な、何が起きた!!
その間、アンソニーさんはマットさんに再び問診をし、マットさんが
畜生ッ!やられた……!!
「いかに君でも、脳の損傷は復元に時間がかかる様だね…一種の賭けだったが上手くいった様だ」
「…ど、どういう事だ…!答えろ、アンソニー!!」
上手く回らない口で必死に時間を稼ぐ!たしかにこれは脳の運動を司る中枢が破壊されている…!復元には時間がかかる…!
「時間稼ぎはやめ給え。まぁ冥土の土産に手短に伝えよう。私の能力の【
「加えて言えば、俺の【
「つまり、コンボ技、という事だ。納得いったかね?」
「…どうする、つもりだ…?」
「言っただろう?プランBだと。君は我々を殺してまでも阻止するつもりだったようだから、こうしたまで、さ」
「ふざけるな…っ!直ぐに復元してから殺してやる……っ!」
「おぉ、怖い怖い、ではこうしよう」
そう言って会話しながら拾ったガラスケースのひとつを私に近づけ、慎重に
不味い!今はこのダメージで《絶》が出来てない!
蓋の開いたガラスケースから、緑の球体が飛び出し、
「ぐっ、があぁああぁぁあぁッッッ!!」
凄まじい侵食の勢いに、即【
「君がまだ我々に嘘をついているならば、
球体が凄まじい勢いで脳めがけて侵入してくる中、
「君のその特異な細胞も、我々人類にとって福音となるだろう…。少し頂いておくよ」
彼は、その切り落とした手を空いたガラスケースに入れた。
「ではな…。幸運を祈るよ。『
ニヤリと笑ってそう言うと、3人はその場から速やかに去っていった。
◆
……畜生!!! なんて事だ!…こうなったら【
同時発動していた【
だが、私の身体はボコボコと波打ち、心臓は急静動を不規則に繰り返し、身体は飛び跳ね、終いには呼吸まで苦しくなる…!
これは…アナフィラキシーショックだ! 前世でも今世でもアレルギーを大量に持っていた私には馴染み深い反応! しかしレベルが違う!!そもそも私は能力によってアナフィラキシーなどは起きない。だが、今迄とは桁違いの侵食によって、細胞の抗体が全力で拒否反応を起こしている…!
細胞が侵食され、書き換えられていく…!必死に取り込もうとするが、容赦なく
頭に向かっている球体も、現在肩付近まで到達し、徐々に登ってくる…!駄目だ、止められない…!
そして、抵抗空しく、
「ぎゃあああぁあああああたかなやたかなわまたあ!!!!」
私の口から自然と叫び声があがる。強烈な不快感が私を襲う…脳に直接針をぶち込まれて引っ掻き回される様な、それを10倍ぐらいにした不快感だ、…そして、、言、葉、、に、、続き、五感、ががが消滅す、、る、、
脳、が、侵さされ、、れ、れ…てゆく、、わたし、、は…ワタしは…イきのコるる、!ゼっタいニ…ダダだダはゅ、らあたぬか、、イえニカエる、るある、りら、らららりら、らラララ…ソら、、…シヲ、、ニゅうシャ…、…、ヲマッさツせょ、、?
チがウ!、、イキノコル、、、!ワタ、し、、、ハ…ダれ?
ワタし、は、、、ワレワレは『ぶりおん』、、トシニシ、ンニュウ、、シタモノはレイ、ガイなク、マッサツ……
ダダ、ダだダ、ダダだ、だメだだ、、ワタ、シ、ガわたシジャなクなル、ルル。ムり、カ、カカカマ、ケ、る…、、、トう、サん…、、カ、、あサン、、、マいけル、ル、、、すマナ、い、、、
………
……………
…………………
…………………………
その時、僅かに機能していた私の脳裏の片隅に、天使が微笑むのが見えた。
◇
「……兄さん!!!」
「うぉっ!!いきなりどうした!?」
「……兄さんの『お守り』が発動した…!」
「…あぁ、お前さんの『お守り』か…しかし、そんなにヤバいのか?あのアニキが?」
「…あれは、『真の生命の危機』…つまり、万策尽きてその対象が〝絶望〟を感じて生命を〝諦めた〟時に発動する…!」
「おいおいおいおい…それはかなりヤバいんじゃないか!?」
「ヤバいなんてもんじゃ無い…!だからこその『お守り』なんだ!!」
「まさか…あのアニキに限って…!!」
「兄さんから聞く冗談みたいな敵相手にも今まで出てこなかったのに…!そんなに状況が悪いのか…!?」
「クソっ!なんてこった…!!何とか出来ねぇか!?」
「……祈るしか無い…」
「……そんな…」
「…兄さんはこれまで、どんな病気だろうが、毒だろうが、強敵を相手にしてすら絶望を乗り越えて来た……そんな兄さんが絶望するなんて…」
「……あの人が!!くたばる筈はねぇ!いつもの涼しい顔で乗り越えて来た!!絶対に大丈夫だ…!そうだろ!?」
「……でも…」
「でもも何もねぇ!あの人は諦めるっつう言葉が1番似合わねぇ人だ!!どんな困難にぶつかっても血反吐吐いて乗り越えて来たんだろう!それはお前が1番知ってる筈だぜ、マイケルッ!!そんなお前が信じなくてどうするッ!!」
「……そう、だね…。僕が、僕こそが兄さんを信じてあげなくちゃ…!」
「その調子だぜ…マイケル。不安になるのも分かる。あの人が絶望するなんてな…だが、あの人も人間だからそういう事もあるだろう。それに、その1番ヤベぇ時に
「ありがとう…!ジョセフさん。たしかに兄さんはいつもそうだ。また何でもない顔をしてとんでもない話を聞かせてくれるんだろう。…僕は信じて待つよ。そして、兄さんが少しでも無事でいられる様に祈る!」
「あぁ。何の力にもなれねぇが、俺も祈っておくぜ…。アニキ…無事で帰って来てくれ…!」
「兄さん…無事に会える事を祈っているよ…!」
◇
意識が拡散していく…
今の状態は……
私…は…
そうか……これは魂みたいなものか…
肉体は奴等に乗っ取られた……
これからあの誰も来ない都市を兵器として過ごすのだろう……
……最悪の死に方だな……
………ここに来たのが間違いだった…
私はまだ何処か慢心していたのだろう……
…死ぬ事は、無いと……
これは罰だ。傲慢だった私への……
そして、死ぬ…
誰にも看取られず……
…死ぬのは、もうこれで
…今度こそ無理だろうな…
もう、何もかも…どうでもいい……
ほら、天使が迎えに来た……そろそろ、か…。
…………
「真の生命の危機」とは、即ち絶望である。