アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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外伝2、新たなる世界

 

 

 

 

 

「──かつて起きた『魔王侵攻(カタストロフィ)』は、私達に大きな傷を与えました。世界が崩壊する、その直前まで人類は追い詰められました。そして、かつての〝救世主〟と、英雄達により人類は辛うじて救われました。それはギリギリの戦いであったと、若年の私達ですら知っています。あの戦いに勝てたのは、人類が絶望に屈せず希望を持ち続けたからに他なりません。しかし、私達を救った〝救世主〟はもういない。だからこそ、私達は自分の足で立って歩かなければなりません。一歩一歩ですが、その歩みを進め、よりよい世界を築く。それこそが我々の使命です。この学園に希望をもって入学した皆さん。貴方達はエリート中のエリートでしょう。ですが、それに驕らず、正しい心をもって困難に立ち向かう事のできる人材だと私は確信しています。貴方達はこの学園で念能力を身に付け、更なる力を手に入れる。大きな力には責任が伴う。それはかつての〝救世主〟や、現理事長が身をもって示しました。貴方達の未来は明るい。その力を世界の為に遺憾なく発揮して欲しいと願っています。入学、おめでとう。私達はあなた方を歓迎します。──生徒会代表、アルカ=ゾルディック」

 

 

 

 深々と頭を下げ、その後颯爽と壇上を降りた生徒会長。その姿に新入生達は感動や、憧憬の眼差しを一様に送っていた。黒髪のロングを腰辺りまで伸ばし、前髪は奇妙なカチューシャを付けている。それは彼女のトレードマークであり、畏怖の対象であった。

 見るものが見れば分かるその威容。いや、この会場にいる新入生はありとあらゆるエリートであり、()()が分からない者には入学資格はない。

 ここは『聖地』スワルダニシティのお膝元であり、【人類の守護者】レオリオ=パラディナイト直轄のハンター学園スワルダニシティ中央校。同様の学園が世界各地に設立されてはいるが、以前のハンター試験並の倍率と厳しさを保つこの学園は、正に世界屈指の最高の教育機関である。

 受験生は、世界各地のエリートが集まって熾烈な凌ぎ合いを行い、それでも勝ち抜いたエリート中のエリートだ。彼らは単に勉強が得意なだけではない。心、技、体全てがエリートなのだ。この学園には年齢制限などはない。よって年齢層も若年が多いと言えど、成人した者も少なくはない。新入生にして百戦錬磨の猛者の様な雰囲気を出す者も少なからず存在する。

 

 そんな彼らが、代表挨拶をした成人前の女性に圧倒されていた。

 

 アレは敵わない、と。そして、一生徒である彼女を固めるメンツにも同様の気配を感じ取り、緩みかけた気を引き締める。やはり、トップになるには相当な努力が必要で、自分はまだまだである。だからこそ、必ずやあの域に至ってみせると決意を固めた。

 彼女のスピーチは、短いと言えども新入生達に絶大な効果を発揮した。彼らの学園生活は始まったばかり。過酷な修練と勉学が待っているが、それを乗り越えるモチベーションを得て、希望を持ってそれぞれの教室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねーアルカー。あのスピーチ短すぎじゃない?」

 

 生徒会副会長である、桃色のおさげ髪の少女が生徒会室で高そうなソファーに寝転んでダベりながら言う。本日は授業がない。よって、生徒会の面々はこの部屋に集合して新年度の準備をしている。だが、それは建前で、準備などほぼ終わって、ただ駄弁っているだけだが。

 

「いや、ソフィアさん、会長はアレでいいと思うッス。新入生(ルーキー)どもは気合い入ってましたし」

 

 

 答えたのは、茶色の髪色を坊主に近い短さで刈り上げている筋肉質な太眉の青年。名をズシと言う。

 

「アンタねぇ…あんまり甘やかさないでよね。で、アルカはテキトーにやってたんじゃないの? そこんとこどーなの?」

 

