アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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今日と明日は休日だやっほい!
と、いうわけで投下します!



あ、クロスオーバー注意です。


外伝8、不穏の街

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な~~んにも無い街ねぇ…。まさに退屈な田舎ってカンジ」

 

「お嬢様、失礼ですよ。こんな街でも好んで住む者もいるのです。聞かれたら調査に支障をきたします」

 

「2人ともそこまでにするッス……とはいえ、ちょっと田舎過ぎる部分は確かに否定できないッスけどね」

 

 

 ヨークシンの片隅にあるミシガン市。スワルダニシティから電車を乗り継いで6時間。そこは、まさに田舎という概念を体現したかのような街であった。この街はかつて、炭鉱の町として隆盛を誇り、ヨークシンでも一際発展した町だった。しかし、いつからか時代の流れに取り残されて、今はすっかり寂れ果ててしまった。

 

 高校も大学もあるにはあるし、一通りの公共施設は存在する。しかし、人口も年々減少し、過疎化が進行している。若者達はここよりも都会に出て行ってしまうため、年々高齢化が進み、子どもの数も以前とは比べるべくもない。娯楽施設などはなきに等しい上に、産業もいまいちである。

 総じて言えば、街全体がただただ、緩やかな死に向かう老人のような様相である。

 

 

「こんな所に集まって一体なにしてんのかしら……と、最初は思ってたけどねぇ…」

 

「えぇ。来たら分かったわ。勘だけど、間違いなく()()()()()。敵にとってはね」

 

 

 ソフィアとアルカが言うのは、この街の雰囲気である。不思議と常に雲がかかり、太陽の光が差さない。全体的にどんよりしていて、街全体が停滞しているような雰囲気を醸し出している。若者にとってはココに住むことは苦痛以外の何物でも無いのではないだろうか。

 

 

「たしかに、こっそりコトを成すにはぴったりの雰囲気ね」

 

「調査も難航しそうッスよ。どうも閉鎖的な感じッスからね」

 

「敵も上手いことこんな街見つけたわね。でも、そんな怪しい奴等すら浮きそうなぐらい閉鎖的なカンジだけど」

 

「お嬢様、可能性は絞らない方が良いかと。怪しい奴等が()()()の可能性もありますから」

 

「……そうなればより厄介ね。簡単には尻尾を出さないからね。例のメモの信憑性がより深まったわ」

 

 

 例のメモとは、以前の依頼で倒したテロリストが残したものである。その中にミシガン市の記述があったのだ。内容は簡潔で、文脈の中にミシガン市の記述が一つあるだけ。それでも、無視はできるものではない。なぜならば、以前からその街が怪しいと協会側も警戒していたからだ。内部からの通告で怪しい奴等が出入りしているという情報があったことも影響している。尚、捕縛された例のテロリストは、尋問する前に早々に服毒自殺している。

 

 

「とりあえず、手分けして探すしか無いわね。地道な聞き取り作業からかしらね。私はこの街の有力者に接触してみるわ。丁度以前の依頼主がここにいるのよ」

 

「そッスね……じゃあオレは警察関係を聞き取りします。協力体制をとって、直近の事件から調べてみるッス」

 

「ん~~じゃあアタシはマフィア関係かな。ココの担当は誰だったかな…」

 

「トンマーゾ殿かと。最近幹部に昇格されていますね」

 

「あぁ。一回ウチに挨拶に来たわね。じゃああたし達はそっちに行ってみるわ」

 

「それぞれが終わったら地元住民への聞き取りをおねがい。そして18:00にホテルロビー集合ね」

 

 

 それぞれが分担を決め、駅で解散する。意外にも彼らはツテが多いため、こういった情報収集は得意分野である。前回の依頼でも、敵を特定して追い詰める手際はプロハンターも凌駕する程の手際の良さだった。今回も手掛かりはどこかから見つかるものだと思われたのだが──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ダメね。まるで手掛かりナシ」

 

 

