の余波で瓦礫と化している。燦然と輝く星々の下で、彼らは闘っていた。

 ヒソカが殴る。カームも殴り返す。ヒソカが()()()3発の蹴りを入れると、カームも負けじと5発時間を止めて殴り返す。

 もうその攻防は千を超えて万へと届こうとしていた。無論、これは常人には見えないし、見ると塩の柱に変化するだろう。そういう闘いだ。

 

 

 

 何故、2人はそれぞれの能力を使わないのか。

 

 

 

 否。()()使()()()()()。幾千、幾万の攻防の中、彼らは既に大量の念能力を相手にぶつけている。そして、それをお互いが打ち消し合っているのだ。彼らのレベルになると、特殊な念への防御力も身につく。有り余るオーラ量がそうさせるからだ。〝聖光気〟はそれをオートで行うからこそ最強たり得る。しかし今、彼の〝聖光気〟は枯渇寸前であり、維持にも力を割かれている。そして、ヒソカ。彼のオーラもまた特殊である。そのせいで、カームは自らのオーラでそれを行わなければならないのだ。

 

 

 

 

 シュウウゥ……

 

 

 

 超高速でぶつかり合っていた影が離れる。同時にお互い貰っていたダメージが修復される。それはおよそ人間の姿とはかけ離れたモノだ。

 

 

 

 

「……強大で邪悪なオーラ。しかも数えきれない。ヒソカ…お前、()()()()?」

 

「おぉ❤︎ 大正〜解〜♦︎ 花丸をあげよう♠︎」

 

「そんな汚いモノをぶつけて来るとは恐れ入る。お前がどうやったかなんて方法は知らん。だが…()()()()()()()()なんじゃないのか?」 

 

「ふふ…まだキミはボクを舐めてるようだね♣︎ ボクが〝コイツら〟なんかに乗っ取られる訳ないジャン❤︎」

 

「さて…それはどうかな?」

 

「……うんうん、分かった♠︎ キミは疑い深いね♦︎ ならば分からせる為にもそろそろ本気で殺しに行くね?」

 

 

 

 

 

 ゾワッ

 

 

 

 

 

 ヒソカから怨念を100倍濃縮したかの様なオーラが溢れ出る。それは、〝悪意〟と呼ばれるモノ。そんな人々の〝悪意〟を集めて、自らのオーラに組み込む。そんな事は普通は不可能だ。何故なら、そんな事をすれば簡単に肉体も精神も崩壊させてしまうからだ。

 だが、有り得ない程の異常な精神と肉体を持つヒソカは、この苦行とも言える所業をやり切った。そして、彼は遂に暗黒とも言えるオーラを身につけた。

 

 それは〝聖光気〟とは何もかも性質が真逆の闘気。その性質故に〝聖光気〟よりも希少である。何故なら、使い手はすぐに破滅するから。

 

 

 

 ソレは、()()()()()で〝暗黒闘気〟と呼ばれている。

 

 

 

 

 パァン!

 

 

 

 

 余りにも呆気なく、両者の頭が消し飛ぶ。瞬時に再生、そして再び身体の一部を消し飛ばし合う。先程よりも激しい技と力の応酬。しかし、同じように見えて、その実全く違う。

 

 ヒソカは()()()()()()()()()

 

 彼がストックした魂が何万、何十万にもなっており、そこから新しい魂で補填する。そして、彼はその度に強い死者の念を発動し、更に強化されていく。

 

 

 ──つまり、死ねば死ぬ程強くなる。

 

 

 

 カームはそのカラクリに気付いていた。だが、どうする事も出来ない。攻防の中で徐々に押される事が増え始めた。いや、もう既に一方的に押されている。そして、やはりヒソカは戦闘の天才だ。このままだと、確実に奴の特殊能力が刺さる所までいってしまう。

 ヒソカは、明日を捨てたのだ。その天賦の才能を、この瞬間の為に。その覚悟こそが今の現状だ。

 

 

「ホラホラ、どうしたの? 反撃出来ないねェ❤︎ このままキミも()()()()()()かなぁ?」

 

 

 

 ヒソカの粘性を含んだオーラに覆われる。これは、【変幻自在の愛(バンジーガム)】。そして、自らのオーラが()()()()()()。これが、コイツの強さの元凶。いよいよここで出して来たか。コイツはこの能力を()()()()()。ガムは食べるモノ。そういう概念を追加したのだ。それで人間を、人間の悪意を我が物にしてきた。死者の怨念すらも。

 

 ──何という精神力だろうか。彼もまた怪物ではある。それは、私がなるかもしれなかった未来。しかし、彼はここにきても()()人間だった。その曇りなき強烈な意志によって、崩壊しそうになる筈の自我を保っているのだ。敵ながら、驚愕に値する。私には無理な事だ。

 

 

 しかし、本当にここまで追い詰められたのは久しぶりだ。あの暗黒大陸とどっこいどっこいかもしれない。ニーズヘッグか…いや、ブリオンか…それとも、ヒソカに近い相手で言えば、異世界の神か。

 

 

 いずれにせよ、ヒソカはこの闘いに全てを賭けた。

 

 

 自らの魂すら。

 

 

 

 ──ならば、私も賭けねばなるまい。

 

 

 

 なるべく使いたく無かった〝奥の手〟。だが、ここに来てそれを切らざるを得なくなった。それほど迄にヒソカは強敵だったから。

 

 

 

 星よ……あまねく生命を守護する星よ。私に、その力をもう少しだけ、分けてくれ。






ようやくここまで来ました!



暗黒闘気
・それは、聖光気とは真逆の性質を持つ。即ち、ありとあらゆる呪いを内包し、それを力に変える。その呪いは、例え聖者であれども貫き、逆に莫大な呪いを外して、自分のモノにしてしまう。また、その力は生命を冒涜する事が多く、人類の大敵として発見され次第討伐しなければならない。古の時代から、聖者に対しての敵対的な存在であり、人々は彼らを悪魔と呼称することもある。何らかの手段によって、人の悪意を集め、しかもそれを自分のモノとして飼う事が出来る者が辿り着く境地の一つ。
 使い手は人間界では聖光気より希少であり、歴史上に確認されるのは、1番有名な〝救世主〟に敵対した者が辛うじてそうではないかと推察されている。それ故に、彼らは一様に〝反救世主(アンチ・クリスト)〟と呼ばれる。いずれにせよ、その存在は極々僅かである。彼らは一概には言えないが、自らの役割を果たすとその溜め込んだ悪意を解き放つ。そして、世界に再び悪意が蔓延る。よって、彼ら自身には破滅しか道は無い。
 ヒソカの場合は、彼の能力によってそれを為し、また、彼自身の強烈な意志により自我を保っている。これは奇跡的な事であり、普通の使い手はただ悪意に呑まれ、操られる怪物と化すだけである。だからこそ、協力者の力添えはあれど彼は到達しえたのだ。人類界の悪の頂点に。
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