アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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さて、いよいよ暗黒大陸編ですが、ここからかなりの作者の妄想が始まります…。
それでもよろしければおつきあいください。


36、限界境界線を越えて

 

 

 出港してから2ヶ月は経った。私としてはいつも通り修行&交流&模擬戦の毎日で退屈することもなかったが、特に変わりなく日々を過ごせた。アンソニーさんも結局は周りからの強めの要望で、仕方なくといった感じだが闘いを見せてくれた。能力的に体術のみだが、あれはカキンだな。私とは若干流派が違うようだが、ゆったりとした動きで繰り出す打撃はかなりのものだった。前世で言う太極拳のようなものだ。ちなみに私も太極拳みたいなのがベースになっているがごちゃ混ぜだ。少林拳とか、八極拳みたいなのも混じってる。その辺師匠は適当だからなぁ。強ければ何でもヨシ!な感じだったし。あれは師匠のオリジナルだろう。念戦闘にも合わせてるのだろうな。

 ともかく、思った通りかなりの使い手だった。見た感じ重心がほぼぶれてなかったからね。ちなみにネーブルさんもそうだ。未熟な者にはこれがぶれてる場合が多いので分かりやすい。マットさんはまだまだだな。

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そろそろ限界海峡線だが、どうなる事やら。聞いた話によると、限界海峡線を越えようと進んでいると巨大な門が現れるらしい。そこに「門番」がいて、審査を受ける。無事に合格すると、先の海を渡る事ができるとの事だが…。海のど真ん中に門が……?

 

 

 

 そう思っていたら、船内にサイレンが鳴り響き、放送が入る。「門」が現れたと。

 

 

 

 急いで甲板に出ると、船の前に本当に巨大な門が存在していた。

 

 

 

 馬鹿な!?ここは海の上だぞ!!それにこの船が小さく見える程の巨大さだ…。門の周りは見渡す限りの壁が続く…。なるほど、これは確かに先に進めない筈だ…。どうなってるんだ。実体か?…いや、《凝》で見ると信じがたい事にこれは念能力のようだ。しかし、これ程の具現化を出来るとなると、まさに「神」の如き存在なのでは…。

 

 と、思っていると、「門」の手前の海域が盛り上がり、巨大な龍の様なものが顔を出した。大変巨大な龍だ。顔だけでも船の舳先より大きいぞ!

 

 ────ヒトよ。我が守護する場所へようこそ。何用か?────

 

 これは、念話、か?「ヴリトラ」もやっていたが全く原理が分からないな…。あの大きさでこれ程の知性。あながち「神」と言うのも間違いじゃないな。明らかにあの「門」はこの龍の能力だ…さて、交渉の時間かな?

 

 

「新世界の門番よ!我々はメビウス湖の中央にある大陸から来た!我々は新世界の調査を行いたい!是非門を開いていただきたく思う!」

 

 と、チャンドラー司令が大きな声で返事をする。

 

 

 ────それが何を意味するのか、分かっておるのか?ヒトよ。与えられた楽園で大人しくしておれ────

 

 

「我々は力を付けた!調査ぐらいなら出来る筈だ!頼む、『門』を開けてくれ!」

 

 

 ────永き時を経て、貴様らは忘れてしまったか…ならば良かろう。存分に調査とやらをして、再び思い出すがよい────

 

 

 そう言うと、巨大な「門」が開き始めた!…どうやら交渉は成立したらしい。

 

 

 ────そのまま進めば辿り着く前に沈むであろう。行き帰りに案内役を付けてやる。…帰れたらな────

 

 

 すると、海の中から複数の人型の姿が現れた。よく見ると下半身は魚だ…。所謂人魚だな。

 

 

 ────其れは我が眷族。貴様らを安全に導くであろう。しかしヒトよ。ゆめゆめ忘れるなかれ。貴様らがどのような存在かを────

 

 

 その言葉を最後に再び龍は沈んでいった。最後に私だけにであろう、声が響いてきた。

 

 

 

 

 

 

 ────ヒトの中でも、貴様だけは何とかなりそうだな…ヒトの可能性を我に見せてみよ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 人魚達の先導で船は進む。しかし、さすがにあんな馬鹿げたスケールだとは思わなかった…。もはや前世でいうリヴァイアサンといっても過言ではない。…暗黒大陸とは一体どんなところだろう。私も例の「新大陸紀行」を本部で読ませて貰ったが、本当に空想小説の域だ。馬鹿げている。馬鹿げている…が、先ほどのを見ると、とたんに説得力が増す。つまり、あの本に書いてあった、「厄災」というものも真実だと言うことだ。これから我々が向かう場所、「古代の迷宮都市」に存在するという万病に効くという香草、そして、それらを守る植物兵器「ブリオン」…。もしこれが本当だとしたら、確かに人類は1歩処か、2歩も3歩も先に進めるだろう…。

 だが、私は知っている。原作の漫画にそのような描写が1つも無かった事を…。あるいはもしかしたらあったのかもしれない。あの漫画のことだ。何でもありだろう。だが、もし…あの門番が言ったように我々が太刀打ちできないようなちっぽけな存在であるとすれば…。この作戦は非常に危険なことになる。

 そもそも、訓練されているとは言え、念能力者でもない一般人が立ち入って良いところなのだろうか?植物「兵器」とあるが、それは一体どのような物なのか?私は当初から不安があったが、ここ最近はよりそれが強まってきたように思う。無事に帰れるだろうか?もしもの時に、私は一体どうしたらよいだろうか?

