アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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連日投稿といったな……あれは嘘だ()





未来編も佳境になってきました。
ちょい長く続いていますが、外伝と言うことで一つお許しください…


外伝10、戦闘

 

 

 

 

 

 

 

 

「くうぅ~っ! やっぱ、マジモンの暗殺者は違うねェ。オレじゃ無けりゃ見逃してたぜ」

 

「あぁ、兄弟。コイツは本物だ。決して油断するなよ」

 

 

 白と黒の双子の兄弟のチンピラ。トンマーゾファミリーの構成員である。彼らは常に二人一組で行動する。地元では白黒コンビとして恐れられる存在だ。アンダーソンに連なるファミリーとしては当然のように念能力の熟達者でもある。その二人が、年端もいかぬ少女に対して、その能力を全開にしながらも襲いかかる。

 

 

 

夏への扉(ハイラインズ・ゲート)

 

 

 

 

 ズズズ……

 

 

 

 二人が横並びで手を合わせたる。そして、しばらくしてその手を離すと、彼らの間には小さな扉ができていた。

 

 

 

「大サービスだぜェ? ここまで見せるのはよォ」

 

「兄弟、余計なことは言わなくていい。我等はただ目の前の敵を葬るのみ」

 

 

 そう言い残し、白服の男が扉をくぐる。

 

 

「……出す前に始末したかったんだけどね…まぁいいわ」

 

 

【肢曲】

 

 

 アルカの姿が複数にブレる。そのまま彼らの一人、黒服の男に襲いかかろうとした直前、白服の男が扉から現れ、アルカの顔面へパンチを飛ばしてきた。攻撃を中断して辛うじてガードするアルカ。

 恐らくコレは限定的な瞬間移動能力だと判断したアルカだったが、それでもまだ不可解な部分があった。その程度ならば【相互協力型】を使ってまでやる能力ではない。

 

 

「……()()()()()()()()()()

 

「ケッ。テメェに何がわかる。そのまま黙って嬲られて死ねや」

 

「余計なことを言うな兄弟。続けていくぞ」

 

 

 

 扉から現れた白服の男が再び扉へと消える。黒服の男がアルカへと向かう。そのパンチを悠然と躱し、反撃を試みるアルカだったが、その要所要所で、空中から現れた白服のカウンターがとんでくる。あまりにも適確なタイミング過ぎて、いくつかいいモノを貰ってしまった。

 ぐらつくアルカ。その隙を見逃す敵ではない。黒服の男の猛攻に、何とか攻撃を捌くものの、再び白服が現れ、致命的な攻撃をしてくる。当然、アルカは白服の男の動きも警戒している。白服の男が扉に向かって消えるタイミングも把握しながら動いてはいる。しかし、だ。自身が避けようとしたタイミングに。自身がカウンターを取ろうとしたタイミングに。()()()()()()()()()()()()()()に、更に攻撃を重ねられる。先程も言ったが、あまりにもタイミングが良過ぎる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。たまらず数メートルの距離を置くも、そこにまた突如現れた白服の足払いを重ねられて転倒する。黒服の男は、更に追撃しようとアルカへと迫る。

 ここにきてアルカは【相互協力型】の厄介さを思い知る。単純に違う能力2人で来るよりも面倒臭い。息が合っている双子だから尚更に。

 

 

 絶体絶命。

 

 

 傍から見ればそう見えたアルカだったが、舌打ちをして彼女は懐から出した道具で煙幕を張った。そして、《隠》で姿を消す。時間稼ぎでもあるが、もう一つは──

 

 

 

「チッ! 煙の中に隠れたか…!」

 

「落ち着け、兄弟。焦ると仕損じるぞ…まだバレてないはずだ。《円》を使え」

 

「了解、っと!」

 

 

 黒服をかすめる攻撃。その攻撃に白服がカウンターを放ち、アルカへとヒットする。頬をかすめる一撃に、あと僅かズレていたら急所を穿たれるところだったと黒服は冷や汗を掻く。アルカはそのまま再び姿を消した。

 

 

「──別の世界線への移動、ほんの少し未来、かな。そこを覗いてから出てくるから理想のカウンターが取れる」

 

 

「!!?」

 

 

 

 再び現れるアルカ。今度は黒服ではなく、白服を狙った下段の間接へのキック。しかし、白服はその直前に扉へと姿を消す。その間、黒服が再びアルカへと襲いかかり、対処しようとするアルカにまた白服がカウンターを合わせた。

