アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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いよいよ未来編も佳境へ。
このシチュエーションって、実は昔のカームが飛ばされた異世界に近いことが起きてるんですよね。


ちょっとグロいというか、残酷が表現が出てきます。ご注意ください。


外伝11、降臨

 

 

 

 

 

 

 

 突然の事態に一瞬固まる2人、しかし、それが今回のターゲットだと認識した瞬間、その逡巡からすぐ立ち直り、落ちた男に駆け寄ろうとした…が

 

 

 すぐに彼を追うようについてきた邪悪な気配が男に覆い被さり、浸透する。

 

 

「マズいッ! メリル、攻撃を! 迂闊に近寄らないように!」

 

 

 ソフィアが言うが早いか、2人とも念弾を放ち、彼を攻撃した。しかし──

 

 

 

 土煙が晴れ、何事も無かったかのように男がムクリと身体を起こす。その動作を2人はただ、見ていることしかできなかった。なぜならば、その一つ一つの動作の最中に、一般人だったはずの男から莫大な量のオーラが噴出し、秒ごとに膨れあがっていったからである。それだけでは無く、街の全方位から莫大なオーラがその男に収束していく。そして、彼が立ち上がる頃には、その身体すら変化を始めており、元々女顔であっただろう顔は、完全に女性のモノへと変化しており、骨格は男性のモノではあるが、身体はより細長く、中性的な体型へと変化していった。

 彼が、屋敷の方へと目を向ける。その目は黄色に濁っており、山羊の様な光彩へと変化していた。入り口近くにいたソフィアとメリルは、その者に眼を向けられただけで全身が硬直してしまい、動けなくなってしまった。

 

 その男がゆっくりと彼女らの方へと歩き出す。歩くごとにミチミチという音が響き、腰からトカゲのような尾が生えた屋敷に辿り着く頃には、彼の姿は正に悪魔、と言うに相応しい、美しくも妖しい存在へと成り果てていた。

 

 彼が、2人の目の前まで来た。

 

 

 ──殺される

 

 

 2人はその瞬間、死を覚悟した。あまりにも存在の格差がありすぎて、ただ虫のように踏みつぶされる様を幻視したのだ。しかし、いくら待っても死は来なかった。

 そのまま、その男は、彼女らを通り過ぎ、屋敷の中へと消えていった。優に殺せる場面が何度もあったが、そうはならなかった。2人の死線を悠然と歩き、彼は行ってしまった。

 

 

 

「……ッ!! ハッ! ハッ……!!」

 

「っく……ハッ……ハアッ!」

 

 

 それまで、息をすることすらできなかった2人に漸く呼吸が戻ってきた。動悸が止まらず、全身が震えていた。あまりの恐怖にソフィアは漏らしかけていた。

 

 だが、それは彼女にとっては屈辱以外の何物でも無かった。

 

 

「ハア…ハア…アイツ……この私を無視した…ッ! 取るに足りないモノだと見下してッ!!」

 

「…!! いけません! お嬢様!!!」

 

 

 激情に燃えるソフィアを必死でなだめるメリル。気持ちは分からなくもない。だが、アレはダメだ。見逃された幸運を喜ぶべきであり、決して近づいてはいけないモノだと、本能が告げていた。ソレはソフィアの方がより警鐘を鳴らしていたが、彼女のアイデンティティ故に、それを上回る程の怒りに彼女は支配されていた。

 

 

「許さない……この私を、コケにした事、後悔させてやるッ!!」

 

「お願いです!! お嬢様!!! 今はダメですッ!! 態勢を立て直しましょう!!」

 

「止めるなメリルッ!!」

 

 

 屋敷に入ろうとするソフィアを必死で取り押さえるメリル。しかし、強化系である彼女の膂力に徐々に引きずられていく。このままでは殺されに行くようなものだ。絶望的な気分になりかけたとき、凜とした声が背後から掛けられた。

 

 

「やめなさい、ソフィア。無駄死にしたくはないでしょう?」

 

 

 その声を聞き、ソフィアの動きがピタッと止まる。

 

 

「……止めないで。私にも譲れないものがある」

 

「ビビったことを許せないんだったら、もっと確実に勝てるときにしなさい……少なくともその頭に血が上っているウチはどんな相手でも負けるわよ」

 

「…………ふぅ~~~っ」

 

 

 ソフィアが深い溜め息をつく。冷静になれたようだ。

 

 

「アルカ様、ありがとうございます」

 

