アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

169 / 170




連日更新ならず…! ごめんなさい…。そして

これが最終話と言ったな……あれは嘘だ(2回目)


すみません! エピローグ書いてたら半分でも一万字を余裕で越えそうだったので分割します。
次回こそ外伝最終話です!
よろしくお願いします。


外伝14、それから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ息子。テメェ、ソイツはどこのどいつだ?」

 

 

 

 

 豪華ではあるが魔界らしい禍々しい玉座に座り、圧倒的な威圧感を放ちながら圧迫面接する魔王イヴリス。そのこめかみには血管が浮かび、角と翼が顕現している。割とガチ切れに近い状態である。

 その傍らには、同じように目の前の相手を睨みつける小さな魔王バイザクもいる。家庭内修羅場である。しかし、その相手となるゴンもその筋骨隆々の肉体に、極限のオーラを発しながら一歩も退かない構えで目の前の魔王達を睨みつけている。

 

 

「この娘はオレの恋人だよ。ソイツなんて言ってほしくないな」

 

「あ”? テメェの伴侶はオレが選定するって言ったはずだよなぁ? 殴りすぎて忘れちまったか?」

 

 

 

 一言発するごとにイヴリスの圧が強くなる。まだまだ数少ない家臣達も震え上がる程の力が領域全体を覆い始めた。

 

 

「オレはイヴリスのオモチャじゃないし、オレの伴侶はオレが決めるから。いい加減お見合いとかさせるのやめてくれる? もう不定形生物とかゴリラみたいな相手とかうんざりなんだけど。しかも基準がほとんど強さだし」

 

「ほぉ……言うじゃねぇか…で、ソイツと。おい、テメェ自己紹介でもしてみろや」

 

「うっ……ごほん。初めまして、お義母様。私はソフィア=アンダーソンと申します。私はゴン君の彼女として仲良くさせてもらってます。結婚を前提にお付き合いさせてください!!」

 

「話にもならねェな。却下だ」

 

 

 そのにべもない却下に今度はゴンのオーラも漲り、戦闘態勢に入り始める。更には髪型が変化し、体中に文様が奔り始める。

 

 

「別にイヴリスに許可なんて求めてないよ。オレはこの娘と結婚するから。一応報告だけは義理でしてあげようと思ってね。ねェ、ソフィア」

 

「……えぇ。私もお義母様に認めて貰えれば最良だとは思いましたが、そう来るなら話は別です。認めさせるまで殴り倒します!」

 

 

 

 ソフィアも()()()()()()を発し始める。ソフィアは長年に渡る極限の修練の末、遂に達成した。そして資格を得た。その成果がその身に表れている。

 

 

「……はぁ~なんで魔王たる者がよりによって〝覚者〟なんだ? これが反抗期ってやつか…まぁいい。ガキ共、そう言うからには覚悟はできているようだなァ。バイザク、テメェはその女を〝選定〟しろ。オレはこの馬鹿息子を今から〝教育〟する」

 

「それ、イヴリスには言われたくないんだけど。ま、そろそろいい加減オレもイヴリスには負けないから。今回は絶対に認めさせるからね」

 

 

 イヴリスとゴンはその場で戦闘を始めそうな程、お互いのオーラを高め始める。一方、それまで黙っていたバイザクもソフィアに向かって鋭い視線を投げかけながら、言葉をかける。

 

 

「……お兄様に相応しいのは、この私……貴様程度の者には渡すことはない」

 

「ふん。昔は魔王に敵いもしなかったけど、今は違うわ。アンタは小姑みたいだから、今のうちどっちが上か分からせてやるわ」

 

 

 

 そして、それぞれのオーラが極限まで高まった後、究極の力のぶつかり合いが始まった。領域に住まう家臣達は、またかと諦めの表情で巻き込まれないように退避をはじめた。

 

 

 

 

 

 

 

 ゴンとイヴリスが凄まじい速度で殴り合う中、そういえば、とゴンが一旦攻撃を止め、イヴリスに話しかける。

 

 

「そういえば、ジンはどこ行った?」

 

 

 同じように一瞬動きを止め、ジンを探すイヴリス。しかし──

 

 

「あ? そういやアイツ……逃げやがった! クソが!! しかもオレの監視にも映らねぇって事は異世界に逃げやがったな!?」

 

