アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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 年末最後の投稿になるかな? 今年最後の投稿に相応しく、奇跡を起こす男の物語です。パラディナイト、いい名前です。タイトルはこれにするか迷いました。


151、奇跡を起こす男

 

 

 

 

 

「ぐっ……」

 

「うう……」

 

「おのれ……何という理不尽な奴」

 

「全くだ……まるで底が見えん…詰みの型が余の方にしか見えんとはな」

 

 

 

 死屍累々。開始から5分の状態である。そもそもが無理なのだ。顕在オーラだけでも10倍以上の奴と闘うなど。相手は笑いながら悠然と構えている。それは、自然と王者としての風格を保っていた。

 

 

「う~ん…つまんないなァ。アレだね、自分で言っといてなんだけど、じっくり丁寧に嬲るってのは結構ストレスだね。縛りプレイっていうのかな? こっちはちょーっと撫でるぐらいなのに、もう死にかけちゃってさ」

 

 

 そう。ゾバエは完全に()()()()()。まるで人類に見せつけるように、絶望を味わわせるように。

 

・おい…マズいぞ。何が何だかわかんねーけどアイツヤバくない?

・手も足も出ないじゃん…どうすんのこれ…

・現役ハンター! いるんだろ! 助太刀に行ってやれよ!!

・馬鹿言うな!! あそこにいるのはオレの10倍ぐらい強いやつらだぞ! 行った所で足手まといも良いとこだ!(@現役ハンター)

・じゃあ爆弾とか……

・馬鹿言え!さっきの見てたか!? アレは霧になってたぞ!? そんな奴に核とか通じるかどうかもわかんねーだろ!

・悪いが、多分人間の兵器系は無理だ。オーラ量が桁違いすぎる。純粋に核でも耐えられかねんし、能力如何では完全に無力化されちまう(@モラウ=マッカーナーシ)

・そんな……

・ジンが言ってたでしょ! 唯一の方法は祈ることだって!! 〝救世主〟が戻ってくれば何とかなるはずよ!!(@メンチ)

・もうやめようよ……こんなの無理だって…

・お前はあきらめんのか!! オレは絶対やだぞ!!!

・じゃあお前が何とかしろよ…

 

 

 

「ふふふ…キミが用意したコレ……中々いいね。人類の絶望が手に取るように伝わってくるよ。さ~て、生かさず殺さず。RPGゲームの序盤の街で、装備全部外して初級呪文でいたぶるみたいな気分だ。それはそれで愉しいけど、そろそろもうちょっと()()()な事も見せてあげようかな?」

 

 

 ゾバエは右手を地面に広げ、そこから凝縮されたオーラの滴を数滴垂らす。その滴は地面に付くとたちまち具現化し、双頭の大型の犬に変わる。

 

 

「【ティンダロスの猟犬】。今のキミ達じゃ一方的に嬲られる存在だね。さあ、人数分用意したよ。絶望をボクに見せてくれ」

 

 

 

 一斉に飛び出す猟犬たち。メルエムとネテロはそれぞれ辛うじて攻撃を躱せた。ジンはカウンターで一方の頭を殴りつけるも、もう一方の頭にその腕を噛み千切られた。

 

 

「ぐああああぁぁっ!!」

 

 

 それでも、即座に回復が飛んできてジンの腕を()()する。それを受けて、ジンは距離をとった。それ程までに高まったレオリオの技術は最早超一流と言う言葉では表せない。医療の神に近い能力だ。それでも、それでも回復が追いつかない。

 

 

「ハアッ…ハアッ……」

 

 

 凄まじいプレッシャー。極度の緊張状態。こんな状態で〝聖光気〟など掴めない。全滅を回避するのですら困難だ。今、自分が回復を止めてしまえばたちまちこのメンバーは全滅するだろう。いや、そうでなくともゾバエが遊んでいるのにこの状態だ。ちょっとその気になれば、たちまち全滅するだろう。なんという無理ゲーか。辛うじて応戦できているメルエムや、二匹同時に相手をしているネテロも状況は厳しい。この犬は特殊な念能力はない。ただ純粋に強いだけだ。それがより絶望を深める。そんな使役獣如きに嬲られるということは、本体に敵うことなど不可能だからだ。