 ホテルのフロントでそうぼやくアルカ。彼女は有力者に聞き取り調査を行ったが、可も無く不可も無く。何の成果も上げられなかった。特に怪しいところも無し──そう報告書に書くほか無いぐらいには手がかりが見つからなかった。当然、地元住民への聞き取りも特に手がかりは見つからなかった。

 

 

「こちらも同じね。聞いた感じだとホントにのどかな街って感じね。ちょこちょこ人死にはあるけど、それも普通の事故。この程度ならどこでも起こりうる悲劇ってやつね」

 

「私も同じ所感です。ですが……」

 

「そうね。何もないってところが逆に怪しすぎる。()()()()()()()わ。ズシはどう?」

 

 

 ソフィアの優れているところは、その野生を凌駕するほどの直感である。その彼女が何かあると言うことは、確実に何かあるのだ。彼女は、理屈では無いこの街の歪さに何かあると直感で感じ取っていた。そして、彼らはコレまでの経験から、その意見を決してないがしろにはしなかった。

 

 

「オレの方は……捜査情報を閲覧させてもらって、殺人や不審な事故等を探ったッス。で、直近で該当する案件が3件。自動車事故と、火事。後は工事現場の事故ッスね。ここは殺人とか滅多に起きないらしいッス」

 

「で? ズシ的にはどれが怪しいと思った?」

 

「そッスね……どれもなんとも言えないッス。事故と言えば事故、すべて怪しいと言えば怪しいッス」

 

「ふ~ん……」

 

「お嬢様的にはどれか怪しいと思いますか?」

 

「う~ん…ちょっとわかんないわね。明日、詳しく調査してみましょうか」

 

「決まりね。明日はその事故を中心に詳しく追跡調査してみましょう」

 

 

 それぞれの報告をまとめ、アルカがそう締める。そして、彼らはホテル内のレストランで全員で夕食を摂り、それぞれ別れた。ソフィアの類い稀なる直感が告げているのなら、間違いなくある。生徒会のチームはそれを知っているため、明日からの調査に一層気を引き締めて向かうことを決意しながら、部屋へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次の日、彼らは3日前に起きた火事の現場に到着していた。現場はいまだに撤去されておらず、焼け落ちたままだ。彼らはここに来る前に先に遺族へと聞き取りと現場検証の許可を済ませてある。

 

 

「……ハズレね」

 

 

 ソフィアが呟く。火事の原因は不審火。被害者は67歳と69歳の老人夫婦。このいかにも怪しい案件ではあったが、ソフィアがハズレと断言した。

 

 

「その心は?」

 

「厳密には関係はある。しかし、コレを徹底的に洗っても何も出てこないでしょうね。そんな予感がするわ」

 

「そう……」

 

 

 とはいえ、検証はせねばならない。被害者はリタイアして悠々自適に住む老夫婦。老後を楽しんでいたはずの彼らは何故死なねばならなかったか。不審火の原因は放火では無いかという警察の調査結果であったが、いまだに犯人は特定されていない。既に警察が徹底的に洗っているはずなため、ここから新たに調査しても徒労に終わる可能性が高い。アルカは溜め息をつき、一旦切り上げるかとソフィアに声を掛けようとした…が、彼女は焼け落ちた建物の一部を熱心に眺めている。

 

 

「? どうしたの?」

 

「ごめん。ハズレとは言ったけど、取り消すわ……コレ、ちょっと手がかりになりそうね」

 

 

 ソフィアが見やる柱の一部。焼け落ちて黒焦げになっている大黒柱の片隅に〝ソレ〟はあった。ソレは、小さな魔方陣やシンボルと言われるモノ。円の中に一筆書きの人を模したものが3つ並び、それが乗り物のようなものに乗っている風なマーク。一見するとただのドリームキャッチャーや地方に伝わるシンボルのようにも見える。しかし──

 

 

「コレが?」

 

「えぇ。実はね、私はコレを至るところで見てるのよね」

 

「!? マジッスか!? どこで?」

 

「至る所で、よ。例えば、一般家庭、マフィアの事務所、公共施設。さりげなく、そして目立たなくだけど、ひっそりあった。ない方が珍しいぐらいね」

 