 ズシを無視してダル絡みを続ける少女の名は、ソフィア=アンダーソン。言わずと知れたマフィアのボスの系譜であり、直系の娘だ。ジョンの孫に当たる。実力とカリスマから次期ボスとも目される人物だが、本人はアンダーソンの例に漏れず、家を継ぐ気はサラサラ無い。将来は気ままにハンター生活を過ごしたいようだ。生徒会()()()という肩書きも、それを内外にアピールする為である。

 

「あら、私は私なりに()()にやったつもりなんだけど?」

 

 ズズ…

 

 

 普段は無視するか躱すアルカだが、今回は珍しく挑発に乗ったようだ。アルカからオーラが滲み出す。それは彼女のイメージに合う、黒く不吉を予感させるオーラ。しかも、その量は一昔前の中堅ハンターの量を優に超え、上位ハンターのレベルに到達している。

 それを間近で感じ取った2人も、慌てはしないが静かに臨戦態勢を整えた。緊張が高まる室内。つ、と冷や汗がソフィアの頬を伝わる。

 

 

「……文字通りの意味、って事?」

 

「ふふっ…どうしたの? 貴女の言う通りじゃない。私はあの場で()()()スピーチをした。それでいい?」

 

「………ちっ。まぁそーいう事にしといてあげるわ。それでこそアルカよね」

 

「…毎回毎回肝が冷えるッス。勘弁してくださいよ」

 

 3人のオーラが収まり、室内の緊張がほぐれる。いつものやりとり。しかし、勝ち負けで言えばアルカの勝利とも言える。2人も決して弱くはない。原作のゴンレベルの強さはある。しかし、それを一歩も二歩も上回るアルカ。その出自にも関わらず、ソフィアやズシを差し置いて生徒会長になれる程の実力者というだけはある。

 

 

 

「乗ったのは向こうよ。私は関係ないわ!」

 

「いや、それ以前に毎回毎回ケンカ売るのやめたらどうッスか…」

 

 アピールの為にトップにはなっていないが、ソフィアも十分会長をやれる実力者だ。本来彼女は気性が荒い。だからこそ、自分の上に立つに相応しくない者へは容赦しない。誠に面倒くさい人物である。しかし、アルカはそれをいつもサラリと躱している。それがソフィアには心地良くもあり、悔しくもある。いつか超えんとするライバルとして、アルカは良き友である。そのじゃれあいに苦言を呈するズシもまた然り。生徒会執行部は、その奇妙な結束によって成り立っている。

 彼女達はこの学園の1期生。つまり8年近くの付き合いである。よって、ほぼ幼馴染に近い関係であるからこその気安さでもある。

 

 

 

「あ”ーなんか面白い事ないかな〜。卒業要件なんてとっくに満たしてるからさっさとハンター活動したいのにな〜」

 

「そっスねー。()()()()()()()()はちょっとヌル過ぎるかもしれないッス」

 

「でしょ〜! ま、あんなんでもギリギリの奴もいるみたいだから仕方ないんだろうけどねー」

 

 

 2人が言うのは、G.Iの話である。あれからver.3.4まで進化したG.Iは、正式にこの学園の卒業試験に組み込まれている。ちなみに、クリア者はゴン以降は1チームのみ。相変わらずの難易度である。

 

 

「アタシ達もあとちょっとでクリアだったのにな〜。あのNo.1のカードの条件がわからな過ぎなのよ!」

 

「掲示板でも配信でも情報交換禁止ッスからね。書き込んだ瞬間に即BANはヤバいッス」

 

「卒業までには再挑戦したいわね…あー思い出したら腹立つわ〜!」

 

 

 言いながらドサリとソファに寝転がるソフィア。

 

 

「いやいやソフィアさん。スカートで寝転がったらパンツ見えるッスよ。はしたない」

 

