アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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夏休みブースト第3弾!
相変わらず不定期掲載ですみません…。
多分ブーストはこれでラストです…。
いよいよ頼りになる仲間達が出ます!お楽しみに!


暗黒大陸編
35、船中にて


 

 

 

 本部に到着したら、早速なんやかんやの手続きをしたり、何かあった場合の誓約書を書いたりした。まぁ海外旅行ですら必要だからな。しょうが無い。ましてや暗黒大陸もとい新大陸だ。何があるか分からない。

 そして、参加者と今回のミッションの概要を聞く。参加者は約30名。よく集めたな。全ハンターの60%はいないか?話は戻るが、今回の概要は簡単に言うと、参加者は、各国のプロジェクトチームとともに特殊部隊として参加し、暗黒大陸を調査の上、何かしらのリターンを持ち帰るというものだ。これはV5各国とハンター協会との共同プロジェクトで、一番お偉いさん同士が指令を発しているとのこと。まさに全世界プロジェクトだ。準備に10年掛けたのもうなずける。

 私の場合はサヘルタ合衆国所属なのでそちらの船に乗る。基本は出身によって振り分けられるらしいが、希望はある程度通るらしい。むしろ偏りがないように調整が必要なので、ある程度は違う船にも乗るように協会側がそれぞれのハンターに調整をお願いしていた。

 私は特に何も聞かれなかった。まぁどの船に乗ろうが別に何があると言う事は無いのだが。

 

 さて、ブリーフィングが終わったらそれぞれの国へ行き、船に乗る。いよいよ出発だ。サヘルタ側のハンター参加者は私を含めて6名。新人からベテランまで揃っている。私?多分中堅ぐらいかなぁ。

 ちなみに女性ハンターは居ない。この時代ではまだまだ男性中心の世界のようだ。だからなんだという話だが。少し残念だ。

 

 サヘルタの港に皆で鉄道に乗りながらそれぞれの自己紹介をする。私以外の5名は

 

・マット=レモン(シングル)

・アンソニー=ポップス(ダブル)

・チャーリー=シーク(シングル)

・ブラッド=ピース(シングル)

・ネーブル=ファジー(トリプル)

 ※括弧内は星の数

 

 との事。見てわかる通り、驚く事にネーブルさんも同行するそうだ。聞いてみたら、「それだけ国も本腰を入れているのですよ」だそうだ。非常に心強い。

 マットさんは短髪の典型的なアメリカ人って感じだな。まだ10代に見える。新人かな?でも星持ちだし、見た目で判断しない方がいいな。アンソニーさんは逆に年配だ。白髪まじりでどっしりとした体格。しかし太ってはいない。物腰もベテランだ。チャーリーさんはラテン系かな?同年代だ。ブラッドさんは黒人だ。私より若干歳上かな。

 こうしてみると、見事にむさ苦しいな。

 

 

 さて、それぞれ自己紹介をするが、その際に簡単に能力の擦り合わせを行った。

 

 

マットさん

骨の記憶(ボーン・アイデンティティ)

・カウンター能力。受けたダメージを倍にして返す事が出来る。単純だけど強力だな。強化系かな。

 

 

アンソニーさん

羊たちの沈黙(ドクター・レクター)

・治療能力。患者に問診する事で発動。患部を治癒する。ハンターの他に医者もやってるらしい。これはマットさんとの相性がいいな。聞けば、やはりコンビで活動しているとの事。ただ、それだけの能力じゃ無さそうな雰囲気がある。

 

チャーリーさん

熱き弾丸(ホット・ショット)

・具現化した銃から念弾を飛ばす。威力調整や連射も可能との事。これまたコメントに困る能力だ。放出なのに具現化するメリットが浮かばない。しかし多分銃弾を飛ばすだけと言うものじゃないだろう。恐らくだが様々な機能があるはずだ。

 

 

ブラッドさん

漢の拳闘(ファイト・クラブ)

・対象を限定し、自分のフィールドに引きずりこむ。その中でタイマンの決闘を行う。勝利すれば対象のオーラを奪う事が出来る。足止めには最適だな。

 

 

ネーブルさん

曖昧なオレンジ(ファジー・ネーブル)

