アンブレイカブルハンター   作:エアロダイナミクス

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41、植物兵器

 

 

 

 強い悪寒が絶え間なく続く。進めば進む程にだ。私のこれまでの経験と、第6感と言うべきものだ。「敵」は、もう私達を捕捉している…!正直、何もかも見捨てて逃げだしたい。私なら可能だろう。だが、その場合フィリップス大尉以下100名は確実に死ぬ…!だから…今出来る事は急ぎリターンを奪取し、離脱するしかない。

 今は先ほどから一本道を歩いている。…何キロ進んだ?徒歩感覚ではもう合計で20キロは歩いたはずだ。先ほどの分岐からも5キロは歩いている。部隊も心なしか早歩きになっているし。ブラッドさんは無事だろうか?ネーブルさんもアンソニーさんもマットさんも無事でいてくれることを祈るしかないか…。

 

 その時、無線が入る。

 

「こちら、メイソン中隊!フィリップス中隊応答願います!!」

 

!ブラッドさんの部隊だ!

 

「こちらフィリップス!!どうした!?」

 

「私はメイソン大尉の代理のカール軍曹であります!先程謎の生命体から攻撃を受け、我が中隊は崩壊!!生き残り32名で何とか脱出を図りました!現在そちらに合流するために急行中です!!」

 

「何!?ハンターのブラッド氏はどうした!?」

 

「ブラッド氏は、敵の足止めを行い、現在交戦中だと思われます!あの様子ではもう幾分も持たないでしょう…」

 

「クソッ!なんてことだ!我々では太刀打ちできなかったのか!?」

 

「まるで手に負えませんでした!!むしろ次々に奴等の仲間入りをしてしまう状況です!」

 

「…了解した。報告ご苦労!我々も迎えに行く!」

 

「ありがとうございます!今現在もうすぐで先ほどの分岐点まで到達します!これにて通信終了します!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つまり、我々の全く手に負えない奴等が後ろから迫っている、と言うことか…参ったな」

 

「ブラッドさん…。フィリップス大尉。恐らくはどの道同じだったでしょう。もう既に我々は捕捉されていたようです。向こうはタイミングを計っていたように思います」

 

「…我々は特殊部隊としての自信はありました。しかし、ここではまるで何の役にも立たない。むしろ足手まといだ。『壊れない男(アンブレイカブル)』……これからどうすべきですかね」

 

「そのためにハンターが付いてるのですよ。向こうも恐らく壊滅するはずだったでしょうが、ブラッドさんが足止めしてくれたおかげで30名近くも生き残っています。これまでのことを考えると奇跡的ですよ。だからこそ、生き延びるために行動しましょう!道は1つしか無い。後ろからは敵が迫っている…。まずはその32名を回収して、先の道に進みましょう。そこで活路が開ければ尚良し。上手く撒いて脱出を図るんです」

 

「…それしかないか…。分かりました……中隊員!!傾聴!!!これからメイソン中隊の生き残りの救出に当たる!来た道を引き返し、救出完了後、急いで先の道を進む!!返事は!?」

 

「「「「サー!イエッサー!!」」」」

 

「そうと決まれば急ぎましょう!時間との勝負だ!」

 

「えぇ、全員!駆け足!」

 

 

 

 その後、すぐにメイソン中隊の部隊を回収できた。彼らも疲れているだろうが、急ぎ回れ右して先を急ぐ。……無駄だとは思うが、極力接敵したくない。

 

 

 全力で来た道を進む。部隊全員でだ。行きながらメイソン中隊の話を聞くと、頭が緑の球体になっている敵性生物で、頭以外は姿はバラバラらしい。周りに大小の球体も浮かんでいるとのこと。まず銃弾は全く効かない。当たってもすぐに修復されるそうだ。恐らく爆薬でも同じだろうとのこと。それに、何でも攻撃方法が球体からの触手攻撃や身体から口が開いたり、様々な場所から触手が伸びたり…で、文字通り喰われたり、触手の攻撃を喰らったが最後、速攻で浸食されるらしい。浮かんでる球体も凄いスピードで飛び込んで来て身体に入り込み、そうなったら即彼らのお仲間入りだそうだ。…なんて奴等だ。でたらめにも程があるぞ。エイリアンだってそこまで酷くない。また、スピードも尋常じゃなく、人間タイプでさえ一般人の何倍もの力を持っていそうだとの事。駄目だ。そんな奴等にこの兵士達じゃ全く太刀打ちできない。こんなの人間社会に放ったら確実に滅びるレベルだ…!それにしてもよく32名も生き延びたものだ。聞くと、ブラッドさんの不思議な力で、奴等は全員拘束されたらしい…。

 ブラッドさん…。まさに命がけで守ったか…。恐らくそんな強烈な足止め能力はかなり〈制約〉か〈誓約〉が厳しいはずだ。彼が命をかけて守ったこの人達をむざむざ死なせるわけにはいかないな……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 どれぐらい進んだだろうか…!まだか!?くそっ!道が複雑すぎてもうどこを走ってるか分からない!そして…やはり来たか…。

 気づいたら我々は囲まれていた。追いつかれたか!建物の上や、道の後方などに話に聞いた奴らの姿が数十程あった。…いつの間に…しかしこれは相当生理的嫌悪を催す姿だな。人間型もいるから尚更だ。仕方ない、強行突破だ!

 

「みなさん!伏せてください!!」

 

 そう言うと、私は両手のブレードで奴等をぶった斬る!何匹か避けたが、8割は斬れた!話によると修復するそうだが、しばらくは動けまい!しかし、その瞬間、違和感を覚えた。よく見ると、オーラブレードの斬った先が緑色になってる!こいつ…()()()()()()()()()()()()!!