「このエロガキめ。1㎜も思ってない事言うんじゃないわよ。メリルー紅茶お代わり〜」

 

 

 メリルと呼ばれた少女が書類仕事から顔を上げて、やれやれという顔をしながらポットに向かう。この喧騒の中眉一つ動かさず書類を書き上げるメリルも中々の者だ。メリル=ルチアーノ。アルバートの1人娘である。

 メリルから注がれた紅茶に手を付けながら、今度はズシに絡むソフィア。

 

 

「大体アンタもいー加減諦めなさいよね。アンタならよりどりみどりでしょ?」

 

「ちょっ…ソフィアさん!」

 

「あっ、ヤベ」

 

 焦りながら、会長をチラ見するズシと、流石にヤバいと思ったソフィア。何を隠そう、彼の想い人はアルカの()()である。天空闘技場で一方的に伸されてから、彼はカルトにゾッコンであった。そして、8年前のあの日、例の生実況のアーカイブを視聴したときに見た彼女の鮮烈な姿は、彼の純情な心に焼き付いて離れない。それは、あの実況を見た誰もが思ったことではあるが、彼は実際にカルトに会っている為、その想いはより強い。今まで彼がこの女性に囲まれた環境で浮き名一つ流さないのはそのためである。

 そして、それはアルカにとってはタブーな話でもある。以前、それについて部外者に言われたときにブチ切れて、その相手を半殺しに処した過去がある。

 

 

「ん? あぁ、姉さんの話? 気にしなくて良いよ。でも、外ではその話はしない方がいいかな」

 

「そ、そう…アルカはもう大丈夫なの?」

 

「ええ。私の目標でもある人だからね。それぐらいで怒りはしないから大丈夫よ…というか、私を何だと思ってるの?」

 

「いや…それは…ねぇ」

 

「……ッスね…」

 

 

 2人が顔を見合わせる。

 

 

 

 その対応にアルカもその笑みを保ちながら青筋を立てる。先ほどよりもヤバげな雰囲気になりつつあったが、メリルがやれやれと口を挟む。

 

 

「本当に…お嬢様も奔放なのは結構ですが、機微をもう少しわきまえてくださいませ」

 

「な、何よメリル! 保護者面しないでよね!」

 

「保護者面、というか、保護者同然ですね。私は現当主様(ドン)からの厳命を受けておりますので。私は本来追放されてもおかしくない立場でしたからね。少しでも恩を返したいのですよ」

 

「ぐぬぬ……でもアタシは絶対に継がないわよ!」

 

「それはどうでしょうね。ソニー様もそのつもりだったそうですが、現に当主様ですからね」

 

「嫌よ! 絶対に嫌! アタシは気ままにハンター生活を楽しみながら世界を巡るって言う野望があるんだからね!」

 

「存分にその野望を叶えて頂ければと私は切に願っております。その後、御当主という形になるかと思いますので、その間であれば」

 

「だから! それが嫌だっつってんでしょ!! そもそもアタシはドンってガラじゃ無いからね!」

 

「まぁ…そう思いたければそうなんじゃ無いですかね。お嬢様の中では」

 

「」

 

 

 2人のやり取りに再び笑みを浮かべながら眺めているアルカ。矛先がそれたことでホッとするズシ。いつもの光景である。

 アルカはあれからゾルディックで残された兄と共に徹底的に鍛えた。彼女は狂気とも言える訓練を自ら志願し、己を鍛え上げた。それは偏に彼女の目的の為。誰にも言わない、しかし確固たる信念の元で彼女は動いていた。

 

 

 ピピピピピ…

 

 

 そんな生徒会室で、電子音が響く。それは、生徒会室に据え付けられた専用回線。何らかのトラブルが授業外で起こったときに、生徒会の面々は対応を任されている。

 

 

「げげ…まーた新入生トラブル?」

 

「あぁ、いつものことッスね。多分寮でイキったバカが騒いでるってとこッスよ」

 