「……あぁ、確かに見たわね。コレ、何なのかしら」

 

「コレ、気になる。メリル」

 

「はい。では早速図書館の資料を当たってみます。平行して新聞記事などでも情報を集めておきましょう」

 

「ん。いや、ごめん。お願いしといてなんだけどやっぱダメ。とりあえず3件全部当たってからにしましょ。勘だけど、ここからは分担しちゃマズい気がするわ」

 

「かしこまりました。次は工事現場ですね」

 

 

 足早に火事現場を去る。その後ろ姿を見送るように、無惨に焼け落ちた家屋の一部がその姿を曇天に晒していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、こっちもハズレ、と」

 

「ん~~ちょっと分かんなくなったわ。どれもコレも関係ない事象に見えて、全て繋がってるような感覚」

 

 

 工事現場の一角。クレーンで吊された鉄骨が縦に落下して、作業員の頭蓋から一直線に貫き、作業員のミンチを作り上げた事件。どう見ても現場のミスで、安全確認違反の案件である。既に遺族には会社から賠償金が振り込まれており、悲劇ではあるが日常の中の事故として処理されようとしていた。

 

 

「被害者は30代男性。勤務態度は良好。むしろ、現場の主任であり、部下を可愛がっていた人物ね。他方で正義感が強く、煙たがられる一面もあったとか」

 

「怨恨?」

 

「……正直それも無くはないかもね。聞き取りによると、ヒューマンエラーだし。ただ、狙ってやるような事故じゃ無いことも確か。狙ってやるとしたら間違いなくその痕跡は残る。いくら検証しても偶然の事故としか言いようがない」

 

「……念能力は?」

 

「1番ありそうだけど……動機が弱いわ。彼を殺さなければならない理由がね。念能力が原因だとすると尚更特定が困難よ」

 

「皆様、一応ご報告ですが……こちらにもありました」

 

「……やっぱりあるッスか」

 

 

 例のシンボルである。現場のプレハブに壁に刻まれていた。

 

 

「……この件は要注意ね。関係者はマークしておくべきかも。ただ、先に交通事故の方を見ていきましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうですか……娘さんが……」

 

「あの子は……私の可愛い娘でした…多少変わったところがあっても、私にとっては掛け替えのない……私が目を離したばっかりに………」

 

 

 

 最後は、交通事故の件である。目の前にいる泣き崩れた女性は、遺族の母親。事故から1か月は過ぎているが、その目や雰囲気を見れば今だに不安定のようだ。

 事故の概要は、大学生の息子が運転する車に乗っていた13歳の娘が、窓から顔を出し、そこに動物の死骸を避けた所を電柱にぶつけてしまったというもの。彼は、その時重度のアレルギー症状を出していた妹を急いで病院に搬送していた途中だったのだ。

 

 息子は呆然自失。帰宅して部屋に引きこもり、翌朝、出張から帰宅した母親が車の中の首のない遺体を発見した。まごう事なき悲劇である。

 

 

 

「……その息子さんは?」

 

「……しばらく引き篭もっていましたが、今は何とか大学に通わせています…。あのコもその方が気がまぎれるようでして……でも、私がいけないんです! あぁ! 母が亡くなってからこんな事ばっかり!!」

 

「お母さん、落ち着くっス!」

 

「……今日はここまでにしましょうか。ご協力頂きありがとうございました」

 

 

 

 事故から一月たっても、いまだに癒えぬ被害者の心。どの事件もそうだったが、やるせないものだ。母親の心境を察し、一旦彼らはその家を辞した。

 

 

 

「……どう?」

 

「……………」

 

 

 問われたソフィアが珍しく言いよどむ。その様子に、何かあるのかと顔を見合わせる一同。

 

 

 

「お嬢様、何か引っかかるモノでも?」

 

「ん? あぁ……。そうね……状況の上ではただの事故。悲惨だけどね。ただ、私としては分からない、としか言いようがない」

 

「ん~? 何かありそうな気配だったけど?」

 

