転生から2日たち、周りの状況がなんとなく分かってきた。
あれから精神的に疲労したらしく、高熱が出て、2日間悪夢の中を彷徨った事で、神を呪うと同時に慎重にならねばならぬと自分を戒めた。
さて、この新しいボディ、カーム=アンダーソン君(4)は、前世でいうアメリカ人に相当する。両親は健在で、何の仕事をしてるか知らないが割と裕福らしい。
じゃないとずっと入院なんてしてられないしね。
幼児で良かった点は、無邪気に色々と情報を集められる所だ。頭脳は大人(に近い)、身体は幼児、気分は名探偵コナンである。
あれれ~おっかしいぞ~?
まあさすがにあんなにわざとらしくはないが、介護してくれるナースに世間話の会話の流れで自然に聞く事ができる。設定は熱に浮かされたせいでちょっと記憶が混濁している幼児だ。
まずここはどこかという質問に対して、今いる病院はセント・バーナード病院といって、サヘルタ合衆国の都市ヨークシンにあるという答えが返ってきた。
……おわかりいただけただろうか。
ヨークシンである(2回目)
………キタコレ。
もしかして、ヨークシンってあのヨークシンじゃない?
ほら、あのHUNTER×HUNTERでオークションやったり、幻影旅団とバチバチやり合ったり、グリードアイランド手に入れたりした……。
だとしたら
ここは≪念能力≫が使える!!!
神よ!!!すまんかった!!!
アンタ最高だよ!
意地悪クソ野郎とか思っててごめんね!!
思わず口が悪くなってしまったが、いや待て、まだ慌てる時間じゃない。実は違いましたーとか洒落にならない。次はショックでもっとひどく寝込む気がするから冷静になるんだ。それにほら、私がフリーズしたせいで聞いたナースが困ってるだろ。困った顔で「まだ難しかったかな~」とか言ってるぞ。
さあ、演じろ!
「ぼくしってるよ!ここはおっきなしまなんでしょ?なんていうしまなの?」
「あら、よく知ってるわね~。島じゃなくて大陸って言うの。ここはヨルビアン大陸って言うのよ」
キターーーーーー!
「ありがとう!またおしえてね」
「ふふ、どういたしまして」
ヨルビアン大陸である。これはもう確定だろう。ここはHUNTER×HUNTERの世界だ。喜びを抑えきれず、ニヨニヨ顔になった私を、褒められて喜んでるととらえたナースは微笑ましい顔で見守っていた。そういえば、今がいつかということも聞かなければ。
「ねぇ、そういえばきょうってなんにち?」
「ええっと、今日は8月4日よ」
「なんねんの?」
「1746年よ。何年ってよく知ってるわね~」
「」
再びナースに褒められたが、耳に入っていなかった。
確か、ゴン達のハンター試験が第287期で、1999年1月にくじら島を旅立ってるから……
今、原作の250年以上前じゃねーか!
ネテロ会長でさえ産まれて無いよ!!
どうりで部屋の中がアンティークっぽいと思ったよ!!!
思わず口が悪くなってしまった私を大目に見てほしい。神は私をおちょくって遊んでるのだろうか。私の神への評価の乱高下が激しい。
その夜、やはり興奮しすぎたのか熱を出して寝込んでしまった。
◆
あれから再び落ち着いて冷静に考え、≪念能力≫使えるからいいじゃない。という結論に達した。神よすまん。だが、あんたはいまいち信用できないのでとりあえず評価は保留にしておく。
年代については仕方ない。しかし原作開始250年前とはいえ意外と文明が発達しているようでもある。前世でいうと1800年後半頃ぐらいのアメリカ、ニューヨークぐらいの文明はあるんじゃないだろうか。ビル見えるし。つまり禁酒法とかマフィアとか出る直前ぐらい?もちろん馬車とかがメインでストリートを走ってるけど、車もちらほら見かける。
HUNTER×HUNTERの世界って文明が一部で異様に発達してたり、その割に未開の地があったりでアンバランスだから、前世とは若干違う発展を遂げているようである。
ともあれ、普段の生活でそこまで不便に感じることはなかった。ただし医療を除く。医療に関しては本当にお察しレベルだ。消毒?何それおいしいの状態である。良く今まで死ななかったな。この身体。生きてる事が奇跡だよ。しかし、このまま何もしないと凶悪な病気にかかり、前世より速くぽっくり逝く可能性が非常に高いため、それを覆すよう努力するしかない。再び転生できる保証なんてないからな。まず目標を設定しよう。