 鼻血を出しながら後方へと吹っ飛ぶアルカ。しかし、そのまま彼女は煙の中へと消える。

 

 

「──白服へは攻撃可能。しかし、すぐ潜られる。潜ってから次の攻撃は最短で3秒以降…なるほどなるほど。つまり3秒先の未来を覗いてるのかな?」

 

 

 煙が晴れると、ボロボロの姿のアルカが姿を現した。しかし、彼女の表情は変わらない。一方、双子は内心焦っていた。確実に殺ったと思うタイミングの攻撃をいくら重ねても倒れないアルカに。普通の敵なら最初でお陀仏だった。しかし、致死の攻撃も当たる寸前にオーラのガードが間に合ってしまう。恐ろしいオーラ攻防力移動の技術だ。

 

 しかも、この僅かな攻防で自身の能力を見極められている。

 

 

「……兄弟、次で決める」

 

「分かってらァ…メスガキ、次は逃げられねェぞ!」

 

「うん、うん。もういいかな。勉強になった…一つお願いしていい? 貴方達の肝臓、くれない?」

 

「はぁ? 何言ってんだ? 狂ったか?」

 

「聞くな、兄弟、我等はやる事をやる」

 

 

 そうして再び始まる猛攻。先ほどの焼き直し。しかし、アルカは気にせず更に問いかける。

 

「ねぇ、貴方達の膵臓、頂戴?」

 

 

 吹き飛ばされて尚、問いかける。2人は不気味に思いながらも無視した。が、

 

 

「ねぇ、貴方達の心臓、頂戴?」

 

 

 問いが重なるごとにアルカのオーラが増大する。最早2人の攻撃もほぼ意味を成さないほどにそのオーラが膨れあがっている。そして──

 

「ねぇ、貴方達の大脳、頂戴?」

 

 

 

 ゴゴゴゴゴゴ……!

 

 

 

 個人が持つとは思えないほどの漆黒のオーラが溢れ出す。そして、それは、相対する者の心を容易く折ってしまった。

 

 

「こ、これは」

 

「さよなら」

 

 

 ギチチチィ

 

 

 突如、黒服の男はその場で()()()、一本のロープ程の太さまで絞られた。突然の死。その攻撃の予兆を察したのか、白服の男はその直前に扉へと逃げ込んだ。彼の逃げ込んだ先は、アルカの言ったとおり、3秒先の世界線である。そこでは手を出せず、彼は幽霊のような存在へと変わるが、戻った時は3秒前の世界である。つまり、理想のタイミングで彼は現れることができる。

 しかし、彼がねじり上げられる前に潜り込んだ世界は真っ暗だった。何も見えない、何も聞こえない世界。更に、戻れば兄弟を惨殺した不可避の攻撃が自分を待っている。だが、ここにいてもどうしようもない。こんなことはかつて無かった。この能力さえあれば我々兄弟は無敵だったのに。だが、未来の世界は消えてしまっている。そこで初めて、彼は絶望した。そして理解した。自分がどうしようも無く詰んでしまっていることに──

 

 

「──貴方の未来の世界は見える? 未来を覗きたい気持ちは分からなくはないけど、そんなことしなくても、貴方の未来は変えられたのにね」

 

 

 興味を無くしたかのようにくるりと向きを変え、アルカは屋敷へと急ぐ。その背後で、何かが絞られるような音がしたが、もう彼女の関心を引くことはなかった。

 

 

「おっと…少し治療しとかなきゃね」

 

 

 ボロボロだったアルカは、その場に立ち止まり、自身の胸に手を当てて「お願い」する。「この傷を治して」と。すると、彼女の身体に光が満ちて、身体の傷が完全に回復した。

 

 

「……使うつもりはなかったんだけどね。相変わらずコスパが悪い」

 

 

 ──恐ろしく強く、便利なこの能力。それはかつて彼女の半身だった存在の置き土産である。アルカは、この能力をナニカからのプレゼントだと確信していた。かつてあったはずの絆、その残滓。それが彼女をこの日まで生かしてきた。

 ただ、それはそれとしてもこの能力はかなりオーラを喰う。今日は使えたとしてもあと一回が限度であろう。もし、万が一魔王が出てきてしまったら……そうならないためにも、彼女は先を急ぐ。ナニカが守ったこの世界を、そんなモノに台無しにされないために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…!!」

 

 