 

 

 そして、遂にその時が訪れる。

 

 

「ガハッ…」

 

 

 ビスケがその首を食いちぎられた。大量に噴き出す血。致命傷だ。その瞬間、彼女の背後から観音像が現れて、ビスケを優しく包み込む。

 

 

「今じゃ!! 回復を!!」

 

 

 それは、百式観音零の手の予備動作。時間を置き去りにした速度で対象を拘束し、必殺の攻撃を叩き込む。その前段階を利用し、彼はその対象の魂を閉じ込める様に祈った。それは、この状況を正確に読んでいたネテロの悪あがき。絶対に誰も死なせはしないという決意。すぐさまレオリオから回復が飛んできて、ビスケは無事に復活した。しかし、そんなことをすればネテロの百式は一つしか無い。つまり、ネテロは身一つで、祈りの姿勢のままになる。

 

 そこに、2匹の猟犬がその身を引き裂く。

 

 辛うじて致命傷を避けるも、身体中の肉が削がれ、全身が血塗れになる。

 

「ジジイ!」

 

 ジンが咄嗟にフォローに入るも、焼石に水だ。ビスケが回復したのを見計らって、ネテロに百式が戻るも、今度はジンが致命傷を負う。その度にネテロは百式を彼らに貸し出し、命が溢れない様に防ぐ。ネテロ自身は、その隙を突かれてよりボロボロになっていく。

 

「レオリオ! ジジイに回復を!!」

 

「ジンが先じゃ!! ワシは気にするな!!!」

 

「アンタも死ぬっつってんの!!!」

 

「誰も…誰も死なせん!! このワシがおるからにはな!!! じゃから早く!!!」

 

 

 

 

 レオリオは泣いていた。あまりの理不尽なこの闘いに。回復をしてもしても追いつかない。致命傷、しかも即死級の負傷のオンパレード。1人回復すれば、2人が致命傷を負う。いかにレオリオでも、同時には回復できない。どうしたらいいのか。みんな必死だ。メルエムですら、互角の闘いしかできていない。それぞれが最上位。なのに、こんなにも届かない。

 

 

 もっと、オレに〝力〟があれば…

 

 

 ジンはオレだけが掴める可能性があると言っていた。ならば、サッサと掴みたい。こんな時ほど必要じゃないのか! オレは……オレに、本当にできるのか?

 

 また仲間が負傷する。もう、イヤだ。砂漠に水を引っかけてるようなものだ。これ以上仲間が傷つくのを見ていられない。もう……これ以上……見たくない……

 

 

 

「う〜ん、良い感じに絶望してきたね。それにしても誰か一人は殺すつもりだったけど、中々しぶといね。回復役が割と優秀なんだね。もう折れちゃったみたいだけど。セオリーならここをまず潰すんだろうけど、残した方が面白いかな?」

 

「レオリオ!! 諦めるんじゃねぇ!! お前が諦めたら終わるんだぞ!!!」

 

 血まみれのジンが叫ぶ。

 

「レオリオ! アンタをそんなに軟弱に鍛えたつもりはないよ!!! どんな状況でも100%勝つって気概を見せなさい!!」

 

 既に満身創痍で、手首から先が千切れたビスケも同意する。身体の至る所から血を噴き出しても、それでも抵抗を止めない。

 

「ワシがお主等の命は必ず守る! じゃから、頼む、ワシらに力を貸してくれ!!」

 

 ネテロが一番負傷が酷い。それでも、彼はその敵の意識を上回る打撃で、撃退し、生き残り続けている。

 

「……逃げてもよいぞ? 貴様にその荷は重すぎるだろう」

 

 メルエムが闘いながら呟くように言う。彼は諦めてはいない。元々自分一人で完結しているような存在だ。他者の存在など不要だろう。だが、それでも多少の情はあったようだ。現在多数の敵を一気に引き受けて孤軍奮闘している。一番悔しい思いをしているはずなのに、それでも戦意を滾らせ立ち向かう。その姿は、人間よりも人間らしく。それは、〝勇気〟と呼ばれる物であった。