「どういたしまして……間に合わなかったか」

 

「そのようです。そして、今現在は屋敷の中に」

 

「我々なんて眼中にも無いのね。まぁ、このレベルだとそうもなるでしょう」

 

 

 男は確かに屋敷の中へと入っていった。しかし、その凶悪な妖気ともよべるオーラは屋敷全体を多いつくし、その密度は計り知れないほどに充満している。屋敷程度で抑えているのが正直不思議なほどである。それは、それ程緻密なコントロールも可能であるという証でもある。

 

 

「おそくなったッス! って!……うわぁ…なんじゃこりゃ……! 間に合わなかったッスか!?」

 

 

 ズシも到着した。これでメンバー全員の無事が確認された。しかし、遅かった。儀式は滞りなく終了した。そして、降臨してしまったのだ。

 

 

「地獄の王……!」

 

 

 人間世界からは地獄であると認識されている魔界、暗黒大陸。その深部に存在する魔王。愚かにも同じ人間達が、そんなふざけた存在を呼び出してしまった。これから起こるのは、どうせろくな事では無いだろう。矮小な人間が、そんな存在に太刀打ちできるはずも無い。好き勝手に蹂躙され、何もかも抵抗できないままメチャクチャになってしまうだろう。彼らができることはただ一つ──

 

 

「よし、逃げるわよ」

 

「「「!!?」」」

 

「当たり前でしょ。拒否は許さない。ついてきなさい」

 

 

 そう言って踵を返し、オーラまで活用してその場から逃げ出すアルカ。その突然の行動に驚きながらも、他の3人も一緒に必死で彼女を追う事を選択する。

 

 

「アルカ! なんで逃げるのよ!!」

 

「バカね。どう考えたって勝てる相手じゃ無い。8年前の映像は貴方達も見たことあるでしょ? アレに匹敵するほどの脅威。アレは極まった彼らだから何とか保たせられただけで、私たちだと秒殺だわ」

 

「ですが……オレ達だって…」

 

「自分の実力を見極められない奴は早死にする。行きたいなら1人で残りなさい。その方が()()()()()()()()()()()

 

「……依頼?」

 

「忘れたの? 私たちの任務は何? 奴と闘って死ぬこと?」

 

「依頼内容は……報告、できるならば阻止、可能ならば撃破、ですね…」

 

「そのうちの阻止は失敗した。撃破はどう考えても不可能。でも、報告はできた」

 

「! そう言えば、彼は何と!?」

 

「《了解》とだけ。でも、確実にこちらの意図は伝わっている。いつもならうざったい言葉をアイツは付け足してくるからね。で、アイツは確実に来る。それならば、私たちの任務は」

 

「彼が来るまで、遅滞戦闘…か」

 

「そうね。流石に無駄死には嫌だわ。でもね……これだけ急いで逃げても、多分無理なのよね…わかるでしょ?」

 

 

 アルカが投げやりにそう言う。そして、その意味を他の3人も正確に理解していた。なぜならば、あれほどの〝力〟を保つ存在から逃げられるとは到底思わないからだ。その証拠に──

 

 

 

 ブワッ!!!

 

 

 

 莫大な量のオーラが広範囲に広げられる。4人は既に2キロ以上現場から離れているにも関わらず、そのオーラは容易く彼らを覆いつくし、そして、そのオーラはミシガン市全域まで広がっていく。それは、人間界では《円》と呼ばれるモノ。しかし、スケールが馬鹿げている。

 

 

 

「やっぱりね……とるに足りないモノと認識されていて欲しかったんだけど…大方私たちが更なる生け贄ってトコかしら」

 

「チッ…やっぱりやるしか無いじゃない!!」

 

「ま、すぐ死ぬか、ダラダラ死ぬかの二択よね。でもね、後の方が生き残る可能性は高いわよ?」

 

「蜘蛛の糸ぐらいに細い可能性ッスね…でも、オレもそっちに賭けてみたいッス」

 

「……できればお嬢様だけでも生き残れるようにしますからね。可能なら皆さんで生き残りましょう」

 

「……! 皆、止まって! ……来たか」

 

 

 

 

 4人は、霧の立ちこめる街道をひたすら走っていた。できる限り目立つところにたどり着けるように、そして、大きな中央公園に差し掛かった頃、カポッ、カポッと()()()()動物の足音が響く。

 蹄の音を響かせて、霧の向こうから動物の様なモノに跨がるヒトガタが現れる。

 

 

 