 

 メリルが何も言わず出て、話を聞く。しばらくして、彼女は了解の意を告げ、電話を切る。

 

 

「……男子寮の外で、新入生の念能力者2名が暴れているそうです。新入生最強を決めるとか何とか言ってるそうなので、いつものアレです」

 

「ハァ~…毎年毎年ホントバカね。で? 寮長とか居るんじゃ無いの? 教員は?」

 

「その…能力者といっても新入生なのでたいしたことは無いから任せる、と」

 

「それでなんでいつもアタシ達が駆り出されるのよ! 理不尽でしょ!」

 

「まぁ、対念能力者への訓練と捉えてるッスね。多分指示したのは師匠ッス」

 

「しゃーないわね…行ってくるわ」

 

「そッスね。じゃあ2人で行ってお互いを止めてくるッス」

 

 

 新入生とはいえども、その年齢層は千差万別。そして、学園入学を果たすほどの人材であるため、その実力は折り紙付きである。稀に、でも無く念能力を既に習得している者が少なからずいる。そして、入学後すぐにそういった輩はマウントを取りたがる。念能力を習得しているなら、習得していない者をあしらうのは簡単だ。そして、新入生の中でも権力者でいようとする。この先の学園生活で、それはアドバンテージになり得るからであり、そうでなくとも権力に酔いしれたいのは人間の性である。アルカが挨拶にて言外にそういったことは許さないと伝えはしたが、それでも止まらない奴等は一定数居る。そういった輩を取り締まるための生徒会執行部でもある。豊富な講師陣も勿論止めることは可能だ。しかし、できる限り生徒間で治めることができるようにという方針のため、こうして彼らは駆り出される。

 ソフィアがダルそうに体を持ち上げたところで、アルカがそれを片手で押しとどめる。

 

 

「待って。それ、久しぶりに私がやろうかな。最近()()もないしなまってるかもしれないからね。いい?」

 

「え”……ちょ、ちょっと待って! それは…」

 

「何? 何か問題でも?」

 

「いや、それは……」

 

 

 流石に躊躇う2人。それは会長への心配では無い。会長と対峙することになるであろう新入生の心配である。ゾルディックの名は伊達では無い。そして、この8年で築き上げられた数々の伝説が、彼女を対処に行かせることを躊躇わせている。

 

 

「あ、あのさ、私達が行くから大丈夫だよ…?」

 

「そうッス! 自分たちで止めてきますから! 何ならそのまま男子寮でそれ以外の奴等も全員分からせてやるッス!!」

 

「いや、今日は()()()()()()なの。だからお願い、そいつらちょーだい?」

 

「「うっ…」」

 

 

 アルカ、必殺のおねだりである。美少女の懇願に、2人もそれ以上言えなくなってしまう。それほどの破壊力がアルカのおねだりにはあった。彼女がこのおねだりをし始めた時、下手に逆らえば大惨事になり得る。無論すぐにはならないが、4回が限度である。それ以上断れば恐ろしい事態が起こる、らしい。というのも、断る毎に彼女の圧が高まるからであり、4度目になる前に大抵折れる。その結果、彼女のおねだりを断った猛者が存在しないからではあるが。

 2人は長い付き合いからそれを知っており、仕方なく新入生達の冥福を祈りながらアルカに任せようとしたとき、もう一つの電子音が鳴った。

 

 

 ピピピピピ…

 

 

「あれ、私か。ん~()()か…珍しい。最近無かったのにね。じゃあ、私はそっち行くから、新入生の件はお願いね」

 

 

 そう告げて、さっと身支度をして生徒会室を出るアルカ。その後ろ姿を見送って心なしかホッとしている2人。

 

 

「……よかったわね。大惨事にならなくて」

 

「そッスね…じゃあ行きましょう。舐めた新入生共をボコりに」

 

「この鬱憤は晴らさせてもらうわよ…!」

 