 ズシは苦戦していた。オーラ的には同格。しかし、その練度と体術にはズシの方が分がある。しかし、ソレはタイマンでの話である。

 

 

「流石に学生とは言え、中央校のエリートサマは違うな!」

 

「だがよぉ、オレたち2人相手に勝とうなんざ10年早ええんだよ!!」

 

 

 敵の1人が近くのコンクリートを蹴りで粉砕する。ゴリゴリの強化系。それは操作系であるズシの力を軽く上回る。強化系でも未熟であれば対処が可能だ。しかし、相手はそれなりの熟練者だ。強化系は鍛えれば、それが全て必殺になる。

 とは言え、ズシも幼い頃から心源流を修めてきた熟練者だ。そのようなブルファイターなど格好の餌食である。問題は、現在2対1であるということだ。

 

 

 一方を攻撃すれば、相手が防御している間にもう一方が仕掛けてくる。単純に手が足りないのだ。そして、もう一方の相手は変化系。オーラを炎に変化するという、ありきたりなようで中々いない珍しい使い手である。

 

 

「うわっちっち!!」

 

 

 敵から飛ばされた炎を正面に受けて、彼は辛うじて廻し受けでそれを防ぎきった。多少の火傷で済んだのはかれの技術の賜である。しかし、側面からブルファイターが突っ込んできて、派手にぶん殴られた。ズシはインパクトの瞬間、身体を回転させることで受け流し、側面からパンチのカウンターを撃ち込むも、完全にその威力を流しきれず、カウンターも中途半端になってしまった。

 そこに再び炎が襲いかかる。もう1人も巻き添えにするかの勢いで放射される炎。たまらず距離を取らされるズシ。もう1人を見れば、地面を岩盤ごと畳返しの要領で掘り起こして盾にしてやり過ごしていた。

 先ほどからこのパターンで徐々に屋敷から引き離されている。ズシは反省する。先ほどの打撃も、ウィング師範なら完璧に受け流して、強大なカウンターを放ったことだろう。まだまだ未熟…! 故に、これ以上無様は見せられない。狙うは速攻!

 

 

「心源流は! 不敗の流儀!!」

 

 

健全な肉体の健全な魂(パーフェクト・コントロール)】!

 

 

 オーラとは、極論何でもできる。放出したり、変化したり、違うモノへと具現化したり、強化したり、操作したり。果てには、アルカのような訳の分からない現象まで引き起こすことさえもできる。

 

 では、そのオーラを()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 結論から言えば、「何でもできる」。変化も具現化も、無論強化も放出も。ありとあらゆることができる。その可能性を信じ、自身の操作系の能力のメモリを彼はオーラ操作に全振りした。操作系はピーキーだ。刺されば決まるが刺さらなければアッサリ負ける。だが、それでは駄目だ。ありとあらゆる事態に、十全に対処出来るようにならねばならない。だからこそ、彼は脳が焼かれようと、かの大陸に向かった()()()に会うために、全ての可能性をそこに賭けた。

 

 

 できないのは、自らが未熟ゆえ。

 

 

 できるようになるまで、心源流を信じて鍛錬あるのみ。そう彼は自らに言い聞かせながら、この8年間狂気に身を委ね続けた。

 

 

 そんな彼が、現在何ができるかというと──

 

 

 

 

 ズシの周囲に、10メートル前後のオーラが円状にピンと張られた。

 

 

 

 

「ハッ! バカが! 戦闘中に《円》なぞ使ってんじゃねぇ!!」

 

 

 堂々と10メートル前後の《円》の中に侵入してきた強化系の男、ハミル。しかし、ズシはその猛攻を紙一重で回避する。しかし、ソレは《円》を使っているなら当然の事。知覚が広がっているためである。その処理能力を超えて猛攻を仕掛ければ、必ず綻びが出る。そして、一撃当たればオーラ差でズタボロになる。それが念戦闘での常識である。だが、そこでイレギュラーが起きた。パンチをかます直前、彼は()()に躓いて、盛大に空振りする。

 

 

「? なんだぁ? まぁいい、ミハエル! やっちまえ!!」

 

 

 もう1人の炎使いが背後から灼熱の炎を飛ばす。範囲攻撃だ。これは避けられまいと確信していた2人だったが、その炎が彼に当たる直前で方向を変えて飛び去ってしまった。

 その不可解な現象に、彼らはこれが能力だと確信して《円》の範囲外まで距離を取る。

 

