アンブレイカブルハンター【完結】   作:エアロダイナミクス

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 瞑想って意外と難しい。


ヨークシン時代
2、転生


 

 

 

 

 私、こと下村悠二が死んだのは、病気を拗らせたからだ。

 

 いきなり先程とは違う名前だが、いわゆる生前の名前というやつだ。

前世では、元から身体が弱い方で、学校などにいるよりも病院にいた方が長かった。

現代日本では医療も発達し、中々死ぬ事は無いが、私に言わせて貰えば、苦痛を先延ばしにするだけだった。

 

 

 産まれた時から病弱で、子供の罹る病気に一頻り罹ると、悉く重症化した。両親は気が気では無かっただろう。年齢が上がってもそこは変わらず、ちょっと無理するだけですぐに高熱が出た。進学など望める筈もなく、通信で高卒認定までは何とか頑張ったが、青春や冒険などは活字や絵の中にしか無かった。

 おかげ様で、あまり人生に希望が持てず、何処か諦めを漂わせる様な枯れた性格になってしまった。

病院で寝たきり生活が続くのは苦行以外の何物でもない。自分が手に入らないものを擬似体験するため、自然と趣味が読書になった。また唯一の楽しみは兄や数少ない友人の差し入れである漫画やアニメ、ゲームなどだった。

 

 

 

そんな中でも、特にHUNTER×HUNTERは愛読した。

 

 

キャラクターの力強い動き

生命力に満ちた眩い輝き

未知に挑むワクワクする冒険

それを支える緻密すぎる程の設定

全てが魅力的であった。

 

 

あまりにも魅力的すぎて、《念》を発現したくて、瞑想してみたり、能力を考え、名付けたりもした。

おそらく皆も小さい頃やった事があるのではないだろうか?傘を剣に見立て、振り抜いたり、両手から気功波を出そうとしてみたり。

 私の場合は病室で静かに瞑想してるだけだった。というか体力の関係上これしか出来ない。割と大きくなってからもやってたから立派な中2病である。まぁ私の罹る病の中では可愛いものだ。少なくとも迷惑はかけないしね。

おかげで高校生になる頃には僧侶もかくやといわんばかりの瞑想が出来るようになった。余計な事を考えず、無心に没頭出来るのが良い。

 あわよくば《念能力》に目覚めないかな〜とか思ったけど、現実でそんなものがあるはずもなく、結果的には無為な時間を過ごしただけだったが、精神の安定と、無聊を慰める役にはたった。

 

 

 

 そんな私の直接の死因は、新型のウィルスが世界的に広まったこと。例によってあっさり感染した私は呆気なく重症化し、これまた呆気なく死んだ。

 

 

享年18歳であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

 

 

…………

 

 

 

意識が拡散していく。

 

 

 

これが『死』か…

 

 

死にたくなかったな……。

 

 

生きてる内大半が病との闘いだった。

 

 

まだまだやってみたいことはたくさんあった。

 

 

HUNTER×HUNTERの33巻読みたかったなぁ…。

 

 

ここからが面白くなりそうだったのに…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………

 

 

………………

 

 

 

……………………

 

 

 

…………

 

 

 

 

 

 

 

 ここは…

 

 

 気付いたら知らない天井を見ていた。

まさかあれから奇跡的に助かったのか? いや、明らかに心臓は止まったし、且つ呼吸も止まっていた気がするのだが。それにここは病室の様だが、どこかおかしい。まず、部屋が古めかしいのだ。まるで昔の建物の様に。

 次に、自分の身体だ。確かに新型のウィルスに感染して、意識が無くなったと思ったのだが…

後遺症など微塵も無い。自分の事でもあるので、身体の状態は確実に分かる。分かるからこそ感じる最大の違和感。

 

 

 

 

「小さい……。」

 

 

 

 思わず呟いた声も自分の声じゃない。

ふと見ると、自分の手が縮んでいた。

 無論手だけではなかった。目で見て、触ってを繰り返すうちに、全体が縮んでいることが分かった。

まるで幼児の様に。

パニックになりそうになったが、昔からの経験上、慌てても余計な体力を消耗するだけである。こういった不測の事態に対して、メンタルを安定させる事が事態を悪化させないコツだ。落ち着いて癖になってしまった瞑想をし、現状を整理して考えようとした瞬間

 

 

 

頭が割れる様な痛みが走った。

 

 

 

そして、痛みに伴って次々とこの身体のエピソードが浮かんできた。

『この身体』の持ち主は、カーム=アンダーソン。

年齢は4歳。

サヘルタ合衆国産まれ。

 

 

 

 

 

 

つまり、私は生まれ変わったらしい。

天に昇らず転生したわけだ。

名前が下村だからアンダーソンかよとか、下らないツッコミがよぎるが、なにはともあれ、再びチャンスをもらえたわけだ。今度こそ充実した人生を送りたい。

これは神様がくれたチャンスだろう。

よく読んでいたラノベにも出てくるシチュエーションではある。

ただ、白い部屋とかで神には会わず、転生特典とかも何もなかったが。

それでも意識そのままでやり直せるなんて大きなアドバンテージだ。

 私はこのとき初めて神に感謝した。

このアドバンテージを活かして、思いっきり人生を満喫してやろう。

しかし、アメリカなら聞いたことがあるが、サヘルタ合衆国って何だろうね。いわゆる異世界なんだろうか。今は情報収集に努めるしかないか。

 

 

しかし、妙に体が重いな……。誰か呼んで聞いてみるか。

 

 

 

 

 

 

後になって分かった事だが

 

 

 

 

 

 

この身体も病弱であり、私は再び神を呪う事になった。




 新型のウィルス…。
この小説はフィクションです。

あと、32巻。この数字が彼の最大のガバ。悲劇の要員その1。
まぁこの時空ではまだ出てなかったから仕方ないけど。
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