 

 ゴンから事前に大事な話があると、ジンとイヴリスに連絡が入った際、ジンは確実に嫌な予感がしていた。具体的には家庭内を揺るがすような大惨事が。いつものことではあるが、今回のは規模が大きそうだとジンは察知し、以前からこっそり回収していた異世界ワープアイテムだと思わしきモノを発動させていた。それは一本の薪という、何の変哲も無いように見えるが、不壊であり、その火種がくすぶり続けたまま消えることのないという不思議なアイテムである。

 

 

 そして、彼はまんまと話し合いの前にその世界へと姿を消していた。

 

 

 一時休戦していたゴン達だったが、一旦ジンのことは諦め、この殴り合いが終わってジンが帰ってきたら今度は全員でジンをボコることで合意し、再び闘争へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ”~~参ったな。これで()()()か……」

 

 

 

 灰にまみれた墓所、その一つの石の棺からのっそりと出てきたのはジンである。彼は今、異世界へと来ている。そこは太陽が日食に覆われ、その影響で世界自体が歪み始めている。どうも暗黒大陸世界とは法則が違うらしく、また、異世界なので〝聖光気〟も消えていた。

 

 

 

「どう考えても詰みかけなんだよなココ。てか詰んでる。ただ、出るためのフラグがわかんねェ」

 

 

 彼の眼前には巨大な城がそびえ立ち、その上空を人から根が伸びたような蝶が浮かんでいる。城の周りにはグチャグチャにその城を中心に流れ着いたエリアが不規則に存在していた。それだけでは無く、その世界には人らしい人がほぼおらず、いるとしたら襲ってくるだけの気が狂った住人や、イカれた鎧騎士。そして、闇に汚染されて人の形すら保てなくなった蠢く黒い塊の怪物など。彼は、そんな狂った世界をもう2週もしていた。この世界を何とかするための条件を達成しても、またスタートから戻されるからだ。

 

 

「闇の王になる…駄目。火を継ぐ…駄目。だとしたら何だ…? もしかして祭事場の女が隠しフラグか? ソレっぽいアイテムあったかな…それとも、あのクソ強奴隷剣士から出てきた【黒い魂の血】か?」

 

 

 襲いかかってくる青目の騎士達をその拳で粉砕しながら彼は思考する。おそらくどちらもそうだろう、と。そしてうんざりする。

 

 

「はぁ~~。やっぱイヴリスとゴンの話し合いの方がマシだったか…しゃーねぇ、出るためにがんばるか……またあのクソキモい雪山の教会とかデロデロスライム野郎の首を玉座に戻すとかやんなきゃならねェとは…。あの雷神とか鎌女とか闇ドラゴンは楽しかったけどよ」

 

 

 そうして、方針が決まり、彼は能動的に動き出す。基本的に彼は超一流のハンターだ。彼の中で、もうこの詰みかけ世界を出るための条件は頭の中で組み上がっている。道中で拾い集めたアイテムや、壁の文様、絵画、地形、敵など、全ての情報を抜け目なく読み取って、この世界の実情や情報をほぼ集め終わっていた。だからこそ、あとはパターンを試すのみ。

 

 

「よっし、行くか! とりあえず次は火を終わらせるパターンだな!」

 

 

 

 

 尚、この後彼は5週目で漸く出ることができた。条件としては、火の世界を終わらせ、その瞬間に【黒い魂の血】で描かれた元の世界の絵のアイテムを使って戻る、ということだったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、久しぶり」

 

「……お前か、キルア。どうした?」

 

「ちょっと匿ってくれ。()()()()()()()()が、オレの彼女に目を付けやがった」

 

 

 

 そこは魔王の領域。メビウス湖から見て東南側に位置する魔界である。そこでは2柱の魔王がしのぎを削り、しょっちゅうケンカをしている。キルアがクソ親父と言っているのは、この2柱のうちの1柱で、かつてナニカがキルアを魔王級に強くするために、自分の故郷の近くに存在する、性質の近い魔王の肉体や能力を参照し、ソレをキルアにアップデートしたのだ。そのため、キルアはゾルディック家の肉体がベースではあるが、その大半が魔王由来に変わっており、その力はその魔王に由来するのだ。よって、身体上の父親とも言えなくはないため、キルアはその魔王に挨拶に行ったのだが……そのあまりにもなダメ魔王っぷりに嫌気がさし、ブチ殺してやろうと敵対している魔王と組み、現在でも激しい闘いを繰り返している。尚、このダメ親父は、元々は神で、冥王の親族だったりもする。別の意味で人間を食い散らかす最低な魔王である。