 凄まじい勢いで侵食してくる()を急いで切り離し、無事な奴等に飛ばす!危なかった…!すぐに引っ込めたらそのまま貰っちゃう所だった!仕方ない、念弾や飛ばす斬撃で対抗するしかない!

 

「今です!走ってください!!」

 

「恩に着ます!総員、走れ!!」

 

 私は動き出そうとする奴等に優先して念弾をぶち込んでいった。しかし、バラバラになってもそれぞれのパーツから触手が伸び、元に戻っていく…!私の攻撃じゃ足止めにしかならないか…!いや、大火力で粉々にするか…?

 私を標的に定め、徹底的に集中攻撃し始めた奴等の攻撃を躱しながら、特大の念弾を生成し、ぶつける!…やった!効いた!流石に消滅させる勢いでやると復活出来ないらしい!攻略法が見えて来た。後は繰り返すのみ…!

 

 

 しばらくして、漸く全滅させた。…辺りには()()()()()()()()。…これは駄目な奴だな?しかし、いくら念弾を飛ばしても、空気中に散ってしまい捉える事が出来ない。…仕方ない。先を急ぐ!

 

 

 

 

 

 

 

 …カーム=アンダーソンが去った後、漂っていた粒子が集まり出し、球体に変化する。流石に数は減ってしまったが、僅かに生き残った。最大限の警戒を。中心部に辿り着ける可能性を持つ特殊個体がいる。

 正確には植物粒子とも言うべき()()は、他のグループに独自のネットワークを飛ばす。

 しばらく交信を続け、情報共有する。他にも何体か特殊個体を逃したようだ。しかし、素体はかなり補給されている。問題ない。先ほどの特殊個体が守っていた者達も、他のグループが素体にした様だ。何も問題ない。

 街に侵入した者達を抹殺する。ましてや中心部に向かう者は優先して抹殺する。それこそがこの植物兵器の()()()()()()()()()()()()()、それこそが存在意義なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 急ぎ、この地獄から脱出する…!奴等は動きから見ると、生物の生命エネルギーや動き、音などで相手を感知してるように思われる。だからオーラを伝って感染も出来るのだろう。切り離したオーラには目もくれないし、有効だったのは助かったが。つまり《絶》ならかなり奴等に見つかりづらい筈だ。しかし、一般人は隠せない。あの後、私は部隊を追いかけたが、かなり先に行ってるらしく中々出会えない。無事であるといいが…!

 恐らく、奴等は()()()()()()()()()()()()()。つまり、この迷宮都市に足を踏み入れた瞬間からだ。そして、脱出が困難になる距離まで招き入れてから一網打尽にする戦法を取ってきた。本来であれば無論、今すぐにでもここから脱出するのが一番いいが、「都市を脱出したら追って来ない」というのは希望的観測だろう。仮に都市を出ても追いかけて来るとしたら最悪だ。あんな奴等をここから一歩たりとも出してはいけない。それは人類にとっての正しく「厄災」となるだろう。それならばどうするか。それは()()()()()()()()()!この奥に眠るのは()()()()()()()である。恐らくこのリターンは、あれ程驚異的な兵器に対してのカウンターでは無いだろうか?大量に確保出来れば、もしかしたら奴等の攻撃に対する耐性が付くかも知れない。そうなればしめたものだ。…これも希望的観測に過ぎないが、今の絶望的な状況よりはマシだろう。

 私は少なくとも、アレを【完全適合(パーフェクト・コンバート)】しようとは微塵も思わない。アレには流石に勝てる気がしない。アレは…生命への冒涜だ。兵器と言うからには「誰か」が作ったのだ。「マンティコア」しかり、「獣」しかり、だ。恐らく旧文明の人類だ。だからこそ、こんなに悪意に満ち満ちている。そして滅びた。アレに人型が多くあるからには、多分そういう事なんだろう。そうだとしたら、全く度し難い。

 仮にこれを持ち帰ったとしたら、ここの焼き直しが起こるだろう。原作の時代に至らない程に。だから私はここで止めねばならない。

 

 

 

 それが私の答えだ。




植物兵器「ブリオン」
・古代から都市を守ってきた兵器。正体は植物粒子。一つ一つがプログラムされた「意志」を持つ。即ち、都市に侵入した者の抹殺、侵食である。彼等は有機生命体の発するオーラを感知し追跡する。「敵」を発見したら、即侵食行動を行い、素体にする。相手を細胞レベルで植物由来のものに作り替え、使いやすい様にするとともに、本体は頭部に集中し、そこから素体を操る。素体のレベルによるが、いずれも数倍の力に引き上げる事が出来る為、非常に危険な生物となる。特に念能力者が素体になると厳しくなる。普段は数十の素体グループで徘徊し、侵入者が居ないかを見て回っている。
 オーラを辿って侵食することも可能だが、切り離されたオーラには侵食出来ない。だが、触っただけでも侵食できる上、作り替えられた素体も奇想天外な攻撃を行う為に非常に危険。一部破損したとしてもすぐに修復してしまう。対処法は頭部を念弾や爆薬で吹き飛ばす事だが、すぐに近くに漂う緑の粒子が入り込み代わりとなるため、足止め程度にしかならない。完全に動きを止めるなら全身を素体ごと吹き飛ばすしか無い。それでも粒子が生きていれば球体として活動可能である。
 また、一度侵入した者に対しては、見つけていれば都市を出てからも追跡し、抹殺しようとする。


キメラアントを超える脅威ってこれぐらいありそうですよね…?

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