この世界での第一目標は「死なないこと」
念能力を身につけて、出来る限り鍛えて丈夫な身体を作ることだ。
次に第二目標が「世界を楽しむこと」
せっかくのHUNTER×HUNTERの世界である。原作にはどうにも介入出来なさそうなのが残念だが、前世の分も含めて世界中をまわってみたい。ハンター試験も始まってはいるから、ハンターを目指してみようと思う。
まずはスペックの把握。ここは鍛えれば鍛えるほど強くなれるHUNTER×HUNTERの世界だ。
とはいえ、この身体にもおなじみの呪いのような病弱体質がある。過信は禁物である。
見た目。
鏡で見た結果、金髪の碧眼の可愛らしい少年だった。ちょっと目が眠そうな感じを受けるが、一般的にはイケメンになりそうな気配を感じる。原作で似た顔で言えば、後半に出てきたパリストンが一番近いか。あれをより眠そうな、諦めたような顔にして小さくしたのが私だ。まぁあんな胡散臭いキャラはごめんだが。ただ、やはり病弱と言うこともあり、同年代の子供よりはヒョロガリである。アバラが浮きまくって腕ほっそいし。
というわけで、絶対目標として、この弱い身体、これを克服する必要がある。
そのためには≪念能力≫の目覚めは必須であると言っていい。まず身体を鍛えようにも無理はできないからだ。私の考えたプランは、まず念能力を身につけ、オーラをもって身体を頑丈にする。念能力を鍛えつつ徐々に身体も鍛えていきたい。オーラの系統によっては前世で考えていた病弱克服のための≪発≫もあるので、あわよくば習得していきたい。
まずは、≪纏≫からだ。オーラを感じ取れるようにするために前世からのお得意の瞑想から入ることにしよう。
精孔を開き、オーラを感じ取る訓練を行う。前世と違って、「確実にある」ということはすさまじいモチベーションにつながる。自然と気合いが入る。瞑想得意だし。
しかし、いくら病弱で入院生活とはいえ、四六時中瞑想できるわけではないので、早朝やお昼寝、消灯後などの隙を見て1日計6時間ほど取り組むことにする。また、いくら病院や自宅療養とは言え、学校なども始まるので、できるだけ時間を確保できるように動いていく必要がある。
原作のゴンたちは1000万人に1人の才能の持ち主だったという。
奴らは1週間程で目覚める可能性があったという。まあそんな短期間で習得するなんて期待はしてないけど。
どれぐらいでできるだろうか。
◆
瞑想を始めて早、半年が過ぎた。あれから1日最低6時間の瞑想を行っているが、まだちっともつかめない。まぁ才能なんざないだろうとは思っていたが、これは長期戦を覚悟するべきだな。絶対に諦めないが。なにせ命がけだからね。幸い昔から瞑想は苦ではなかったので、別に落ち込むこともなかった。それよりも時折罹る病気の方が強敵だった。割と本気で死にかけたこともあったし。
瞑想歴1年が過ぎようとしている。私の年齢も5歳となっている。未だにオーラの片鱗はつかめない。
だが、ここには確実にオーラが「ある」のだ。ここは、イメージを変えてみるようにするべきかもしれない。
あれから、オーラを漠然とつかもうとするだけでなく、細胞一つ一つを意識しながら瞑想するようにした。
自分の細胞一つ一つが脈打ち、連動し、活発に動くイメージ。約37兆と言われる細胞を意識の中で拡大していき、精孔を探す。そんなことをやっていたら、時間などあっという間に過ぎる。
一度ならず何度も両親に心配されたが、「病気も落ち着く気がする」といって強引にごまかした。
実は意外とこれが事実であり、最近病気する回数も減ってきている。実績があるため両親もそれ以上何も言うことはなかった。一度あまりに心配されてしばらく瞑想を控えていたら、あっという間に風邪をひいて死ぬ思いしたし。
さて、瞑想のイメージを変えて半年ほどしたころ、ついに全身の細胞の一つ一つから精孔を開けるイメージが完成した。それと同時に全身を何かが包むような感覚をついにつかんだ。
これが≪纏≫か
どうやら間に合ったようだ。
この時点で彼は少し特殊です。どう特殊なのかは後々。