 

 

 

「ん? ちょっと待て。お前、()()とか言ったな。どういうことだ?」

 

 

 

 キルアが組んだのは、半身が焼けただれた女魔王。元は暗黒大陸の奴隷商人の玩具奴隷だったが、後に捨てられ、暗黒大陸で敵を殺しまくっているうちに強くなり、魔王となった。ダメ親父と敵対しているのは、そんな彼女にも見境無く襲いかかってくるからである。

 彼女は、転がり込んできたキルアをスカウトした。そして、闘い、交流を深め、年月を掛けて気安く話せる仲となった。最近では、キルアは彼女のトラウマでもあった玩具奴隷時代の事を解消するためのプレゼントを贈っており、彼女の中ではキルアは結構大きい存在ともなっている。

 

 

「あぁ、()()()でも活動できるぐらい強くなったから連れてきたんだが、ナニカの墓参りするときに奴に見つかってな。まいったぜ、なぁメリル」

 

「えぇ……キルアさん、ところで、この方は?」

 

「ん? そりゃ、あのクソ野郎をブチ殺すために手を組んだ魔王さ。結構前から良くしてもらってんだ」

 

 

 

 何故か室内の温度が急激に下がる。キルアは何故そうなったのか理解ができないが、マズいのは分かったようで、焦り出す。

 

 

「お、おい、どうした?」

 

「ふ~~~ん……お前にも彼女とかいたんだな…そうかそうか…ところで、ニンゲンの〝覚者〟はオレ達とは本来は敵対者だ。知ってたか?」

 

「この方からはなにやら不穏な気配がします。私は〝聖光気〟の保持者として、倒さねばなりません」

 

「ちょっ、待てよ! おいメリル! コイツはそんじょそこらの奴とは訳が違うからやめとけって! お前もだぞ」

 

 

 徐々に高まる闘気。それをキルアが必死で2人を止めようとするが、その反応を見て、彼女達はため息をついた後、再び戦闘モードに入りだす。

 

 

「……これがコイツのいいところでもあるんだが。まぁ、オレが責任もって引き取ってやるからお前は消えろ」

 

「……こんなでもキルアさんは私の恋人です。貴女の様な方にはお渡しできませんので身をお引きになってどうぞ」

 

 

 最近穏やかになり始めたはずだったが、久方ぶりのガチモードに入り始める魔王と、メイド服でカーテシーをしながらも〝聖光気〟で闘気を漲らせるメリル。

 そして結局キルアを交えた大規模バトルが勃発し、更にそこへ例のクソ親父魔王も参戦して大乱闘へと発展したが、とりあえず全員でそのクソ親父を撃退して、ボロボロになった後、何とかキルアとメリルは脱出出来たという。

 尚、しばらく後にその女魔王は自らの領域を捨て、弱いと嫌っていた人間と行動を共にするようになったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは……! この豊潤たる肉の旨み! えもいえぬ程の極上の滴る肉汁! これぞ正に余が求めていたものよ! 貴様に依頼して良かったぞ」

 

「へっ、そりゃ良かったぜ。このオレはどんな奴でも美味く調理出来るからな!」

 

「おかわり」

 

「我も」

 

「オイラも」

 

「おーおー満足するまで幾らでも喰えや。何せこの肉、()()()()()()()()()()()()んだからよ」

 

 

 

 メルエムは美食を求めてあれからも彷徨っていた。その道中で、巨大なワニ型の生物を捕獲したが、このワニ、殺して食っても次の日にはピンピンして復活するのである。常在食料が出来たと喜んで、とりあえずの拠点で逃げないように監禁して食いまくってはいたものの、同じものばかりだと流石に飽きが来る。

 そこへ、ドン=フリークスと愉快な仲間達が久しぶりに通りがかったので、これ幸いと調理を依頼したのである。

 

 

「ふぅ……馳走になったぞ。奴もそろそろ逃してやるか」

 

「ま、あんだけ喰えばな。流石のアレも復活が遅くなってやがるし」

 

