アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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例によっての早めの投稿第2弾。

今回は
・人権スキル獲得
・クロスオーバーin中国
・クソ強老人

の3本でお送りします!


32、師を求めて

 

 

 私の特異性はこのオーラ量と細胞操作だが、基本的に体術はからっきしだ。もっと効率の良いパンチやキックがせめて打てるようになりたい。ということで道場を廻るが、基本的にこのオーラは異常な量だと分かっているのでオーラは使わない。肉体のスペックだけで道場見学と体験を行う。先ほども言ったように私は体術がからっきしだから、素の肉体スペックだけの私を凌駕するような師範がいたら、そこに弟子入りしようと思う。

 

 

 

 

 

 

 うーん…あらかた廻ったが、なんとも微妙だった。私の肉体スペックの高さもあるだろうが、それと素人体術で対応できるようなものばかりだったのだ。やはり首都近辺には私の求めるものはないか。だとするとカキンの奥に入って探すしかあるまい。ハンター協会支部の仕事もあるので、それらをこなしながら行うようにしよう。

 幸い、奥地には伝承によると凄まじい達人がいるらしいということを協会の方から聞いたので、場所と距離を教えて貰った。なんでもかなりの深山幽谷の場所らしく、大まかな位置しか分からないらしい。場所はここから約1500キロ。…さすが中国。スケールが違う。道の途中で出来るだけ依頼をこなすと伝えたら喜ばれた。…本当に人手不足なのね…。

 

 

 

 

 

 しばらくして、私は目的地に向かって出発した。途中で依頼にもあった怪物退治にも勤しむ。こちらでは怪物ではなく、妖怪、と言うらしいが…。

 道中で何体か退治することが出来た。中には「疫鬼」とか言う、病気を撒き散らすヤバい奴もいたが、それこそ私とは相性が良かった。また、かなり強かった相手として「饕餮」と言う、獣型の相手もいた。コイツはワニの様な身体をしていてかなり大きかった。また、当然の様に念使いで、口からオーラ攻撃を吸収するという恐ろしい力を持っていた。とりあえず念弾とブレードは吸われたので、仕方なく側面からぶん殴って倒した。この他にも何体かいたが、こいつは危険だったなぁ。

 

 1番ヤバかったのは、「字伏」と言う奴と闘った時だ。依頼書では何でも、雷を操り、火を噴き、凄まじい速さで飛び回るらしい。達成難易度Bだ。私も事前に入念に準備をしてから臨んだ。具体的に言うと、火・雷耐性だ。

 これはキツかった…。まず、火だが、焚き火に向かって身体を晒し、ひたすら燃えるのに対して、耐性を付ける。そのうち、細胞が熱に対応し始め、発火レベルの熱は効かない様になった。燃焼という現象に対して自らが熱を持つ事で無効にしたのだ。ついでに煙にも耐性がついた。また、雷では、大きな街に寄り、真夜中に電線から電気をちょっと拝借した(この時代にも大きな街には電気が通り始めていた)。結論から言うと上手くいった。私は細胞の神経に流れる電流とは区別して電気袋とでも言うべきものを持つに至った。入ってきた電流をここで蓄え、エネルギーとして吸収するのだ。ここに至るまでの激痛とオーラ消費は思い出したくない。水と並んで2度とやりたくないシリーズのトップ3だ。

 だが、リターンもあった。火と雷を使えるようになったのだ。火は細胞同士を激しく振動させ、熱を生み出し、老廃物などを発火させる。また、雷は例の電気袋から逆に電気を生成して取り出すのだ。上手くいけば、それぞれ自由に操れるだろう。毒と同じようにオーラでも可能になりそうだ。今はまだショボいが。

 さて、件の「字伏」だが、郊外の田舎村の目撃情報から、そちらに向かい、《円》を使った。そうしてしばらくすると、期待通りやつは現れた。

 

「人間風情が…このわしを挑発するなんざ、随分と舐めた真似をしやがって…見たところまだ小僧じゃないか…。そんなにわしに喰われたいか」

 

 ……!コイツ、喋れたのか!つまり魔獣か…?