「《円》の中で発揮する能力…? んな能力は初めてだな」

 

「回避能力の強化か、それとも変化系か…訳わかんねぇ。だが、それだけならたいしたこたねぇな。オレ達コンビのガン攻めに耐えられるんなら耐えてみろや」

 

「……心源流は回避専門じゃ無い。それを見せてやるッス」

 

 

 

 ズシは、《円》をキープしたまま2人に接近する。そして、飛び上がったかと思えば、空中で何かを蹴って更に方向転換する。さながら空中に足場が無限にあるような軌道に、流石の2人も動揺しながらも対処しようと攻撃を放つが、今度は不可解な壁や障害物に妨害される。

 

 

「チッ! 避ける技術は確かなモンだ! だがな! こんなうっすいオーラじゃテメェはオレ等にキズ一つ付けられねぇ!!」

 

「それはどうなのか、自身で確かめるといいッス!!」

 

 

 これまで避けに使用していた技術を攻撃に転ずる。即ち──

 

 

 ガツッ。

 

 

「うっ、なんだ?」

 

 

 背後からの攻撃、ふり返っても何もない。だが、同じようにミハエルも辺りを見回している。同時に何か攻撃を食らっている。

 そう認識した瞬間、四方八方からオーラの打撃が彼らを襲った。

 

 

 ガガガガガガガガガガガガガガガ!

 

 

「ガッ、がああああああああぁ!!」

 

 

 一つ一つはたいしたことが無い。だが、それが千を越えて万をも優に越える勢いの打撃を全身に余す所なく連続で喰らったらどうなるか。

 

 

「【制空圏】その拾三、【偽典:百式観音九十九乃掌】!」

 

「うっぐあぁああああああああああああ!!」

 

 

 ハミルはその途方も無い連撃に為す術無くボコボコにされ、そのオーラが消えるまで反撃を許されもせずに倒れた。一方、同じように技を食らっていたミハエルは、ダメージを負いながらもオーラを振り絞って炎を噴出し、《円》の範囲外まで自身を移動させることに成功した。

 

 

「ぐっ…テメェ…なんつー意味わかんねー能力だ! 変化系か? だがな! 攻略方はあるんだぜ!!」

 

 

 ゴゴゴゴゴゴ

 

 

 ミハエルの全身を炎が纏う。それはオーラのガードを極力減らした自身さえも燃やすような熱量。

 

 

「燃え尽きろ!! 【スピキューーール】!!!」

 

 

 そのまま、《円》の範囲より上方に飛び上がり、その莫大な熱量のままズシめがけて飛び込む!

 

 

「うおおおおぉぉぉぉぉ! 熱っちいいいいぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

 

 ドゴオオオォン!!

 

 

 着弾の瞬間、炎が周囲全体を多い尽くし、辺り一面を消し飛ばした。閑静な住宅街の道路の一角は、隕石が衝突したかの様な様相を呈している。

 これこそが、ミハエルの必殺技。莫大な炎を纏って飛び上がり、相手に向かってそれを身体ごとぶつける大技。言うなればそれだけだが、その威力は単純な分、特大だ。

 

 

 だが──

 

 

 

 彼がズシの《円》領域に突入した瞬間、オーラが生き物のように纏わりつき、その威力と炎を減衰させる。当然そんな事では止まるわけもないが、かなりの威力を殺され、ズシに辿り着く頃には半分程の威力になっていた。更に、インパクトの瞬間、ズシは、燃え盛る彼の頭に手を置き、そのまま掴みながら空中で威力を利用して舞うように回転させると、敵の力に遠心力をプラスして、顔面から地面へと叩きつけた。

 

 

 土煙が晴れた時、クレーターの中心にズシは残心をしながら立っていた。

 

 

 

 そして、完全に相手が沈黙しているのを確認し、彼は構えを解き、礼をする。

 

 

 

 

 

「押忍ッッ!!!」

 

 

 

 

 

 閑静な住宅街に、彼の威勢のいい声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギャギャギャギャッ!!