「ところでニーズヘッグよ、お前、同族喰って良かったのか?」

 

 

 長髪で毛皮を纏った長身の男が、ニヤニヤしながら黒衣の男を煽る。

 

 

「フレースヴェルグ…貴様分かって言ってるだろ。こんなトカゲと我を一緒にするんじゃない。辛うじて同族と言っていいのは、以前遭遇した超巨大ワームだけだ」

 

「……我には馬鹿でかいミミズにしか見えんがな」

 

「奴等はこの星の調整者だ。その強さと在り方が我々に近い。つまり我等龍種の根源とも言える。決してこんな食材トカゲでは無い」

 

「でも、見た目は似たようなモンだよね?」

 

「あ”あ”!?」

 

 

 子どものなりをした生意気そうな少年。正体は世界樹の中腹に生息するリスであり、名をラタトスクという。当然ただのリスでは無く、超越種に挟まれても平気で過ごしている上、上下に住まう2人の超越種を煽りまくってケンカさせて喜ぶクソガキである。彼は、煽り相手が旅に出ることを知って、慌てて無理矢理付いてきたのだ。その方が面白そうだから。

 

 

「こらこら、ケンカすんじゃねェよ! やるならあっち行ってやれ。全く……それにしてもメルエム。オメーさんもだいぶ強くなったなァ」

 

「……嫌味か? 確かに余もそれなりには鍛えたが、まだまだ貴様の旅仲間には勝てる気がせんぞ」

 

「いや、アイツらは超越種とか言う一種の神だからな? オレ等みたいな地上のモブじゃねェんだよ」

 

「フン……余を有象無象と扱うか。以前なら不敬だと怒りに震えるところだったが……まぁ、だからこそこの世界はやりがいがあるということか」

 

 

 

 腹もふくれ、ニーズヘッグとフレースヴェルグがラタトスクにお仕置きをしているのを横目で見ながら、極上の味の虹色コーヒーを飲み一息つく2人。奇妙な組み合わせだが、彼らの出逢いも数奇なものだった。あまりにも長い話になるので割愛するが、西側を放浪するこの二組が再び出会ったのは奇跡とも言えるので、それを喜びつつ、お互いの近況を語り合う。黒髪の男、ドン=フリークスは、人間であるにも関わらず、超越種3名を引き連れつつ、暗黒大陸を放浪し、旅を楽しんでいる。一方、蟲の王メルエムは、国造りのための地力を上げるために、暗黒大陸を放浪し、強い生物を倒しながら喰らい、鍛えている。彼の場合はその目的と手段が入れ替わりつつあるが。

 

 

 

「そうだぜ、世界は広い。そして楽しい。お前さんの求める美味いモンなんかそこら中に溢れてるからな。調理がすげームズいが」

 

「そう、そこが問題なのだ。折角最高の食材を見つけたにも関わらず、調理法が分からず諦めざるを得なかった時など、思わず遠くの山に八つ当たりして更地にしてしまったからな」

 

「ふむ、オレの知ってる食材かな?」

 

 

 ドンが、その食材についての詳細と顛末をメルエムにせがみ、メルエムはドンにそのことを語った。

 

 

「ふ~ん……その食材、オレが何とかしてやろうか?」

 

「ほう? 確かに貴様なら何とかできそうだが。頼めるか?」

 

「いいぜ。オレもたまにはコイツ等以外と交流してェからな。しばらくはまた一緒に旅しようぜ! ……お~い、アホども! 美味いモンまた喰いたいか~!?」

 

 

 

 その言葉に、地形が変わるほどのケンカをしていた三匹が動きを止めて駆け寄ってくる。

 

 

「美味いモノとな?」

 

「我も関心があるぞ」

 

「美味いモノ喰いたい~!! で、どこにあるのさ?」

 

 

 

 アッサリと矛を引き、ドンの言葉に賛同する。その様子を見て、力などは無くとも強者を従える術があるのかと、メルエムは改めて感心した。三匹の食い意地が張っているだけとも言うが。

 

 

「……余が知っている。以前発見したモノだがな、その時は諦めざるを得なかったが、この者なら可能やもしれん」

 

「どんな食材だ?」

 