 外見は虎のような容姿で、長く金色の髪。そしてそのオーラは…

 

「……近隣からあなたの討伐依頼が出ていましてね…。あなたに恨みはありませんが、退治させて貰います」

 

「フン!大きく出たな小僧…。どうやら符も持たねぇようだが…なるほど、闘う力はあるようだな」

 

 符とはこの地方の戦闘術の一つで、神字を書いた紙にオーラを込めて闘うやり方である。場所が変われば念の使い方も変わる。

 

「甘く見てると痛い目に合いますよ…では」

 

 《堅》を使う。

 

「…人間の癖にちったぁ楽しめそうじゃないか。上等だ。その売られたケンカ、買ってやる!」

 

 

 そこから、奴とは一進一退の攻防を繰り広げた。奴の雷は電線のよりよっぽど強烈で、火は文字通り消し炭になりそうな程の威力があった。【日々是健康(ヘルシーマン)】で復元しながらも【完全適合(パーフェクト・コンバート)】で何とか適応しながら、こちらも念弾や近接などで対抗した。奴の爪や牙も強烈で、かなりギリギリの闘いを強いられたが、こちらも火と雷に適応し、奴にデカいダメージを与えもした。そして、その闘いは一昼夜も続いた。

 

 

「………ハァ……ハァ…チッ。やるじゃないか。人間。…キサマ本当に人間か?わしの火と雷に対応する奴なんざ初めてだ。…これ以上続けるのも面倒だな。わしは別の場所に行くとしよう。キサマはわしを退治出来なかった奴として人間共に知らせるといい」

 

 そう捨て台詞を吐いて、奴は飛び去った。はっきり言って追いかける気力もオーラも尽き果てる寸前だったので、本当に助かった…。もう達成難易度B以上の依頼は受けない様にしよう。万が一受けるにしても複数であたる事にする。そう心に誓った。

 とりあえず、討伐は無理だったが撃退は出来たとして報告した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、大分奥地に入ってきた。もうこの辺になると、人の営みも滅多にない。深山幽谷とはよく言ったものだ。まるで水墨画の世界だ。険しい山々を超え、《円》を使いながらそれらしい場所を探す。そろそろこの近辺の筈だ。

 そうやって探す事3日。漸く建物らしき物を発見した。…山の山頂だ。こんな所で人って生活出来るの?

 

 《円》を解き、建物へ向かう。1人人間の反応があったが、向こうも座禅していた。そして、当然こちらに気づき、待ち構えていたようだ。

 …街の道場では気付かれもしなかったからなぁ。これは期待ができる。着いた時に爺さんが出迎えてくれた。

 

「こんな所迄、遥々ようこそ。お客人。儂に何か用かな?」

 

「初めまして。いきなり尋ねた無礼をお許しください。あなたがリー老師で間違いないでしょうか?」

 

「…いかにも。儂がリーである。しかし何用じゃ?」

 

「失礼しました。私の名はカーム=アンダーソン。自らの体術に疑問を覚え、こちらに赴きました。まずは手合わせ願いたい」

 

「……とても良い〝気〟じゃ。良く練られておる。そしてその量たるや、儂を遥かに凌駕しておる。比べるのも烏滸がましい程に…。その若さで大したもんじゃ。…そんなお主に〝武〟は必要かの?」

 

「ご謙遜を…。その立ち姿からよどみないオーラ。全てが熟練のそれです。隙が全く見えない…。私は恐らく隙だらけでしょう。どんな状況でも、誰よりも死なないために私には〝武〟が必要なのです」

 

「ふむ……。気は進まんが、下界の者を導くのも〝仙〟のつとめか…。よかろう。では、かかってくるがいい」

 

 と、リー老師は告げるが、先ほどの佇まいと全く変わらない。いきなりここでやるのか?

 

「…では体術で挑みます」

 

 そう告げると、

 

「何を遠慮しとる。お主の全てを使っても良い。そのまま掛かってこんかい」

 

「……よいので?」

 

「遠慮するなと言っておる。お主程度をあしらうのはわけないぞい」

 

 さすがにそこまで言われては、遠慮する気も失せる。

 

「…では、遠慮無く」

 

 《堅》!

 

「ほう。やはりお主は相当の使い手じゃのう。これでもまだ〝武〟が必要か?」

 

「必要だから言っているのです…。行きますよ!」

 

 そう言って、私はオーラを足に込め、凄まじい速度で飛び込んだ!

 

 

 次の瞬間

 

 

 

 視界が暗転した。

 

 

 

 何が起きた!?

 

 

 

 気付いたら私は石畳の上に寝転がっていた。その時間、わずかコンマ2秒!そして気付いた瞬間にリー老師の足の踏みつけが迫る!慌てて両手で防御!した瞬間に腕を通じて身体全体に衝撃が走る!!