 

 

 

 敵と2、3合の打ち合いを経て、弾き飛ばされた少女の足が地面を凄まじい勢いで擦る。間髪入れずに敵の念弾がその場所を穿つが、少女は既にその場から飛び退いていた。そこに敵の一人が迫り、パンチを放ち、少女はそれをガードする。だが──

 

 

 

「【結束する運命(ユニティーケーブル)】ッ!」

 

 

「!?」

 

 

 少女の手は、具現化したオーラの結束によって固く縛られてしまった。そこへ、もう一人の念弾が少女を襲う。状況的に避けられず、少女はオーラを前面にまわしてガードを選んだ。だが、それは悪手であった。そのまま弾が変化し、とりもちのように彼女へひっつくと、彼女をコンクリートの上へと縛り付けた。

 

 

「【俺の彼女はM14(マルチウェポン)】の能力の一つ、とりもち弾ですな。便利でしょう?」

 

 

「チッ……やるわね…流石に2対1は分が悪い、か」

 

「ほう、状況的には詰みに見えますがね。さて、適度に殴って、大人しくさせてから楽しませて貰いましょうかね。他の面々も助けるどころではなさそうですし」

 

「……やっぱりアンタはキモいわ。トンマーゾ」

 

「クックック……何とでも言うがいいですな。若い子の肉体はそれ自体が芸術だ。それを一方的に汚す快感は何事にも変えられん」

 

「ふん……アンタに嬲られるぐらいなら死んだ方がマシね」

 

「死んだら死んだでそのご遺体は丁寧に解体しましょうねぇ! 我が神への供物としては上等ですな!」

 

「クソが……ま、いいわ。アンタに教えてあげる」

 

「ほう? 諦められましたか?」

 

「……アンダーソンの直系のッ!、〝本気の力〟ってやつをねェ!!!」

 

 

私の流儀(ルール・オブ・ソフィア)

 

 コンクリート上で拘束されていた少女のオーラが膨れあがる。それに伴って、彼女の肉体は隆起し、凝縮する。傍目からは変化が無いように見えるが、そこには凄まじい力が内包されていた。そこに気づいたトンマーゾともう一人の能力者は、直感でマズいと感じ取り、念弾を二人して放つ。死んでもいいと言う威力で。

 

 

 ガガガガガガガッ!!!

 

 

 

 コンクリートが穿たれ、凄まじい量の粉塵が舞う。しかし、手応えが無い。そして、どうやったのかその場にもいない。《隠》だ。慌てて二人は《円》で索敵するが、その彼らの顔にいつの間にか水が覆い被さっていた。

 

 

生命の水(アクア・ウイタエ)

 

 

「「ゴボッ!! ガボバボボ……ッ!!」」

 

 

 いくらその水を取ろうとしても、取れない。当然だ。その水はオーラを具現化したものであるから。

 

 

「お嬢様に指一本触れさせない、と言ったのですが……申し訳ありません。お嬢様」

 

 

 背後から、衣装が少しボロボロになったメリルが現れる。彼女の背後には別の敵である2人の能力者が倒れていた。トンマーゾ達は状況を理解する。1対2が2対2になってしまった。それを冷静に判断し、その状況でトンマーゾはメリルに向かって銃撃する。もう一人もメリルに向かって殴りかかろうとしたとき、彼はその場に崩れ落ちる。その胸に大穴を開けて。

 

 

「これだから強化系は嫌だったのよね…泥臭い闘いしかできないから」

 

 

 拳で胸を貫いた少女が、悠然と立つ。トンマーゾの能力を受けて身動きが取れないはずだった少女が。しかし、よく見ればまだトンマーゾの能力はくっついたままだ。それでも尚、少女は強引にその枷をぶち破り、動いていた。

 

「お嬢様にはお似合いですよ。力で全てを解決する。いい能力じゃあないですか」

 

「アンタ、私が脳筋って言いたいわけ!?」

 

「いえ、さすがは王者の風格と言いたかっただけですよ」

 

「絶対馬鹿にしてるわよね……ま、いいわ。ねぇ、トンマーゾ。色々な弾が出てくるアンタの能力は面白かったわ。銃の能力もそこまで悪くないって認識を改めたわ。でもね、ソレってマフィアの中じゃ三下の能力でしかないのよ」

 

 

 縦横無尽に撃ち出される弾丸を躱しながら、哀れみを込めてソフィアは告げる。

 

 

「強さとはッ! 自らの意を押し通す力ッ! それが私のモットーよ。じゃあ、さようなら」

 

 

 少女が徐々に威力が落ちていく念弾を丁寧に捌きながら接近し、その莫大なオーラを込めた拳をぶち込む。トンマーゾは、そのあまりのオーラに危機感を覚え、能力を解除してでもオーラを全力でガードにまわした…が、その防御すらも容易くぶち抜き、彼女の拳はトンマーゾの肉体を貫通した。

