どれぐらい時間が経ったのだろうか
私は、遂に全ての細胞を取り返した
私は、勝ったのだ
この最強の植物兵器に
本当にありがとう、マイケル
本当に駄目な奴だな。私は…
だが、もう私は諦めない。
私は必ず帰ってみせる。
のっそりと起き上がり、ガスマスクを外す。もう必要ないだろう。私の周りには緑色の球体がいくつも浮かんでいた。
しかし、彼らはもう、私に攻撃する事は無かった。恐らく、私が
……後悔はしない。私は例えどんな手を使ってでも生き延びると誓ったからだ。だからこそ、後悔はしない。
周りの「緑」に手を触れる。…何も起きない。触ってみると細やかな粒の集合体という事が分かる。これは…花粉に似てるか?
粒子と言う点だけだが。
そのまま握り潰すと、微細な粒となって拡散する…。しばらくすると、少し小さくなりながらも元に戻った。
恐らく〝コレ〟は、植物型のナノマシンの様なものだろう。信じ難い事だが、そのプログラムは全ての粒子に宿る様だ。
だが、握り潰されてもソイツは其処に逃げずにとどまっていた。
…何を考えて居るのか分からないが、私は奴等にとってのプログラムに侵入したウィルスの様なものだ。「敵」とは
どれぐらい時間が経ったか分からない。急ぎ船に戻り、乗せてもらって帰ろう。
……あの3人にも落とし前をつけなければならないからな。
そうと決まれば急ぐか。
私はその場から飛び上がる。軽く飛んだだけで200メートルぐらい飛んだぞ…。
まぁ今は都合がいい。こうなれば迷宮でも攻略は容易い。落ちながら軌道を修正して、高い建物の上に降りると、そこから出口に向かって跳躍する。
凡そ30キロの都市を何回かの跳躍で入口まで着く事が出来た。最早肉体性能はとんでもない事になっている。オーラ量も以前の5倍ぐらいある…。
……私は帰ってもいいのだろうか?
…いや、私はまだ「人」だ
帰ると誓ったのだ。絶対に帰ってみせる。…例えハンター協会や国と敵対してでも。一目でも家族に会いたい。
…急ぐか。
今の私には《隠》をしながら《円》を使う事が出来る。それでも見破りそうな奴がいるだろうからある程度抑えるが。大体500メートルもあればいいだろう。…おそらく、もっといい方法がある。だが、
樹海の中を凄まじいスピードで進む。《円》で大体の敵性生物や樹海の状態がわかる。これ程の力を得ても、ちっとも油断出来ないところがここの恐ろしい所だ。
途中、奇妙なモノを見つけた。…マットの頭部だ。正確に言えば、
私はその場で念を飛ばし、木の根本から断ち切ると、木らしからぬ悲鳴をあげて倒れていった。よく見ると、木の中央に木らしからぬ大きな口と牙が生えている。
…擬態か。そしてその実は捕食した生物の頭部を再現した実を生らせる。迂闊に近づいた者をそうやって捕食するのか…。
あまりの悍ましさに、それの近くにある木は全て叩き斬ってやった。枝や根を動かしてなんとか抵抗しようとしたが、無駄だ。
数分で全て動かなくなると、例の果実に近づく。マット以外にも何人かが実になっていた。道中の兵士達だな。油断せずに近づくと、
……なんて、醜悪なんだ…。
多分、元の木がやられても
兵士達には申し訳ないが、念弾で丁寧に潰していった。
少し時間をとった。彼らの魂が安らかにあの世に行ける様に祈りつつも、私は先に進んだ。そして、後少しという地点まで進んだ所で、
「それ」に出会った。
「それ」は私の「手」だったものだ。
…つまりは
それに、私の細胞が混じってしまって、凶悪な性質が更に凶悪になっている。こんなものを放置は出来ない。放置すると、その内プログラムを超えて大災害に発展する予感がある。何より、私が許さない。これはアイデンティティの問題だ。
恐らくだが、向こうも私の細胞が素になってるせいか同じ考えのようだ。立ち止まったまま、こちらに向き合っている。向こうもやる気だ。実力は同程度。だが、必ずやその細胞ごと消し去ってやる!!!
そこからは激しい消耗戦が始まった。肉が削げ、骨が千切れ、内臓が吹き飛ぶ。時には頭部も消し飛び、全身の半分が消え去る事もあった。だが死なない。私も奴もすぐに復元する。正にそれは無限を象徴するウロボロスのように。お互いがお互いを殺し合って、喰らい合う。激しいなんてものじゃない痛みが私を襲うが、それでも止まれない。
殺して殺して殺して殺して、削って削って削って削って……
果てしない激痛や損耗の果て、私は遂に奴を消滅させた。残った粒子も私の細胞混じりなので直ぐに復元しようとするが、却って消し去りやすかった。
…勝因は、私の身体の使い方に一日の長が有ったからだろう。
本当になんて酷い所だ。人間性がどんどん失われていく気がする。
私を囲む様に20ほどの奴等がいた。多分
……やるしか、ないか。
私は絶望的な気分になりながらも、そいつらと対峙した。
◆
正に地獄とも言える闘いの果て、奴等は消滅した。辺りは大災害にでもあったかの様にグチャグチャになっていた。…何て虚しい闘いだっただろうか。中にはネーブルやアンソニーの服を着ている個体もいた。彼等にはキッチリ落とし前をつけた形になるが、他の
だが、放置も出来なかった。放って置けば、凄まじい怪物の誕生だ。今だからこそ出来た事だ。…自爆したネテロ会長の気持ちがほんの少し分かった。まだ私が人間であることの証明になるだろうか?
