糞ッ…!糞ッ糞ッ!糞糞糞ッ……!!!
どうしてこうなるんだッ…!!
私は僅かな希望すら持てないのかッッ…!!!
これは最早地獄すら生温い…!
何て世界だ…!
なまじ前世や今世と似ているせいで余計に酷い……
何が「神」だ!!!
これではまるで「悪魔」じゃないか…!!!
……許せない…!!
絶対に
…そこから私は近くの研究施設の様なものを悉く破壊した。もちろん八つ当たりに近いが、こうやっておかないと自分の精神が保ちそうに無いからだ。
一頻り暴れて漸く落ち着いた頃、私は冷静に考え始めた。
…「神」を騙る「悪魔」についてだ。もう私の中では完全に「悪魔」だ。恐らく間違って無いだろう。
この「悪魔」を滅する事が、元の場所に戻る事にも繋がるだろう。何より私が許せない。
だが、この相手は強い…!
多分桁違いに…。「神」を騙る程の相手だ。今までの比じゃないだろう。分かっているだけでも、人間を化け物に変質させてしまう〝呪い〟…あの香草が通じないと言う事は、最早物理・自然現象を超えたナニカだろう。まさに〝悪魔の呪い〟と言うべきものだ。人間の常識が通用しない。
つまり、
だが、私は諦めない。以前聞いた師匠の台詞を思い出す…。
『万が一、どうしようもない絶望的な状況に陥ったら、お主もなぜそれほどの力を付けるに至ったかを思い出すが良い。きっと助けになるであろう。また、ゆめゆめ儂の教えも忘れるな。自然と合一することで道が開けることもあろう』
前はマイケルの助けも有ったからだが、私の根源にある渇望を思い出す事で道が開けた。そして、今回は
即ち
〝聖光気〟の獲得である。
師匠は言った。
『これは、世界と同一になり、人が神へと至る道筋じゃ。仙になった者は皆ここを目指し、厳しい修行を自らに課す。いわば、人の軛を捨て、悟りを開くと言う状態じゃな。今のはまだまだ未完成じゃがな…ここまで至れば、いかな呪いも災いも効かぬようになる。人の〝気〟を世界とつなげ、自らの物にするという事じゃ…』
…と。
そして、それ程の力を持てば、暗黒大陸からすら脱出出来るかも知れない…!
で、あれば、やるべきだ。何年もかかるかもしれない。だが、希望が見えてきた。
近くの家屋にお邪魔して、久しぶりのベッドで眠る。この様な安息はしばらくなかった。私にはもう睡眠は必要ないが、精神の安定には欠かせないものだ。これからの事を考えると重要な事だろう…。
◆
私はその後、街を出て荒野を彷徨った。丁度良い場所を探す為に。
幾日か彷徨ったが、本当にここは滅びている様だ。人や動物の姿すら無い。あるのはただ、荒野と建造物のみ。そして、例のマネキン共が所構わず徘徊する…。
人里離れ、山の山頂に達した時、ようやく奴等の影も無くなった。人間の生活圏を中心に活動している様だ…。ここの気候は
だからこそ、誰にも邪魔されずに集中出来る…。山肌に窪みを作り、そこに入って座禅の姿勢をとる。どの様にしたら出来るようになるかは分からない。だが、師匠は答えは見せてくれた。全く師匠にも頭が上がらないな。
こういう時は、基本に立ち返るべきだ。
だから私は瞑想する。
自然と合一するには、それが1番の近道だと分かるからだ。まずは自分のオーラを自然と溶け込ませる所から始めよう。
◆
1年程が過ぎた。私には食事も睡眠すらも必要ない。だからこそ、それのみに没頭できる。
最初は《纏》すら解除し、自然体で始めた。…思えば、この立ち登るオーラは
それこそ、自然に溶け込んで消えていく、このオーラは…。
人間だけじゃない。動物も植物も、ありとあらゆる生命はエネルギーを発し、それは空中に消えてゆく。
…それは、世界へと還元されるのではないだろうか?