 

 

「貴方の敗因は一つ。下衆すぎたこと。そして、この私を怒らせた事ね」

 

「お嬢様、それでは2つでは」

 

 

 びしっと決めたソフィアに対して、容赦ない突っ込みを入れるメリル。しかし、その指摘はあまりにも残当すぎたため、ソフィアは全力で誤魔化すことに決めた。

 

「……細かいことはいいの! それよか、時間を食っちゃったわ…!」

 

「他の2人を助けますか? それとも…」

 

「アイツらはあの程度の敵なら何とでもなる。それより、早くこの儀式を阻止しなきゃ。今から突入するわよ! アンタも付いてきて!」

 

「畏まりました。行きましょう、お嬢様」

 

 

 

 

 そう言って、屋敷に突入しようとした瞬間、2人を横目に、屋敷の1番上の窓から人間が飛び出し、地面に激突した。













能力紹介&人物紹介



敵サイド


夏への扉(ハイラインズ・ゲート)
術者:双子の白黒服
・特質系能力
 作中にもあったように、相互協力型の能力。双子の2人のオーラを混じり合わせ、扉を具現化する。その扉の先は、3秒後の世界となっているが、干渉する事は不可能であり、幽霊の様な存在となる。出てくる時は任意の場所に変更出来る。その場合は扉が移動する。尚、この扉は1人しか入ることが出来ない上に、5分以上滞在すると扉が消えてしまうので、潜り過ぎには注意が必要。基本的に、双子の一方が中に潜って未来世界を覗き、その間もう一方が攻撃を仕掛けておき、いいタイミングで扉から出てきて乱入する。下手な相手ならば初撃で沈める事が可能である。ただ、今回は相手が悪くかったため、捌かれ、見切られ、兄弟時間差で仲良く捻られた。


ハミル(強化系能力者)
・オーソドックス強化系。ビッグバンインパクトまでは使えないウヴォーギン。ジェネリックウヴォーギン。


ミハエル(変化系能力者)
・いそうで中々いない炎使い。習得方法が難しいのと、使っても自傷ダメージがありそうで使いづらいからか。ミハエルは、炎には特別強い体質だったのと、別のオーラで熱をやわらげる事で使用を可能にしている。リトルフラワー理論。
【スピキュール】
・SO2のアレ。作者も初見だと速攻で死にました。気になる人は調べてみよう! 真面目に言えば、全身に莫大な炎を纏いながら空中に飛び上がり、頂点から落下すると同時に体当たり&炎をぶち込む超必殺技である。威力は莫大だが、当然ながら自爆技でもあるので、ここぞという時にしか使えない。


結束する運命(ユニティーケーブル)
術者:トンマーゾのバディ
・具現化系能力
 結束バンドを具現化する。発動条件は、手による攻撃を該当の箇所にヒットさせる事。条件が揃えば、その箇所に具現化された結束バンドが巻きつき、対象を拘束する。


トンマーゾ(42)
・放出系能力者
 アンダーソンファミリーに最近昇格した幹部。ミシガン市周辺を担当する。彼は地元からの叩き上げであり、地味ながらも着実に成果をあげる姿勢と、地域と密接に繋がっているコネクションが評価された。しかし、その実態は、地域のとある信仰に魂から殉じる狂信者であり、その悲願を達成する為にマフィアへと潜り込んだスパイである。彼以外にも、この地域の要職は軒並み汚染されており、時折り現れる反発者や異端者を事故に見せかけて処理していた。
 念能力者としては大した事はないが、それを補って余りある悪意の持ち主であり、かつそれを悟らせない手腕の持ち主である。今回も2人がかりで必ず当たるという必殺の布陣で挑んだが、学生組が想像以上の能力者だった為に、敗北を喫した。

俺の彼女はM14(マルチウェポン)
・放出系能力
 基本的にはライフル銃の形をとっているが、精密な狙撃、連射能力、そして特殊弾倉など、出来る事は多彩ではある。銃の具現化というイマイチな評価を受けがちではあるが、これはこれで割と使える能力なのは間違いない。
 だが、やはりソフィアの言う通り、三下の使う能力という評価からは逃げられなかった。