 

 

 そう言いながら、好戦的なオーラを滲ませて2人も出て行く。結局大惨事になるのでは、と残されたメリルは思ったが、いつものことかと開き直り、残った書類に向き合い始めた。いつものこと。世はなべて事も無し、である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おい。遅いぞ」

 

「ごめんなさい、お兄様。生徒会に詰めていたもので」

 

「フン…まぁいい。乗れ」

 

 

 

 校門前に停められたスポーツカーの運転席からそう言って自動扉を開くのは、ゾルディック家の正式な跡継ぎのミルキ。

 彼は8年前とは見た目がかなり変わってしまった。具体的には、圧倒的に痩せた。計3人もの跡継ぎを失ったゾルディックにおいて、彼は貴重な跡継ぎ候補である。よって、彼は哀れにも祖父や父からシゴキにシゴキまくられた。いずれゾルディックを継ぐ男として、最低限恥ずかしくない程度の教育を受けたのである。そのため、細身に見える彼の身体は完全に引き締まり、また、纏状態から発散されるオーラも並ではない。その鋭い目つきだけは変わらず、しかし、それを見せないようにサングラスを掛けている。その雰囲気は8年前とは大違いである。

 傍から見たら、完全な金持ちのイケメンと化していた彼は、女子学生の間ではかなりの有名人であり、仕事の時にアルカをこうして迎えに来る度にキャーキャーと騒がれていた。しかし、彼としてはいまだに2次元にしか興味が無いため完全に無視しているし、何なら鬱陶しいとさえ思っていた。それが彼女たちをよりヒートアップさせているとも知らず。

 アルカは、そんな女学生達をその威圧感で退け、優雅に車へと乗り込む。

 

 

 

「女学生達が今日も鬱陶しかったぞ。何とかならないのか?」

 

「あーそうねー。いつも通り無視して」

 

「チッ…お前は生徒会長だろ? 今度から注意しておけ」

 

「はーいわかりましたー」

 

「ふん…で、仕事の話だ」

 

「今日はどんな奴?」

 

「いつも通り()()()だ。マフィアの残党らしい。カキンが集めていた奴らがまだ残っていたようだな。これが写真な」

 

「またー? もうアイツら飽きたー。流星街の奴等の方がいいー」

 

「そう言うな。貴重な経験値稼ぎになるだろ?」

 

「私達だけって事はたいしたことない奴等よね…まぁいいわ。それでも腹の足しにはなるか」

 

「そういうことだ。いつも言ってるが油断するなよ」

 

「誰に向かって言ってるのかしら、お兄様」

 

「お前にだ。アルカ」

 

 

 

 

 会話を続けながら現場へと向かう。ゾルディックの仕事、それは当然暗殺である。彼らはあれから変わらず暗殺稼業だ。しかし、その相手は少しだけ変化があった。彼らはハンター協会とアンダーソングループと()()()()を行った。新しい世界での彼らの身の振り方として、彼らは主に野良念能力者を狩る。需要はいくらでもある。むしろありすぎて最初は回っていなかったぐらいだ。一時期は一家総出で毎日のように依頼をこなしていた。最近はようやく落ち着いてきたが。

 

 この話は、レオリオが直にククルーマウンテンに赴き、根強く交渉した結果だ。その頃には、レオリオ達も野良念能力者対応に頭を悩ませており、また、いい加減人類の加護を外したいというレオリオの思惑もあって、抑止力を欲していた。ゾルディックとしても、性懲りも無く依頼されるハンター協会関係者の暗殺依頼(特にレオリオ)に頭を悩ませていた。そのため、図らずも両者の思惑が一致した。だからこそ、そのアピールとしてアルカが1期生として学園に在籍しているのだ。

 

 