・半径50メートルの範囲内にいる生物に対して、その生物の認識を阻害する能力。幻惑作用があり、相手からしたら敵が増えたり消えたりするらしい。ただ、範囲から出たら無効化される上、《絶》では使えないのでそこがネックとのことだが、十分強い能力だ。新大陸では心強い。

 

 

 それぞれの能力を紹介してもらい、私も【日々是健康(ヘルシーマン)】を紹介したらドン引きされた。やはり壊れない男(アンブレイカブル)は違うな、私が要らないじゃないかとアンソニーさんが言ってたが、まぁそうですねと曖昧に返しておいた。やっぱりもう一つの【完全適合(パーフェクト・コンバート)】は話さない方がいいな。まぁ私だけでなく、他の方々も他に隠したい能力はあるだろうから、最低限の力が分かれば大丈夫だろう。

 実際隠してるだろうしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 港に着いた。私達は合衆国の特殊部隊と合流し、船旅が始まる。何とその数1000人規模だ。念能力は無いが、かなり鍛えられた集団と言うのが分かる。また、この時代ではと但し書きが続くが、完全武装をしている。貴重な銃を全員標準装備してる時点で非常に金がかかっているだろう。国家の威信を懸けていると言うのもあながち間違いでは無いようだ。

 さて、我々を全員収容出来る船もまた巨大だ。所謂軍艦という奴だ。前に乗った客船の倍ぐらい大きい。内装は根本的に客船とは違って居住性には劣るが、それでもハンターはかなり優遇されていて寝泊まりする分には何も問題は無かった。これから4ヶ月以上は船旅だ。帰りも合わせて8ヶ月掛かる。1年以内に戻れるか不安になってきたが、何とかなると信じておくしかない。

 

 船内探検が済むと、まずは我々ハンター同士で交流を深めるとする。チャーリーさんとブラッドさんとは歳が近いので、割と話が合った。お互いの出身やハンター活動について話し合った。ただ、私の戦歴を聞いてドン引きしていたが。ちなみにチャーリーさんはビーストハンターで、ブラッドさんは懸賞金ハンターとの事。何となく予想してたが、当たってて嬉しい。

 マットさんとアンソニーさんのコンビはちょっと苦手だ。特にアンソニーさん。私自身が医者に苦手意識を持っている所為もあるが、話していて何となく噛み合わない。何処となくマッドな気配がするんだよね…。弟子らしいマットさんもなんかアンソニーさんの狂信者っぽいし。まぁハンターなんてマッドな商売だし、私も人の事言えないか。2人はウィルスハンター兼トレジャーハンターだそうだ。未開の地に赴き、冒険をしつつ未知のウィルスと闘うのが仕事だそうな。やってる事は似たようなものか。ただ、私の能力じゃ社会には貢献出来ないが。やはり私は怪物ハンターが合ってるらしい。

 しかし、苦手とは言え、これから命を預ける相手だ。私も好き嫌い言わずに交流に励む。アンソニーさんは医者なので、その辺の知識の擦り合わせが出来たのは収穫だった。流石本職は違うね。

 ネーブルさんはこれまでの付き合いからかなり親しくなった。1ヶ月も経つと、ハンター協会の愚痴もこぼす様になった。国家間の無茶振りの調整とか大変そうだ。また、協会内での権力争いも激しいらしい…やっぱりどこの組織もドロドロしてるね…。マティーニさんも苦労してるだろうな。

 

 ちなみに、今回の旅はサヘルタとハンター協会の共同作戦になる。我々はサポートしつつ、独自に調査するという立場だ。我々のリーダーはネーブルさんだが、サヘルタ側の司令官はレイル=チャンドラーさんという。見事な髭を蓄えた人物だ。おそらく60近いだろうが、厳格でキビキビした動きをする方だ。普段は寡黙で滅多にしゃべらないが、号令を掛けるときの迫力は凄い。これだけの部隊の長ともなるとやはり大変有能な人なんだろう。我々に対しては一目置いているのか、丁寧な言葉遣いで接してくれるのはありがたいが、私としてはこれまたちょっと苦手だ。ちょっと融通が利かない感じがするのと、厳格な雰囲気が辛くなるのだ。まぁこれも命を預ける以上四の五の言ってられないが。とにかく我々は彼の作戦と合同で動くことになるので、我々も部隊も動きやすいようにサポートしていきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、4ヶ月以上の船旅はやはり退屈だ。特殊部隊員は訓練を毎日欠かさずやっているし、私は瞑想があるから良いが、チャーリーやブラッドさんは修行にも飽きたのか退屈していて私に模擬戦をしようと持ちかけてきた。そこにネーブルさんも加わって、一度ハンター全員で模擬戦大会をやることになった。ちなみにアンソニーさんは「私は戦闘タイプじゃないし、怪我人の治療に当たるから遠慮しておこう」と言っていたが、私から見てアンソニーさんも相当な使い手だ。まぁ気が乗らないなら無理強いはしないが。