味方サイド


ズシ(18)
・操作系能力者
 天空闘技場で幼い頃からウィング師範代に師事し、心源流を鍛え続けた少年の成長した姿。彼はその昔、黒髪の少女カルトと出会った。彼女と天空闘技場で試合をして、その強さと可憐さに衝撃を受けた。更にその後、かの伝説となった闘いの映像で、彼は彼女に完全に惚れた。それは、彼にとって初めての恋であった。それからずっと彼は想い続けている。彼は、その映像のカルト切り抜きを自分の端末に大事に保存しており、1日1回、朝に視聴するのが日課となっている。
 彼はもう一度彼女に逢うために己を鍛え続ける。それは、側から見たらある意味狂気である。何故ならば、彼は知っている。映像の中のカルトが、誰を見続けていたかを。それでも、彼はその歩みを止めず、更に修行に没頭する。よって、学園でも女子にモテまくるにも関わらず、彼が誰も見る事はない。そんな彼に、学園講師のウィング師範代は早々に説得を諦めた。
 総評としては、彼は超高レベルのBSSマンであり、生徒会のメンバーでは一番常識人に見えて、その実かなりの狂気の持ち主であると言えるだろう。

健全な肉体の健全な魂(パーフェクト・コントロール)
術者:ズシ
・操作系能力
 念能力者ならば誰でも操るオーラ。しかし、彼はそこに可能性を感じ取った。故に、自身の操作系能力を全振りしてまで、()()()()()()()()という暴挙にでた。彼が目指すのは、ありとあらゆる状況に対応する力。彼の目標は険しく、厳しい。だからこそ、生半可な能力では役に立たないと断じた。それはある意味信仰に近い。信仰は狂気を生み、狂気は暴挙を生む。しかし、暴挙のみが奇跡を生むことがある。それを信じて、ズシはこの能力を鍛え続ける。現在は、基本的なオーラ操作に加えて、オーラの硬化、軟化、温度調整などの変化や、簡単なモノへの具現化などが出来る。だが、まだまだ理想とはほど遠い、未完成の能力である。

 だが、この能力が完成した時、彼は資格を得るだろう。
【制空圏】
術者:ズシ
・操作系能力
 彼の概念に近い能力を、使える形にしたもの。《円》に似ているが《円》ではない。彼は《円》ならば50メートルは伸ばせるが、それを10メートルまで凝縮している。《円》の弱点である、攻防の弱点を完全に解消しており、かつ、その範囲内であれば自由自在にオーラを操る。彼の体術も合わさって、無敵の能力になる可能性を秘めている。


アルカ=ゾルディック(18)
・特質系能力者
 外伝の主人公の1人。ナニカと離別した8年前から、彼女は最愛の兄に会いに行くべく己を鍛え続けた。自分が幽閉されていた頃から愛してくれた兄と、自分の半身であったナニカに感謝を伝える為に。その為に、残った兄と共にゾルディックの厳しい鍛練にも耐え抜いてきた。彼女の素養は、厄災を宿していた影響か、キルアに匹敵する程高く、ぐんぐん実力を伸ばしていった。
 後に、ゾルディックと協会の友好の証として、ハンター学園中央校の第1期生として、入学を果たす。そこでも弛まぬ訓練を経て、現在では同校の並いる同期を抑えてNo. 1の実力者として君臨している。
 しかし、長年監禁されていた影響か、コミュニケーションに難があり、特別親しい人物以外は有象無象と切って捨てている。入学当初は特に酷かったが、不憫に思ったレオリオが何かと構ったり、生徒会の面々との交流でだいぶ社交的になる事ができた。
 現在でも、ゾルディックの仕事がてら、自らの経験値を増やすべく努力している。


アイの絆(ナニカの残滓)
・特質系能力
 この能力は、厄災であったナニカを模した能力である。本来は、アルカが「お願い」をして、それをある程度の範囲で叶える。もっぱら戦闘後の傷を癒すとか、物を直すとかに使われる。その後、戦闘時に対象(この場合には敵)に向かって4回の「おねだり」をする事でも、彼女の能力が果たされる。その「おねだり」は、到底敵にとって許容できるものではなく、全て断った瞬間に敵は瞬時に捻り殺される事となる。
 この恐ろしい能力も、厄災を宿していた頃から見れば、かなり大幅にダウングレードしており、逆に使い勝手が良くなっている。「お願い」も、常識の範囲におさまり、ペナルティも無差別にはならない。アルカが戦闘時に恣意的に運用出来るぐらいの都合の良いこの能力は、アルカの努力の賜であると同時に、ナニカからの置き土産であるとも言える。
 弱点としては、強すぎる能力故に、オーラをバカ食いする事で、1日2回も使えば、アルカのオーラ量であっても枯渇してしまう事である。