 

 レオリオは、そんな絶望の中でも光る彼らが眩しすぎた。そして、自分はそこまで人間ができていない。恐怖、臆病、諦観、絶望。それらの感情に支配され、身動きが取れなくなった。それもまた、人間であろう。彼は、遂に闘いを見ることができなくなった。絶望に心が折れた。そして──

 

 

 いつの間にか、頭を抱えていた。

 

 

 

 

 どれだけの時間そうしていただろう。辺りが静かになる。

 

 

 もしかして、助かったか。なにか奇跡でも起きたか。もしかすると、カームが来てくれたか…そう思い、恐る恐る顔を上げる。すると

 

 

 目の前で、無数の猟犬たちがレオリオを取り囲んで、じっと見ていた。

 

 

 大画面には、それぞれのメンバーの無惨な姿が映る。そして、彼らの敗北を嘆く人々のコメント。

 

 

 彼らはもう──

 

 

 そこに、ゾバエの勝ち誇った顔が映る。

 

 

「うん! いー感じに絶望してるね!! その顔が見たかった! 他の奴等は覚悟決まってたから無理だったけど、お前は最高だよ!! さ~て、気が済んだ。君らの頼みの綱の光さえも、もう消える寸前だ。最後にお前を無惨に殺してから、ボクの勝利を飾ろう」

 

 

 やはり…ダメだった。現実は無情だ。いつもそうだ。オレは、いつも肝心な所でダメなんだ。そして、死ぬ。恐らくコイツは楽に死なせてくれないだろう。それもしょうが無い。遅かれ早かれ、人類はコイツのせいで滅びるのだ。少しそれが早くなっただけのこと。むしろ、早く殺して欲しい。それだけが救済なのだから。

 

 

「お? 諦めちゃったか~。じゃ、さよならだ。サルにしちゃ頑張った方だよ。誇っていい。キミらは相手が悪かったね」

 

 

 ゾバエが周りの犬どもを嗾ける。視認できないスピードの筈なのに、なぜかスローモーションで見える。あぁ、これが走馬燈か。こんなのがオレの終わりなんて最低だな。オレは…負け──

 

 

 

 ジャラッ

 

 

 

 いつの間にか現れた鎖が、犬たちを縛り付ける。鎖は増殖し、レオリオに襲いかかっていた個体は全て捕らえられた。そのまま鎖によって締め付けられ、弾け飛ぶ。

 

 その周囲にいた個体は、突如発生した雷によって、消滅した。

 

 突然の事態に、流石のゾバエも一瞬硬直する。その顔面を、凄まじい威力のオーラが込められたパンチが襲う。霧化する暇も無くゾバエは入り口の外まで吹っ飛ばされ、見えなくなった。

 

 

 その人物達は、かつて自分と同じくハンター試験を受け、合格した友。

 

 

「レオリオ!! 無事か?」

 

「遅かったか…だが、レオリオだけでも生き残ってたか」

 

「ひでーコトしやがる…絶対許さねぇ!」

 

「僕は…足手まといだね。せめて亡くなった人を回収するよ」

 

 姿形、雰囲気が変わってしまっても、オーラが恐ろしく増えていたとしても、彼らはヨークシンで修行を共にし、苦楽を共にした友だ。

 

 

「ゴン、キルア、クラピカ、カルト……オレは…オレは()()()()()()

 

「……気にしないで。レオリオ。相手が悪すぎた」

 

「だけどよ! …すまない…すまない……!! オレは…ビビって見捨てちまった」

 

「……あのな? レオリオ。クセーこと言うから一回しか言わねーぞ。オレだってそうだった。弱さを悔やんで引きこもっちまった。でもな、()()()()()()()()()()()()。小さな勇気が状況を変えることだってある。オレ達はそれを乗り越えてきた。お前もきっとできる。自分を信じろ」