「森の中心にある巨木になる実でな。オーラの流れから見れば、絶対に旨味が詰まっているはずなのだが、どのように調理して良いかわからんのだ」

 

「オレはソレを昔東側で見たことあってな。ブルーブラッドコーンと名付けた。そんときは四苦八苦して何とか調理したが、やり方が分かれば簡単なモンよ。ただ、森一つ分の栄養吸ってやがって滅多に見つかんねぇから、これはラッキーだぜ? コイツの予想しているとおり、死ぬほど美味い。しかも一粒で腹一杯以上に喰える」

 

「「「おぉ……」」」

 

 

 三匹の動物たちが、辛抱たまらんという顔をして聞いている。彼らはその話を聞こうと、ドンのすぐ側までよって押し合いへし合いしているが、ドンは構わず続ける。

 

 

 

「やり方なら、ここにいるメンツだと大丈夫だ。何せ、超火力で煎ってはじけさせるだけだからな」

 

「!!? な、そんな単純な事だったのか……?」

 

「ただ、そのための道具も必要だし、火力も割と調整が難しい。お前さんはその時は持って無かっただろう?」

 

「くっ……調理道具か……」

 

「ま、とりあえず向かおうぜ。今なら喰えるからよ」

 

「そうだぞ! いつまでも待たせるな。早く行くぞ」

 

「ブルーブラッドコーン……美しい響きだ」

 

「つまりポップコーンって奴だろ? 早くオイラも食べたいよ~」

 

 

 そしてその後、急速に準備を終え、彼らは再び旅に出た。BBコーンを求める旅ではあったが、メルエムから他にも更なる美味そうな食材の数々の情報を提供され、それらを絶対に食したい超越種達が騒ぎ立て、なし崩し的にグルメツアーが開催された。彼らはもうしばらく行動を共にする事になるだろう。だが、彼らはそれを楽しんでいるから結局良いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 色とりどりの雲海が、遥か下方に見える。しかし、その場所はこの山の一合目にも満たない。そんな広大で巨大な山の中腹で坐禅を組む男が1人。先程感謝の正拳突き100万回を終えて、瞑想を行っている。そこへ、珍しく自分とこの山の住人以外の気配を感じて、男はその相手に誰何した。

 

 

「……なんじゃいお主、こんな所までワザワザ一人で来おって。ワシゃ今忙しいんじゃが?」

 

「……漸く会えた……急に押し掛けてすまない。使徒殿に用があってな」

 

 

 今、ネテロと正対している人物は、天使と呼ばれる中でも最高位の熾天使である。その証拠に、輝く三対計六つの翼が生えており、その威容は最高位に恥じない凄まじいモノである。

 

 

「ふむ……ここと戦争しに来たわけでもないと。で? 天界のお偉いさんがワシに何の用じゃ? つか、ワシゃお主の名前すら知らんぞ?」

 

「これは失礼した、使徒殿。私の名はウリエル。天界では熾天使の地位に就いている」

 

「ワシはネテロ、ただの人間じゃ。で?」

 

 

 最初はこの場所にカチコミに来たかと胸を踊らせたネテロであったが、どうもそんな様子ではなく、それならばワザワザ何の用でここまで来たのかと訝しむ。

 

 

「……ネテロ殿は守護天使に興味はないか? 私はこれでも熾天使だ。私が守護天使になったならば、其方はより極大な力を発揮出来るであろう」

 

「あぁ、そっちか……折角来てもらって悪いが、ワシにゃあまり興味がないから他を当たられよ」

 

 

 ネテロは、その提案を一蹴する。それも当然で、そもそも彼は武人である。他者の手を借りるなど、ハナから頭に無い。しかし、天使は食い下がる。

 

 

「私はネテロ殿の意志を最大限に尊重する。それに、其方は今現在も主の力を借りているだろう? 私はそのキャパシティを広げるだけだ」

 

「いや、だからいらんっつーの。ワシゃ、自らの裁量で何とかするわい。そもお主、何故そんなに必死なんじゃ?」

 

「い、いや、別に必死という訳では……」

 

「正直に話せ。それすら出来ん奴とは話す事などないからの」

 

「………妹がな」

 

「?」

 

「最近妹が英雄の守護天使となってな。誇らしくは思うが、天界では少し肩身が狭くてな……」

 

 