 

 ルールは簡単。甲板の広場にロープを正方形に10メートル四方で置き、そこから出る。またはダウンする。または参ったと言わせる。で勝負が決まる。最初はチャーリーさんとブラッドさんだな。ブラッドさんは特殊な能力が強力なので、是非見たかった所だ。

 

 試合開始後すぐにチャーリーさんが仕掛けた。確かにそうしないとすぐに能力に引き込まれるからね。銃を具現化し、念弾を飛ばす!ブラッドさんは《堅》で防御しながらも、いくつか被弾し、よろける。結構殺傷力が強いな。普通の兵士なら穴だらけだぞ。容赦なくチャーリーさんは遠距離から銃撃を連射で行うが、ブラッドさんは被弾覚悟で前面に強めに《凝》をし、飛び込んでいく。ボクシングスタイルだな。いわゆるピーカブースタイルだ。そして、被弾しながらも5メートルまで接近したところで能力発動!オーラの幕が四方を囲み、チャーリーさんは閉じ込められる。そして急接近したブラッドさんにたこ殴りされ始める。あれ、能力は?と思ったが、どうやら出せないようだ。なるほど。よく考えられている。念の特殊能力を無効にし、殴り合いのみを許可する能力だろう。

 そのうちチャーリーさんもダウンしてブラッドさんの勝ちとなった。チャーリーさんはこんなものか、と言う表情をしていたが、多分あれは悔しかったのだろう。でも、チャーリーさんは銃撃以外の能力もありそうだから真剣にやれば勝負は分からないな。ブラッドさんも全力じゃなかったろうし。

 

 

 

 2回戦は私とマットさんだ。オーラは同じぐらいに合わせて出している。オーラ差で勝つなんて修行にならないからね。しかし…ん~どうしようかな。マットさんの能力は強力だ。ダメージが2倍で跳ね返るなど、攻撃力が強ければ強いほど脅威になる。故に対処法は能力を発動させないほど強烈なダメージを入れるか、ルールに則って勝つか、だ。強烈すぎるダメージを与えて遺恨は残したくないし、後者で行くか。

 勝負が始まったが、マットさんは動かなかった。こちらの狙いを読んでるのかな?私は〝後の先〟、いわゆるカウンターを狙っていたのだが…。まぁ向こうの能力的にも待つつもりか。仕方ない。こちらから行くか。

 私はこの10年間で身につけた自然な歩法を駆使し、マットさんにごく自然に近づく。向こうからしてみたら、気付いたらいきなり目の前にいたようなものだ。慌てて拳を繰り出そうとその動作の起こりの瞬間、それに合わせて手を顔の前に出し、一瞬の硬直を利用してそのまま頭を押さえ、側面に回り込んで足を払い、全身の円運動を利用しながら一回転させて床に落とした。勿論頭は手を下に入れてかばい、ダメージゼロだ。人間はとっさの反応に対しては硬直する性質があるのでこれを利用したが、私も師匠によくやられた。とっさの攻撃に対して柔らかく受けられたら一人前だ。極めればダメージゼロにも出来る。ちなみに本当は回転する最中に全力で背中全体を使って当て身を入れるが今回は無しだ。

 マットさんは呆然としながら、同じシングルなのにレベルが違うっす…とぼやいていたが、まぁ私も努力したのだ。

 

 

 

 

 

 次は、ネーブルさんとブラッドさんだ。どうなるかな。能力見られるかな?と思っていたら、速攻でブラッドさんが突撃し、先ほどの能力を使った。が、ブラッドさんの攻撃が当たらない。ネーブルさんの能力は封じられているはずなので、あれは自力だ。あ、攻撃に入った。…良いところにカウンターのクロスが入った…。倒れたのはブラッドさんだ。能力を喰らった上でそのままKOするとはなかなかの使い手だ。以前「自信がある」と言ってたのは本当だったか…。