「それがね……ホントにわからないの…何かある気はするんだけど……ただ、気づいた? 他の現場との違い」

 

 

 ソフィアが一同を見渡す。当然気付いて居るだろうという確信を込めて。そして、優秀な彼らは当然気付いて居た。そして、口を揃えて言う。

 

 

「「「例のシンボルが無かった」」」

 

 

「その通り。あの家をどんなにさりげなく見渡しても例のマークは無かったわ。それだけが逆に不自然と言えば不自然ね」

 

 

 彼らはさりげなく家の中を観察していた。しかし、不自然なほどに何もない。ソフィアの言う通り、それが逆に不自然と言えば不自然だ。だが、ソフィアのセンサーは珍しく曖昧だ。では何もないのかとういと、それは違うような気もする。どちらとも言えないが、逆に言えば、これらを突き詰めることで見えてくるものがあるかもしれない。

 

 

「そういえば、他にもあのリビングには作りかけのミニチュアハウスがあったッスね」

 

「あぁ、あの精巧な奴ね。母親の仕事みたいね」

 

「中々リアルでビックリしました。相当な技巧の持ち主です」

 

「……ドールハウスは元々は箱庭療法と言って、精神的に不安定な患者の治療の一環として用いられることが多い。私も昔実家で監禁されてた頃は良く造ったものよ」

 

 

 凄く突っ込みづらい事を真顔で宣うアルカ。しかし、そこに空気を読まずソフィアが反応する。

 

 

「元々あの母親は精神不安定だったって事?」

 

「そうね…更に言えば、あれほど本格的なモノを作っているって事は相当筋金入りだと思うわ」

 

「ふぅん……とりあえず、3件の調査が終了したけど、アルカ、これからどうする?」

 

「予定通りよ。これから図書館で調べ物ね。皆でいきましょう。まぁ、私は主にネット関係で当たるけど」

 

 

 移動しながら、彼らは今後の予定を話す。一方、彼らが去った後、被害者の家族は更なる急展開を迎えることとなってしまったが、立ち去ってしまった彼らがそれに気付く事は出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オレは……悪くない。悪いのは母だ。オレはあの時、友達のパーティーに行きたかっただけなんだ。でも、妹を連れてけって言うから……。オレがパーティーでちょっとハッパを吸いながら女と楽しんでる間に、妹はナッツ入りのケーキを喰っちまった。それからのことは良く覚えていない。

 そして…オレは事故の後、妹の姿を見ていない。怖くて見られなかった。だが、今でも脳裏にアリの集った首だけの妹が浮かぶ。何故、助けてくれなかったのか。何故見捨てたのか。無言でオレを見ている。妹の癖であるコッという音を鳴らしながら……。

 

 あれから、家族内の中は険悪もいいところだ。親父も必死で家庭を立て直そうとしているが…無駄なんだ。当然だ。本当は分かっている。

 

 

 オレが殺したんだ。

 

 

 妹を。

 

 

 だから、コレは罰なのだ。母が精神不安定なのも、父が疲れ果てた顔をしているのも。オレが、四六時中幻覚に悩まされているのも……。

 

 

 

 

 母はあれから、地元の心霊サークルに入り浸り、怪しげな儀式を行った。なんでも、降霊術で妹を呼び出すらしい。あまりの剣幕にオレと父も参加したが…アレはダメだ。ただの嘘っぱちならばまだ良かった。でも違ったんだ。確かに妹は現れた。媒体となるスケッチブック上に。でも、違うんだ。

 

 

 アレはよくないものだ。

 

 

 事実、あれからオレの周りに不思議なことや幻覚が見え始めたのだから。

 

 

 この、何もないつまらない街で、オレは妹の幻影に囚われている。逃げ出したくても、自分の罪の意識から逃げられない。

 

 つい昨日は、知らない婆さんから「ピーターから出て行け!!」と罵られた。ピーターはオレなんだが。気狂いかと思って周りを見渡しても、周りが無反応で怖かった。もしかしてコレも幻覚なのだろうか。