 そのあまりにも俗っぽい理由にネテロはガックリ肩を落とす。そして、再度断わろうとした、その時──

 

 

 

「いいじゃあねェか! なってもらえや!」

 

「「むっ」」

 

 

 

 いつの間にか近くで立って、大声で話しかけて来た偉丈夫。5メートル程の筋骨隆々で、鎧姿の男。しかしそこに内包する力は計り知れない圧を感じさせる。それは天使とは別系統の神であり、この山に住まう十二神将の1人である。

 

 

「むむ……この力は…熾天使に匹敵するか…」

 

伐折羅(バサラ)か」

 

「おう! ネテロよ、お前は人間の癖にその身一つで我らに立ち向かうその蛮勇! まっこと天晴れである! 我ら、貴様が来てからというもの人間に対する認識と感動を日々上書きされておる! だがな…………貴様は弱いのだ!」

 

「ぬ」

 

 

 その身も蓋もない発言に、流石のネテロもムッとするが、目の前の神の言う通り、まだまだ彼らには遥かに及ばない事も自覚している為、反論出来ずに黙り込む。

 

 

「貴様はまだまだ弱すぎる。仮に、そこの天使の力を借りたとしても尚足りぬ。我らは欲する! 熱き闘いを! 故に、使うが良い。使える手段、方法、それら全てを。それをもって我らを撃ち破ってみせろ!」

 

「しかしだな……一武人としては己の身一つでだな…」

 

「これだから武人という奴は頭が固い! 仮に貴様に腕がもう一本生えたとて、信念に悖ると使わん事はないだろう? 貴様が剣士だとしたら? 剣を使うだろう? 既に貴様は無色界の力を使っておる。同じ事よ。ありとあらゆるモノを使いこなしてみせろ。それこそが貴様の〝力〟である故な」

 

「むむ……」

 

 

 ネテロが黙り込む。そこにウリエルも説得にかかる。

 

 

「ネテロ殿、此奴の言う事は間違ってはいない。私は其方の潜在的に持っている器を広げるのみ。其方の修練を否定するものではないのだ。それに、修練には()()が欲しくないか? 私が守護するならばいくらでも付き合えるぞ。武の極み、いいではないか。それを私にも手伝わせてくれ」

 

 

「むむむ……!」

 

 

 

 ネテロが考えこむ。それを見て、普段であれば敵対しかねない神達は、瞬間的にお互い目配せをする。片方はより楽しく覚者と遊べるように。もう片方は首尾よく守護天使の座を得るために。そうして、神達が一時的に手を組んで説得に当たった結果、彼は遂に選択した。

 

 

「分かった、分かったわい! ウリエルとやら、お主の守護を受けよう。じゃが! その前にお主の〝力〟をワシに見せてみよ。つまらん相手なら拒否するぜ」

 

「望む所だ。人よ、我らが愛すべき人よ! 我が大地の権限総てを以て御相手しよう。人の持つ可能性、それを私にも見せてみよ!」

 

 

 ネテロから、莫大な闘気が発散され、その背後に三体の巨大な観音が顕現する。対するウリエルも、それを見て歓喜に震えながら莫大な霊力を顕現させた。更に、神が人に試されるという前代未聞の事態を受け、ウリエルは執行官モードに入った。熾天使の本気の構えである。

 

 

「カッカッカ! コレは面白い事になってきた! 天部にてこれほど面白き事は那由多の彼方にも無し。これより! 異教の神と覚者による御前試合を行う! 審判は我ら十二神将!! 存分にやり合うがよい! その後、我らもやらせてもらうぞ!」

 

 いつの間にか周りを取り囲むように他の十二神将全てが降臨し、彼らの闘いを見守る。なんだかんだ言って、彼らは人が大好きなのだ。特に、武を極めんと自分達に喧嘩を売ってくるほど極まった人の英雄(愛すべき馬鹿)は。彼らにとってはこの瞬間こそが神話の一頁であり、英雄譚の一部に参加出来ているのだ。興奮しないはずもない。異教の神だけが相手では心が動く事はないが、こと、これが矮小で弱い人間が相手となると話は別で、ネテロにある意味愛おしさすら覚える。無論それはウリエルも同じである。

 

 

 この闘いの結果がどうあれ、彼らは契約を果たすだろう。そして、全てが終わった後、人、神など関係なく大規模な宴が始まるだろう。

 