 

 

 

 最後に私とネーブルさんの試合になった。

 

「貴方とは一度闘ってみたかったのですよ。功績だけで言えばトリプルにも匹敵する貴方はどのぐらい出来るのか、とね。本気を出させて見せますよ」

 

「私も楽しみです。久しく対人戦をしていなかったので、勉強させて貰います」

 

 そして試合が始まった。ネーブルさんが《堅》を行うが、私もオーラを同じぐらいに合わせて出す。ネーブルさんは素早く近づくと、私に対してローキックを入れてきた。なるほど、牽制か。受けてやる必要も無いなと下がると、追撃に正拳突きをしてくる。…これは空手に近いか?拳を優しく手でいなし、次々とくる攻撃をそらす。なかなかの使い手だ。やはり現時点でのマイケルよりは上だな。かなりの時間無呼吸連打をしてくるが、私もことごとく外す。外されてもめげずに連続で仕掛けてくる。おそらく私の攻撃を誘っているのだろう。だが、私には通用しない!逆に綺麗に放たれた正拳を下にそらし、緩やかにカウンターを入れる。タイミング的に避けられない奴だ。ネーブルさんも避けられないと悟り《凝》で防御するが、甘い。凄まじい音がインパクトの瞬間起こり、ロープ際まで飛ばされる。かろうじて場外とダウンは避けたようだが、かなり効いているようだ。

 

「……凄まじいですね…ここまでとは。自信をなくしますよ…。一体カキンでどのような修練を積めばこうなるのですか?仕方ない。少し能力を使いますよ」

 

 

 そう言うと、ネーブルさんの姿がかき消える。…!これはやっかいだ。《円》でも見えない!再び出てきたネーブルさんは5人に増えていた。今度はこちらが参ったな…。どれが本物か全く分からんぞ…!では、こっちも少し奥義を披露しよう。目を閉じて脱力する…。相変わらず気配も5人分だ。視覚、聴覚、触覚、嗅覚全てにおいて幻惑作用がある…か。強力な能力だ。そして、5人が動き出す。気配で分かるが、どれが本物かまだ分からない。しかし、攻撃は1人のはず…。

 来た!これだ!!左側面からの右ストレート!対象は顔面!!これに合わせる!

 インパクトの瞬間私は完全な脱力をし、その場で回転する。おそらくネーブルさんは私の手応えがなさ過ぎることに疑問を覚えたはずだ。しかし、これで本物が分かった。一回転して立ち、次のハイキックに合わせて私も回転下段蹴りを放つ。見事に尻餅をついたネーブルさんだったが、これで勝負は決まった。

 しばらく呆然としていたが、ネーブルさんは立ち上がり

 

 

「いやぁ~。完敗ですね。さすがは『ヴリトラ』の討伐者!能力を使わせられずに負けるとは。しかも私の能力まで見切って…一体どうやったんです?」

 

「いやいや、見切ってはいませんでしたよ。完全に幻惑されてました。それに、ネーブルさんも本気の幻惑じゃなかったでしょう?とりあえずさっきのは、攻撃を喰らうのは1人だからそれに合わせて対応しただけです。被弾覚悟でしたが、うまくいってよかったですよ」

 

「そうですか…。まだまだ私も修練が足りないと言うことですね…。これからもちょくちょくつきあってもらえますか?」

 

「もちろん! 望むところです。よろしくお願いします」

 

 

 そう言って、トーナメントはお開きとなった。いい退屈しのぎになったな。修行にもなるし、本当にちょくちょくやっていこう。ちなみにアンソニーさんも審判をしながら興味津々でこちらを見ていたが、この人の実力も見てみたいなぁ。

 

 

 

 

 

 あ、ちなみにネーブルさんの幻惑はこっそり【完全適合(パーフェクト・コンバート)】で吸収しました。念能力もいけるんだよね。ネーブルさんには申し訳ないがオート発動してしまうので許して欲しい。




ここまでやっても女性は出ない…。やはり私には男臭い感じしか書けない…!
というかまぁ、ここから先はメインヒロイン(暗黒大陸)だから良いよね!

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