ミンボの僧侶が言っていた「空」とは…恐らく、その世界と一つになり、自らがその一部となる状態の事を言うのだろう。身体も、オーラも、意識すら合一した状態となる…それが「空」だ。
しかし、それでは植物と何も変わらない。
ミンボの僧侶は「悟り」と言っていた。その状態から自らの意志で
何の事はない。師匠の見せてくれたものと同じ事だ…。古より人々を導いてきた存在…。〝聖者〟とも〝天使〟とも呼ばれた存在は、皆、
超古代に人々が暗黒大陸を脱出出来たのは、そういった人々が導いたからこそなのではないだろうか。
だからこそ、私も掴んでみせる。
既に、ほぼ全てのオーラを自然に溶かし、一部とする事が出来た。精神も、意識や肉体という軛を超越して拡散していく…。
これは…ある意味「死」とも似ている。違うのは身体も意識もある状態で行っている、という事だ。臨死体験が2度程ある私には馴染み深い感覚だ。
だが、私は「生きるため」にこれを行う。必ず「生きて帰る」為に…。
それから更に1年程月日が経った。もう私はほぼ植物の様な、ありのままの自然と同化するに近い状態となった。やってみて分かったのは、
例の「悪魔」によって滅びた世界だ。そこは仕方ない。しかし、まだ辛うじて残っている。
それは「この世界」の最後の力。この星の大地や空、海に至るまで。そこには善も悪も無い。ただ、あるがままに
私はそれらと出来る限り同化し、溶けてゆく…。
しかし、その頃から、邪魔が入る様になった。
私の意識の中に現れる。昔会った部族の女性たち。私を誘う様に誘惑する。だが、私は動じない。これは私の「弱さ」が作った幻だ。罪悪感と性欲などに訴えかけてくる。私が何も返さないと分かると、残念そうに消えていった。
次に現れたのは、私の家族だ。父さんや母さん。マイケル達やファミリーのみんなが次々に私に言う。
「何をしてる。もういいだろう。早く帰ってこい」
「そうよ。貴方なら凄い力を持ってるんだもの。早く起きて帰ってらっしゃい」
「兄さん!『血の掟』を忘れたのかい!? 兄さんならきっと帰って来れるから、そんな事してないで早く帰って来なよ!」
「カームさん! マイケルも寂しがってますよ! お願いですから早く帰って来てくださいよ! アンタなら出来るだろう…!」
「…………。」
彼等は次々と私の前に現れては告げてゆく…。正直これには参った。
確かにこんな事をしなくても、私は細胞をワザと暴走させ、ブリオンなどの力を限界以上に引き出したり、メモリすら無視して超強力な発を作ったりする事で「力」を手に入れる事は、恐らく可能だろう…。
もしかしたらあの「悪魔」の〝呪い〟すら吸収して、奴を殺す事も出来るかもしれない。
しかし、そこに待っているのは完全なる人間性の喪失だ。他ならぬ自分だから分かる。そうなった場合、私が私ではいられなくなる。周囲に害を撒き散らす怪物の完成だ。
強い意志が必要だ。
私は、「人間として、生きて帰る」と!!!
しばらく家族達は粘っていたが、私の意志の強さを見て諦めて去って行った。
最後に私の前に現れたのは……
「久しぶりだねぇ。『
「……何をしに来た?」
「
「…私は誰の言葉も受け付けない。貴様はここから去れ」
「酷い言われようだな…。まぁあんな事が有れば当然か。だが、
「…これは私の弱さだ。それも含めて私だろう。だが、私は克服してみせる」
「…君は不安に思っているんじゃないか?本当にこのやり方でいいのか…とね。更に言えば、その力をもし手に入れても勝てるかどうかすら分からない…。違うかな?」
「……だから何だ」
「〝力〟を解放し給えよ! Mr.アンダーソン! 君になら出来るだろう! 君が思っている様に!!」
「…それはやらないと、今誓ったばかりだ」
「意地を張るのはやめ給え。君は迷っている。君の力は素晴らしい! 私が生きている時でさえ圧倒的だったではないか! 君は更に『兵器』すら吸収し、無敵の存在となった…。君がその気になりさえすれば、すぐにでも圧倒的な、それこそ『神』にも匹敵する存在になれるだろう! さすればこの様な地獄からも抜け出せるし、それこそ
「巫山戯るな!!