 今回のターゲットは、その野良念能力者である。ハンター協会は、念能力者を全て登録制にし、武器携帯と同じ扱いの法律を作成することを世界に提唱した。そして、世界はそれを受け入れた。当然であるが、一般人からすれば太刀打ちできない武力があるというのは恐怖以外の何物でも無い。よって、世論の突き上げも喰らい、そして実質世界の王であるハンター協会の長からの要請とあって、ほぼ全ての国が了承し、ハンター協会が出した条約を批准した上で法律を新たに作成した。

 それでも従わない国や個人はいくらでもいる。そこで、ゾルディックの出番である。特に犯罪行為を繰り返すような念能力者の集団や個人相手に彼らは暗殺という形で鉄槌を下す。

 

 無論、現役ハンターにも賞金首ハンターがいるし、アンダーソンからもマフィアなりのやり方で駆逐しているが、実力が特に高い相手や集団相手に対してはゾルディックに頼ることも多い。

 今回アルカ達が対応するのは、かつて行われたカキンの王位継承権争いのドサクサに紛れて、うまく粛正から逃げ出したマフィアの残党である。それ以外にも、流星街出身者や、東ゴルドーなどの独裁国家の能力者等を潜入して暗殺する事もある。そして、それらの中で特に難易度の高いミッションはシルバやゼノなどが請け負っている。

 

 

 

「さて……楽しめる相手だと良いわね、お兄様」

 

「……前から思っているが、オレ達の仕事は暗殺だからな。前みたいに馬鹿正直にやり合うんじゃ無いぞ」

 

「あら…私はスマートに殺ってるつもりよ? 自分の修練も兼ねてね」

 

「……お前の獲物を嬲る癖はカルトにそっくりだな」

 

「嬉しいわ。いつかあの域まで届いてみせるからね」

 

「そういうことを言いたいんじゃない……」

 

 

 

 深い溜め息をついて、ミルキは車を走らせる。これ以上この()に言っても無駄だと思ったからだ。彼はアルカの思惑などとっくに見抜いている。狂気のような訓練を超えて、彼女は人類の上位層まで上り詰めている。だが、それでも彼女は上を目指している。あと2~3年もすれば最上位層へも届くだろう。彼女は在学中も仕事にも積極的に参加し、対人の対応を磨いている。その為、実戦経験で言えば百戦錬磨とも言える。そのモチベーションがどこから来ているのか。それは、彼女が()()()()を目指しているからに他ならない。

 

 7年前、加護を解除した頃に【人類の守護者】レオリオ=パラディナイトは記者会見で暗黒大陸について聞かれたときにこう答えている。

 

 

 

 ──暗黒大陸? 行きたい奴は行けば良いんじゃねーか? オレは止めねぇぞ。だがな、最低でもオレと渡り合えるか、例の映像で見た〝英雄〟クラスじゃねーと無様におっ死ぬだけだからな。行きたい奴はそのぐらいの実力もった上で、覚悟をキメて、帰って来ねーつもりで行け。再度言うが、行きたいなら止めねぇ。だが、万が一帰ってきて厄災持ち込みでもしやがったら、オレが直々にぶっ潰してやるからそのつもりでな──

 

 

 

 ソレは、事実上の暗黒大陸渡航解禁宣言である。しかし、彼は暗に条件を付けている。行きたい奴は行っても良い。ただし、帰って来ないこと。そして、その基準は()()()()人類最上位であること。つまり、許可はでた。しかし、手段と資格と契約が途方も無く厳しくなっている。そして、8年経ったとは言え、彼らの脳裏には例の災害についての記憶が生々しい。よって、しばらくは渡航者は出ないものと予測されている。それは非常に正しい。しかし、一部の者は、変わらず目指している。それこそがハンターだからだ。そして、その中にアルカも居るし、想い人に会いたいズシも居るということだ。

 

 

「あとどれぐらいで届くかしらね……」

 

 