ソフィア=アンダーソン(18)
・強化系能力者
 彼女は生まれつき肉体の強度が常人とは比較にならないほど強かった。彼女が4歳の時にコインをオーラ無しで飴のようにねじ曲げ、重ねたトランプを引きちぎる程に。そんな彼女が力を信仰するのは極当然の結果と言えた。しかも、ただ脳筋というだけでなく、獣以上の直感が働き、罠や悪意などを容易く看破でき、また頭脳も明晰で分析能力も高い。基本脳筋で、興味のある事にしかその頭を使わないのが残念ポイントではあるが。
 また、彼女は自らがマフィアの直系である為、自然とトップとしての振る舞いを身につけていった。
 よって、アンダーソンファミリーとしては、彼女ほどドンに相応しい人物はいないと、虎視眈々と外堀を埋めようと画策しており、付き人のメリルにもその指令を出している。
 しかし、彼女本人としては他の後継者候補と同様にマフィアのドンなど真っ平ごめんであり、早いうちから実家を飛び出してハンター養成学園中央校に入学した。ゆくゆくはハンターとなり、世界を股にかけて冒険する為に。そこで現在の生徒会のメンバーと出会い、交流を深める事で、彼女にあった傲慢な部分も解消されていった。現在ではアルカを認め、自身のライバルとして認定し、切磋琢磨している。尚、付き人のメリルとは腐れ縁に近く、口喧しいメリルに辟易する部分もあるが、従者としてではなく、気安い友人として付き合っている。決してメリルの立場が弱かったから保護しているとか、助けてあげたかったからとかではないのだ。ないったらないのだ。

私の流儀(ルール・オブ・ソフィア)
 彼女のそのままの名前を冠したこの能力は、敵の攻撃を受ければ受けるほど、肉体とオーラが加速度的に向上する。また、敵の能力を受けた分、そのオーラを上乗せして自身のオーラを高めることができる(拘束系などは解除出来ない)。
 彼女は、今は亡き祖父から一番可愛がって貰っていた。そして、ある時、祖父の能力の概要を教えて貰ったときに彼女の脳裏に天啓が走った。これぞ、王者の力であると。彼女は退かない。いかなる強大な敵であろうとも、敵の能力を真正面から受けながら、それをねじ伏せる。それこそが、王者であると彼女は確信するとともに、いつ何時、誰の挑戦でも受けるという不退転の覚悟がこの能力を生み出した。


メリル=ルチアーノ(18)
・具現化系能力者
 歴代コンシリエーレの家系の直系に生まれた彼女の将来は約束されたものだった。しかし、8年前の騒動の際、祖父である当代のコンシリエーレの裏切りにより、一家全滅の危機に陥った。当然ながら裏切りはマフィアの中でも重大な罪であり、関係者は全員処刑の憂き目にあうはずだったが、当時のアンダーソンの最上層の判断により、家族に罪は無いと辛うじて許された。それでも、コンシリエーレの座からは外され、幹部からも降ろされたが、ルチアーノ家にとっては、その温情に報いるべく、より一層ファミリーに尽くすようになった。
 メリルは、年齢的にドンの娘と近いのと、本人の指名により付き人として彼女に付けられた。それからは何かと破天荒なお嬢様に振り回されながらも、彼女の保護者兼監視役兼世話役として過ごしてきた。クセの強いお嬢様との付き合いは大変ではあったものの、彼女としては例の件で引け目がある中、そこから引き上げてくれたお嬢とドンには内心心底感謝していた。本人には言わないが。
 それから彼女は、ソフィアと同様に(無理矢理引っ張られて)ハンター養成学園に入学し、あれよあれよとお嬢様が大暴れした結果、いつの間にか生徒会書記の位置に収まった。そこで祖父譲りの優秀さを発揮し、皆から頼られる存在となった。関係ない話だが、彼女は普段から制服があるにも関わらず、メガネとメイド服を着用している。あざとい。

生命の水(アクア・ウイタエ)
・具現化系能力
 水を具現化する能力。水レーザーや水カッターにできる。しかし、より強い使い方は、敵の頭に水を覆わせる事である。操れる範囲は30メートルと、わりかし広い。水を操る彼女の能力は、単純ではあるが、その分応用がきき、使い方次第では誰よりも対応力に優れる。
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