 よく見れば、動物に見えるソレは一瘤駱駝…のように見える首のない人間の死体の集合体であった。その上に、王冠を被った裸同然の姿で女顔をした悪魔が足を組みながらこちらを見下ろしている。

 

 

「どこに行くのかね?」

 

 

 

突如、4人が耳をふさぐほどの恐ろしく大きな声が響き渡った。それは、目の前の存在から発せられた音だと辛うじて認識できたのは、彼らが念能力者だったからだ。

 

 

「…っく! 何なのこのばかでかい声は!?」

 

「頭の中に直接入り込むような音…チッ、マズいわね」

 

 

 

 アルカが警戒するのは、魔王級の存在が人を操作する力を持っていた場合である。ハッキリ言って、そんなものがあったら防ぎようが無い。

 

 

「我が名はペイモン。魔界の西を治める魔王なり。お前達は召喚者達から贄だと聞いた。だが、不敬にも逃げ出したので、私が自ら来てやった」

 

 

 

「~~~~~! うるさいっ! なんて言ってるかほとんど分からないけど、黙ってやられるわけには行かないからッ!」

 

「威勢の良い贄だ……良き糧となるだろう。アバリムに加えてラバルも喚べるやもしれん」

 

 

「……仕方ない。やるわよ! 貴方達! どうしようも無いときは()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

「来るがいい。そしてその絶望を少しでも長く私に見せておくれ」

 

 

 

 

 絶望の闘いがゴングを鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソッ!! 今のは何だ!?」

 

 

 スポーツカーで爆走する男がそう愚痴る。あまりにも恐ろしい極悪なオーラが、市全体を覆ったからだ。ミシガン市に入ってからというもの、朝ももういい時間になっているのに薄暗く、そして人っ子一人見当たらない。まるでゴーストタウンだ。おかげで彼の自慢の車も何者にも遮られること無く走れているのではあるが。

 

 

「アルカ……!」

 

 

 彼は知っている。その中心に学生達がいることを。そんな存在と対峙してしまっていることを。当然アルカには敵わないなら逃げろという教育は施されている。しかし、このような存在に対しては、その逃げる事すら許されないだろう。唐突に彼は古いRPGゲームでのお約束を思い出した。「大魔王からは逃げられない」。あれは多分こういうことだったんだろう。ならば、立ち向かうしか無い。例え、全てのレベルが劣っていて、ダメージすら与えられなそうだとしても。彼の存在は貴重だ。無闇矢鱈と死ぬ訳にはいかない。だが、彼も今のオーラで捕捉されてしまった。だから行くしかない。それに、彼としてもここで彼女たちを無惨に殺される訳にはいかない。だからこそ、全力で車を飛ばす。

 

 

「死ぬなよ…アルカ」

 

 

 サングラスを外し、その鋭い目つきを更に鋭くさせて、彼…ミルキは現場へと急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶっ……ゴハアッ!!」

 

 

 殴りかかったソフィアの強烈なパンチを避けずに喰らい、微動だにしないままその掌をそっと彼女の腹部に当てる。それだけで、ソフィアの腹に大穴が空き、臓物が飛び散る。

 

 

「お嬢様!!」

 

 

 すかさず、メリルがソフィアの腹の大穴を水でふさぐ。どう見ても致命傷。メリルは泣きそうになりながらも飛び散りそうになる臓物を必死で押さえる。ソフィアの顔色は既に死相が現れているが、何とか現世に踏みとどまっている。しかし、それを駱駝の上であざ笑いながらペイモンは見ていた。

 

 

「私の前で水を使うか。不敬なるぞ。少しだけお前達にも見せてやろう」

 

 

 瞬間、メリルの全身から蒸気が上がり、みるみるメリルの身体がひからびてゆく。

 

 

「光栄に思うがいい。水とは何たるか。水が内包するのは何か。身をもって知るが良い」

 

 

 全身の水が抜け、ミイラのようになったメリルが崩れ落ちる。しかし、メリルはソフィアへの能力を解除しなかった。

 

 

「メ……リル…やめな…さい」

 

 

 ソフィアがメリルに自分へ能力を使うように言う。しかし、メリルはやめなかった。必ずお嬢様を守る。その意思を最後まで貫いた。

 

 

「お嬢様……生きて…」

 

 

 カサカサの回らない口で、微かな風のような音で最期の言葉を継げ、彼女は完全に沈黙した。そして、遂に彼女の水がソフィアから離れていく。

 

 

「あ…あぁっ……」

 

 