 

 

 そして今日、ハンターの卵という人達がウチを尋ねてきた。彼らはオレとほぼ年齢は変わらないだろう。部屋からこっそり彼らを観察したが、それぞれがキラキラと輝いて見えた。なにやらこの街で調査をしているらしい。その彼らの輝かしい姿にオレは僅かばかり嫉妬した。何故オレはこんなところで燻っているのだろうと。もっと広い世界に出て行きたい。そうして、キラキラした世界で自らも輝いていたい。

 8年前の騒動の時、オレ達家族も、この街の住人も死にかけた。それからというもの、この街全体が更に重苦しい空気を纏うようになったかもしれない。オレは、そんなこの街が心底嫌いだ。

 

 今日尋ねてきた彼らは、当然念能力者だろう。ネットでよく知られている念能力の習得の難しさ。ソレを乗り越えて、彼らは立派な社会人として輝いている。オレとほぼ年が変わらないのにだ。むしろオレよりも年若い可能性すらある。

 

 

 羨ましいことだ。

 

 

 オレとは大違いだ。

 

 

 こんな、街に、家族に囚われて生きているオレなんかとは……。

 

 

 いつか、オレが輝ける未来がくるのだろうか。

 

 

 

 妹を殺してしまったオレが。

 

 

 

 下で父と母がなにやら言い争っている。いつものことだ。すこし疲れた。横になろう。

 

 

 

 ──あぁ、オレは、何のために生きているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ……」

 

「どうですか? お嬢様」

 

「興味深い記事をいくつか。そして、気になる伝承をいくつかってとこね」

 

「相変わらず、その調査能力は羨ましいッスね。ほぼ勘でしょ?」

 

「ま、これも才能ってやつよ。それはそれとして、そろそろ集めた情報を整理しましょうか」

 

 

 

 そうして彼らは一旦図書館の談笑スペースに集まり、お菓子休憩をしながら成果を報告し合う。いつの間にかメリルは何処からか紅茶セットを取り出して、全員に紅茶を用意していた。そこだけ見れば優雅なお茶会にしか見えないが、ソフィアは話し合いが始まって開口早々に不満を表明した。

 

 

 

「……あのねぇ。なんでアンタ達はほとんど情報見つけられてないのよ!」

 

「貴女が異常なの。まぁ、今回はそれに助けられたけどね。で?」

 

 

 アルカ、ソフィアの抗議に渾身のスルー。流石のソフィアも呆れた表情だったが、諦めた。ここでモメても意味がない事は理解していたから。代わりにこれで勘弁してやるとばかりの特大のため息をついて話しはじめた。

 

 

「はぁ~……しゃーないわねぇ。じゃあ言うわよ。この街は特段何もない田舎ではある。でもね、8年前の【カタストロフィ】からもソレは変わらなかったみたい」

 

 

 ソフィアは、彼女の結論から先に述べた。それは、至って普通の報告である。しかし──

 

 

「何も変わらない……それは…変ね」

 

「そ。逆にソレは変なのよ。他んトコは大なり小なり変わってるんだけどね。むしろ、あの時もこの街の住人は殆ど混乱すら起こさず静かに過ごしてたみたいでね」

 

「……そこまでくると異常ッスね」

 

「それがこの街のスタンダードみたいね。波を立たせず、ひっそりと静かに暮らす。やっぱりこの街は変よ。むしろ、ずっと以前から変だったと見ていい」

 

「それで?」

 

 

 アルカが先を促す。ソフィアは溜め息をつきながら続ける。

 

 

「例のシンボルマークね。アレは先住民の時代から受け継がれ続けたシンボルみたい。祖霊信仰、というものかしら。民俗学の資料の片隅にあったわ」

 

「先住民、ねぇ…」

 

「話を続けるわよ? でもね、それ以上の資料は見つからなかった。不自然なほどに。でも、確実にこの街の住人の大半はそのシンボルマークを信仰している。それがどういうことか、分かる?」

 

 