 と呟くアルカを、ミルキは複雑な気持ちで聞き流す。長兄は死んだ。その経緯も知っている。そして、その長兄を破り、一番の才能を持った弟も、その力故に旅立った。末の弟は〝英雄〟として、彼らに付き従って同じく旅立った。残された者は、自分とこの弟のアルカだけである。

 本音で言えば止めて欲しい。しかし、その気持ちが若干分かる分、ミルキは強くは言えないでいた。彼もある意味被害者だ。ゾルディックの長い歴史上、最大の存続の危機でもあるため、彼らに大いに期待がのしかかるのは当然である。その重圧をほぼ1人で受けているミルキも、たまに逃げ出したくなるときがある。ここまでやってこれたのは、兄弟のうち最後に残されたこの弟の存在があったからだ。忌み子に近い扱いを受け、隔離されていたアルカ。そして、例の事件でその厄災が抜けて、抜け殻になるかと思いきや、確固たる強い意志を持って修練に取り組みだした。その才能は厄災の影響もあってか計り知れない程のものだ。そんな弟に流石に兄としての意地を見せんが為にここまでやってきた。そしてそれは一定以上の成果を彼にもたらしている。

 

 アルカは暗黒大陸を目指している。何故なら、彼女の一番大好きな兄がそこに居るから。そして、自分の大切な半身だった者の故郷だからだ。

 

 ミルキはそれを分かっているからこそ、止められない。恐らく止めても行くだろう。ならば、せめてそれまでは一緒に過ごしたい。例えそれが仕事上の繋がりしかないとしても。

 

 

 

 

 なぜならば──アルカは彼に残されたこの世界唯一の兄弟だからだ。

 

 

 

 

「アルカ」

 

「ん? なーに?」

 

「楽しく殺るぞ」

 

「何当たり前の事言ってるの? いつもそうでしょ」

 

「そうだな。その通りだ」

 

「……あれ? 笑ってる? 珍しい…変なお兄様」

 

 

 

 

 彼らを乗せた車は、新しい世界の道を走っていく。それがこの先どんな結果をもたらすのか、それはまだ誰にも分からない。だが、確かに新しい世界は幕を開けた。そして、彼らが主役となり、新たな物語をこれからも紡いでいく──












 というわけで、少し未来の、残された世界の話でした。アルカとかズシが18歳ぐらいになって頑張ってる。オリキャラもいるよ!って感じでお送りしました。いかがだったでしょうか。
 いや、本当は暗黒大陸も書こうと思ったんです…でもそれより先にこっちを思いついちゃったから仕方ないんです! だって面白そうだから。
 書いていて思いましたが、これって無限に書けるやつやん……学園編とかめっちゃ面白そう。講師とかはウィング先生を筆頭に、ゴレイヌさんとかいるんだろなぁ。寮長とかも強そうだし、アンダーソンからもかなりの人材を派遣してそう。授業風景も楽しそうだし、部活とかも楽しそう。ズシは心源流の部長を兼任してそう…とか考えるとキリないですね! あまりにも楽しそうなので、未来編もたまに書くかもしれません。レオリオさんとか全然出てないし。彼の婚活とか面白そうですよね。ちなみに、G.Iが卒業試験なのは中央校だけです。流石に全世界だとキャパが足りなそうですし。他にもそれ関連で言うと、暗黒大陸に本当に行きたい奴がレオリオに直談判してきた時は、その条件としてG.Iクリアを提示される模様。更に、裏試練としてディアナの特別訓練が待っている模様(レオリオが彼女に交渉した)。そんな感じの事を妄想しつつ、書いてます。

 さて、最後にアルカ達についてですが、能力の系統だけ開示してみます。

アルカ…特質系(水見式で水が消える)
ズシ…操作系(原作で判明済み)
ソフィア…変化系寄り強化系
メリル…具現化系

 です。アルカの能力はきっと【ナニカの残滓】とか、そういうのだろなぁ。ではまた、外伝の時にお会いしましょう!
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