人間性とオーラの殆ど総てを捧げて闘ったものの、この身体は回復力も異常だ。
私は……まだ「人間」だろうか?
◆
砂浜に着いた。案の定、船の姿は無い。一縷の望みに賭けていたが…実際に無いとこれ程に落胆するものなのか。
浜辺は血に塗れ、ベースキャンプはグチャグチャだ。そして、岸には
……なんて事だ……。絶望的…だな……
念の為、大きく《円》をしてみる。誰か…誰か生き残ってないか……!
誰でもいい………!
もう気が狂いそうだ
《円》をした結果、私は更に絶望感に苛まれる……こんなのが大量にいるんじゃ、船も沈む筈だ…。デカいクラゲにイカ、カニ、シャコ。砂浜には気持ち悪い線虫、巨大貝、ザザムシ、フナムシ…いずれもかなりヤバい奴らばかりだ…それに加えて奴等の暴走…か…。そして、無惨にバラバラになった船の残骸……
頼む……!せめて、誰か……
!
いた!
これは…チャーリーさん…か?
右手奥の砂浜が切れる場所の窪みに座り込んでる!まだ息がある!!《絶》をしてたのか!
急いでそこに向かうと、身体中ボロボロのチャーリーさんがいた。
「チャーリーさん!!」
「………」
「…お、おぉ……カームか……やはり、お前は…」
「どうしたんです!?船はどうなりました?」
「…四方……八方…から…化…け物が…襲って来て、部隊は…壊滅した…俺も…抵抗…した…が、無理…だった…。船は…知らない…」
「すぐ手当します!!」
「無駄…だ……自分…事…はよく分かる…もう…遅い…。奴等が何故最後まで俺を…襲わなかったか…もうすぐ…分かるだろう…」
「待って…待ってください!……お願いだ!こんな所で独りにしないで…!」
「お前なら…大丈夫だ……
「私は…私は……」
「もう…もたねぇ……サヨナラ…だ…ここで言うのも何だが…元気でな…」
それを言い終わると同時に、グルンと右眼が跳ね上がると、ガクガクと痙攣しだした。そして、彼の頭部が弾け飛び、中から線虫が大量に出てきて私に向かって来た。
私は悲鳴にも似た絶叫をあげると、その寄生虫共を嬲り殺しにした。痛覚があるかどうかも分からないが、やらずにはいられなかった。
…そして、辺りには完全に消え去った虫共の残骸と、頭の弾けたチャーリーさんの死体が残った。
こんなの…あんまりだ……
私は……私は……今度こそ本当に
◆
しばらく私は呆然として、その場に立ち尽くしていた。あまりの絶望に涙も出てこない。感情が擦り切れた様だ。あれ程の闘いを終えて、私を待っていたのは、
…いや、どこでも同じかもしれない。結局は自己満足だ。しかしやらずにはいられなかった。
埋葬が終われば、圧倒的な現実が待っていた。仮に帰るとしても、どう帰ればいいんだろう。泳いで渡るか?
…自分で言っておいてなんだが、余りに現実的じゃない。海はそれこそ魔境だろう。距離もどれぐらいあるか見当もつかない。恐らくもう後続の船は来ないだろう。この作戦だって10年かかってる。そこに今回の大失敗だ。10年じゃ利かないだろう。
……手詰まりだ。自分で諦めないと誓っておきながら、どうしたらいいか分からない。船を作ろうとしたって同じだろう。
どうしたらいいんだ……この地獄に1人取り残されて…
◆
……仕方ない。私は諦められない。だとしたら
だが、決めたんだ。私は必ず帰ると。
私は、先程闘って分かったが、早々死ぬ事は無い。オートで復元
しかし、
…だが、丁度いいだろう。これは罰だ。あまりにも私は傲慢だった。
憧れの世界に来て、必死で鍛え漸く健康な体を手に入れた。そこから私の人生は華開いた。
思えば浮かれて調子に乗っていたんだろう。新しい能力を取得し、ハンター試験にも受かり、修行を続け、最強ではないが生きていく上での一端の強さを身に付けたと思っていた。万能感に酔いしれていた。
だからこそ受けた罰。だが、私は生きている。生きてこの地獄を脱出してみせる。
それが私の希望だ。
私の能力名も変えよう。【
これからこの能力名は、自嘲も込めてこう呼ぼう。
【
【
・????
身体が大幅に損壊しても、オーラを使用して復元する能力。彼の細胞は植物粒子と混合し、元々あった特異な細胞と植物粒子のハイブリッドとも言える存在に
具体的には光合成によりエネルギーを合成でき、無限に増殖できる上、その細胞一つ一つに意識が宿る為、例えバラバラにされても一片でも細胞が残っていれば自動で修復・復元し、復活する。また、癌細胞を適応した影響か、
ただし、痛みは据え置きであり、能力が大幅にパワーアップしただけなので、誓約なども据え置きである。
それは、神の祝福か、それとも呪いか。