 ソフィアは問いかける。その表情は真剣だ。他の3名はそれぞれその理由を考え始め、そして、アルカがふと言葉を漏らす。

 

 

「その信仰は……おおっぴらにはできない理由があった、とか?」

 

「正解、と私は見ているわ。で、ズシが調べた事故の案件。それらの記事を洗ってるときに気づいたんだけど……それらには共通点があった」

 

「まさか……いや、それはないでしょ」

 

「それがあるのよ。例のシンボルマーク。アレ、()()()()()()()()()()

 

 

 ソフィアは断言した。しかしそれはおかしな話である。なぜならば──

 

 

「待つッス! ソレはおかしいッスよ! 一件目の火事の件はどうなるッスか!?」

 

「逆に聞くけど……アンタ、アレが何で()()()()()()()()()と思う? あの家全体が燃え落ちるほどの大火事で」

 

「あ……」

 

 

 そう。冷静に考えれば、あの家の柱はほぼ黒焦げになっていた。ソレにも関わらずあのマークはハッキリと残っていた。まるで、見せつけるように。

 

 

「消火活動もあったはず。大量の火と大量の煙、そしてトドメに消火の為の大量の水。これだけの条件下で、文字が少しもかすれず残っているのは不自然すぎる。後付けで書かれたとみるのが自然ね」

 

「……貴女はいつも思うけど、直情に見えて妙に知性的なところがあるわね」

 

「それがお嬢様の面白いところです」

 

「アンタ達、うるさい。で、事故に遭った人々はたびたび住人トラブルがあったみたいね。火事の件はあの夫婦、他所からリタイアして来たみたいじゃない? そんな感じで地域に溶け込まないよそ者だったり、精神的不安定だったり、作業現場の被害者みたいに周囲とトラブルを起こしがちだったり……更に記事を辿ると、同様の不審な事故がたびたび起こる。殺人が無いのが不思議なぐらいに。これ、偶然だと思う?」

 

「……まさか」

 

 

 アルカ達は、ソフィアの意見を聞いて最悪の結論を思い浮かべた。あまりにもあまりな結論過ぎて、口に出すことすらはばかられるほどの。それは──

 

 

「この街全てが……」

 

 

 室内であるにも関わらず、ゾッとするような寒気が彼らを襲う。街の有力者も、地域に根付くマフィアも、警察も、公共機関も、果ては一般家庭ですらも。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

 

 全員が沈黙し、その事の重大さに頭を悩ます。しかし、その沈黙を破ったのは、のんびりとしたアルカの声だった。

 

 

 

「う〜ん、流石に考えすぎよ。そこまでいったら妄想の類いだわ」

 

「でも!」

 

「まぁまぁ。とりあえず頭を休めましょう。ポテチ食べる?」

 

 

 ズシの抗議を遮って、アルカが食べていたポテチの袋の口を皆の方へと向けた。何か言おうとしていた彼らだったが、〝それ〟を見た途端に再び沈黙した。

 

 

「どうしたの? 食べないの?」

 

「……ッ! あぁ、私はいいわ。お腹いっぱいだもの」

 

「…同じくっス。すみません」

 

「……私はそろそろお紅茶やお菓子を片付けますね。ご厚意ありがとうございます」

 

「ふ〜ん。みんなダイエット中? じゃあ話もひと段落したし、とりあえずホテルに戻りましょうか。続きはまた明日」

 

 

 あくまでいつもと変わらないペースで宣い、行動を開始したアルカに、他の者も同調して動き出した。

 その動きはいつもと変わらず、他から見れば何も変化がないように見えただろう。()()()()()()()()

 

 

 しかし、さりげない動きの中、アルカはポテチの袋を鞄に仕舞い込んだ。側から見れば、ホテルで残りを食べるようにしか見えない。しかし、他の3人は知っている。

 

 

 ポテチの袋に中身が入っていない事に。

 

 

 そして、そのポテチの中身の代わりに、オーラを空の袋の中に浸透させてメッセージを書いていた。そのメッセージには、こう書いてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【見られてる。聞かれてる。自然に振る舞え。気取られるな】と。

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