 臓物がこぼれるのも厭わず、彼女はその水を必死にかき集めようとする。だが、無情にもそれは流れていき、そして消えた。その少し後に、ソフィアも動かなくなった。それを見ることしかできなかったズシが激昂する。

 

 

「畜生…畜生…!! ソフィアさん…メリルさん……!!」

 

「ズシ! ダメよ! 迂闊に行くんじゃない!!」

 

 

 アルカが止めるも、ズシはオーラを怒りで全開にして、悪魔に立ち向かう。

 

 

 【制空圏】

 

 

 ズシの領域がペイモンに触れる。するとペイモンは少し面白そうな表情を見せた。

 

 

「ほう…卑小なニンゲンが、我々の真似事をするか……だが、その程度ではまるで足りん。風がどこにいるのか、お前には教えてやろう」

 

 

 途端にズシの領域内で気圧が低下し、やがて限定的な真空状態が起きる。

 

 

「カッ……カハッ…」

 

 

 ズシの身体が真空に晒されてもだえ苦しむ。人間の肉体はいかに鍛えても耐えられるようにはできていない。やがて、彼の肉体が崩壊する直前に、彼は力を振り絞り、その暴虐に対抗する。

 

 

「なに…? 自らのエネルギーで空気を補填している…? この状況でできるとは、中々生き汚いな」

 

 

 彼は、【制空圏】のオーラを空気に具現化させ、補填していた。それは奇しくも前代の〝救世主〟がもつ【自己貪食(オートファジー)】と似ていた。徐々に回復していく肉体、しかし、それを悠長に待つペイモンではない。

 

 

「面白かったぞ…ならば、これはどうだ?」

 

 

 途端にコンクリートを突き破り、土の杭がズシを襲う。ズシは辛うじて察知し避けるも、今度は空中から360度を覆うほどの土の杭が出現。そしてズシに殺到する。

 流石のズシも見える範囲でたたき落とそうとしたが、魔王のオーラを伴った土は破壊できず、その身に土の杭を全身から受けることになった。

 外から見れば、針が円状にズシを取り囲み、球体に見えるほどの密度で彼を貫いていた。そして、土が消えると、中から全身が血まみれで穴だらけになったズシが、それでも構えを取っていた。どう見ても、死体にしか見えない。その証拠に、ペイモンが息を吹きかけると、ぐらり、と身体が傾き、そのまま倒れてしまった。

 

 

「ズシ……」

 

「さて……残るはお前だけd」

 

 

 

 その瞬間、真っ赤なスポーツカーがペイモンに突っ込む。しかし、ペイモンは鬱陶しそうに片手でフロントを握って止め、それを行った人物に向かって投げ返す。しかし、スポーツカーは再び向きを変え、ペイモンに向かう。それだけでは無く、ナイフや暗器、花瓶、家電など、様々な物体がペイモンに殺到する。

 

 

「……鬱陶しい」

 

 

 ペイモンが腕を振り払うと、その全てが粉々に砕けた。

 

 

 その背後から《隠》で覆われた一振りのナイフがペイモンに向かってきたが、それもペイモンは鬱陶しそうに掴み、粉々に砕いた。

 

 

「よし。触れた」

 

「……ッお兄様! 何故来たのです!!」

 

 

 現れたのは、アルカの兄、ミルキ。普段なら喜ぶべき所だろう。しかし、あまりにも状況が悪すぎた。

 

 

「当然、お前を生かすためだ」

 

「それは嘘! お兄様は私を犠牲にしてでもここに来るべきではなかった! いつも言ってたでしょ!!」

 

「そうだな…そうなんだろうな。だが、来てしまったものはしょうがない。見ろ、高いカネだして手に入れた分はある」

 

 

 ペイモンが砕いたのは、ベンズナイフである。まだ、肉体が完全に定着していないペイモンは、僅かに人間の部分が残る。そこに微かでも傷ついた箇所から侵入した、致死量を遥かに超える超強力な毒が彼の動きを止めていた。

 

 

「逃げるぞ」

 

「でも!」

 

「つべこべ言うな。可能な限り足掻く。お前が決めた方針だろ?」

 

「……ごめん、みんな」

 

 

 そうして、彼らは2人で走り出す。それが少しでも〝彼〟の到着までの時間を稼ぐと信じて。

 

 