 

「だけど…会長も、ビスケも、ゴンの親父も、メルエムすら…死んじまった」

 

「……レオリオ、心配しないで。()()()()()()()()

 

 髪が長く、青年の姿に変わったゴンが断言する。その言葉に一同すらも驚愕する。

 

「!! 何…? そんな馬鹿な、彼らはもう……」

 

 

 カルトが回収してきた死体は無惨なものだ。ほぼ原形を留めていない。だが、彼らの表情は苦悶ではなく、立ち向かう顔だ。必ず希望があると信じて闘う者の表情のまま、散っていた。

 

 

「オレには分かる。これは、ネテロ会長の()()()()。それが、魂を辛うじて現世に留めている。でも、ギリギリの状態だ……だから、レオリオ。キミしかいない」

 

「な、何を…」

 

「彼らを癒やし、復活させられるのは、この中でレオリオだけだ。この状態なら、それこそ〝奇跡〟じゃないと無理かもしれない。だから…頼むよ」

 

 

 友の言葉が、彼の恐怖や諦観に凝り固まった心に罅を入れる。彼らは乗り越えたのだ。数多の理不尽を。尽きる事のない不条理を。

 

 

「レオリオ。私も信じている。お前が、誰よりも優しく、誰よりも勇気を持った男だということを」

 

 

 明らかに女性の様な姿になったが、クラピカがそう断言する。それだけで、レオリオは妙な気分になると共に、心に灯がともる。

 

 

「だからさ、あのクソ野郎はオレ等が押さえとく。オメーはどうにかして彼らを癒やしてくれ」

 

 

 3人の中で唯一姿が変わらないが、この中で一番の圧倒的な力を内包している暗殺者がそう告げる。そうか…オレの自慢のダチはこんなに頑張ったんだな……オレだけこんなに引きこもって、いじけているのは、ダサすぎる。

 

 

 ……やってみるか。でなければ、こんな素晴らしいダチにオレは一生顔向けできなくなる。もう、()()()()はイヤだ。絶対に。

 

 

「……ありがとよ。すまなかった。オレは腑抜けてたみてーだ。オレは、オレのできることを、全力でやる……今度こそ、間違わねェ!!」

 

 

 その表情と決意を見て、ゴンは笑った。もう安心だと。そこに、()が帰ってきた。

 

 

「貴様ら〜〜!! どっから沸いてきた!! って、よく見れば〝反救世主〟が攫った奴等じゃないか! アイツも本当に使えない奴だな!! やっぱり()()は特別でも下等生物は下等生物か」

 

 

 入り口から浮きながら戻ってきたゾバエに、3人は一斉に顔を向ける。その表情もオーラも気合い十分だ。ゾバエの凄まじいオーラを見ても臆しもしない。むしろ、必ず倒してみせると決意を新たにする。

 

 

「ん? なんだ? そのオーラは。()()()()……しかもこの気配は……貴様、イヴリスの縁者か?」

 

「……答える義務はない。お前こそが全ての元凶、全ての悲劇の始まり! オレが、お前を倒してやる」

 

「大きく出たな……ちょっと力を取り戻した程度でボクを倒そうなんて甘いんだよ、ヒヨッコども。尻の殻が割れてから出直しといで」

 

「数々の暴虐のツケ、ここで支払ってもらう」

 

「お前からも冥王(プルートゥ)の気配がするな…縁者、ではないな。気色悪い奴」

 

「クラピカもテメーには言われたくねーだろうよ。悪魔野郎」

 

「お前だけはよく分からんな…でも3人とも多少はできるらしい。良いだろう。退屈だった所だから少しは遊べそうだね」

 

「そんな余裕を持てるのも…今だけだ!」

 

 

 

 

 ドン!!