「…君は随分と人間というものに理想を持ってる様だねぇ。人間なんて所詮
「それでも! 人間は隣人を愛し、他人を思いやる事が出来る! それが、それこそが人間だ!」
「青いねぇ…。甘い、と言ってもいい。だが、そんなのは余裕のある時の気まぐれにすぎん。私も医師として様々な戦場を見てきたが、酷いものだったぞ。奪い、騙し、犯し、尊厳すら凌辱される…。そんなのは日常茶飯事だ。まだ君の見てきた怪物共の方が優しい場合もある…。第一、君の家庭もその様な稼業だろう…忘れたとは言わさんぞ」
「…確かにそうだ…。人間は愚かだ…。家の仕事もそうだし、当然私もそうだろう…。だが、無償の愛やいたわりすら忘れてしまえば本格的に怪物になってしまう、と言っているんだ」
「怪物になって何が悪い?寧ろ君が怪物になって、支配してでもその愚かな人間共を止め給えよ。圧倒的な力の前では、流石に人間は大人しくなるだろうからな」
「そんなのは恐怖政治と何一つ変わらない。第一、それで人間社会が平和になるならば、ここは滅びなかっただろう」
「ははっ! これは1本取られたねぇ。だが、君は認めたぞ。人間はどこまでも愚かだ。それこそが人間だ。…だから素直になり給えよ。君のやってる事は無意味だ。早くその〝力〟を解放して『神』にでもなり給え。……どうしてもそれが嫌ならば、まぁ仕方ない。ここの『神』に挑んで、無様に負けるといい。幸い君は
「何を言われても私の答えは変わらない…。だが、お前の言う通り、人間は愚かだ。そんなものに拘っている私は滑稽に映るだろう…。しかし、時にはそれが凄まじい力を持つ事もある…。私をマイケルが救ってくれた様に。だからこそ人間は素晴らしい。だから…私は人間の愚かさも、汚さも、賢さも、愛も、全て飲み込みながら人間として進む」
「ハッ! それこそ滑稽だな。大体君は、
「………」
「医師としての私から言わせて貰えば、君の細胞は既に人間のそれじゃない…。大体、不老不死の存在を人間というものか。医学的な見地からも、
「…それがどうした。私が私を人間だと認識してるうちは人間だ」
「今度は哲学か? 付き合ってもいいが…君の考えは変わらない様だね。勿体無い。究極の生物の極地、人間の可能性を見られるかと思ったがね」
「納得したか? 安心しろ。私は世界と合一する。
「……君みたいな青い奴に合一されるなんて真っ平ごめんだね。…反吐が出る。ならば私は退散するとしよう。だが、予言しよう。
最後にそう笑って告げると、彼は来た時と同じ様に去って行った…。
私の考えは変わらない。人間は愚かだ。彼の言った通りに。しかし、だからこそ輝くものを内側に持っている。私はそう信じている。そしてそれは、人間だけの特権だ。だから私は、人間を捨てない。例え、それが姿形だけであろうとも。私は、全てを受け入れた上で人間として在る。
そう決意した時、唐突に私の意識が浮上した。
私は……世界に認められた。今までの比じゃ無い程の凄まじい〝力〟がそこにはあった。それは世界に接続した力。その一部だ。そして〝それ〟は無限に湧き出てくる。試しに動かしてみる…オーラより難しいが、動く!
ならば、充分に扱える様にしなければ。この世界と合一して分かった事がある。
この世界はもう長くない
ならば、少しでも早く、〝この力〟に習熟しなければならない。この世界に巣食う「敵」を倒す為に。
聖光気
・念能力には
この力を得た者たちは、洋の東西を問わず、〝聖者〟、〝覚者〟、〝救世主〟、また、金色のオーラを持ち、空を自由に飛べる事から〝天使〟などと称されることもある。
最大の特徴は、聖なる光の力を持つ事であるが、それは逆に言えば、生命体の発する悪意や邪気、殺意などを自然が持たず、あるがままのピュアな状態だからである。故に、ありとあらゆる呪いや災いの類を弾く事ができ、そういった存在に対しての強烈なカウンターとなる。
条件としては不確かな事が多いが、これまでの存在から考察すると、ある一定以上のオーラを持ち、かつ
いずれも厳しい修行と精神統一が必要であり、そこで挫折する者も多く、また、上手くいきかけても