 

 

 

 

 それこそが、人と神とが織りなす英雄譚なのだから。









ゴンさん
・長年の修練を経て、遂に〝聖光気〟に至ったソフィアと仲良くなり、実家に挨拶及び紹介に行く。当然のごとく却下されるが、そんなの関係ねぇとばかりに拳で解決しようと試みる。反抗期である。この年月で、ゴンもゴンさんになる程強くなったので、大丈夫じゃ無いかと思われるが、今後どうなるかは分からない。少なくとも、イヴリスによるお見合いは無くなったとか。多分、新婚旅行とかでしばらく家を出て、冒険の旅に出たんじゃ無いかなぁ。尚、妹がこっそり付いて来るイベントとか、母親の監視の目からは逃れられない模様。


ソフィア=アンダーソン
・長年の修練で遂にゴンさんに相応しい女へと成長する。しかし、実家への挨拶イベントでバトル展開となり、小姑を何とか撃退する。実は筋肉フェチであり、ムキムキのゴンさんにずっとときめいている。


ジン=フリークス
・息子が嫁候補を実家に連れてくるという、何重の意味でも居心地の悪く、波乱確定なイベントをスルーすべく、やめときゃいいのに異世界へと旅立つ。案の定、詰みかけ世界の最上位である黒い魂が根幹となる末期世界へと流れ着く。そこで彼は仕方なく持ち前の強さと洞察力をもって攻略に挑んだ。彼は武器など使わないので、拳一つでの攻略である。
 ハンターとして極まった彼をしても脱出まで5周かかるという恐ろしい世界であったが、彼は脱出の際に抜け目なく様々な貴重アイテムや指輪、武器防具などをソウル術(ソウルを利用して出し入れできる技術)にて回収(強奪とも言う)して、持ち帰った。また、攻略の過程で吸収して使えるようになった敵の技や、彼が得たソウルが脱出後に彼の魂の器を広げる結果となり、より強くなって帰還した。そのため、期間直後の家族全員からの制裁にも対応でき、速やかに逃げ出すことに成功したという。
 その後も彼は気ままに冒険に励み、たまに帰ってイヴリスといちゃいちゃする生活を過ごしているらしい。


イヴリス
・魔界の王の一柱。漸く家族が揃ってウキウキしながら魔界復興生活をしていたが、夫と息子の放浪癖に悩まされる。更に最近息子への伴侶捜しも難航していて、密かに悩んでいたところ、その息子がいきなり人間の女を連れてきて結婚するなどと言い出した。ブチ切れまくって教育をしようとするも、かなり強くなった息子に苦戦を強いられ、最終的に認める事となった。尚、夫は異世界に逃げたため、その怒りは夫へとぶつけることにしたが、この夫も恐ろしく強くなっていたため、遂に吹っ切れてどうでもいいかと思い直すことにした。
 最近は監視付きとは言え息子の好きにさせており、たまに帰ってくるジンと愛を育む生活を送っている。


キルア=ゾルディック
・カームから紹介されたメリルと付き合うことに成功し、たまに戻る楽園ではいちゃいちゃしている。最近暗黒大陸にも来れるようになった彼女を連れて、ナニカの墓参りを果たすことができた。しかし、後述の寝取り大好きクソ親父に目を付けられ、頼りにしている女魔王の所へ行っても修羅場になり、困惑。命からがら脱出したら、その女魔王が領域を捨ててまで付いてきて更に困惑する。しかし、後々彼女の思いを知り、2人共自分の彼女にすることに成功する。尚、たまに起きる彼女同士の大げんかを仲裁する事に翻弄されている模様。


メリル=ルチアーノ
・念願の夢叶って、キルアの彼女になる事に成功。アルカの圧をかいくぐり、スルッと隣に収まることに成功する。しかし、キルアは無自覚タラシ野郎だったので、激強女魔王と、寵愛を奪い合う事となってしまった。キルアが後年こうなってしまったのは、もしかしたら身体上の父親の影響かもしれない。


?????(女魔王)
・来歴は本文の通り。自らのトラウマを解消してくれたキルアに何かと目を掛けている。キルアに彼女を紹介されたときに自分の思いを自覚し、最終的に、自分の領域を捨ててまで彼に付いていくことを決めた。最初から神魔の類いでは無く、叩き上げで暗黒大陸の最上位にまで上り詰めた珍しい魔王。名前はもしかしたら軀とかいうかもしれない。