 

 

 

 再び戦闘が始まる。しかし、流石にこの空間は彼らには狭すぎた。そして、彼らはレオリオの邪魔をしたくない。そういう思惑を彼らは阿吽の呼吸で打ち合わせ、そして、ゾバエを建物の外へ誘導していった。ゾバエもそれは分かっていたが、しかし、自分に手も足も出なかったサル程度に何ができるかと、その思惑に乗ってやることにした。何故なら、これはもう()()()()。もうすぐで〝救世主〟の光も絶える。さすれば自動的に自分の勝利だからだ。それにしても、この3人は中々やる。多少本気を出さねば不覚をとりかねない。あまりに本気を出すのも門番に見つかるから良くないし、痛し痒しだ。だが、この縛りプレイが好きな魔王は、この状況すらも楽しんでいた。いかなる方法でこの状況を逆転するつもりなのか。その、藻掻き苦しむ様も娯楽の一つだ。徹底的に楽しんでやろう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レオリオ…ゴンはああ言ってたけど、僕にも彼らは死んでるように見える…いや、確実に死んでる。ここからどうにかできるの?」

 

「……ジンは言った。お前ならできる、と。アイツはダメ親父だったが、凄い奴だ。だからさ、そんな凄い奴が信じてくれたオレを、もう一度信じてみるんだ。ゴンも言ってたしな。すげぇ親子が信じてくれたんだ。だからきっとできる。勿論、お前のアニキと、クラピカもな」

 

「……分かった。僕も信じてみるよ。レオリオが、成し遂げることを」

 

 

 

 一番楽なあぐらをかき、その場に座る。雑な姿勢だが、彼の瞑想スタイルはいつもこれだ。カームは言った。オレが一番〝聖光気〟に近いと。そうだ。カームこそが凄い奴だ。あんな馬鹿みたいな奴等が跋扈する暗黒大陸で、1人で200年も生き抜いたんだから。そんなカームが言うことだ。間違いない。彼は言った。オーラを自然と同調させる、と。オレのオーラは…ほぼ無色透明だ。そして、若干だがそのオーラが大気に溶け出している。それを、一度全て溶かす……出来た。あまりにもあっけない。恐らく、あの臨死体験が影響しているんだろう。そこだけはあのクソネズミに感謝だな。そこだけ、な。

 だが、それでは足りない。想いが、信念が、精神面の修練が圧倒的に足りないのだ。

 カームから貰った銀のメスを取り出す。彼の〝聖光気〟が纏わり付くそれは、暖かい光だ。薄くなってきているが、自分を保護する光もそうだ。オレは、このメスで何をするつもりだったか。

 

 

 それは、人々を救うこと。

 

 

 病に苦しむ者、怪我に苦しむ者、理不尽に苦しむ者。それらの苦しむ人々を救うために、オレは医者を目指した。それが、オレの原点。いくら折られても、決して折れない。自分の譲れない部分。そして、何よりオレを信じて託して逝った人達。彼らを救うのはゴンか? キルアか? クラピカか? それとも……カームか?

 

 

 ──違うだろ!! ()()()!! オレが救わなきゃならねーんだ!!!

 

 

 もう決して間違わない。理不尽に屈しない。様々な誘惑もあるだろう。だが、オレは、その部分だけは絶対に譲らない。だから、世界よ……オレに力を貸せ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……その様子じゃ、オレの()()なんて必要なかったかな?」

 

 

 気付けば、真っ白な空間にレオリオはいた。ここが精神世界だと、レオリオは直感で気付く。そして──亡くした筈のダチ。これもカームが言っていたことだ。精神世界では様々な誘惑が襲いかかる、と。だが──

 

 

「お前……そうか。オレを見送りに来てくれたんだな」

 

「そーいうこと。お前は立派だよ。オレなんかとは大違いだ」

 

「んなことねーぜ? オレはずっとダサいことばっかしてきたからな」

 

「ふふ…分かってるくせに。そんな自分も好きなんだろ?」

 

「逆に言うが、そんなに自分を嫌ってたらやってらんねーぜ?」

 

「そういうとこがお前の良いところなんだろうな。だから、人類の守護者たり得る資格があるのかもしれん」

 

「へっ、大げさだぜ。オレはきれーなねーちゃん抱いて、大酒喰らって昼まで寝過ごすのが好きな小市民だからな」

 