「……まだ、馴染まぬか…これだから卑小なニンゲンは使えんのだ……だが、私をこのような目に遭わせたニンゲンには特別に絶望を与えねばならんなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2人でひた走る。それが僅かな延命行為だとしても。それを2人は正確に理解していた。ペイモンにとって、これは鬼ごっこですらない。逃げ惑うアリを踏みつぶす行為だ。

 そして、僅かに離れた先で再びペイモンが前から現れる。

 

 

 彼の姿が見えた瞬間、周囲にあるゴミ箱やベンチ、木の枝、鉄骨などが殺到するも、先ほどと同じように瞬時に粉砕される。しかし、先ほどと違うのは、アルカの能力も同時に発動していた。

 

 

「ねぇ、あなたの膵臓をちょうだい?」

 

「む…これは珍しいな。奉仕種族か…? いや、違うな。だが、付き合ってやろう」

 

 ペイモンが自らの手を胸に突っ込み、心臓を投げてよこす。どくんどくんと脈打つソレは、確かにペイモンの膵臓だった。しかし、ペイモンは平然としている。

 

「くっ…あなたの背骨をちょうだい?」

 

 これまた、同じように平然とペイモンは自身の臓器を取り出す。部位は変われども、同じように何度も繰り返し、そして──

 

 

 どちゃり。

 

 

 柔らかい生肉の湿ったような音が響き、そこにペイモンの大脳が形を崩しながら放り投げられた。しかし、ペイモンの潰れた頭から霧が立ち上り、急速に修復していく。

 

 

「そんな……」

 

「くそっ! アルカ『お願い』…ッ がっ!!!」

 

 

 ペイモンの霧がいつの間にかミルキを拘束し、その言葉を続けさせない。

 

「その程度の能力が通用するとでも思ったか? 面白そうなので付き合ってやったがな…では、此方の番だ。『お願い』しよう。その男をひねり潰せ」

 

「!!? そんな! 嫌!! やめて!!! やめてえええぇぇぇ!!!!」

 

「アルカ!!」

 

 

 ギチギチギチィィ

 

 

 瞬間、ミルキは強大な力によって縄状に捻り潰された。

 

 

「あぁ…あぁ……お兄様……」

 

 

 オーラも枯渇し、尚且つ自らの能力によって数少ない身内を殺してしまった。その絶望感が彼女を支配する。流石のアルカも、立て続けに仲間達が死んだショックに精神が限界を迎え始めた。

 

 

「ハハハハハ…!! 自らの能力で殺してしまったなぁ! これぞ絶望!! 堪能させて貰ったよ、生け贄諸君。さぁ、最後はお前だ。絶望の淵のまま死ぬがよい。お前は最後だから、特別に苦しませて逝かせてやろう」

 

 

 そう言い放ち、ペイモンがその権能を発動しようとその手を構えた時

 

 

 

 

「させるか、ボケ」

 

 

 

 

 極大の光の打撃がペイモンの身体を吹っ飛ばした。









狙撃手(スナイパー)】(操作系能力)
術者:ミルキ=ゾルディック
・範囲内のあらゆる物体にオーラを込め弾丸として利用、念で発射する能力。その範囲は半径200メートルと、広大。“狙撃手”の名が示す通り射程と命中精度は極めて高く、領域の範囲を超えた500メートル以上という長距離のターゲットへのヘッドショットを成功させる程である。
 弾丸は様々な物体が対象になり、消しゴムや雑草など武器とは無縁な物でも、オーラでコーティングし硬度をBB弾並に強化させる。また、刃物や工具など元々が武器として使用出来る物を用いた場合は本来以上に殺傷力が増すために、戦闘に長けた人間にとっても驚異となる。
 なお、込めるオーラ量と総合的な殺傷力は物体の体積に依存するため、大きな物体にオーラを込めれば消費も大きくなる。
 また、応用技として自らのオーラで作った的を敵の肉体(急所)に描き、作り出した弾丸を自動追尾させる【死紋十字斑】がある。


 ……と書きましたが、ほぼ刃霧パイセンの能力です。つーかまんまです。ごめんなさい。似てたからつい…。



 あと、アルカの能力が完敗した原因は、アルカのおねだりを叶えられてしまったからです。制約として、彼女が叶えるお願いは、原則として他人を優先します。対象者がいないときのみ、アルカ自身が自分に『お願い』できるのです。そのため、結構リスキーな能力でもあります。特に厄災連中にはこのように返されると為す術も無いし、仮に全て断ってからのペナルティも余裕で復元してくるからです。


 ……とりあえず、このままだと寝覚めが悪いと思うので、後でもう一話投稿します。
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