 

 

 何をされた!?

 

 

 必死で立ち上がるも、視界は歪み、リー老師の姿もぼやける。これは、自分のオーラが体内で乱反射してる!?自分由来だから適応も出来ない!既に内臓関連がグチャグチャだ…【日々是健康(ヘルシーマン)】で復元…!

 しかし恐ろしい技だ…!

 

 

「たしかに体術はからっきしのようじゃ…。見える見える。お主の流れが」

 

 

 くそ…っ。このままじゃ終われない、今までの技を全て試す!まだ視界がぼやけるが、今度は殴りかかると見せかけてフェイントを入れる!そして、オーラで作った4本の腕を更に《隠》で見えなくし、側面や背後から殴りに掛かる!

 

 

「目線や〝気〟の流れ、そして身体の動きから次の動作が手に取るように分かると言っておる」

 

 

 そう言うと、全ての攻撃を優しく手を添えて全て払いのけられ、バランスを崩した私の頭を押さえて地面にたたき落とされた。とっさに《硬》で守ったが、若干のダメージは喰らってしまう。おかしい。私はかなりのスピードで()()()攻撃したはずだ。リー老師の動きは私にも見えるほどだったのに全て払われるとはどういうことだ!?まずい!追撃が来る!私自身の身体に電気を発し、追撃を防ぐ。リー老師はそこから飛び退き、

 

「そんなことまで出来るのか…お主、本当に人間か?それに、やはりここまで力が大きいと相手するのもしんどいの…まぁだいたい分かったからえぇけど」

 

 そんなに分かりやすいか…?だが、まだまだ!

 

「まだまだ、これからですよ。覚悟は良いですか?」

 

「まだやるか。んじゃはよこい」

 

 では、遠慮無く。手に長いオーラブレードを瞬時に作り、横薙ぎにする!リー老師は飛び上がるが、そう来たなら次のパターン。大きめの念弾をぶち込む!…あっさりはじかれた!どうやってるんだ!?次だ!同じく念弾だが、今度は神経毒を混ぜる!触っただけでもアウトだぞ!どうする!?

 

「器用なやっちゃの~。じゃあこうして…と」

 

 老師は小さな念弾を作り、横合いから発射する。そんなんじゃびくともしな…弾かれた…!どういうことだ!?地面に降り立った老師がこう告げる。

 

「もうだいたい終わりかの?では、こちらから行くぞい」

 

 来た!…まっすぐ来て、腰を入れたパンチ…か?何の変哲も無いし、普通の念を込めた、ただのパンチに見えるが…とりあえず《凝》をして、何もないことを確認して、カウンターをもくろむ。…が、インパクトの瞬間、嫌な予感がして全力防御を行う。

 

 

 バッガン!!!!

 

 

 凄まじい音と衝撃をもって、私は身体ごと吹き飛んだ!馬鹿な!?オーラ量の差がこれほどあるのにこんなに衝撃を受けるものなのか!?

 

「これが〝技〟じゃ。そろそろ決めるぞい」

 

 やられっぱなしじゃないか!一撃でも当てる!そう思い、追撃のために迫った老師の顎をめがけて蹴飛ばした、が…なんだこの手応え!?当たった気がしないぞ!?いや、確かに当たったが…まるで手応えがない!だが老師は空中で回転してる。自分から飛んだか…?これは参った。達人じゃないか…!

 

「自らを自然の一部と捉え、一つとなる。すなわち岩のように硬く、草のように柔らかく、羽のように軽く、山のように重い。水のように流れ、枝のように受ける…これが極意の1つじゃ」

 

 そう言うと、老師は再びゆったりと私に迫り、そっと私の身体に手を添えた。あまりにも自然な動きに私も反応が出来なかった。次の瞬間、先ほどの体内乱射が3倍ぐらい発生し、私は意識を失った。

 

「…よかろう。稽古は付けてやる。…それが儂の役目じゃからな」

 

 

 

 意識を失う直前に、老師のそう言う声が聞こえた。




字伏さんはどうしても人権スキルの為に登場して貰いました。一体何飛丸なんだ…。話し方大丈夫かなぁ…。年代とか無茶苦茶ですが、別のユニバースと言う事でご了承ください。
あと、クソ強老人。やってる事が無茶苦茶。強さ的にはネテロ会長に匹敵しそう。

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