「一度もやったことないくせに」

 

「ど、ど、ど童貞ちゃうわ!!」

 

「はいはい…でもな、お前ぐらい人間らしい奴の方がぴったりなのかもな」

 

「……さーな。オレには分からん。でも、目の前の理不尽ぐらいは何とかしてやりてェ」

 

「それさ。お前の名字。オレは好きだぜ? パラディナイト。〝聖なる騎士〟ぴったりじゃねーか」

 

「おま、それハズいからやめろって昔言ったよな!」

 

「さ、長話もよくねーな。結局コレも誘惑、に入るか?」

 

「ん。効果覿面だったぜ」

 

「へっ、言ってろ。じゃ、そろそろオレは行くぜ」

 

「あぁ。これ言って良いのか分からんが、達者でな。あと……すまなかった」

 

「──お前に伝えとかなきゃって思ってたんだ。いいか? ()()()()()。それでも気にするってんなら、オレみてーなのをこの先助けてくれや。じゃあな」

 

 

 そうして、古い友人は後ろを向き、去って行く。その姿にレオリオは最後に声を掛ける。

 

 

「──ありがとよ。〇〇〇〇。オレはもう、迷わねぇ」

 

 

 

 

 

 

 意識が覚醒する。外は天変地異かと思うような轟音、爆音、破裂音のオンパレードだ。戦争状態よりも酷いことになっているのは想像に難くない。そんな中、レオリオは()()()()()()()()()()()

 

「レオリオ? やっぱり上手くいかない?」

 

 カルトが心配そうに声を掛けてくる。やっぱりオレはそんなもんだ。だけどな。

 

 

 

 

 

 ()()()はできたぜ。

 

 

 

 

 

 シュオオオオオオオ………!

 

 

 

 溶け出していたオーラと共に、周囲の大気が振動する。そして、レオリオを中心に凝縮する。そうだ。それこそが世界の力。〝聖光気〟。そして、発動してみてカームの凄さを思い知る。その力は、自分などとは比較にならない。

 

 

 だけど…これだけはやってみせる。

 

 

 レオリオは、その右手を無惨にやられていた者達に触れる。自分の得意なことは、癒やすこと。そして、今は〝聖光気〟がある。今なら分かる。ネテロ会長も、ジンも、ビスケすらも()()()()()()()。こうなることを。だからこそ、自らの魂をこの場に、この肉体に縛り付けた。それがどれほどの苦痛をもたらすか、想像することすら恐ろしい。それでも、レオリオを信じてここまでやってのけた。万分の一、いや、億分の一に賭けたのだ。

 その信頼を嬉しいと思う反面、申し訳なくなる。だが、間に合った。

 

 

 

 

 

 

 オレは、今から〝奇跡〟を起こす。








 ──と、言うわけで〝聖光気〟二人目の取得者はレオリオ=パラディナイトさんでした。主人公4人組はやっぱり特別なのです。名字もピッタリだし。
 特質系じゃないとダメじゃない? って思う方もいると思いますが、正確には、『オーラを同調させやすい性質を始めから持ってる特別な特質系』が、スタートダッシュを決めやすい、という事です。つまり、誰にでも修行によって到達出来る可能性はある。超絶に難易度が高いですが。
 彼の場合、凄まじい臨死体験を通して、一気に悟りの手前まで来ていました。後はきっかけのみ。それをどう押すかが問題だったのです。
 ジンもそうですが、ネテロ会長は、必ずや何とかしてくれるから、絶対に死なない、死なせないという信念をもって闘い、自身の肉体的な死まで予見していました。だからこそ、生命尽きる時に何がなんでも魂だけは持って行かせないと願ったのです。そうすれば、必ず復活してくれると。それはメルエム含む全員を縛る、ある意味呪い。成功しなければ地縛霊一直線の超荒技。しかし、最後に彼らは賭けに勝ったのです。




 いよいよ年明けですね! 誤字報告や暖かい感想コメント、本当に嬉しく、いつも助かってます! ありがとうございました!!
 皆さま、よいお年を!!
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