?????(クソ親父魔王)
・神々の最終決戦の後、力や権力を投げ捨てて野に下った元最高神。下半身がゆるゆるで、最高神していた時代でも女性問題には事欠かなかった。人間を(性的な意味で)食い散らかす最低魔王である。しかし、野に下ったとは言え、その力は極限であり、雷を操らせたら彼の右に出る者はいない。あるとき自分の肉体と能力をある程度継承している人間と出会ったが、食い散らかした人間の末裔かと気にもとめなかった。しかし、その末裔が見目麗しい女を連れてきて、彼の寝取りセンサーが発動、その女をモノにすべく行動を開始した。それが、隣でバチバチやっている魔王にも飛び火して、双頭の魔王による決戦に近い闘いとなった。結果的に彼は撃退され、その女も、狙っていた女魔王もその末裔に奪われる結果となったが、彼は諦めず虎視眈々とチャンスをうかがっている。
 いつの日か、彼も「もう人間は(性的に)食わねェ」と言う日が来るのだろうか。


メルエムと愉快な仲間達
・メルエムはいまだに国造りに入っておらず、自らの力を高める修行と美食ハントに邁進している。いつかは国造りできるといいね。
 ドン=フリークスと愉快な仲間達との2度目の遭遇を果たして、グルメツアー編が始まったので、しばらくは無理かもしれない。
 ちなみに最初に彼が食ってた哀れなトカゲは、人間界ではガララワニとかクソトカゲとか呼ばれる超凶悪な生物だったが、彼らに見つかったのが運の尽き。監禁されて無限肉提供の非常食扱いを受けてしまった。


アイザック=ネテロ
・天上山を発見し、その過酷な環境と強大な神々と闘える場所とわかるや否や、喜んでそこに挑戦しに行った。人間の英雄大好き十二神将に可愛がられ、日々武の極みへと邁進している。最近、自分のスパーリングパートナーと契約し、より激しい修行を続けている。


十二神将
・天使とは別系統の神々。それぞれが熾天使並の強さを誇る。その在り方は天使に似ているが、天使ほど星の意志ガチ勢ではなく、また、人間に対しても、たまに信者に呼ばれたときのみ顕現して悪魔などをぶっ飛ばして守護しているが、基本的にはほっといている。最近、自らの領域に昇ってきて、自分たちにケンカを売ってきた人間の英雄が現れ、彼らの住まう天上山はフィーバータイムを迎えた。更に、異教の神に守護させて欲しいと懇願されているところを目撃し、そのテンションはうなぎ登り。絶頂を迎えるほどの歓喜にまみれ、彼との英雄譚をいかにドラマティックにするかを考えるようになった。そのため、彼が挑む順番を決めるための熾烈な争いを十二神将達は隠れて行っているという。彼が一柱でも打ち破れば、大宴会をそのたびに行おうと画策している。
 尚、彼らの上に更に明王や四天王が控えており、彼が昇ってくるのを来るのを今か今かと心待ちにしているらしい。


ウリエル
・アムラエルの兄。熾天使。最愛の妹が悪魔に捉えられて利用され、助かっても処刑か堕天の2択という悪夢のような展開に苦しんでいたが、そこからまさかの人間の英雄に救出され、更に守護天使へと上り詰めるというウルトラCを見せつけられ、彼の情緒はグチャグチャに破壊された。でも、別の世界線みたいに堕天しなくて済んだから良かったね! こっちでは、妹の躍進により、天界でちょっぴり肩身が狭くなったので、最近増えだした神の使徒の守護天使になろうと思い立ち、行動を開始した。しかし、どいつもこいつも魔王と懇意で、捜索は困難を極めたが、別の系統の神の領域で武の極みを目指すというアホな事をしている使徒を発見、彼の守護天使になろうと画策する。その際、闘いや英雄譚を楽しみたい十二神将と、守護天使になりたいウリエルの思惑が一致し、見事説得に成功。無事に妹への面目躍如を果たした。現在は2人で修行しながら、十二神将の攻略に勤しんでいる。尚、毎回必ず行われる宴会も最近は楽しんでいるらしい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。