 今まで私を守ってきた【自己貪食(オートファジー)】、【日々是健康(ヘルシーマン)】、そして【完全適合(パーフェクト・コンバート)】…ここからはより厳しい闘いになる可能性が高まった。今は師匠の教えもある…。

 だからこそ、私は絶対に生き延びてやる。何が何でも生きて帰る。それが私の今回のミッションだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人魚達はある程度こちら側の言葉も通じるらしい。この人魚に先導されている間は、海の魔物から襲われないそうだ。あの門番のサイズと能力から見ると、海の魔物はクラーケンなんてものじゃないんだろうな…。だいたい後2ヶ月ほどで新大陸の沿岸に着くらしい。その沿岸にベースキャンプを敷いて調査開始だそうな。

 私も、少し思うことがあって、ここ最近は瞑想が増えた。師匠の言葉をより強く意識し始めたからだ。生き残るにはあらゆる災いを跳ね返すことが必須になるかもしれない。だからこそ、師匠の見せてくれたあの〝聖光気〟を身につけておきたい所だ…が、全くうまくいかない。当たり前か。あれこそ究極の奥義だ。自然との同調、調和もそこそこしか出来ない私にはやっぱり難しい。恐らく何十年単位が必要だ。とうてい間に合わない。しかし、何かやっておかないと不安に飲み込まれそうなのだ。

 ネーブルさんも少しずつ緊張が増してきているように思う。ハンター協会の看板を背負ってきているからな。ここ最近はハンター同士の打ち合わせの頻度も増してきている。確認事項が多いがこれもまた仕方ない。リーダーは大変だな。トリプルなんてなるもんじゃないな。

 まぁ、不安になっていても仕方が無い。ここまで来ている以上は最善を尽くすのみ。残りの私の自由時間は自己鍛錬と瞑想に費やそう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いよいよ陸が見えてきたらしい。私も確認したが、広大な陸地だ。地平線が見えない。と言うか、巨大すぎる地形がはっきりと目に映る…。何だあれは。はっきり言って巨人サイズだ。遙か遠くに見えるはずの山脈が雲を割っているのが見える。また、別の場所には天をも貫く木が見える…。別の場所にはこれまた高さが分からないほどの塔が見える…。遠近感が狂いそうだ。それこそまるで未知の全く違う世界観の場所に来た感じだ。

 いつからHUNTER×HUNTERはファンタジーになった?もっと現実的なシビアな世界じゃなかったっけ?こんな所を調査するのか…。やっぱりここは、絶対に変な生物がてんこ盛りでいそうだなぁ。とにかく今からでも帰りたいが、泣き言ばかりは言ってられないので、この作戦を成功に導けるようにしよう。成功して穏便に帰ることこそが私の望みにつながる。頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人魚達は、そのまま私たちを船の停めやすいところまで導いてくれた。軍艦はうまく停泊し、我々はボートで砂浜に到着した。人魚達はそのまま海へ帰っていった。あれは念獣なのか?それとも実体か?分からないが、船長に向かって鈴を渡していたから、恐らく実体なんだろう。亜人種ということか。しかしあの龍の眷属とか言ってたな。魔獣の召喚する亜人種、か……よく分からないことは考えるのはよそう。とにかくこれからが本番だ。

 

 軍の人々に混じって、ベースキャンプの設営に掛かる。資材を運び出し、テントやその他の設営を行うが、さすがに1000人規模のキャンプは時間が掛かる。午前中に着いたはずなのに、漸く一段落したのは夕方だ。今日はこのままここで一泊だな。ちなみにさすがに1000人全員が現地に赴き調査するわけでもない。医療班や、連絡班、補給班などは基本キャンプに待機だし、操船するメンバーは船に詰めている。

 私もネーブルさんに「船に詰めていたいなぁ」と言ったら、「ご冗談を」と真顔で返されてしまった。ほんの冗談なのに…ネーブルさんもあまり余裕がないのだろう。仕方ない。明日からの調査を頑張るしかないか。




魔獣の召喚する亜人種…ってこんなもんだろうなぁ、と言う妄想。
冨樫先生は多分違うイメージをしてるかもしれませんが、二次小説と言うことでお許しください…!

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